Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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戦兎「いやー。わたし大活躍だったなー」

戦兎「わたし凄い!わたし強い!わたし最高!わたしてぇんさぁい!」

万丈「うるせーなぁ……いつもこんなんなんすか?」

惣一・美空「「まだ可愛い方」」

万丈「まじかよ普段どんな兵器なんだよ」




戦兎「そんな可愛いわたしが大活躍する第6話!どーぞー!」

惣一・美空・万丈「「「黙れ」」」





phase,5 蛇睨み

 

 

 

 

 

 

 

 

 

汗が滴る。そんなに暑くもなく蒸している訳でもない。

この全身を貫く様な、恐怖すら感じるこの緊張感。そのせいだ。

 

 

 

俺はさっきから超非現実的な事を目の当たりにしている。

スマッシュ?だかいうバケモンに襲われたかと思えば、俺を助けてくれた戦兎ってやつは赤と青の戦士に変身しちまうしよ。

 

 

 

かと思えばバケモンは人間になっちまうし……

あ゛ぁ!頭がパンクしそうだ!!

 

 

 

 

 

 

 

そしたら今度は血を纏った蛇みてーな奴が来やがるし……

でもあいつ、どっかで――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――敵、ってどういう事?」

 

 

 

 

 

 

 

さっきこの狂った蛇、スタークが言った言葉がわたしの頭にリフレインする。

あんな言葉を聞き間違える訳はない。

 

 

 

 

 

 

 

『ハッハッハ!!どうしたMs.ビルド。動揺してんなァ?ならば教えようか。そのままの意味だよ。戦兎!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は人類全ての敵で、お前の探している答えを知る存在だ』

 

 

 

 

 

 

 

わたしの探している答え?それってつまり……わたしの記憶?

なんで、なんであいつがわたしの記憶を?なんで?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?ぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?ぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?なぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜ、わたしの名前を知ってる?

 

 

 

 

 

 

 

「……なぜ、大切な人がつけてくれたわたしの名前を知ってるんだ……お前……」

 

 

 

 

 

 

 

目の前の蛇が憎い。目の前の鮮血が憎い。

目の前の狂気がどうしようもなく憎い。

 

なぜかはわからないがわたしの心を、わたしの身体を憎しみが包んでゆく。わたしの全てがどす黒い何かで染まってゆく。

 

 

どうしようもなく、許せないほどに。

 

 

 

 

 

 

 

『くくく。まあまあそう怒るなよ。この文明社会、名前を知る手段なんざいくらでもあるぜ?……例えばお前が居候している喫茶店、とかな』

 

 

 

「……おい。もし、もしわたしの大切な人達や場所を汚してみろ。その狂った指の一本でも触れてみろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時は……お前を……」

 

 

 

 

 

 

 

『ハッハッハ。安心しろ。お前さんの言う大切な場所なんざ興味がねェ。何もしないから安心しとけ』

 

 

 

『それよりも……だ。今のお前は正義のヒーローというよりも、まるで悪の化身のようだな』

 

 

 

 

 

 

 

その言葉で我に帰る。わたしは?

わたしは一体何を?何を考えていた?

 

 

……今、目の前のスタークを殺したいと……?

 

 

 

 

 

 

 

そんな……わたしが……人を……?

 

 

 

 

 

 

 

『ふん!正気に戻ったか?手の焼ける小娘だなァおい。まあいい。それよりも俺を見て何か気付かねぇのか?お前らはよ』

 

 

 

 

 

 

 

未だにわたしの中の黒い何かは消えないが、それでも意識ははっきりとしてる。うん。大丈夫。

 

それにしてもなんなんだこいつは。

確かにどこかで見たことはある気がするけど、初対面だし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おい!てめえら何すんだ!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おい!!聞いてんのかよ!?なんだよこれ!?】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【おい……ふざけんなよ……やめろよ……】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ぐああああああああああ!!!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、お前……まさか、あの蝙蝠野郎の仲間なんじゃねえだろうな……」

 

 

 

 

 

 

 

全身から汗が吹き出す。

俺の脳裏にあの記憶が蘇る。

 

多分これから先二度と忘れないであろう、忌々しいあの場所。あの連中。

 

 

 

そこに居た、クソみてえな王座に座ってた蝙蝠野郎。

確かに所々違えど、まるであいつに――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――万丈の言葉で脳がゆらめく。

同時に、わたしの脳内にさっき思い出した記憶の断片が貫く。

 

 

 

 

 

 

 

そう。そうだ。なぜわからなかったんだ。

なぜ疑問を持たなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こいつは……ブラッドスタークは。

あの忌々しい蝙蝠に気持ち悪いほど似ている。

 

 

 

そっくりという訳ではない。同じ装飾という訳では無い。

しかし、同じだ。あのフォルム……

 

 

 

 

 

 

……コンセプトが同じ、なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……スターク。わたしからも聞きたいことがある。お前、あの蝙蝠野郎とどういう関係だ……?」

 

 

 

『ククク……ようやく気付いたのかよ?【憐れな兎】と【愚かな龍】?ほんっとにしょうがねえ子供たちだなァ?おい?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦兎と万丈は真っ直ぐな眼差しで蛇を睨む。

 

 

 

 

 

 

 

『蝙蝠野郎……か。可哀想になぁ。あいつそんな風に呼ばれてんのか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうだ!正解だよご両人!!お前らの身体をいじくり回した連中、その中でお前らが見た暗黒の蝙蝠。そいつぁ俺の知り合いだよ。』

 

 

 

 

 

 

 

目を見開いてその場から動かない2人を、まるで空気かのようにして吐き出す蛇。

その姿は邪悪の権化。

 

 

 

 

 

 

 

『お前らが気になる奴の名前は《ナイトローグ》。お前らの大好きな蝙蝠だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺が所属する組織《ファウスト》の一員だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もちろん、お前らの一件に関与しているのも、例外無く我が組織ファウストだよ、ご両人?』

 

 

 

 

 

 

 

狂気の権化のような蛇はその全てを吐き出したあと、どこか哀しく嗤う。

 

 

 

 

 

 

 

「お前が……お前らが俺を……」

 

 

 

「てめえええ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

戦兎が気付いた時にはもう遅かった。

生身の限界を超えた速さで万丈はスタークに突進していた。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと!!何やってんの!?」

 

 

 

『ふふっ。いいねェ!面白い!!遊んでやろうかァ?』

 

 

 

 

 

 

 

だめだ。生身で勝てるわけない。

それに、わたしの全細胞が告げてる。

 

 

今あれと戦ってはいけないと。

 

 

 

 

 

 

 

「逃げろっつーのお!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

わたしは力を振り絞り、スタークに近付く。

あいつを、初対面の脱獄犯を助けるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『わりぃな。今日はお前じゃなくて龍と遊ぶ事に決めてんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それだけが脳内に浸透し、わたしの意識は闇へと落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――これで邪魔者はいなくなったなぁ、万丈?』

 

 

 

 

 

 

 

あのバケモンを倒したあいつが……一撃で……?

 

 

 

 

 

 

 

「おい!!今そいつに何した!?」

 

 

 

『安心しろよ!ただ眠ってるだけだ。眠り姫、ってやつか?』

 

 

 

 

 

 

 

こいつの冗談は寒気がする。憎い憎い憎い。

俺の身体に何かをした、あいつが憎い。

 

 

 

 

 

 

 

『さァ。来いよ。遊んでやっから。それとも何か?怖いか?……それじゃあお前は何も守れねぇかもなァ』

 

 

 

 

『……例えば愛する彼女、とかな』

 

 

 

「……てめえ。香澄に手出すつもりか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の心の憎しみが……漲る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はっ!興味無いから安心しろよ……多分な』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の憎しみの炎が……燃える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……そのままじゃやばいかもしれないけどなァ?ん?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の憎しみの全てが……迸る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……殺す」

 

 

 

 

 

 

 

俺は気付いたらこのクソ野郎が目の前に居た。

 

身体が勝手に動く。なんだこの気分は。

身体は軽いけど、意識が重い。

まるで自分が自分で無くなるような……

 

 

 

あの蛇野郎を一方的に押してんぜ、おい……

はは、すげえな俺。まるで人間じゃないみたいだ……

 

 

 

 

 

 

 

『ヒャハハハ!いいねェ!!怒れ!苦しめ!足掻け!それがお前たちの力になる!!!』

 

 

 

『……だがな。その怒りは違う。自我が無くなる怒りではよ?俺は殺れねえぞ』

 

 

 

 

 

 

 

「か……は……」

 

 

 

 

 

 

 

突如蛇野郎が消えたかと思った瞬間、横っ腹に今まで味わった事のない強烈な衝撃が襲う。

まるで内臓が全て粉々になったかのような……

 

 

 

なん……だ……これ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『まだまだ……でもやるなぁあいつ』

 

 

 

 

 

 

 

あの瞬間だけだがハザードレベル3.8。

こりゃあバケモンだなおい。

 

 

 

戦兎ですらまだ3.3なのによ……これからが楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……しかし、彼女か……ちっ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お……い、そいつに……万丈に、手ぇ出すな……」

 

 

 

 

 

 

 

まじかよ。起きちゃうのかよ。

頼むから寝ててくんねえかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

『今回はこいつに付き合ってやっただけだ。何もするつもりはねぇよ』

 

 

 

『……まぁ、せいぜい頑張れや』

 

 

 

 

 

 

 

……頑張れよ、戦兎。万丈。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんなん……だ、お前……は……?」

 

 

 

『言っただろう?お前ら人類の敵だ。全ての、な』

 

 

 

 

 

 

動……け!!わたしの身体!!

 

まだあいつには聞かなきゃいけないことがある……!!

わたしの記憶の事……なぜわたしの名前や大切な人達のことを知ってるのか……!!

 

 

 

 

 

 

 

「わたしに……わたしに何を……した?わたしの記憶の事……知ってるのか?それに……なんでわたしの大切な人の事を……」

 

 

 

 

 

 

 

だめだ。上手く喋れない。脳もどんよりしてる。

くそっ、大事な時なのに。チャンスなのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くくっ。欲張りなお姫様だ。いいだろう、少し教えてやる。お前の記憶にまつわること……それは俺やローグが所属する、ファウストに全て行き着く』

 

 

 

『自分の記憶の事、そして大事な何かを護りたいなら……強くなれ。力を持て。全ての魔手から抗い蹂躙する程のな。そうでなければお前たちの全てが蹂躙されるだけだ』

 

 

 

 

 

 

 

「……お前は……何者なんだ……?」

 

 

 

 

 

 

 

何故だろう。さっきまで殺したい程憎かったのに。

あってはならない気持ちになる。

 

……絶対に感じてはいけないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんでこいつから……

 

 

 

いつもマスターから感じる優しさに、わたしの全身が包まれるの……?

 

 

 

 

 

 

 

この蛇はどうしようもなく敵だ。狂気だ。悪の権化だ。

マスターとは真逆の存在なのに……なんで……

 

 

 

 

 

 

 

『俺はお前たち全ての敵だ。ゆめゆめ忘れるな。決して交わる事の無い悪だ。今も、これから先も……な。永遠に』

 

 

 

「……当たり前だ」

 

 

 

 

 

 

 

そうだ。こいつは敵だ。どうしようもなく敵だ。

……きっと今日は色々あって疲れてるだけなんだよ、わたし。

 

 

 

 

 

 

 

『……いい心がけだ。それじゃああと2つ、プレゼントしてやろう。まず1つ、心の闇に飲まれるな。万丈みたいなタイプはかなり危険だしな。しっかり教えといてやれ。それに……お前もだ。さっき呑まれかけていただろう』

 

 

 

 

 

 

 

万丈?なんでわたしが……?

というかなんでそんなことをこいつが……?

 

 

 

 

 

 

 

何がしたいんだろう、この蛇は……

 

 

 

 

 

 

 

『お前みたいなタイプはな、基本的には強い。しかし一度呑まれかけると抗えない。その事を忘れるな。お前は【正義のヒーロー】ではないのか?』

 

 

 

「……そんなことわざわざ言われなくてもわかってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり。マスターに叱られてるみたいだ。

なんでこんな奴から感じてしまうんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

……そう感じてしまうわたし自身に腹が立つ。

 

 

 

 

 

 

 

『わかっているなら気をつけろ。闇に呑まれたらお前はもう【こちら側】だ。その時は手遅れだぞ。まあ、悪に堕ちたいなら止めはせんがな』

 

 

 

「誰が……誰がお前らみたいな汚らわしい連中なんかに!!!」

 

 

 

 

 

 

 

『ハッハッハ!!汚らわしいか!!間違いねェよ。ま、わかってんなら気をつけろ』

 

 

『それと最後にだ。お前がこの脱獄犯を逃がした共犯って情報は漏れない。だから安心して大手を振って外に出れる。まあ、万丈はちょいと難しいがな』

 

 

 

 

 

 

 

なんでこいつはこんなにもしてくれる?

 

 

 

 

 

 

 

もしかして……いや、そんなの絶対嫌だ……

 

 

 

 

 

 

 

……でもさっきから感じてる感情。

 

懐かしい感じ、心が少しほわっとなる気持ち。

もしかしてこいつは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、もしかしてさ」

 

 

 

『んん?なんだ?まだ質問か?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もしかしてあんたは……スタークは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記憶に無い……わたしの家族、とかなの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……くくく……ハッハッハ!!!んなわけあるかよ!!俺がお前の家族なわけねえだろ!!』

 

 

 

 

 

 

 

はー。よかった。ちょっと安心したわ。

そうだよね、わたしの家族がこんな最低なやつじゃないよね。

 

 

そうだよ、わたしにはマスターと美空っていう、さいっこうな家族もいるし!何考えてんだか……

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、何でそんなことしてくれんの?あんたのメリットが考えられないんだけど」

 

 

 

『はぁ?そんなの決まってんだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前らが俺にとって最高のおもちゃだからだよぉぉ!!ハッハッハァ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

狂気の権化、鮮血の蛇。

こいつだけは絶対に……許さない。

こんなやつとマスターを重ねてしまったわたし自身も許せない。

 

 

 

こいつだけは……わたしの手で必ず……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は、わたしの手で絶対に倒す。忘れるなよ、スターク」

 

 

 

『名前で呼んでくれるたぁ嬉しいねぇ。お前こそ俺に簡単に倒されてくれるなよ、戦兎』

 

 

 

 

 

 

 

……汚らわしい、俺にな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それじゃあ俺はこの辺で帰るとするよ。もう飽きたしな。もう充分楽しめたしな』

 

 

 

「待て!!お前にはまだ聞きたいことがある!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁ。まだ足りないってか?強欲なお嬢様だねぇ。でも、また今度、だ。また会えるのを楽しみにしてるぜ、戦兎!Ciao♪』

 

 

 

 

 

 

 

そう言い残したスタークは銃からガスを噴射し、その姿を消した。

狩場を荒らし尽くし、次の獲物を狙う貪欲な蛇のように。

 

 

 

 

 

 

 

「……何も、出来なかった……」

 

 

 

 

 

 

 

取り残されたわたしを襲うのは、自分がどうしようもなく無力だという現実。

そして、敵であるスタークに縋りつき言葉を要求した己。

 

 

 

 

 

 

 

「……くそっ。くそっ。くそっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

その気になればスタークはわたしを殺す事など容易だった。

それほどまでの力の差。

自分をおもちゃ程度と判断された実力。

 

 

 

 

 

 

 

「次は負けない……絶対に……」

 

 

 

 

 

 

 

ファウスト。わたしの記憶にまつわる全ての根源。

そしてその気になればわたしの大事な家族にも簡単に危害を加えられるということ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「強く……ならなきゃ。もっと、もっと――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『――汚らわしい……か』

 

 

 

 

 

 

 

戦兎から言われた言葉が頭から離れない。脳内で反響する。

間違いない。全身が一欠片の淀みもなく汚れている。

 

 

 

……だが、それでいい。

 

 

 

 

 

 

 

『――どういう事だスターク?なぜ万丈を捕まえなかった!?』

 

 

 

 

 

 

 

あー。うるせえ蝙蝠だ。こっちは少しセンチ入ってんのによ。

ちったぁ黙っててくんねえかな。

 

 

 

 

 

 

 

『……いいじゃねえか相棒!計画は問題無く進むしよ。それに、だ。瞬間的にとはいえ万丈のやつハザードレベルが3.8まで上昇したんだぜ?こりゃあとんでもない収穫だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一閃、蝙蝠が蛇を狩る。

蛇の身を壁に叩きつけ、動きを遮断する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……おいおいなんだよ?いきなり壁に押し当ててよ?俺にはそんな趣味はねえぜ、ローグ』

 

 

 

 

 

 

 

ったく、いってーな。加減しろよ加減を。

中身おっさんだぞこっちは。

 

 

 

 

 

 

 

『――ここでは俺が王だ。忘れるなよスターク』

 

 

 

 

 

 

 

ったく……呑気なもんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ、悪かったよ。以後気を付ける。お前が大将だからなぁ!ハッハッハ!』

 

 

 

 

 

 

 

俺に壁ドンしてた蝙蝠から抜け出し、手を合わせおちゃらけた仕草でローグと向き合う。怒ったかな?

 

 

 

 

 

 

『――まあいい。気をつけろ』

 

 

 

 

 

 

 

ったく。ほんっとにめんどくせえやつだよこいつは。

 

 

 

 

 

 

 

『んじゃま、俺はそろそろお暇するわ』

 

 

 

『――なんだ。もうか』

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ。帰りを待っててやらないといけない奴がいるもんでね』

 

 

 

 

 

 

 

汚らわしくても、醜くても。

あと少しだけでも。まだ俺はあの子たちの傍に居たい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それがもう間もなく叶わぬ夢になる事を知っているから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 








戦兎「しくしく。しくしく」

惣一「……なにやってんの?また変なもん食った?」

戦兎「違うわ!!見てわかんない!?これ!?」

惣一「いやー……わかる?美空?」

美空「いや、全くわかんないし。万丈は?」

万丈「んー……プロテイン切れたとか?」

戦兎「どいつもこいつも!違いますぅ!」


戦兎「わたしのね、この健気な思いが今回は描かれたなぁと……さすがは主!人!公!!だなぁと……」





惣一「はい!という訳でね。今回も色々ありましたね!」

美空「ねー。てかわたしの出番まだ?待ってるの疲れたしー」

万丈「俺の強さも垣間見る事出来たしな!そろそろ出番も増える気
が!」

惣一「うんうん!そうだねー。よし!という訳で!」

惣一・美空・万丈「「「「次回をお楽しみにー!」」」





戦兎「酷いやみんな……ていうか本編ではまだマスターたちと万丈の絡みないのに……うぅ」



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