Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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佳奈「……なあに」

紗羽「ほ、ほら!佳奈ちゃん!」

紗羽「こ、今度こそ一緒にお菓子食べよ?」

佳奈「……だいじょうぶ」

紗羽 (なぜ私のは受け取ってくれないの……!)

紗羽「もしかしてこのお菓子嫌い?」

佳奈「……どっちかっていうとすき」

紗羽「じゃあなぜ!?」

佳奈「でも、だいじょうぶ」

紗羽「……うぅ」


黄羽「佳奈ちゃーん!」

佳奈「あっ!きばおねえちゃん!」

黄羽「一緒にお菓子食べよーよっ!」

佳奈「うん!たべるー!」




紗羽「なぜ……私だけ……」




phase,53 どうしようもないやつら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かがわたしの名を呼んでいるような気がして目が覚めると、目の前には様々なデータが表示されている画面のままのパソコンがあった。

 

 

 

どうやらあのまま寝てしまっていたようだ。

 

相当疲れていたからなのかもしれない。

まあ色々とあり過ぎたし……脳が悲鳴をあげても当たり前だ。

 

 

 

 

 

 

 

目の前の画面に広がるのはあの、ハザードトリガーという新しい力について。

 

 

 

簡単に言ってしまうと……凄まじいモノだ。

今までのわたしの力が軽く霞んでしまうほどの力を与えてくれるモノ。

 

ここに書かれている事が本当であるならば、正に鬼神の如き力が得られるかもしれない。

 

 

 

使用した者の脳と身体のリミッターを外すようなシロモノってのがわかりやすいのかな。

 

ネビュラガスを全身に流し、本来出せるべき力の限界を無理やり超える、みたいな感じ。

 

細かく言うとちょっと違うけども。

 

 

 

 

 

 

 

まあ……スタークが言ってた力の代価ってこれの事なのかね。

 

Hazard、つまり危険。

リミッターを強制的にこじ開けるから自身の身体に危険を及ぼす可能性がある、みたいな。

 

 

 

全ては等価交換、だもんね。

大いなる力であればある程その力には代償を伴う、か。

 

 

 

 

 

 

 

……でもスタークが言ってた、力に溺れるなとか闇に呑まれるなとはまた違う気もするけど。

 

その強大な力に酔って強さのみを追い求めるな、とかそんな感じかね。

 

 

 

 

 

 

 

……どっかの狂った連中じゃあるまいし。

 

わたしには無縁な話だ。

わたしが強さを追い求める理由はただ1つ。

 

 

 

みんなの笑顔と希望を護るためだもん。

護れる力だから、溺れたりなどしない。

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎ー!寝てんのー?ほら、ご飯だしー!!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしが目覚めたのは美空のおかげか。

ついさっき呼ばれたような気がしたのも、美空が朝ご飯の開始を宣言してたからなのだろう。

 

 

 

通りで良い匂いがしたわけだよ……♡

 

 

 

 

 

 

 

まあとりあえずこの新たなる力は後にして、今は美空の美味しいご飯が優先だ。

ご飯を食べ終わった後にでも開発にとりかかればいいし。

 

 

 

……楽しみっ。

 

 

 

 

 

 

 

「はーい!今行くよー――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――おぉい、カシラ!怒んないで下さいよ……」

 

 

 

 

 

 

 

……バカ野郎。本当にバカ野郎が。

 

 

 

俺に黙ってそんな事しやがって。

勝手にふざけた事やりやがって。

 

なんでお前らが……くそっ!!

 

 

 

 

 

 

 

「カシラぁ、俺らは自分で選んだんですよう……これから何があってもカシラを護るために」

 

 

 

「それに黄羽も……もうあんなのは懲り懲りなんでさぁ」

 

 

 

 

 

 

 

こいつらは何もわかっちゃいねえ!!

自分たちがなんて事をしちまったのわかってんのかよ……

 

 

 

 

 

 

 

……あの婆、こいつらに唆しやがったな。

 

 

 

 

 

 

 

「……おめえら、自分たちが何をやったのかわかってんのか」

 

 

 

 

 

 

 

何が俺や聖のためだ……!

そんなモンに手ぇ出してお前らが居なくなっちまったら意味ねえだろ!!

 

 

 

 

 

 

 

なんでこんな事に……

 

 

 

 

 

 

 

「おぉう!!大丈夫ですぜカシラ!!気をつけるし!それに……俺らも強くならねえと隣に立てませんから」

 

 

 

 

 

 

 

誰が隣に居てくれなんて言ったよ!!

お前らにはこんな世界とは無縁の場所に居てほしいのに……

 

 

 

 

 

 

 

なんで、なんでなんだよ!?

なんで……そんな事をやっちまうんだよ……

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら……それ、治せねえのか」

 

 

 

 

 

 

 

治せるんだったら今すぐそのふざけた力を取り除かねえとだめだ。

いくら戦兎と殺し合いなんかするつもりはないとは言え……西都と戦争になる可能性だってある。

 

 

 

それにもし仮面ライダーが汎用型の兵器として数多く戦争に投入されるなんて事になったら……

 

 

 

 

 

 

 

そうなったら、保証は無い。

 

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫ですよい!何があっても俺たちは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――黄羽っち!ほら、食べながら寝ないの!」

 

 

 

 

 

 

 

清々しい朝……って言いたいけど今日も外は雨模様。

なんだかちょっぴり不安になってしまうような、そんな気分になっちゃうわたしがいる。

 

 

 

胸騒ぎがするというか……なんだか上手くいってくれない気がするような。

 

 

 

 

 

 

 

でも一海なら……上手くやってくれるよね。

 

 

 

 

 

 

 

「ふにゃ……みーちゃん……おやす、み……」

 

 

 

「だーかーらー!起きてしぃっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

そんなわたしの想いとは裏腹に、妹2人は仲睦まじい。

今日も今日とて微笑ましい限りだ。

 

 

 

脳震盪を起こしてしまうのではないかと思えるぐらいに黄羽ちゃんを揺らし続ける美空。

 

その攻撃が全く効いていないかのように、スクランブルエッグを乗せたスプーンを咥えたまま夢の世界へと旅立っている黄羽ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

……あれ?これ微笑ましいのかな?

 

 

 

 

 

 

 

「もう!!起きなさいしぃぃ!!!」

 

 

 

「ぴぎゃあっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

美空が繰り出した左右の秘孔(こめかみ)への一撃がクリーンヒットしたらしい。

黄羽ちゃんが飛び上がって目覚めた所を見ると、相当痛覚を刺激されたに違いない。

 

 

 

黄羽ちゃんも……美空の恐ろしさが理解出来始めたみたい。良かった良かった。

 

 

 

 

 

 

 

「ほっほっほ。まあまあ落ち着きなさ……い?」

 

 

 

 

 

 

半べそかいてる黄羽ちゃんに少し同情していると、例のブレスレットから小うるさい音が鳴り響いた。

 

 

 

前は戦争の道具の証のようなモノだったけど、今は違う。

今は、東都の希望を護るための証。

 

 

 

 

 

 

 

それにしてもなんだろう。

もしかして何か動きがあったのかな?

 

 

 

 

 

 

 

「はいどうも戦兎です……どしました?」

 

 

 

「私だよ、氷室 泰山だ。いきなりで悪いのだが首相官邸に来て欲しい。今から来れるかい?」

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり泰山首相からか。

それにしてもなんだか急いでるようだけど……

 

 

 

何かあったのかな。

新しい情報を掴んだ、とか。

 

 

 

 

 

 

 

「りょーかいでっす!今から行くんで!待っててくださーい」

 

 

 

 

 

 

 

どちらにしろ急いでるような感じがしたし、すぐに行ってみよう。

悪いニュースじゃないといいんだけどな。

 

 

 

多治見首相からなんか変な事言われた、とか。

まあでもさすがにそんなすぐにはないか……

 

 

 

 

 

 

 

「ああ。待っている。頼んだよ」

 

 

 

 

 

 

 

簡潔に答えた泰山首相はそのまますぐに通話を断った。

確かに急いでるようには感じたけど、焦ってるような感じはしなかったな。

 

 

 

うーん。なんだろ。

 

 

 

 

 

 

 

「泰山さんの所行くの?」

 

 

 

 

 

 

 

いつの間にか黄羽ちゃんとじゃれ始めてた美空の顔は、少し曇っているようにも見えた。

 

もしかしたらまた何か大変な事が起こっているのかもしれないと考えてしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「あー、多分何かあったわけじゃないと思うから大丈夫!」

 

 

 

「多分……なんか情報でも掴んだんじゃないかな」

 

 

 

 

 

 

 

心配そうな顔をする美空に余計な不安を持たせないため、っていうのももちろんあるけど。

 

でも多分間違いないと思うし。嘘じゃない。

何かあったのならあの泰山首相の事だ。

きっともっと焦っていたはず。

 

 

 

 

 

 

「そっか、良かった……黄羽っちは?どうする?」

 

 

 

「んんん?あたし?あたしがどうかした?」

 

 

 

 

 

 

 

黄羽ちゃんは美空とじゃれ合う事に夢中だったのか、今の話を全く聞いてなかったらしい。

 

ほんとなんか、梟というより猫だよね。

 

 

 

 

 

 

 

「黄羽ちゃんはnascita laboのベッドで休ませてあげて。あそこなら絶対バレないっしょ」

 

 

 

「変にわたしと外出するよりも安全だと思うしさ」

 

 

 

 

 

 

 

一緒に行動してた方が対応は出来るけど。

変に連れ回したりしたら逆に狙われる可能性が高いし。

 

 

 

nascita laboだったら安全だしね。

まさか連中も冷蔵庫が入口だろうとは思わないだろうし。

しかもどっかの誰かさんとは大違いなセキュリティ対策万全のパスワード付きだから。大丈夫。

 

 

 

 

 

 

 

それに元気に見えるとはいえ、黄羽ちゃんはまだ襲われたばっかりだし。

まずはゆっくりと身体を休めないとね。

 

 

 

 

 

 

 

「んんん?戦兎ねえどっか出かけるの?」

 

 

 

「うん、ちょっとね。なるべく遅くならないように帰るから、美空とお留守番よろしくっ」

 

 

 

 

 

 

 

本当は美空には病院で力を使って欲しいけど……

 

さすがに黄羽ちゃんを1人きりにするなんて出来ない。

いくら安全だとしても……黄羽ちゃんも1人は怖いだろうし。

 

 

 

それにやっぱりあの力は美空の身体に害を及ぼすかもしれないから。

そんな頻繁に使わせるわけにはいかない。

 

 

 

 

 

 

 

「美空も、黄羽ちゃんの事頼んだよ」

 

 

 

 

 

 

 

もし襲われるなんて事になったら美空が対応できるわけないけど。

でも2人でnascita laboにいれば安全だ。

 

 

 

 

 

 

 

「うん!任された!」

 

 

 

「……大丈夫、安心して戦兎。黄羽っちは私が護る!」

 

 

 

 

 

 

 

胸を張って意気揚々と答える美空を見ると、この子は黄羽っちの事を大切に思ってるんだなと思う。

 

黄羽ちゃんがどう思ってるかはともかくとして、やっぱり妹が出来たような気分になってるのかね。

 

 

 

……ふふふ。嬉しいんだろーな。

 

 

 

 

 

 

 

「うん!でも一応、わたしが帰ってくるまでnascita laboから出ない事!やっぱり危ないから。約束」

 

 

 

「んんん!約束っ!」

 

 

 

「うん!約束だしっ!」

 

 

 

 

 

 

 

2人の妹ちゃんが約束を破る事は無いだろう。

黄羽ちゃんは既に怖い思いをしてるし、美空にはどれほど危険だったか説明したしね。

 

 

 

後はわたしがちゃっちゃと話を聞いて帰ってくるだけ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ!じゃー行ってきます――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――えーと。つまりそのー……これを?」

 

 

 

 

 

 

 

首相官邸に着き、泰山首相へと会いに首相室へと来たわたし。

そこで彼から話された事は全く想像してなかった事だった。

 

 

 

 

 

 

 

「うむ……どちらにしろ恐らく北都が狙っているのはまず間違いなくこれだろう。それならばここにあったとしたら奪われてしまう可能性が非常に高い」

 

 

 

「それにファウストなる組織もこれを狙っているしね。北都がこれを奪おうとしてなかったとしてもやはりここに置いておくのは危険だ」

 

 

 

 

 

 

 

泰山首相は真剣そのものだ。

冗談を言っているようには……まるで聞こえない。

 

 

 

確かにこいつはとんでもないモノだ。

見た目で言えば、某有名トーク番組に出てくるサイコロのような大きさの正方形型のモノ。

 

そんなモノに恐るべき力が隠されている。

 

 

 

それは核エネルギーを遥かに遥かに超えるモノ。

もし兵器として活用する事が出来てしまったりなんてしたら……それは比喩じゃなく本当に世界が滅んでしまうモノだろう。

 

まあ今の技術じゃ絶対無理だけどね。

 

 

 

 

 

 

 

しかしそうだとしてもそんな危ないモノを、危険な思想を持つ輩に奪われてしまうなんて絶対にあってはいけない。

 

特にファウストのような外道には。

 

 

 

 

 

 

 

……うーん。でもなあ。

 

 

 

 

 

 

 

「そんな凄まじいモノをわたしが持ってていーんですかね?」

 

 

 

 

 

 

 

なんでこんなモノを地球に持ち帰ってきたんだ!と言いたくなってしまうような危険極まりない箱……パンドラボックス。

 

 

 

そんなヤバいモノを目の前にいるおじいちゃん、もとい泰山首相はわたしに預かってくれないかと言うのだ。

 

 

 

 

 

 

 

科学者としてはものすっごい興味があるけど……

国家の最重要超危険エネルギー物質を一市民に渡していいもんかね。

 

 

 

 

 

 

 

「こんな事を頼むのは一国の首相として恥ずべき行為であるのも、大問題である事もわかっている……だが、貴女にしか頼めないんだ」

 

 

 

「この箱を護れる力を持つ貴女に……どうか引き受けてくれないか、戦兎さん」

 

 

 

 

 

 

 

うーん……まあ確かにここに置いておいたら危ないのも事実だしなあ。

ここにある事はファウストに思いっきりバレてるし。

 

 

 

仲違いしてるとはいえ、ファウストが北都にパンドラボックスの保管場所を喋ってないとも限らんしなあ……

 

 

 

 

 

 

 

……しゃーない。

 

 

 

 

 

 

 

「りょーかいしました。これも平和のためです!わたしが全力でこのヤバい子を死守しましょう」

 

 

 

 

 

 

 

まあnascita laboに置いときゃ安全だろーし。

あそこにあれば奪われる心配はない。

 

 

 

 

 

 

 

美空も黄羽ちゃんもびっくりすんだろうなあ……

いきなりあの超有名な箱が家に届いたらそれはそれはもう腰を抜かすよね。

 

 

 

マスターも……帰ってきたらびっくりするんだろーな……

 

 

 

 

 

 

 

「本当かい!?いや、ははは。断られたらどうしようかと思ったよ……」

 

 

 

「そうしたら今すぐ車の手配をしよう!この事が露呈しないように内密にね。パンドラボックスも何かで包んだ方がいいな」

 

 

 

 

 

 

 

相当嬉しいのかなんだか。

さっきまで難しい顔をしていた泰山首相が、今や安堵に満ち溢れた清々しいとも思える表情をしている。

 

 

 

まあもし奪われたりなんかしたら本当にそれこそ東都どころか日本、いや世界滅亡の危機だもんね。

 

 

 

 

 

 

 

……実はわたしも前からちょっと調べたかったんだよね。この箱。

 

 

 

 

 

 

 

「そんじゃあまあなんかダンボールとかにいれればいいんじゃないですか?」

 

 

 

「いや、戦兎さん……さすがにダンボールは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――つーわけで。うちに新しく居候する事になったパンドラボックスくん。みんな仲良くしてあげて」

 

 

 

 

 

 

 

約束通りにnascita laboでティータイムをしていた可愛い妹2人に、ダンボールにいれて持ち帰ってきたパンドラボックスをお披露目すると。

 

 

 

そりゃあもうびっくりした顔してました。

 

 

 

 

 

 

 

……やっぱり驚くよね?

 

 

 

 

 

 

 

「えっ……戦兎それ……盗んできたの?」

 

 

 

「戦兎ねえ、ドロボーはだめだよ……あたしも着いてくから、一緒に謝りに行こ?」

 

 

 

 

 

 

 

うーんなんだろうこの感じ。

こいつらから見たわたしってどんなんなんだろう。

 

 

 

犯罪者か?そんな凶悪犯に見えんのか?

お前らお姉ちゃんをなんだと思ってんだ。

 

 

 

 

 

 

 

ていうか黄羽ちゃん。

こんな超世界級の危ねーもん盗んだら謝るだけじゃ許されないからね?

 

 

 

 

 

 

 

「あのねー……わたしがそんな事するように見えますかって」

 

 

 

 

 

 

 

こんな超美人でダイナマイトぼでぃの犯罪者が居てたまるかっての。

どうみても正義の味方だろーが。

 

 

 

本当に失礼しちゃ――

 

 

 

 

 

 

 

「うーん……戦兎かあ……見えちゃうなあ……」

 

 

 

「戦兎ねえってちょっと危険なカンジするもんね」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの評価やべーじゃん。

まさかあのファウストと同じ扱いだったの!?

 

 

 

まじかよ……かなりショックなんですけど……

 

 

 

 

 

 

 

「……泰山首相から預かってくれって頼まれたんですぅ。貴女にしか頼めないって言われたんですぅ」

 

 

 

 

 

 

 

酷い。本当に酷いやつらだ。

確かにね!?ハッキン……とかもしたけどね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……あっ。身に覚えあるじゃん。

 

疑われるよーなことしてたな。

そーゆー事か。だからか。てへっ。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、そうなの?ははは、やだもう!まさか、ねー?いくら戦兎でもそんな事するわけないもんねー、黄羽っち?」

 

 

 

「う、うん!そだよー!いくら戦兎ねえが危ない感じだからって、ねっねっ!みーちゃん!あははは……」

 

 

 

 

 

 

 

こいつら結構ガチめに疑ってやがったな。

姉をそんな凶悪犯罪者だと思うなんて失礼極まりないなおい。

 

 

 

……わたしもなんとなく疑われるよーな事してきたから何とも言えんけど。

 

 

 

 

 

 

 

「まぁそーゆーわけだからさ。とりあえず落ち着くまではうちで預かる、って感じ」

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず北都とのゴタゴタが終わってからかなー。

その後に新しい保管場所を探しなが――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――戦兎ちゃん美空ちゃん!居る……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだかとても懐かしいような気がした。

実際はそんな久しぶりじゃないけど、色々あり過ぎて久々に会ったような。

 

 

 

その声がした方に視線を移すと、あの艶やかな女性がいた。

あの、とんでもないスピードで情報を得てくる彼女。

 

 

 

 

 

 

 

わたしの大切な存在の1人。紗羽嬢。

 

 

 

 

 

 

 

「居るよー!降りてきなよー!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしの声がけで降りてきた彼女は、どこか元気が無さそうだった。

よくわからないけど、何かあったかのように見えてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

「う、うん!……あら?この仔は……?」

 

 

 

 

 

 

 

それもそうか。

紗羽嬢は初めましてか。

てっきりもう知ってるもんだと思ってたわ。

 

 

 

 

 

 

 

「んとね、この子は黄羽ちゃん。北都の子なんだけど……まあ、色々あって」

 

 

 

 

 

 

 

まあその事は2人きりになった時に話せばいいっしょ。

黄羽ちゃんの前で話して、またあの記憶がフラッシュバックしたら可哀想だし。

 

 

 

 

 

 

 

「へえ……私は紗羽。滝川 紗羽よ。よろしくね、黄羽ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

……気のせいだったのかな。

 

さっきまでなんだか変な感じだったような気がしたんだけど、今はいつもの紗羽嬢だ。

 

 

 

うーん。わたしが勘違いしてただけかな。

 

 

 

 

 

 

 

「んんん!よろしくねさーちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

……えっ。

 

 

 

さー……ちゃん?

 

今この子、紗羽嬢の事さーちゃんって呼ばなかった?

聞き間違いじゃないよね?言ったよね?

 

 

 

 

 

 

 

「あら、あだ名で呼ばれるなんていつぶりかしら!ありがとう、とても素敵なあだ名で嬉しいわ」

 

 

 

 

 

 

 

えっえっえっ。

どういう事これ。

 

 

 

美空はみーちゃんでしょ?

万丈は確か……バカちゃんだっけ?万ちゃん?

 

それで紗羽嬢がさーちゃんって……

 

 

 

 

 

 

 

「黄羽ちゃん!?なんでわたしだけあだ名じゃないの!?」

 

 

 

 

 

 

 

何このハブられた感!?

わたしだけ仲間外れみたいな!?

 

 

 

万丈はともかくとしてもだよ?

美空や紗羽嬢より先に仲良くなったのに!!

 

というか紗羽嬢に至ってはたった今初めましての挨拶をしたばっかりなのに!

 

 

 

 

 

 

 

この差は……一体……

 

もしかして戦った時に背中蹴飛ばしたから……?

それで恨んでるみたいな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんん?だって戦兎ねえは……なんていうのかな。あたしのお姉ちゃんみたいな感じだから!だから戦兎ねえ!」

 

 

 

 

 

 

 

これは……喜んでいいやつだよね。

わたし今喜んでいいやつだよね。

 

 

 

 

 

 

 

……照れちまうじゃねーか。へっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何ニヤニヤしてんの、戦兎」

 

 

 

「えっ!?いや、なんでもないっす」

 

 

 

 

 

 

 

危ない危ない。表情に出ていたようだ。

美空の冷たい視線が物凄く痛い。刺さる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そういや紗羽嬢なんか情報掴んだのかな。何か得たような感じだったけど。

 

 

 

元気なさげだったのも……もしかしてその情報のせい?

 

 

 

 

 

 

 

「紗羽嬢!なんか情報、手に入った?」

 

 

 

「あっ……うん、一応……」

 

 

 

 

 

 

 

どうしたんだろう紗羽嬢。

なんだかまた元気がなさそうだけど……

 

 

 

もしかして黒幕の正体が何か意外過ぎたとか!?

 

 

 

 

 

 

 

……もし泰山首相が黒幕だとかだったら笑えないんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

「紗羽嬢、まさか裏で暗躍してた連中わかったりしちゃった感じ?」

 

 

 

「あっ、いや……それは……」

 

 

 

「ごめんなさい。まだわからないわ」

 

 

 

 

 

 

 

違うのか……じゃあなんだろ。

やっぱりなんだかいつもと違うし。

 

何かプライベートであったのかな?

 

 

 

誰かにふられた……とか?

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、紗羽さん?なんだかあの時から変だよ……?」

 

 

 

 

 

 

 

そういえば前に美空が言ってたような。

 

泰山首相の意識を取り戻すために東都総合医療センターに紗羽さんと一緒に行った時、泰山首相の病室に入ってから紗羽嬢の様子がなんか変だったとかなんとか言ってた。

 

 

 

あの時は美空の方ばかり考えてたから紗羽嬢の事は考えられなかったけど……何かあったのかな。

 

 

 

泰山首相と何か……?

いや、それは考えにくいな……

 

 

 

 

 

 

 

「ううん、本当に大丈夫。ありがとう美空ちゃん」

 

 

 

「……情報は、得たわ。でも……受け入れる事が難しいモノかもしれない」

 

 

 

 

 

 

 

まあその事は後で美空に聞いてみるとして、やっぱり何か情報を取ってきたんだね。

さすが紗羽嬢。本当に仕事が早い。

 

 

 

でもそうするとなんだろうな……まさか葛城忍とか?

いやでも受け入れる事が難しいかもとか言ってるし……なんなんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

「見て……この映像。独自に入手したモノなんだけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう言って紗羽嬢が見せてきたとある映像には。

信じられないモノが映されていた。

 

 

 

決して信じたくはない。

あいつに限ってこんな事など絶対に有り得ない。

 

 

 

 

 

 

 

でもそこには……あいつの姿が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにやってんの……万丈……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 








紗羽「とゆーわけで!私も久々に本編に出まして!」

紗羽「黄羽ちゃんとも初絡みね♡」

黄羽「んんん!改めてよろしくねっ!」

紗羽 (やだ可愛い……♡何この仔……♡)

紗羽 (美空ちゃんとはまた違う可愛さ……♡)

紗羽「じゅるっ……やばいやばい」

黄羽「さーちゃん大丈夫?」

紗羽「大丈夫大丈夫!」

紗羽「ちなみにね?黄羽ちゃんって」


紗羽「お 洋 服 好 き ?」

黄羽「んんん!好きだよーっ!」

紗羽「そう……良かった……♡」




戦兎「これやばくね?」

美空「悪い顔してたし。多分餌食になるし」

惣一「そもそも滝川が絡みと言うな。」

惣一「やばい言葉にしか聞こえねえわ」




紗羽「……んふっ♡」


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