Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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「――はぁ……はぁ……はぁ……」



「――逃がすな!まだ近くに居るはずだ!!追え!見つけ出せ!!!」





――なんで。なんでだよ。一体なんでこうなっちまったんだ……




「誰か助けてくれよ――」





phase,4 プロテインな脱獄犯

 

 

 

 

 

 

 

 

『――やつはまだ見つからないのか?』

 

 

 

 

 

 

 

「はい。申し訳ございません。しかし、厳重体制で捜索しております。捕縛するのも時間の問題かと」

 

 

 

 

 

 

 

タイピングの音と、何かの実験をしているような音だけが不規則に鳴り響く空間。

 

 

 

そして王座を象った椅子に座る、謎の蝙蝠。

きっとここは、悪の巣。

 

 

 

 

 

 

『――早くしろ。奴が居なければ計画が進まん』

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……」

 

 

 

 

 

 

 

不機嫌そうに睨み付ける蝙蝠。その声はまるで闇に潜む狩人のよう。

 

見た目は完全に人外の者。顔のバイザーらしきものと胸に同じ様な蝙蝠のような装飾をしている。

 

 

 

 

 

 

 

まさに、闇……

 

 

 

 

 

 

 

『おいおい!随分と機嫌が悪いじゃねえか』

 

 

 

 

 

 

 

『――お前か』

 

 

 

 

 

 

 

不機嫌そうに睨み付けた先にはこれまた異形の者。

まるで全身が血塗られた蛇のような……

 

 

 

 

 

 

 

『はっ!まあいいじゃねえかよォ?奴が逃げた所で計画は変わらない。むしろ面白くなるんじゃねえか?んん?』

 

 

 

 

 

 

 

鮮血の蛇は壁にもたれながらゲラゲラと笑う。

その様はまるで狂気を具現化したよう。

 

 

 

 

 

 

 

『――チッ。お前には付き合いきれん。……まあいい。時間の問題だ。』

 

 

 

 

 

 

 

『ははは。まァ大丈夫さ。いざとなりゃあ俺が出る。ゆっくりと楽しめよ、《ローグ》』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――邪魔だけはするなよ。《スターク》』

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い空間に、暗黒の蝙蝠と鮮血の蛇の声だけが響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ゛ー……疲れた……」

 

 

 

 

 

 

 

とぼとぼと我が城《nascita》に辿り着く。やはり一番落ち着く場所だ。

 

それに我が愛する娘と元気が取り柄の天才物理学者が出迎えてくれる。俺は幸せモンだな。

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん!おかえり!今日は早かったね」

 

 

 

「ますたあ!おかえりー!おやつは?お土産は!?」

 

 

 

 

 

 

 

うん。ありがとう我が癒しの天使よ。

こっちの天才は本格的に野に返す準備でもしとくか。

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま。……ほれ。パティスリー鴻上のケーキ」

 

 

 

「「おおお!!やったあああああ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり2人共女の子だな。たかだかケーキでこんなに喜んでくれんだから。

こんなもので2人の幸せそうな顔が見れんなら安いもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……よし。甘いものと言ったらコーヒーだろう。実はな、マンデリンのいい豆を入手したんだよ。待ってろよ、今……」

 

 

 

「「いや、大丈夫。缶コーヒーあるから」」

 

 

 

 

 

 

 

前言撤回。誰か俺の事も幸せそうな顔にしてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ごちそうさまでした!」」」

 

 

 

 

 

 

 

うちではしっかりとみんなでいただきます、ごちそうさまでしたをするのが習慣だ。ま、基本中の基本だろ。

 

 

 

戦兎や美空も外で食う時もバカでかい声で言う。俺としてはそういった所も自慢の2人娘だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

「んー♡やっぱりパティスリー鴻上のショートケーキは美味しいしー♡」

 

 

 

 

 

 

 

美空はショートケーキが大好きだ。何かあるとすぐに催促しやがる。

……もっとも、俺の知ってる美空は、だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

「ショートケーキもいいけどモンブランもさいっこうだよ♡はぁ……とろける……♡」

 

 

 

 

 

 

 

戦兎はなんと言ってもモンブランだな。というかこいつは甘いものならなんでも好きな気がする。

 

ま、喜んでる顔を見るのが好きだからいいけどな。

 

 

 

 

 

 

 

「俺はなんと言ってもダークチョコケーキだなぁ。舌が痺れるようなビターな苦味とほのかな甘さ……そしてこの漆黒がいい!」

 

 

 

 

 

 

 

ほんと美味しいからおすすめ。元いた世界にもこのケーキがあったら100%買うわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

 

 

「あ!お父さんまたタバコ吸ってるー!」

 

 

 

「マスター!煙が目に染みるからやめろって言ってんでしょ!」

 

 

 

 

 

 

 

2人から集中砲火だ。美空は俺の身体に悪いから、といつもぶーぶー言ってくんだよな。安心しろ。超自然パワーでニコチンなんか死滅すっから。

 

 

 

戦兎は目に染みるから嫌いらしい。なんだか懐かしいような気がするんだよなー

 

 

 

 

 

 

 

……それと同時に胸が締め付けられるような感じがする。

 

 

 

 

 

 

 

「まあまあ。おじさんはニコチンへの抗体を持ってるから大丈夫」

 

 

 

 

 

 

 

2人は未だにぶーぶー言ってるが無視無視。

というか戦兎、お前は俺の事気遣ってないだろ……

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事より、なんか新しい事あったか?」

 

 

 

 

 

 

 

紫煙をくゆらせながらふと呟く。大事な事だからな。

 

 

 

 

 

 

 

「あー……うん。今までプロトタイプだったボトルが完成したよ。これでスマッシュから取り除いたガスの応用が出来るはず」

 

 

 

 

 

 

 

ほー……そうか。ボトルが完成したか。いやー。そうねえ。完成したか……

 

 

 

 

 

 

 

「っておおおおい!!完成!?完成したの!?もう!?」

 

 

 

 

 

 

 

びっくりし過ぎて挙動不審になっちまった。

そりゃあそうだろ。あの葛城 忍ですら未だに完成出来てないんだから。

 

まじかよ……本当に天才だな、戦兎は……

 

 

 

 

 

 

 

「う……ん。まあ見た方が早いよ。下来て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほー。これがねえ……」

 

 

 

 

 

 

 

戦兎が作った空のボトル。全58本か。本当かよ……

 

人類が到達している更に先の技術で作られているボトル、だかなんだかってあいつは言ってたから当分先の話になると思ってたんだがなぁ……こりゃ色々と早くなりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

「マスターが【三都に60本のボトルがばらまかれてる】って言ってたから、とりあえずラビットとタンク以外の58本作ったんだ。どうどう?凄いでしょ?最っ高でしょ??天才でしょー!?」

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……確かにお前は天才だよ……」

 

 

 

 

 

 

 

鼻息荒く詰め寄る戦兎に本音が出る。確かにこれは天才の所業だ。俺らの見通しだと早くても後5年はかかる予定だった。

 

それを……まじかよ。

 

 

 

 

 

 

 

「やっとこれでスマッシュから抜き取ったネビュラガスを浄化して応用出来るんだよ!今までのプロトタイプのボトルは美空の力に耐えきれなかったけど、今回のは完璧だからねん!」

 

 

 

 

 

 

 

……悪いな、戦兎。

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとうよ、戦兎」

 

 

 

 

 

 

 

「ほえ?……う、うん……」

 

 

 

 

 

 

 

恥ずかしいのか、戦兎は顔を真っ赤にし消え入りそうな声で俯いた。

 

日頃自分の事を天才天才言う癖に、時たま褒めるとこれだ。

変な娘だよ、全く。

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎ね、【わたしがやらねば誰がやるんじゃあああああ!!!】って叫びながら徹夜してたんだよ。ここ最近ずーっと」

 

 

 

「えへへ……」

 

 

 

 

 

 

 

美空が呆れたような感心したような声と表情で戦兎に視線を移す。

おいおい、これじゃあどっちがお姉ちゃんなのかわかんねえな。

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。よく頑張ったな、戦兎。でも無理はするな。お前が倒れたら心配する奴がここに2人居ることを忘れんなよ。お前は大事な俺たちの家族だ」

 

 

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

相当照れてるのか、ずっと俯いてもじもじしている戦兎の頭をぽんぽんと叩きながら伝える。

 

そう。お前は大事な家族なのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズキンッ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……痛っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

急な激痛が頭を疾走し、うずくまってしまう。

 

なんだこれ……痛ってぇな……

エボルトの力の副作用か何かか……?

 

 

 

 

 

 

 

「どしたのマスター!?どしたの!?」

 

 

 

「お父さん!?ねえ!どうしたの!?お父さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

娘たちが心配そうにしてるし心配かけないようにしないと……

 

 

 

 

 

 

 

「……おう、大丈夫。ここ来る前に飲んだお手製のコーヒーにやられちまったようだ。もう、大丈夫」

 

 

 

「「はぁぁぁぁ……」」

 

 

 

 

 

 

 

はぁ。わかりやすい盛大なため息つきやがって。

 

しかしなんだったんだ今の……?

もうだいぶ良くなったけど、変な感じだったな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビー!!ビー!!ビー!!

 

 

 

 

 

 

 

さっきまで激痛が走っていた頭に追い討ちをかけるようなサイレンが鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎!!スマッシュの情報だよ!場所はA第2地区、スカイウォール周辺!……スマッシュと軍の守衛兵と民間人と思われる、だって!」

 

 

 

 

 

 

 

既に戦兎は手馴れた手つきで準備をしていた。

さっきまでの戦兎とは考えられないような真剣な目付きだ。

 

 

 

 

 

 

 

「わかった。行ってくる!」

 

 

 

 

 

 

 

俺はただ、見送る事しかできない。

……いつも悪いな、戦兎。

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎!……気をつけてな」

 

 

 

「うん!正義のヒーローがぱぱっと片付けてくるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

正義のヒーローは、笑顔がとても綺麗な女の子だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎、怪我しないで無事に帰ってくるといいな……」

 

 

 

 

美空がそわそわしながら、俺の顔色を伺う。

美空は何だかんだ心配症だ。

 

 

 

まぁそうだよな、心配だよな。

お前の大切な、家族だもんな。

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫。戦兎なら無事に帰ってくるさ」

 

 

 

 

 

 

 

この言葉に安心したのか、いつもの弾けるような笑顔の美空に戻った。

やっぱり俺の娘たちは笑顔が一番だ。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、お父さん電話鳴ってるよ?」

 

 

 

 

 

 

いつもマナーモードにしてある携帯電話。

このタイミング。大方の予想はつく。

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。わかった。今から向かう」

 

 

 

 

 

 

 

それだけ伝え、電話を切る。

やっぱりな。予想的中だ。

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?お父さん?」

 

 

 

「あぁ。いつものバイト先でトラブルが起こっちまったみたいでな。なるべく早く帰るよ。……戦兎にもおかえり、ってちゃんと伝えたいしな」

 

 

 

 

 

 

 

不安がる美空に優しく、心配させないように。

 

美空はあの一件以来、1人になるのが怖いもんな……

大丈夫。なるべくすぐに帰ってくるからな。

 

 

 

 

 

 

 

「うん……」

 

 

 

「ちょっと待ってろな。行ってくる」

 

 

 

「行ってらっしゃい……」

 

 

 

 

 

 

 

悪いな、美空。これも全て――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蒸血」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ここかあ。

スマッシュはどこだろ?見当たらないんだけど……

守衛兵も民間人も見当たらないし……

 

 

 

 

 

 

 

「うおわああああああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

おぉう!?なんだ!?いきなり後ろから声が……

 

 

 

 

 

 

 

「わああああ!!あ!!人!おい!!助けてくれ!!!変なバケモンに追いかけられてんだ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

なんだこの男?

女に助けを求めるとかどんなやつだよ。

 

 

 

 

 

 

 

というか。ん?バケモン??

もしかしてこの男が美空の情報の……

 

 

 

 

 

 

 

「……んー。わかった。したらとりあえずこの場を離れっか」

 

 

 

 

 

 

 

スマッシュ退治も大事だけど、一番は人の命だ。

なんせわたしは正義のヒーローだからねっ!

 

 

 

 

 

 

 

「あ……ありがとう……助かる……」

 

 

 

「止まれええ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

突如大音量の声が、場に震える。

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様。誰だかわからんが、隣にいる人殺しの脱獄犯をこちらに引き渡して貰おうか」

 

 

 

 

 

 

 

……え?今なんて?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「脱獄犯んんん!?人殺しいいい!?」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの大音量は場の空間をねじ曲げる勢いだったに違いない。

 

 

 

 

 

 

 

「あんた脱獄犯で殺人犯なの!?それでなに、わたしは危うくその片棒を担ぎかけたってわけ!?つーかなにわたしも殺そうってか!?」

 

 

 

 

 

 

 

一応女ですから、わたし。

 

 

 

 

 

 

 

「違う!違うんだ!!俺は人なんか殺してない!!!俺が行った時にはもう既に人が死んでて、冤罪なんだよ!!!それに俺はこいつらの仲間に眠らされた後、変な蝙蝠野郎たちにわけわかんねえ実験されて……」

 

 

 

「黙れ!!!貴様、引き渡す気が無いなら公務執行妨害として貴様も無理矢理にでも来て貰うぞ!!」

 

 

 

「え……?」

 

 

 

 

 

 

 

実験……?蝙蝠……?

 

なんだろうこの感じ……

覚えてる。思い出せる……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【やだ!やめて!!離してよ!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【助けて!!誰か!!!ねえ!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【お願い……誰か……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【きゃああああああああ!!!!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

「思い……出した……わたしは……」

 

 

 

「くそっ!!なんなんだよ!!!俺は何もやってねえ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……乗って」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「わたしはあんたのことを信じる。わたしも……多分あんたと同じ事をされた。それに……あんたが人を殺すような人には見えないから」

 

 

 

 

 

 

 

俺を信じてくれんのか……?

誰1人として信じてくれなかった俺を……

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、ありがとよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで来れば大丈夫っしょ」

 

 

 

 

 

 

 

誰ともなしに呟く。さっきの記憶を拭うように。

 

 

 

 

 

 

 

「助かった……俺は……」

 

 

 

 

 

 

 

あー。男の癖にいじいじすんなよもー。

マスターを見習いなさいマスターを。

 

 

 

 

 

 

 

「わたしは桐生 戦兎。まっ、正義のヒーローってとこよ」

 

 

 

 

 

 

 

目の前のいじいじしてた男はぽかーんとしている。忙しいやつだな。

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は《万丈 龍我》だ。助けてもらって本当に助かった」

 

 

 

 

 

 

 

随分と強そうな名前だなあ。兎のわたしとは大違いだ。

 

 

 

 

 

 

 

「まあそれはいいよ……はあでもどうしよ。共犯になっちゃったよわたし……ばっちり顔もみられてるし……マスターと美空になんて説明しよ……」

 

 

 

「なんか……わりぃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如空間に鳴り響く轟音。

その音のした方へと視線を移すと、やつがいた。

 

 

 

人外の、怪物が。

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりスマッシュか。だと思ったよ」

 

 

 

 

 

 

 

さっき美空は軍の守衛兵と民間人以外にスマッシュが目撃されてるって言ってたしね。でもなんで今になって……?

 

 

 

 

 

 

 

「うだうだ考えてる場合じゃないか!……あんた!ええと、万丈?だっけ?下がってて!」

 

 

 

「は?え?いやいや、あぶねえぞお前!!」

 

 

 

 

 

 

 

え?もしかしてわたしのこと心配してくれてるのこいつ?

なんだ。見かけはヤンキーみたいだけど根はいいやつってありきたりな感じか。

 

 

 

 

 

 

 

「あは。わたしなら大丈夫だからあんたは下がってて。闘いの邪魔だからさ♪」

 

 

 

「は?……闘い?」

 

 

 

「まあ見ててよ!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしは相棒《ビルドドライバー》を取り出す。

そう!わたしこそ……

 

 

 

 

 

 

 

「《仮面ライダービルド》だからさ!」

 

 

 

 

 

 

 

赤と青、2つのボトルをシャカシャカとと振る彼女。

それはまるで今から実験でも行うかのようだ。

 

 

 

そして戦兎の背後から様々な白い数式が実体化する。

さあ、ここからは戦兎のオンステージだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ラビット!タンク!】

 

 

 

 

 

 

 

【ベストマッチ!】

 

 

 

 

 

 

 

【Are you Ready?】

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……変身!!」

 

 

 

 

 

 

 

【鋼のムーンサルト!!】

 

 

 

 

 

 

 

【ラビットタンク!!yeah!!!】

 

 

 

 

 

 

 

「おい……なんだこれ……変身ってなんだよ……!?」

 

 

 

「あー……ちなみに【ビルド】って言うのは、【創る】【形成する】って意味の【build】ね。以後、お見知り置きを」

 

 

 

 

 

 

 

「さあ。実験を始めよう」

 

 

 

「グアアァァア!!!」

 

 

 

 

 

 

 

スマッシュがビルドに襲いかかる。見た目の割にはすばしこく、尚且つ攻撃も重い。

 

 

 

 

 

 

 

「んー……見たところ《ライオンスマッシュ》かな?動き早いし面倒だなあ……」

 

 

 

 

 

 

 

……ならこいつを使うかな!

 

 

 

 

 

 

 

「おいで!《ドリルクラッシャー》!!」

 

 

 

 

 

 

 

そう言ったビルドの手にドリル状の刀身を持った剣型の武器が現れた。

剣というには些か疑問が残るが……(戦兎:いいえこれは剣です)

 

 

 

 

 

 

 

「はあっ!はあっ!せえや!!」

 

 

 

「グォォオ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ドリルクラッシャーの刀身が回転し、ライオンスマッシュの硬い装甲を砕く。やはり剣型とはいえない。

 

 

 

先程まではライオンスマッシュが押していたように見えたが、一瞬にして形勢逆転した。

 

科学と類まれなる頭脳を惜しみなく使い、闘う。それこそが仮面ライダービルド、桐生 戦兎の強さである。

 

 

 

 

 

 

 

「ふっふっふ。他愛もないねえ!そろそろ決めるよ!」

 

 

 

 

 

 

 

ビルドがドライバーの片側にのみ着いているハンドルを回すと、装着されている2つのボトルの中に内蔵されている物質が化学反応を起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝利の法則は……決まった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Ready go!】

 

 

 

 

 

 

 

ビルドが地面に潜ると、同時に巨大な物理式状のものが現れ、ライオンスマッシュを捕獲する。

 

そしてせり上がった地面により高く打ち上げられたビルドは、物理式状の頂点に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

【ボルテックフィニッシュ!!yeah!!!】

 

 

 

 

 

 

 

「ガアアアアアアアァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ビルドはそのまま物理式状のようなものに沿いながら拘束されていたライオンスマッシュに飛び蹴りを喰らわし、人外のモノは爆散した。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。終わった終わった。後は新作のこのボトルでガスを吸収……と」

 

 

 

 

 

 

 

慣れた手つきでボトルを開け、たった今爆散したはずのスマッシュに向ける。

 

それによりスマッシュだったはずの異形の怪物は人間の姿となり、発生したガス状のような成分はボトルに封じ込められるように消えて無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

「んー……やっぱり有機物だと思うなあ……あ!それより!!大丈夫!?」

 

 

 

 

 

 

 

うんうん唸っていた戦兎は、何かに気がついたように。

さっきまで異形の怪物だった、人間に近付く――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなんだ一体……」

 

 

 

 

 

 

 

たった今見たもの、あれは間違いなくバケモンだった。

しかもその後に、戦兎?ってやつは変身!とか言ってわけわかんねえ鎧を着込んであのバケモンを倒しちまうし……

 

 

 

しかも変な入れ物をバケモンに向けたら人間に戻っちまうし……

一体なんなんだ。俺はおかしくなっちまったのか!?――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあ……うわあああああ!!!」

 

 

 

「ちょ、ちょっと!あんたには聞きたいことが!!」

 

 

 

 

 

 

 

あのスマッシュだった人もきっとわたしたちと同じように人体実験を行われてたはず。

もし記憶が残ってるなら話を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――先程とは比べ物にならないほどの爆音が鳴り響いた。

それはまるで、破壊の化身が顕現したような音。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、今度はなんだよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

また新しいバケモンか!?

一体どうなってんだ……!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……くっ、新しいスマッシュ!?」

 

 

 

 

 

爆風により辺り一面が砂煙で何も見えなくなっていた視界が、徐々に開けていった中、そこに奴がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるでその身は血を纏うような朱の蛇。

――人型をした、鮮血の蛇が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いやっはっはっはァ。どうも初めまして【憐れな兎】。そしてそちらに居られるのは【愚かな龍】かな?いやいやどうもどうも勢揃いで』

 

 

 

 

 

 

 

耳障りな声と喋り方だな……なにこいつ……?

憐れな兎?愚かな龍?何言ってんのこいつ。

 

 

 

見た感じスマッシュではない。自我もあるみたいだし……

 

どちらかというとビルドに似てるような。

いや違うなんだろう。こいつの姿、どこかで……

 

 

 

 

 

 

 

「いきなり失礼過ぎんじゃないの?なにあんた?なんか用?」

 

 

 

 

 

 

 

なんとなくだけど、弱味を見せちゃいけない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

『ハッハッハ!冷たいねェ!泣きそうだぜ?おい?まァいい。今日は別にお前らに何かしようって訳じゃあない。なぁに。ただの自己紹介しに来ただけだよ。Ms.ビルド』

 

 

 

 

 

 

 

なにこいつ……真意が掴めない。

今日は、何かしようって訳じゃないってことはやっぱり敵対意識があるってこと……?

 

 

 

それにやっぱりこいつどこかで見たことがあるような……

 

 

 

 

 

 

 

『ふっふっふ。まあまあ落ち着けよ。俺はな、《ブラッドスターク》って言うんだ。これから末永くよろしく頼むぜェ?』

 

 

 

 

 

 

 

ブラッドスターク?あのスーツの名称?それとも偽名?

どちらにしろ油断は出来ない。

 

……なんかこいつはやばい気がする。

 

 

 

 

 

 

 

「……目的は何?」

 

 

 

 

 

 

 

やつを真っ直ぐに見つめる。

その目的を見透かそうとするかのように。

 

 

 

 

 

 

 

『そうだなァ……今はお前らにはなーんもする気はねぇよ?今はな。まあ強いて言うならば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前らの、人類全ての敵だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 








遂に戦兎たちの前に現れた鮮血の蛇、ブラッドスターク。
憐れな兎とは?愚かな龍とは?
そして語られた「人類全ての敵」とは?

鮮血の蛇が語った時。戦兎はどうするのか。







「……殺す」




『ヒャハハハ!いいねェ!!怒れ!苦しめ!足掻け!それがお前の力になる!!!』




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