Masked Rider EVOL 黒の宙 作:湧者ぽこヒコ
万丈「りんご」
戦兎「ごま」
美空「丸太」
万丈「束」
戦兎「バカ」
万丈「……」
美空「カバ」
万丈「……番号」
戦兎「乳母」
美空「万丈はバカ」
万丈「しりとりやるとすぐこれだよ……」
戦兎「かなりバカな万丈」
美空「うるさくてバカな万丈」
万丈「……せめて脳筋をつけよう」
雨が降り止まない。
俺らが襲ったあの地も雨が降っていた。
身体を突き刺すような、痛い雨。
冬の寒さも相まって、直に雫を浴びた身体は悲鳴をあげているかのような錯覚に陥る。
……この薄気味悪い部屋の暖かさは、俺を暖める事は無いようだ。
「……どういう事かもう一度しっかりと説明してもらおうじゃねえか」
相対するは、腹の底が煮えたぎる程傲慢な雰囲気で権力の椅子に座る女、多治見。
北の国の首相にして、俺を飼い慣らす女。
そして……俺の家族を苦しめる女。
「前に話した通りよ?……貴方たちが遅いから早く戦争を終わらせるため。そのために兵の士気を上げる目的でやったの」
平然とふざけた事を宣うこの婆に、心の底から憎悪の火が点る。
今すぐこの女を殺して、全てを無かった事にしたいと考えてしまう。
……でも、逆らう事は出来ない。
「怖いわよ、猿渡団長?」
「……私を殺しても、構わないのよ」
全てお見通しのようだ。
その通り、俺はお前を今すぐにでも殺したい。
そして全部にカタをつけたい。
……汚れるのには慣れてるしな。
でも……俺は無力だ。
「……それが出来ねえ事を知っててよく言ってくれんじゃねえか」
俺は、こいつを殺す事が出来ない。
むしろ守らなければならない。
……大切なモノを護り抜くために。
「ふふふ……よくわかってるじゃない。利口な下僕は嫌いじゃないわ」
「……で。何の用で来たんでしたっけ?」
こんな腐った肉の塊の番犬と思うと反吐が出る。
そんな自分が本当に大嫌いだ。
何も出来ない、言いなりの自分が。
「……頼むから、俺の大切な存在を傷付けないでくれ……この通りだ、本当に……お願いします」
きっとこれは最も惨めな行為なのだろう。
あいつらが見たら情けなくて泣いちまうかもしれない。
でも、みんなを護るため。
大切なモノを侵されないため。
そのためなら自分の安っぽい誇りなど、焼き尽くして捨ててやる。
俺の軽い頭なんて、いくらでも地に擦りつけてやる。
「あらあら……また貴方の土下座が見れるとはねぇ?北都最強の軍を率いる、北都最強の男が……素晴らしい景観だわ」
「確か以前拝ませてもらったのは……そう!私の可愛いペットの時だったかしら」
怒りと憎しみで身体が震える。
俺の心がどす黒く染まっていく。
……目の前が、暗くなっていく気がする。
こんなにも道化にされ、更に貶められても尚、俺はこの穢れた婆に何もする事は出来ない。
……ただ、頭を垂れる事しか出来ない。
ひたすら耐え忍べ。
ただただ我慢し続けろ。
全てはあいつらと……愛する弟のために。
「俺に出来る事なら、やる。あんたに……多治見首相に改めて忠誠を誓う。だから、あいつらだけは……」
「俺の家族たちには何もしないで下さい。お願いします」
口の中が、鉄の味がする。
きっとこの味は忘れられないモノ。
俺の……穢れている証。
もうこの身はどうしようもないくらいに穢れ、汚れている。
あいつらのような純粋で。
美しいモノに近付いちゃならないんだ、俺は。
……せめて、俺が護るから。
「……ならば私の命令に従う事。忠実に従いなさい」
その言葉が重くのしかかってくる。
この婆に……俺の主に会うまでは、あれ程までに燃えていたのに。
もしかしたら戦兎のような、正義の炎が点っていた気がしたんだけどな。
今の俺の心に点る火は。
禍々しい、黒い業火だ。
「はい。もちろんです、首相――」
「――以上が今後の作戦よ。わかったかしら、猿渡団長?」
どんよりと落ちていく。
あの時戦兎と約束した事。
あいつと交わした想い。
もしかしたら共に進めるのではないかと思った事。
でもどこかで、こうなる事をわかっていたのかもしれない。
きっとまた、あの凛とした女と違えるのかもしれないと。
「……はい。命令通りに」
本当に申し訳ない、戦兎。
お前の望む形にはならなかったけど。
お前と約束した本来の姿にはならなかったけど。
……俺にも護らなきゃいけねえモノがあるんだ。
きっとお前は俺に失望するだろう。
きっとお前は俺を憎むだろう。
きっとお前は、俺に絶望するだろう。
でも安心してくれ。
俺はお前の……やっぱり敵だけど。
お前の命を奪う事などしないから。
お前の家族を奪ったりしないから。
だから……許してくれ、戦兎。
あいつを……聖を頼んだぞ。
「話は以上よ……そうしたら万丈団長を呼んできなさい。呼んできたら貴方はそのまま下がっていいわ」
万丈……お前は……
お前はどうするんだ……?
なぜ北都に忠誠を誓っているのかわからないけど……
お前にもきっと何かがあるんだろ?
多分俺と同じように、何か大切なモノを護るために。
大切なモノ……戦兎、か。
お前は……俺と違う道を行ってほしい、万丈――
「――やっと俺の番かよ、くそ婆」
何度来ても、何度見ても気持ちが悪くなるこの部屋。
そして、多治見のくそ婆。
本当に虫酸が走りやがる。
「あら早い事?すぐに言ってくれたのね、彼は」
彼?……もしかして猿渡の事か?
あー。先に猿渡が話してたんだっけか。
確かこの騒動の事を聞く……とかなんだか言ってたっけな。
そういやあいつ暗い顔してたけど、何かあったのか?
……まぁあいつも色々あんだろーしな。
「んな事はどーでもいい……どういう事だよ、これ」
この腐った婆には聞きたい事が山のようにある。
ふざけた事をしやがって……
関係無い人まで思いっきり巻き込んでんじゃねーか。
こいつの操り人形でも、さすがにこんな事は……
「はぁ……貴方もそれなのね……全ては早く戦争を終わらせるため。そして貴方たちの行動が遅いから。以上よ」
……猿渡も同じ事言われてたみてーだな。
あいつそれで……もしかしてあいつも何かあんのか。
……どちらにしろ、こんなのは絶対にダメだ。
「俺と約束したの忘れたのかよ。関係無いやつは巻き込まない、戦兎たちには……危害を加えない、って」
全部破ってんじゃねーかこの婆。
ふざけた笑いばっか浮かべやがって。
……何となくこうなるかもしれない、って想像してた自分が居たのも、間違いねーけどさ。
それをどこかでわかっておきながら、俺は歩を進めた。
……本当に腐ってんのは、俺かもな。
「あれはまぁ、不可抗力ね……安心なさい。次の計画では間違い無く、関係の無い人を巻き込む事はないわ。お約束してあげる」
そもそもそんな言葉ももう信じられねーけど。
やっぱり戦兎に事情を話して何とかする方がいいかもな……
戦兎もなんだかんだ強いし、それに……
俺らは家族だし、よ。
やっぱり家族は力を合わせねーと!
あいつらとなら……何とか出来る気もするし。
「計画って……そもそも東都は何もやってねーんだろ?だったら別にいーじゃねーかよ」
なんかまだ企んでんのかもしれねーけど。
俺はお断りだ。もう懲り懲りだっつーの。
東都に……帰らせてもらう。
「まだ言ってるのね。もういいわ……東都が独占しているパンドラボックス。それを奪う事のみが命令よ。北風全軍で使命を果たしなさい」
「もちろん民間人に一切の危害を加えてはならない事を通達するわ……もし破る者がいたならばその場で極刑とします」
……パンドラボックス?
なんだっけ。どっかで聞いた事あんな。
えーっと確か……
火星から持ってきたすんげー箱、だったか?
その箱を北都も西都も欲しがってる、みたいな。
確かそんな感じだった気がする。
それを欲しがってたのか、こいつは。
それにしても今回は随分と平和的に、だな。
まぁそもそも奪いに行くんだから平和でもねーけど。
……今更俺には関係無いけどな。
そんな事企んでんなら、俺と戦兎がぶっ潰してやる。
俺はもう……言いなりにはならねえ。
「悪ぃが……俺は抜けさせてもらうぞ。東都に帰らせてもらう」
ずっと気持ち悪ぃ笑を浮かべていた多治見の顔が少し歪んだ気がした。ざまぁみやがれくそ婆。
なんでもかんでもお前の思い通りにいくと思ったら大間違いだっつーの!
「……いいのかしら?本当にそんな事を、しても?」
はっ!脅しのつもりか?
俺はな、もう――
「――ほら、見なさい」
俺を飼い殺していたあの婆が見せつけてきたタブレット型に映る映像は。
俺の、唯一の最愛の人の。
俺の大切な、家族の人たちが捕らわれている事を現すモノだった。
「……てめえ、何してんだコラ……!!!」
気付いた時には多治見の胸ぐらを掴んでいた。
目の前が真っ暗になって、怒りを抑えられない。
たまにある、この感じ。
俺の憎悪に満ちた憤怒が、迸る。
まるでぐつぐつと煮え滾る、熔岩のように。
「痛いわねっ……!!いいのかしら、私に手荒な事をして?」
その言葉で我に返る。
意識が戻ると状況がわからなくなって、混乱してしまう。
なんで……オヤジさんたちが……
「ふふふ……万丈くんの無罪が証明されて、今は北都に居ますよ?って言ったら簡単に着いてきてくれてね……相当心配していたみたいよ?」
「あの子は……龍我は人を殺すような子じゃない、って。信じていた、って。早く会いたい、って。ずっと言っていたみたい」
オヤジさん……オフクロさん……
じいちゃん……ばあちゃん……
ずっと……俺の事を信じてくれて……
「安心しなさい。確かに監禁しているけど、生活も外出が出来ないだけよ?変な事はしていないわ」
「……今の所は、ね」
脳裏にあの日の出来事が甦る。
大切な存在を護れなかった、あの日。
最愛の、最も大切な……
愛する香澄を護れなかった、あの日。
「……やめろ、やめてくれ……この人たちには……手を出さないでくれ」
俺の腕の中で、光となって空に消えてった香澄。
目の前で死なせてしまった、大切な人。
もうこれ以上、大切な家族を失うなんて……
戦兎や美空、マスターももちろん俺の家族。
でも……オヤジさんたちも。
もちろん俺の、大切な愛する家族なんだよ……
「……それは貴方次第よ。貴方の働きによって、ね」
「そういえばさっき、何か言ってなかったかしら?……よく聞こえなかったのだけれど」
……ごめんな、戦兎。美空。マスター。
本当はお前らの傍に帰りたい。
ずっと隣で笑って、護っていたい。
でも……やっぱり無理だった。
俺にはもう、どうする事も出来ねーよ。
抗う事が……出来ないよ。
本当にごめんな、姉貴。
どうして俺は……
なんでこんなにも、無力なんだろうな。
「……あんたに、改めてこの身を捧げる。裏切らねー事を誓う」
「……北風 第3師団団長、万丈 龍我。その命令を、絶対に遂行する事を誓う」
俺の帰る場所は……
居場所は、どこにもない……
「良い判断ね。嫌いじゃないわ。実行の刻を待ちなさい」
「最後に、あの2人を呼んできてもらえる?第1師団の――」
「――んんん!めっちゃおいしー♡」
「良かったし♪いっぱい食べて!黄羽っち!」
黄羽ちゃんと美空、仲良さそうでよかったな。
最初はなんだか変な感じだったけど……
首相と話した後、談話室のような所で黄羽ちゃんと2人、めちゃ痛い身体を少し休ませていると。
例の運転手さんが我が家まで送ってくれる事になったので、爆睡する黄羽ちゃんを頑張って介護しながらなんとか無事に帰宅する事が出来た。
まだ家に居た美空に事情を話すと、さすがわたしの妹ちゃん。
黄羽ちゃんがここで暮らす事をとびきりの笑顔で喜んでいた。
まぁ年の近い友達というか……
美空からしたらお姉ちゃん気分なのかな?
延々と眠っていた黄羽ちゃんが少し心配だったけど、それは心配し過ぎていたみたいで。
「カシラぁ!!!」とか言いながら凄い速さで飛び上がって起きたのをわたしはちょっとおかしく思いながらも、安心した。
なんだか最初は美空と気まずそうな黄羽ちゃんだったけど……
今はだいぶ打ち解けたのかな?
黄羽ちゃんは美空の事をみーちゃんと呼んで。
美空は黄羽ちゃんの事を黄羽っちと呼んでいる。
……わたしだけなんか仲間外れみたいなんですけど。
これが20代と10代の差なのか。
「みーちゃんのグラタンほんとにおいしーよ!凄いね、カシラと同じくらい凄い!」
「ふふふ♪そんなに褒めてもらえるならもっと頑張っちゃうよ!」
こうして2人を見てると本当に微笑ましい限り。
戦争なんて最初から無かったかのような、そんな気持ちになってしまう。
それにしても本当に黄羽ちゃんと美空が仲良くなってくれてよかった。
まるで親友のようにも見えるくらいだし。
2人のお姉ちゃんは嬉しいですよ全く。うんうん。
……黄羽ちゃんに色々聞きたい事もあるけど。
それはひと段落してからでいいでしょ。
まずはゆっくりと落ち着いてから、ね。
「もぐもぐ……そーいやさ!みーちゃんてみーたんだよね?」
……あれ。もしかして知ってる感じなのかこれ。
そういやみーたんネットって凄まじいもんな。
北都でも人気だったりすんのか……?
まさか黄羽ちゃんまでも知ってるとは……
恐るべし美空。いやみーたん。
「えーと……うん。隠してもしょうがないし……」
「そだよ!私がみーたん!……の中の人」
美空の表情はどことなく微妙な感じがしている気がする。
なんか……気まずそうな。
そりゃそうだ。うん。
普段の美空の感じからしたらあんな、ねえ?
普段ぐーたらしてるし、口は悪いし、アイドルなんて微塵も感じさせないような生活してんのに!
やべっ、笑っちゃいそ――
「……おい。今私の事を変に考えたろ」
凄まじい勢いでわたしの頬スレスレに飛んでいき、物凄い衝撃音と共に柱に突き刺さっていったフォーク。
当然わたしは恐怖で慄いています。
黄羽ちゃんもちょっと怯えているようにも見えます。
もしかしたらスタークよりも一海よりも美空の方が強いんじゃないかな。
わたし今完璧に反応出来なかったもの。怖いよ。
「み、みーちゃんってす、凄いねー……あははは……」
黄羽ちゃんは完全に大魔王美空を理解したみたい。
気をつけて。この家の主はその乙女の皮を被った魔王だから。
「ふふふ。ただの冗談だから気にしないで、黄羽っち♪……本当に軽い冗談だから」
ただの冗談でやる事じゃないよね。
完っ全に何か邪悪なモノを纏ってたよね。
戦兎さんガクブルなんですけど。
「あはは……ん!そーだ、みーちゃんアレやってよアレ!みーたんのいつもの!」
おっと黄羽パイセンまじか。ここでか。
よくあの状況でその発言が出来るな。
てゆーかそんなに見たいのか、アレ。
「えぇ……うん、まあいいけど……う"ぅんっ」
『みーんなのアイドルぅ!みーたんだよっ♡』
……ダメだ。この流れのそれはダメだ。
ダメだ……笑ってしまう……!
「ほわあああ!!本物だあ!!!もっかい!もっかいやってー!!」
ちょ、やめっ。
わたしもうこれ以上無理っ……無理だからっ。
『みーたんだよっ♡ぷんぷんっ♡』
「ぶふっ……あははは!!だめっ、無理っ!!」
無理だった。我慢出来なかった。
笑い過ぎて涙が溢れるわたしの目に映ったのは。
今まで見た事が無い程のどす黒い何かを漂わせた、我が家の邪神だった――
「――いやホントに。本当にごめんなさい。許して下さい」
美空のありがたーいお説教が身に染みました。
これからは大人としてもっと頑張ります。
「戦兎ねえなんで笑ってたの?もしかしてカシラにやられたの?頭?」
サラッとこの子も毒を吐くね。
頭やられたのって。どういう意味だおい。
……まあわたしがなぜ笑ったのかはね、黄羽ちゃん。
そのうちすぐにでもわかるから。気をつけて。
「……今日はこのぐらいで許してやろう。次は無いぞ、小娘」
本当にありがとうございます魔王様。
もう二度と致しません。気をつけます。
……頑張ります。はい。
「……さて黄羽っち!こんなしょーもないお姉ちゃんはほっといて、スイーツタイムにしちゃう!?」
あっ、本当にごめんなさい美空様。
もうしないからしょーもない姉にもスイーツタイムを!!
「んんん!甘いの大好き!食べる食べるー!!」
黄羽ちゃんっ!お願い!あなたからも!!
わたしも混ぜてえええっ!!!
「わたしにもどうかああ!!施しをぉぉぉ!!!」
わたしが2人に土下座する勢いで甘い物を懇願している中、あの愛用の、でもちょっとうるさめの携帯電話が震え出した。
いつもマナーモードにしてる、わたしの可愛い発明品から。
「何だこの忙しい時に……ん」
画面を見ると、そこにはあの文字が表示されていた。
嫌な感じしかしない、あの表記。
録でもないやつからの着信の証。
非通知からの、着信。
「どしたの戦兎……出ないの?」
先程までわたしにブチ切れていた美空が心配してくれる程、顔に感情が出てしまっていたのかもしれない。
それぐらい嫌なやつからの電話だと思うから。
出るべきか、出ないべきか。
……しかしあいつからの電話でこちらが不利益になった事が無いのも確かだ。
今まであいつからの電話はむしろ、わたしにとってプラスとなれど、マイナスになるようなモノではなかった。
「戦兎ねえ、どしたの?怖いよ?」
……このままだと2人にも変な心配かけちゃうか。
それにまだあのピエロ野郎と決まったわけではないし……
どちらにしろ、出て損は無い。
「もっしー……天才が出てやりましたが」
さあ誰だ。どこの誰だ。
非通知なんてわたしが一番腹立つモンでかけてきやがったバカは、どこのどいつだ。
『相変わらずだなァ、戦兎?』
この声、この喋り方。
間違えるわけが無い。
『お喋りしたいのと……ちょっとプレゼントを渡そうと思ってな』
わたしの心を漆黒に染め上げる狂気の塊。
ゲームと称し、人の命を弄ぶ外道。
『ちょっと出てこいよ……場所はあの、廃工場でな。Ciao♪』
相変わらずわたしの意見を全く聞かずに会話を断つこの腐ったやつは、いつも通りの腐ったやつ。
やっぱり……お前か……
「どうしたの、戦兎ねえ?誰から――」
「ちょっと、行ってくるね」
「ちょ、ちょっと戦兎!?ケーキは――」
雨が降りしきる外に勢いよく駆け出したわたしを。
2人が呼び止める声に振り向く事は、わたしが今する事じゃない。
後で説明すればいい。
美空が淹れる紅茶でも楽しみながら。
待ってろよスターク。
今すぐ、お前の化けの皮を剥いでやる。
……To be continued
戦兎「おお!やっと起きたの黄羽ちゃん!」
美空「はぁ……よかった。心配したよお」
黄羽「ん……んんん?」
美空「じゃあ改めて!よろしくね、黄羽ちゃん!」
黄羽「よ、よろしくぅ……」
美空「……どしたの?」
黄羽「いやあの、別に。うん」
美空「……?あっ!喉乾いてない?」
美空「紅茶淹れるよ!美味しいのがあるんだあ♪」
黄羽「おっ、おおう……」
黄羽「おいしー!おいしーよ!」
美空「ふふふ。よかった♪」
美空「……よろしくね、黄羽っち」
黄羽「……あたしも、よろしく」
黄羽「……みーちゃん」
美空・黄羽「「……えへへ」」
戦兎「うんうん……微笑ましいのお」