Masked Rider EVOL 黒の宙 作:湧者ぽこヒコ
紗羽「あらあ?どうしたのかしら?」
紗羽「戦兎ちゃんも美空ちゃんも居ないわ」
紗羽「せっかく新しいコスを用意したのに」
紗羽「ざーんねん。また次回かしら」
紗羽「……ちょっと私が着てみようかな」
紗羽「やだー!可愛いんじゃない!?」
紗羽「まだまだ私もいけるわね♡」
紗羽「園児服が似合うなんて……♡」
紗羽「きゃー!ちょっと恥ずかしーかもー♡」
惣一「……何してんの」
紗羽「え"っ……これは、えーと、その」
惣一「……あっ。俺買い出し行ってくるわ」
紗羽「ちょっと待って!?これは違うのよ!?」
惣一「大人も……色々大変だよな」
紗羽「違うんだってば!!ねえ!待ってえええ!」
「――なるほどな。それで北風が北都に戻る事になったと」
事の経緯を泰山首相にやっと話終えたわたし。
泰山首相も北風が北都へと一度戻ると聞いて、かなり安心しているようにも見える。
わたしも少し安心したよ、本当に――
――激しいお節介男がしていたわけのわからない話を聞き流した後、わたしと黄羽ちゃんはすぐにあの可哀想な兵士が待っているはずの車へと向かった。
もしかしたらもう帰ってしまってるんじゃないかと懸念していたけど、やっぱりあの兵士は心が広かった。
若干頭を揺らしながらうとうととしていたけど、ちゃんと待ってくれていました。
本当に助かります。ありがとうございます。
ちょっと罪悪感に苛まれながらも、そのお疲れ様な兵士さんをたたき起こし。
目覚めたばかりの運転手さんは迷うこと無く首相官邸へと辿り着き、経緯を泰山首相に話したいと首相の側近に伝えると、すぐに面会出来る事になった。
話が早くて助かる。
というかもしかしたらわたしも結構偉い感じなのかな。
ちなみに黄羽ちゃんは車の中で眠ってしまった。
元気になったとはいえ色々と怖い思いもしただろうし、身体も悲鳴をあげているはず。
無理をして元気に振舞っていたんだと思う。
出発してすぐにわたしの肩にもたれて寝てしまった。
さすがに車に残しておくわけにはいかないから、一応おんぶして連れてきたのだが。
相当疲れてたのだろう。
ずっと起きないで、可愛い寝息をたてながら寝ている。
今現在もこの部屋のソファで横たわりながら爆睡中だ。
まあそんなこんなでわたしは今、泰山首相の前に居る。
「北風の兵士たちにも動揺が広がっているみたいですしね……それに向こうの団長とある程度の信頼を築けたと思いますし、事態はだいぶ好転したかと」
わたしの言葉で更に泰山首相は、見てわかる程の安堵が感じられた。
そりゃそうだ。ついさっきまで国が滅ぶか滅ばないかの一大事だったんだし。
……そしてわたしが泰山首相に告げた事は。
姿形を変えるスマッシュが、やはりほぼ間違いなく北都が有しているという事。
黄羽ちゃんを……北都の女性兵士を襲ったのは、間違い無くそのスマッシュがやったという事。
北風を率いる者に、東都は戦争なんて起こすつもりなど本当に無いという事と、ミサイルなど撃っていない事を理解してもらった事。
そしてこの一件は北都が……
多治見首相がある目的のためにやった可能性が非常に高いという事。
あの箱……パンドラボックスを奪うために。
「しかし、パンドラボックスを欲しいがために自国にミサイルを撃つなどと……あのミサイルは間違いなく東都から放たれたモノだとわかっているんだぞ」
……その通りなんです。そこが引っかかる所。
そもそもパンドラボックスが欲しいのであれば、わざわざ自国にミサイルを撃つ必要なんて無いはず。
そんな事をしなくてもただ東都を襲えばよかったはずだし。
いくら大義名分が欲しかったとしてもそこまでやる必要性なんて考えられないし、もし仮にそうだったとしても、ミサイルを撃たれた後の北都の動きが後手に回っていたような。
自作自演でやったのであれば、もっと迅速に攻めてきていたはず。
それに……ミサイルが東都から放たれている、というのが余計にこの一件を狂わせる。
「そうなんですよねー……でも北都が有するスマッシュが自国の兵を襲ったのは間違いありません」
「つまり……多治見首相は戦争の激化を望んでいる、という事が考えられます」
北都側が全て仕組んだわけではないにしろ……
多治見首相は恐らく戦争を更に激しいモノとしたいはず。
魂胆は……パンドラボックスか、領土か。
それとも、その両方か。
「うむ……それは充分に考えられる。しかし、北風の兵は……その軍を率いる者の戦う気はもう無かったのだろう?」
泰山首相の表情は、どこか懇願のようなモノを感じた。
当然だろう。これ以上東都が、罪無き人が傷付く事など断じてあってはならないし。
でも……それは……
「正直、このまま和解してほしいです、けど……」
いくら一海が北風のトップとはいえ……
相手は一国の首相だ。
もし多治見首相が侵攻を続けろ、と言った場合。
また北風が襲いかかってくるのは有り得る。
むしろ有り得るどころかその可能性の方が遥かに高い。
もしかしたら一海たちがボイコットみたいな……戦う事を拒否する事も考えられるけど。
北風は北都最強にして最大の戦士たちだし。
もし全員でクーデターを起こしてくれたら、多治見首相といえども失墜するのは目に見えてる。
……そんなに上手くいくといいんだけどさ。
「まあさすがの多治見首相も、今まで通りに戦争を始める事は出来ないと思います……不信感も高まってると思いますし」
ここに賭けるしかない。
もし万が一多治見首相が戦争を望んでいたとしても、戦いを行う者たちが不信感を露にしたら、さすがにそんなに早く戦争を引き起こす事なんて出来ないと思う。
いくら首相といえど、動く者たちが拒否したら何も出来ないし。
自分の地位が揺らいでしまうような事はさすがにしないでしょ……
「うむ、確かにな……民がいてこその長だ。間違いない……ならばその間にこの戦争を引き起こした者を探す、という事だね」
その通り。それしかわたしたちに出来る事は無い。
いくら多治見首相がすぐに戦争を始める事が出来なかったとしても、次の手を打ってくるのは時間の問題だろう。
その前に……この戦争を仕組んだ連中を。
北都にミサイルを放った真の黒幕を探し出さなくては。
さすがに東都政府がミサイルを撃って無かったとわかったら多治見首相も変な事は出来ないだろうし。
もしそれでもごねたら最悪、西都に助力を申し出れば北都は何も出来ないはず。
そうなった場合、大義名分は東都にあるからね。
「その通りです泰山首相……とりあえずは北風襲撃の心配は今の所無いですし。全力で真犯人を晒してやりましょー!」
こういう時こそ明るくいかなければ。
暗くなったら全部上手くいかない!!
……わたしの勝手な持論だけども。
「わかった。頼んだよ、我が国のジャンヌ・ダルク……私たちも全力で当たる」
真っ直ぐな目でジャンヌ・ダルクなどと呼ばれるとこそばゆいというか、照れちゃうというか。
わたしはそんな大それたモノじゃないけど。
力を持つ者としての責任がある。
この国を救えるのは今、わたしたちしか居ない。
大切なモノを護れるのは、わたしたちしか居ない。
ならば全力で……護ってみせる。
「あ……それと。そこに寝てる女の子、黄羽ちゃんっていうんですけどね?彼女は例の襲われた北風の兵士ですが……仲良くなっちゃって」
「北風を率いる一海ってやつから頼まれまして。命狙われてっかもだから保護しといてみたいな。だから預かってんで。そんな感じです」
一応伝えとかなきゃまずいかもだし。
もし万が一北風の兵士がー!とか、なぜ野兎の総隊長が北風の兵士とー!!とかなったらもうややこい。嫌だ。
ただでさえ色々と疲れたし……今日……
「えーと……うむ、何となくだがわかった。君の言いたい事は何となくわかった気がしたぞ。了解した」
おいおい大丈夫かよ泰山首相。
まだボケてもらっちゃ困るんですよ?
まだまだ頑張ってもらわねば。ね?
……本当は色々とこの人もあるけども。
それはこれが解決してから、だね。
「そんじゃあとりあえずわたしは帰りますわ……なんかあったら連絡くださいな。わたしの方でもなんかあったら連絡しますし」
主に紗羽嬢からの情報待ち、なんだけどね。
何か掴んでてくれないかなあ……
「う、うむ……わかった。その時はすぐに連絡をしよう。こちらも、連絡を待っている」
とりあえずこれで泰山首相に報告は終わった。
多治見首相との駆け引きも……ちょっと心配だけど、泰山首相も長い事首相やってんだし大丈夫っしょ。
わたしたちは早く、真犯人を探さないとな。
そんな風に考えながら窓に視線を向けると、雨はまだ降り止んでいなかった。
むしろその勢いを強くしている。
暗く、冷たく、痛みを伴うような雨。
なぜだかその雨が。
わたしには、とても嫌なモノと思えた――
『――よォ。元気そうじゃねェか?ん?』
いつ来ても気持ちの悪いこの部屋。
趣味が悪いというか、その椅子に座る人間の穢れたモノが漂ってるというか。
どこの権力者も変わりはないものだ。
気持ち悪くて、死臭の漂う腐った場所。
本当に。人間ってモンはどうしようもない生き物だよ……
「……な、何のごようかしら?」
やたらと驚いた顔を見せつけてくるこの婆……
多治見は相当焦っているようだ。
まぁ無理もない。
先程忠実なワンちゃんから超怖い脅迫のお電話があっただろうし。
そんな事を言われビビってた中で、ドアを開けたら自分の小汚い椅子にその恐怖の相手が居るんだもんな。
俺だったら怖くて泣いちゃうって。
『おいおい、わかってんだろ?それとも……
俺の事を舐め腐ってんのかてめェ』
ちょっと殺気を飛ばしただけで多治見のオバハンはかなりビビっちゃったようだ。
もしかして怖がらせちゃったか?ん?
なんでこうなったかわかってないのかな?
……本当に殺すぞこいつ。
「ひっ……あれは、その、何というか……」
一国の長ともあろう者が情けない。
たかがこんなモンで震えちゃうなんてよ。
……やっぱりこいつはダメだなぁ。
『……御託はいい。お前、やり過ぎだろうが』
可哀想な程震えている多治見を見ると、本当に人間というモノは愚かだな、と再認識してしまう。
そんなに怯えるくらいなら初めからやらなきゃいいのにねえ。
なぜそんな事もわからないのだろうか。
……俺にはこんな連中の事が全く理解出来ない。
理解しようとも全く思わないが。
「そ、それは……は、はは早く終わらせなければと思いまして……ミサイルをう、ううう撃ってきたのも東都ですし……」
……やっぱり葛城のおっさんの読み通りか。
俺はもしかしたらミサイルすらも自作自演なんじゃないかと思ってたけども……
ミサイルに関しては本当に北都は関わってないみたいだな。
とすると……あの爺が勝手にやったか。
あの爺も好き放題にやりやがるからな……
だったらもうあの爺殺っちゃうか。
勝手にやられたら面倒だし……
……いや、ダメだ。うん、ダメ。
まだ利用価値はあるし。
『まず1つ……本当に東都政府はミサイルなど撃っていない。こいつァどこぞの馬鹿が仕組んだ事だ』
信じるか信じないかはどうでもいいけど、とりあえず勝手に動かれたら本当に困っちゃうんだって。
わかれよ。本当に殺すぞ。
「え……でも、東都から放たれたと――」
『だーかーらァ!!それも全てこの戦争を引き起こすためにどこぞの阿呆がやりやがった事だっつってんだよ』
少し声を荒らげると、多治見は恐怖で顔が大変な事になってしまった。
引きつってるなんてモノじゃない。
怯え過ぎてて笑ってしまいそうだ。
まぁでも……良い薬か。
改めて自覚しておいてもらわないと困るしな。
「し、しかし……一体誰が……そんな事を……」
……多分。信じてくれたようだ。
簡単だったな、おい。
最初から俺が出向けばよかったか。
……まぁ、誰だかは教えてやらないけど。
このまま真実が明かされて泥沼化されても今は困る。
このままやってもらわないと、な。
まだまだあいつらには成長してもらわなくちゃならないし。
面白い連中も増えたしな。
『その正体はわかったら教えてやる。まだ見つかってなくてな……で、どうする気だ』
この後この婆がどうするのか。
それが問題だ。
変に荒らされても困るし。
かといって平穏に、も違うんだよなぁ。
さぁ……お前は何を選択する?
「もしあなたが辞めろというなら……北都は東都に一切の攻撃をしないと……お、お約束します」
かなり怯えさせてしまったようだ。
どっかの忠実なる手下みたいになっちゃったよ。
でもそうじゃないんだよなぁ。
勝手に好き放題されても困るけども。
何もしないのも困っちゃうんだよ、おじさんは。
『……お前の欲しいモノはなんだ?ん?』
『パンドラボックス……だよなァ?』
東都……は例外として。
北都、西都はあの箱が欲しいはず。
それは欲しいなんてモンじゃない、喉から手が出る程にだ。
もちろん……あの爺もそうだろう。
……本当に醜い。滑稽過ぎる。
「それは……も、もちろんです。あの箱さえあれば――」
『ならば奪えばいいだろう。それこそ人間の本質じゃねェか。そうだろ?』
欲しいモノは何がなんでも手に入れる。
これは権力や欲望に取り憑かれた人間の性。
……こんな連中を何度見てきた事か。
……さぁどうするのかな?
この欲望に憑かれた憐れな女は。
「……しかし、良いのですか?あ、あなたは先程……」
本心では醜く笑を零しているだろうに。
本当に気持ちの悪い。反吐が出る。
だが、それでいい。
そうじゃなきゃ困るからな。
『パンドラボックスを奪う事だけに専念すればいい話じゃねェか』
『ただ関係の無い者を巻き込む事は許さん。そうなれば始末がつけられなくなるのでな』
最初からパンドラボックスだけを奪えばいいものを。
あんな舐めた戦争なんぞ引き起こしやがって。
……滅ぼされたら適わねえってーの。
まだまだこれからやる事がたくさんあんのに。
俺とおっさんが頑張ってるのをぶち壊すんじゃないよ全く。
「という事は……いいのですか」
多治見の瞳が気持ち悪い輝きを放ったような気がした。
きっとそれは、碌でもない感情だ。
そんな多治見に、俺は心の底から嫌悪感に溢れる。
……俺の方が碌でもないし、穢れているがな。
穢れているというよりも、穢れそのモノかもしれない。
全ての黒幕、そのモノなのだから。
いつかどっかで聞いた気がする言葉。
確か同族嫌悪ってやつかな。きっと。
『あァ……パンドラボックスを奪うというなら好きにやるがいい……だがな、覚えておけよ』
愛用ともいえる俺の十八番。
腕から伸びる猛毒の蛇、スティングヴァイパーが多治見の身体を締め上げ、その鋭く毒々しい先端を彼女の目に近付ける。
「ひっ、ひぃっ!?ど、どどどうか、い、命だけは!!!」
北都の連中が聞いたら残念がるような声を出す多治見は、本当に滑稽だ。
あれだけの戦争を起こし、人の命を軽々しく扱ったモノが。
自分の命が脅かされるとまるで小動物のように許しを乞う。
これのなんと滑稽で、憐れな事か。
『次は無い。お前の犬っころにも言ったがな。次に舐めた事をしてみろ……その時は、お前の目玉をこれで串刺しにしてやる』
『そしてその可哀想な脳みそを猛毒でグチャグチャに溶かし、地獄を堪能させてやろう……決して、忘れるなよ』
いくら口では忠誠を誓うような事を宣っていても、所詮は醜い欲望の塊だ。
いつまた勝手な事をやり始めてもおかしくはない。
こいつらはそういう連中だからな。
だから改めて恐怖を植え付けておかないと。
背後に迫る、抗う事の出来ない絶望を。
「はっ、はいぃ!!間違いなく、もう勝手な事は絶対に!!絶対に致しません!!!」
その事を心から願うよ。
俺のシナリオ通りに動いてくれる事を。
……次は本当に殺す。忘れんなよ?
『おいおい?漏らしたのかァ?そんな怯えんなって……泣いちゃうぜ?』
猛毒の蛇から解き放たれ、その場から動けずに座り込む多治見の姿を誰が一国の主だと思うのだろうか。
俺には、自分可愛さのためにしか行動出来ない憐れな肉塊にしか見えない。
……それも全て俺のせいなんだけど、な。
本当にどうしようもないくらい。
俺は極悪の化身だな。
そんな事を思うと、笑いが零れてしまう。
それはきっと碌でもなくて。
この世に仇なす最悪のモノで。
どうしようもなく、切ない気がした――
『――そしたら1つ、良いモノをやろう。きっと喜ぶモンだぞ?おい?』
「……いいモノ……?」
この戦いを更に絶望へと叩き落とすモノ。
更に足掻く事になる、あるモノ。
……さぁ、足掻いてみせろ。
戦兎、万丈、猿渡。
お前らはこの絶望に、どう足掻く……?
自らの力で、進んでみせろ。
……あと、お前もな。
『こいつだ……さぁ、Guardi?』
「これ、ですか――」
「――こ、これは……」
あまりのモノで、なのかどうかは知らないが。
ある事が書かれている書類を見た多治見はかなり驚いたようだ。
良い意味か悪い意味でかはわからない。
それにわかろうとも思わない。
『どうだ?中々良いモノだろう……?知らなかっただろうしなァ?ん?』
知ってたら逆に俺が驚くがな。
まさかあのおっさん並のやつがいんのかよ、みたいな。
あの人類の敵の白衣のおっさんは1人居りゃ充分だから。
2人も3人も居たらおじさん困っちゃうって。
「し、しかしこれは……」
なんだ。珍しく詰まってんな。
もしかしてあの事で渋ってんのか?
『全ては代価を伴う……何かを得ようとするのに、何も払わないなんて有り得ない事だぜェ?……さぁ、決断しろ』
前も後ろも修羅の道。
360度全て、悪の道だ。
さぁ、選べよ多治見。
「……わ、わかりましたわ……有難く、頂戴致します」
物分りのいいやつは嫌いじゃない。
やっとこいつが少し好きになれそうだ。
……もうすぐ始まる。
足掻いても足掻いても。
抗っても抗っても。
どうしようもなく黒い宙のような、絶望が。
『……そうしたら後は頑張れや。応援してるぜ?泣いちゃうくらいによ』
……もう一度、あいつらに会いたいな。
今ならもう。大丈夫な気がする。
もうどう足掻いても、止まれないしな。
もしかしたらまだまだ感情が溢れるかもしれない。
逃げ出したく……なるかもしれない。
でも、もう無理だから。
どこにも逃げる場所なんてないから。
……せめて少しくらい、いいよな。おっさん。
俺、頑張ってるもんな。
そのぐらいのご褒美……許してくれるよな。
『そんじゃあ俺はこの辺で……Ciao♪』
……To be continued
香澄『あらあらまあまあ』
香澄『大変な事になってるわねー』
香澄『あの蛇さんって、確か……』
香澄『うーん。誰だったかしら』
香澄『この前ちょこっと見たはずなんだけど……』
香澄『うむむむ……あっ!!』
香澄『贔屓にしてた八百屋の辰さん!』
香澄『……違う気がする』
香澄『うーん……誰だったっけ……』