Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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赤羽「おぉい!飯食おうぜ飯!」

青羽「そうだねい。腹減ったしなぁ」

赤羽「おぉい!黄羽……はいないのか」

青羽「なんだい。寂しいのか、赤羽?」

赤羽「うるせえのが居なくて調子狂うだけだっての」

青羽「それをお前が言うかね……」




一海「腹減ったなぁ。飯食いに行くか」

赤羽「おぉいカシラぁ!行きやしょうぜ!」

一海「おう。そしたらみんなで――」

一海「……そういやあいつ、いねえのか」

青羽「……考えてる事はみんな同じだねい」




phase,51 女の意地

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よォ!元気そうで何より!ハッハッハァ!』

 

 

 

 

 

 

 

あの狂った蛇が指定した、あの見慣れた廃工場に着くと。

鮮血の蛇は既にわたしを待っていたようだ。

 

 

 

何も変わらないあの朱。

何も変わらないあの忌々しい声。

何も変わらないあの憎き喋り方。

 

 

 

やはりこの狂気の道化はわたしの仇敵なのだと、再認識する。

 

 

 

 

 

 

 

「わざわざ来てやったぞスターク……プレゼントがあんでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

恐らくわたしから噴き出している憎悪の念が伝わっている事だろう。

わざわざその思いを止めてやる義理も無い。

 

 

 

今日こそはお前のその化けの皮を剥がして、その面を拝んでやる。

 

 

 

 

 

 

 

『ククク。こりゃあ元気過ぎんなァ、おい?何か楽しい事でもあったのかよ?』

 

 

 

『例えば……どこぞの誰かが殺されそうになった、とか』

 

 

 

 

 

 

 

……まさか。

 

 

 

まさかこいつは黄羽ちゃんを襲った事と何か関係してんのか……

 

 

 

だけど襲ったのは北都のスマッシュのはず。

しかもそれに繋がる情報を渡してきたのもこの蛇だし……

 

 

 

……何が狙いなんだ、こいつは。

 

 

 

 

 

 

 

「……あの少女を襲った事にお前は何か関係してんのか」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの脳には憎悪や嫌悪というよりも、疑問がどんどんと溢れ出ていく。

 

それはこの鮮血の蛇がきっと、わたしにとって意味がわからない存在だからなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

こいつの目的は、本当になんなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

『関係してると言えばしているし、していないと言えばしていない……ハッハッハァ!まるで謎解きみたいだなァ』

 

 

 

 

 

 

 

どこまでわたしを馬鹿にすれば気が済むんだこの腐れ蛇は。

 

 

 

……本当に、気持ちが悪い。

 

 

 

 

 

 

 

「お前は……ファウストは本当に北都と関係を持っていないのか?」

 

 

 

 

 

 

 

万丈を北都へと連れていったのはスターク。

つまり、北都政府と連中は何かしらの繋がりがあるはず。

 

 

 

 

 

 

 

……でもこいつはその北都政府にとって不利益な情報をわたしに寄越したりしているのも確か。

 

 

 

 

 

 

 

こいつの……ファウストの目的はなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

『んー……まァいいか。教えてやろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『元々北都と繋がっていたというよりも、まァ少々遊んでやっただけだ。だが連中は好き放題やってくれてなァ?だから見限った、が正しい』

 

 

 

 

 

 

 

やはり元々は繋がりがあったのか。

でも今は見限った……?

 

 

 

前に考えてた通り、仲違いしたって事か。

勝手に……というのはこの戦争の事なのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ万丈を北都へと連れていった目的も――」

 

 

 

『いや?あれはただの気まぐれだ……ファウストが関係してないって言ったらまた違うかもしれねェけどよ』

 

 

 

『まァ万丈をどうのこうのするつもりはねェし。心配すんなよ、お姉ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

……クズが。本当に消し去りたい。

 

 

 

 

 

 

 

しかしどういう事なのだろう。

ファウストが関係はしているのか……?

 

でも気まぐれだとか言ってるしなこいつ。

 

 

 

 

 

 

 

色々とおかしい気もするけど、こいつならわけのわからない行動をするのも……有り得る、か。

 

 

 

ただ滅茶苦茶にしたかっただけなのか、こいつは……

 

 

 

 

 

 

 

「お前の目的は……ファウストの目的はなんなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

目的が一向に掴めない。

幻徳もあの後失踪したままだし……

 

 

 

本当に何がしたいんだ、こいつら。

 

 

 

北都や西都のようにパンドラボックスが欲しいのであれば、だったら最初から奪えばいい話だし。

 

北都と繋がる事すらも遊びと言い放つ程の力があるならば、そんな事容易く出来るんじゃないだろうか。

 

 

 

戦争を引き起こす……のであるならば今のこの状況はこいつらにとって好都合どころか思った通りの展開のはず。

 

 

 

 

 

 

 

一体何を望んでる……?

 

 

 

 

 

 

 

『今日も今日とて質問が多いなァ、おい?……少しだけ、教えてやろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺の……俺らの目的はな、絶望だ』

 

 

 

 

 

 

 

鮮血の蛇の言葉にとても震えてしまいそうになるわたしがいる。

その言葉を放つこの蛇から、恐ろしいほどの威圧感を感じたから。

 

 

 

身体中から危険信号を発している気がする。

 

 

 

あの時、初めてスタークと相対した、あの日のように。

 

 

 

 

 

 

 

「絶望って……これはまた随分だな」

 

 

 

 

 

 

 

動揺しているのを勘づかれてはいけない気がする。

気付かれたら最後、呑まれる気がしてならない。

 

 

 

目の前の、強大な何かに。

 

 

 

 

 

 

 

それは今まで戦ってきた中で間違いなく最強のあの黄金の戦士よりも強く、大きい存在のように感じてしまう。

 

 

 

やはりこいつは……

生かしておいてはならない気がする。

 

 

 

 

 

 

 

『……ハッハッハァ!まァ気にすんな。今すぐ何かをやろうなんざ考えてねェしな……そんな目で見るなよ、泣いちゃうぜ?』

 

 

 

 

 

 

 

今すぐ、って事は結局何かをやる気なんだろうが。

どうせ、本当に録でも無い事を。

 

 

 

 

 

 

 

……今起きてる戦争よりも悲惨な事をやる気なんだろう、お前は。

 

 

 

 

 

 

 

ふざけた口調で言ってるけど、内容はふざけているなんてモノじゃない。

 

 

 

……やばい気がしてならないよ、わたしは。

 

 

 

 

 

 

 

「今すぐに……ここでお前を倒した方が良さそうだ」

 

 

 

 

 

 

 

東都の……いや、日本の平和のため。

みんなが笑顔と希望で包まれるため。

 

 

 

 

 

 

 

こいつはこのまま生かしておくわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

『ふん……別に遊びに付き合うのはいいけどよォ。お前、負けたんだろ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『仮面ライダーグリス……猿渡 一海に負けたんだろォ?じゃあ、俺に勝とうなんざ地球が滅んでも無理だ』

 

 

 

 

 

 

 

あの光景が脳裏を過る。

一海との最悪な勘違いで起こった、あの戦い。

 

 

 

あの……わたしの全てが通じなかった、あの時。

 

 

 

 

 

 

 

絶望的なまでの、わたしの弱さがわかった瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

「……うるさい、お前には関係無いだろ」

 

 

 

 

 

 

 

わたしは無意識にビルドドライバーを手にしていた。

もう片方の手には、グリスに全く通用しなかった、あの力を。

 

 

 

……今のわたしの、最強の力を。

 

 

 

 

 

 

 

『はァ。まァいいか……そうしたら少し遊んでやろう』

 

 

 

 

 

 

 

……グリスには、一海には通用しなかったけど。

 

 

 

この力は今までとは比べ物にならないモノ。

今わたしが出来うる能力を駆使して創り上げた、最強にして最高の力。

 

 

 

 

 

 

 

……狂った蛇なんぞに、負けるわけが無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に泣かせてやるからな、スターク」

 

 

 

 

 

 

 

『俺を泣かすのは……まァ、結構簡単かもな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わたしは絶対に負けない。

もうあんな無様な所など絶対に誰にも見せない。

 

 

 

 

 

 

 

この力はマスターがわたしにくれた力だから。

わたしの愛する人が与えてくれた、希望の光だから。

 

 

 

 

 

 

 

マスターと……わたしの想いの力だから。

 

 

 

 

 

 

 

……もう、絶対に負けないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ラビットタンクスパークリング!】

 

 

 

【Are you Ready?】

 

 

 

 

 

 

 

「変身!!!」

 

 

 

 

 

 

 

【シュワっと弾ける!!】

 

 

 

【ラビットタンクスパークリング!!】

 

 

 

【yeah!!yeah!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうか、ラビットとタンクのか……なんだか、色々と感慨深いモノだな』

 

 

 

 

 

 

 

一体何を言ってるんだこいつ?感慨深い?

何をわけのわからない事を……

 

 

 

 

 

 

 

……いや、いい。そんな事は、いい。

 

 

 

 

 

 

 

今はただ、目の前のこの蛇を倒す事だけに集中しろ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

弾けるような勢いでスタークの背後を取ったわたしは、そのままその背に強烈な蹴りを見舞う。

 

恐らく反応が出来ていないであろうスタークは吹っ飛ばされ、そのまま今は使われていない何かの部品を創ってたのであろう大きな機械に激突した。

 

 

 

手応えあり、だ。

 

 

 

恐らくあの蛇が過小評価してたであろうわたしの力。

そこに全力の蹴りを、しかも油断していた背中に叩き込んだんだ。

 

 

 

いくらあの蛇と言えど、ダメージが無いなんて事は有り得ない。

 

 

 

 

 

 

 

……グリスでさえ、なきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

『いてて……お前本当にグリスに負けたのかよ?結構強いな、それ』

 

 

 

 

 

 

 

あの時とは違い、充分とは言えずとも中々の衝撃は伝わったようだ。

あの蛇が、実際対峙すると勝てるとは思えない気もしていたあの蛇が。

 

 

 

未だ立てずに座り込んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

『あー。いってーなもう……よいしょっ、と。ほれ、もう終わりか?』

 

 

 

 

 

 

 

ゆっくりと立ち上がったスタークは、やはり身体中に衝撃が蓄積されているのだろう。

 

強がってはいるけど、足元はおぼついているようにも見える。

 

 

 

 

 

 

 

……やっぱりこの力は強い。絶対強い。

 

 

 

グリスには……通用しなかったかもしれないけど、スタークになら。

 

 

 

 

 

 

 

勝てるかも、しれない……!!

 

 

 

 

 

 

 

「まだまだあぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

そう言って駆けたわたしが狙うは、あの蛇の鳩尾。

わたしが懐に入るのにも恐らく反応出来なかったであろうスタークは、そのままわたしの鉄拳を喰らう。

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ……やるな、戦兎』

 

 

 

 

 

 

 

息付く暇も与えずに、その勢いのまま全力の蹴りをスタークの顔面に浴びせる。

 

防御や回避する暇も無かったスタークは、そのまま見事に吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

全弾手応えあり、だ。

全て綺麗に入ったし、このまま――

 

 

 

 

 

 

 

『いってー……けど……やっぱり。うん、そうだな』

 

 

 

 

 

 

 

自分の強さを再確認出来て、ほんの一瞬余韻に浸ってしまったわたしの目の前に、本来そこには居ないはずの存在が居た。

 

 

 

 

 

 

 

たった今わたしが蹴り飛ばした相手。

本来ならばわたしから離れた場所で地に伏せているはずの相手。

 

 

 

 

 

 

 

わたしの攻撃で、もがき苦しんでいるはずの蛇が。

 

 

 

一瞬で、わたしのすぐ目の前にまで来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

「なっ……がはっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

何をされたのかよくわからないまま、わたしは後方に弾き飛ばされていた。

 

 

激痛が走るのは腹部。

お腹を殴られたのか、蹴られたのか……

 

 

 

 

 

 

 

痛みに耐えながらわたしに衝撃を与えた相手を見ると、禍々しい銃を持つスタークが立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

その姿は。その出で立ちは。

あの時のあの戦士を思い出す。

 

 

 

わたしの脳裏に過る、あの黄金の戦士。

わたしの全てが通用しなかった、あの男。

 

 

 

 

 

 

 

仮面ライダー……グリス。

 

 

 

 

 

 

 

今のスタークは、まるでわたしの全てが通じなかったグリスとよく似ているように思えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

『まず攻撃の全てが軽い。前に比べればかなり進歩したがな……だが、軽過ぎる。女だから、と言われたいのかな?』

 

 

 

 

 

 

 

……女だから。

 

 

 

わたしが気にしている1つの事。

それは、性別の差。

 

 

 

 

 

 

 

いくらビルドの力を纏ったとしても、男と女ではきっと差が出るのではないか。

 

この事はかなり以前から考えていた事。

万丈と……強くなろうと誓ったあの日から、考えていた事。

 

 

 

 

 

 

 

……女のわたしでは限界があるんじゃないか、という事。

 

 

 

 

 

 

 

「……黙れ。それ以上言ったら、殺す」

 

 

 

 

 

 

 

それを認めたく無いわたしは、強がりの言葉を吐いてしまう。

実際は腹部に走る痛みと衝撃で、立ち上がる事すら未だに出来ないというのに。

 

 

 

 

 

 

 

『事実そうだろう……お前はグリスに負け、俺にも勝つ事が出来ない。その調子だと万丈との力の差も感じたんじゃないのか?』

 

 

 

 

 

 

 

狂気の蛇が吐く真剣なその言葉が。

わたしの必死に隠していた部分を突き刺していく。

 

 

 

 

 

 

 

どう足掻いても縮まるようには思えない、力の差。

どんどん引き離されていくような、成長の差。

 

 

 

 

 

 

 

正直、万丈の成長は凄まじかった。

まだ仮面ライダーの力を得る前のあいつですら。

 

 

 

組手をやっている時も、まだあの頃はわたしが勝っていたけど。

日に日に恐ろしいくらい強く、上達していってた。

 

 

 

 

 

 

 

わたしが頑張って強くなろうともがき苦しんでる中。

まるで兎と亀のように、簡単に強さの壁を越えていく。

 

 

 

 

 

 

 

やっと完成させた、新しいわたしのこの力。

全精力を注ぎ込んで創り上げた、最強の力。

 

 

 

それを……いとも簡単に打ち破られた。

面白い、と罵られて……

 

 

 

 

 

 

 

……きっと万丈にもすぐ追い抜かれる。

 

 

 

絶対考えたくなかった事。

嫌で嫌で考えないようにしていた事。

 

 

 

 

 

 

 

女のわたしと、男の万丈たちの差……

 

 

 

 

 

 

 

……わたしにはそれが、埋められないような差に感じてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

グリスに……負けたのも……

 

 

 

 

 

 

 

『それが、現実だなァ。戦兎』

 

 

 

 

 

 

 

現、実……

 

 

 

わたしは女だから負けたのか。

わたしは女だから勝てないのか。

 

わたしが女だから……護れないの……

 

 

 

 

 

 

 

『どうするよ戦兎!……もう、やめるか。やめちまおうか』

 

 

 

 

 

 

 

『別にお前が戦わなくても他がいるしよ……お前は、ゆっくり平穏に暮らせばいいんじゃねーの?』

 

 

 

 

 

 

 

狂気の蛇のその言葉が、なぜか懇願にも似たような。

それを願っているかのようにも聞こえる。

 

 

 

その言葉は今までスタークから聞いた事がないような、とても優しく響いて。

 

まるで娘に諭す父親のように思ってしまうような。

 

 

 

なぜかわからないけど、そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「……確かに、わたしは弱いよ」

 

 

 

 

 

 

 

わたしはきっと弱い。

万丈や、一海や……スタークよりも。

 

 

 

 

 

 

 

でも、諦めるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

「わたしには……護るべきものがあるから。託されてる想いがあるから」

 

 

 

 

 

 

 

この国のジャンヌ・ダルクだと言ってくれた東都の長。

共に護ろうと誓った可愛い妹。

わたしが護れなかった……大切な同僚。

わたしをヒーローと言った、小さな天使。

 

 

 

共に強くなろうと誓った、大切な弟。

 

 

 

 

 

 

 

「わたしにこの力をあたえてくれたマスターのためにも……わたしは絶対に諦めない。足掻いて、抗って、もがき苦しんで」

 

 

 

 

 

 

 

「女だからなんて理由でわたしは諦めない……みんなの笑顔と希望を護るために戦う!だから強くなるんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしに愛を与え、力を与えてくれたマスター。

わたしに力を持つ者としての在り方を教えてくれたマスター。

 

 

 

わたしに全てをくれたマスターのためにも。

 

 

 

 

 

 

 

わたしは……確かに挫けそうになるし、辛い事もいっぱいあるけど。

 

 

 

絶対に投げ出したりなんかしない。

 

 

 

 

 

 

 

「……わたしは絶対に、諦めたりはしない」

 

 

 

 

 

 

 

なぜ敵であるスタークにこんな事を言っているのか、それはわたしにもわからない。

 

 

 

でもあの優しく聞こえたような声で話すスタークに、言わなければいけない気がした。

 

 

 

それはどこか、使命感のような。

わたしの全てを見ているような、この蛇に。

 

 

 

 

 

 

 

……どこか、マスターの面影があるこいつに。

 

 

 

 

 

 

 

わたしの想いを伝えなければいけない気がした。

 

 

 

 

 

 

 

もしかしたら……それは、きっと。

やっぱりマスターと重ね合わせてしまう、愚かなわたしがいるからなのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

『そう、か……あぁ、わかったよ。お前の気持ちが、覚悟がわかった』

 

 

 

 

 

 

 

こいつは……何がしたいのだろう。

時折見せるこの感じは……何を想い、考えているのだろう。

 

 

 

わたしの心を弄ぶ、というには些か違う気もする。

だからといって、味方とは対極の場所に坐している。

 

 

 

 

 

 

 

お前は……何がしたいんだよ、スターク。

 

 

 

 

 

 

 

『その言葉が聞けたからな……ほら、例のプレゼントだ。受け取れよ』

 

 

 

 

 

 

 

そう言ってスタークが投げ渡してきたのは、見覚えのあるモノ。

かつてこの蛇が渡してきた、あのデータが眠るモノ。

 

 

 

 

 

 

 

何かの情報が宿る、USBメモリ。

 

 

 

 

 

 

 

「また……?今度は何?」

 

 

 

 

 

 

 

以前は確か……PROJECT BUILD、だったか。

葛城 忍、だとかいう人物が残したモノ。

 

その男は、戦争用の兵器として仮面ライダービルドを創り上げようとしていた、外道の科学者。

 

 

 

 

 

 

 

もしかして今回も同じようなモノ……?

 

 

 

 

 

 

 

『諦めないお前の……力と成りうるモノだ。ただし、その力は強大。そして力には、代価が伴う……わかるな?』

 

 

 

 

 

 

 

力と成りうるモノ……?

一体何を渡してきたんだ、こいつは?

 

 

 

というか、なぜそんなモノを……?

 

 

 

 

 

 

 

あの葛城 忍のデータといい、今回のといい。

こいつは本当に何がしたいんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

『以前にも言ったろう。闇に呑まれるな、と。忘れるなよ。力に溺れ闇に取り憑かれたら最後、お前はこちら側だ』

 

 

 

 

 

 

 

そう言えば前に……こいつと初めて対峙した時にも同じような事を言われた気がする。

 

 

 

心の闇に呑まれるな、お前は正義のヒーローだろう。と……

 

 

 

 

 

 

 

こいつは……わたしに何をして欲しいんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

『……まァ有意義に使う事だ。そしたら俺はこの辺でお暇する――』

 

 

 

「待て!!!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの絶叫のような、遠吠えのような音が響く。

眼前に立つ、蛇を逃さぬように。

 

 

 

 

 

 

 

「お前は……あの葛城 忍のデータといい、今回のこれといい……何がしたいんだ?わたしに何をさせたいんだ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ずっとずっとずっと疑問に持ち続けている事。

 

ゲームだのゲームメーカーだのとスタークは言ってるけど、わたしにははぐらかしているような気がしていた。

 

 

 

お前はわたしに……何をさせるつもりなんだ?

 

 

 

 

 

 

 

『……前に言っただろう?俺はゲームメーカーだ。全ては、バランスなんだよ』

 

 

 

『片側だけが強過ぎては全く面白くない、ただの駄作だ。それでは駄目なんだよ。全く意味を成さない』

 

 

 

 

 

 

 

狂気の蛇の言葉が、たまに出るあの真剣な言葉へと変わる。

いつもの狂った蛇とは思えない、また違う恐怖。

 

 

 

 

 

 

 

……もしかしたらこいつが全ての諸悪の根源ではないかと思えるような、邪悪な何か。

 

 

 

 

 

 

 

『全ては先でわかる事。今は早い……高みで待っているから早く登ってこい。憐れな兎よ』

 

 

 

 

 

 

 

先でわかる……?

もしかしてさっきスタークが言っていた絶望、とかいう目的の事?

 

 

 

 

 

 

 

……脳をフル回転しても全くわからない。

 

 

 

 

 

 

 

こいつは……何を……?

 

 

 

 

 

 

 

『それじゃ本当に俺はこの辺で、チャ――』

 

 

 

「パスワード!!パスワードあんでしょ!また!!」

 

 

 

 

 

 

 

色々とわからない事だらけだけど。

身体が上手く動かせない今、あの蛇が逃げるのを止める手段は無い。

 

 

 

 

 

 

 

だったら、大切な事を聞いておかないとね。

前のUSBメモリのやつもふざけたパスワードがあったし。

 

 

 

どうせ今回もあるんでしょ。

あのめんどくさいやつが。

 

 

 

 

 

 

 

『あァ……あれか。そうだなァ……うーん』

 

 

 

 

 

 

 

やたらと渋るこのど腐れ蛇を見ていると、本当にわたしに何かを渡す気があるのかと思ってしまう。

 

 

 

以前のやつなんか3回間違えたら全消去とかいうふざけたやつだったし。

 

本当に渡すつもりないだろ、アレ。

 

 

 

 

 

 

 

なんか簡単な答えだったからたまたま消えないで済んだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よし!ならばヒントをやろう。答えを渡すのは簡単だが、それじゃあ考える力が養われないからなァ。そうだろ?』

 

 

 

 

 

 

 

どこか楽しそうなスタークが本当に腹立たしい。

お前渡すつもり無いだろ。

 

 

 

もしかしたらこんな所までゲームだとか思ってんのかな、こいつ……

 

 

 

 

 

 

 

間違えて全部消えたらどうすんだよ、おい。

 

 

 

 

 

 

 

『ヒントは【Pericolo】そして【この世で最も使われている言語】だ……大サービスだな、こりゃ』

 

 

 

 

 

 

 

Pericoloって確か……うん、確かそうだ。

それにこの世で最も使われている言葉って――

 

 

 

 

 

 

 

『それではこの辺で……頑張れよ、戦兎。Ciao♪』

 

 

 

「おい!ちょっと待……て……」

 

 

 

 

 

 

 

わたしが引き留めようとした時にはもう、あの鮮血の蛇は煙と共に消え去っていた。

 

いつも通りに、プレゼントと称して何かを渡してきて。

 

 

 

 

 

 

 

色々と気になる事は多いけど、もう居なくなったあのふざけた蛇はとりあえず置いといて。

 

 

 

 

 

 

 

あいつが渡してきたUSBメモリ……それにあのヒント。

ヒントから導き出した答えがあっているのならば……これは一体……?

 

 

 

 

 

 

 

……まあでも、調べればすぐにわかる事。

 

 

 

身体も動けそうだし、早く帰って美空の暖かい紅茶でも飲みながら調べるとするかあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと歩けるまでに身体が動かせたわたしは。

ゆっくりと帰路に着いた。

 

 

 

帰りの道中、何回まで間違えられるのだろう、とかもし1回でも間違えたら全消去されるとかだったらどうしよう、とか考えながら。

 

 

 

 

 

 

 

敵であるはずの蛇から渡された、新しいわたしの力になるのかもしれないモノを。

 

 

 

わたしはどこか、楽しみにしていた。

それがどういったモノなのか、真意をわかろうともせずに。

 

 

 

 

 

 

 

力には代価が伴う。

代価無くして、力を得ようなどと。

 

 

 

 

 

 

 

そんな事は、愚かな事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身をもって知るのは、いつの日か――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 








美空「遅いねー戦兎」

黄羽「んねー。ケーキ無くなっちゃうねー」

美空「……実はまだまだあるんだしぃ♡」

美空「黄羽っち!食べちゃう!?」

黄羽「ほおおおさっすがみーちゃん!」

黄羽「もちろん食べるー♪」

美空「戦兎にはお仕置きが必要だしね」

美空「私たちだけで食べちゃお♡」

黄羽「食べちゃおー!」






戦兎「身体痛いよお……」

戦兎「でも早く……帰らないと……」

戦兎「ケーキがわたしを……待ってるから」


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