Masked Rider EVOL 黒の宙   作:湧者ぽこヒコ

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惣一「――いてて。あの野郎思いっきり壁に押し付けやがって……ってーなぁ」

美空「あ、おとーさんお帰りー!」

惣一「お、美空。ただいま!……相変わらず客はいねーなー。はは……」

美空「いつもの事だし、そんなの」

美空「ていうか見て見て!殺人犯が脱獄だって!!」

美空「名前は……ばんじょーりゅーが?」

惣一「……怖いなー。物騒だなー。美空気をつけろよ」

美空「ねー。ま、すぐ捕まるでしょ!」

惣一「そ、そうだな……」


冷や汗をかきまくりながら万丈に思いを馳せる石動 惣一であった。





phase,6 3人目

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あー。いってーな。

しかし。超人的能力を持ってしても痛みは伴うのかよ。くそぅ。

 

 

 

どっかの蝙蝠野郎(笑)に壁ドンされた身体の痛みを忘れるようにコーヒーを流し込む。

 

安心してくれ。美空が用意してくれてた缶コーヒーだ。

 

 

 

 

 

 

 

……それにしても、間に合ってよかった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいま……」

 

 

 

 

 

 

 

お、帰ってきたかお姫様!

……という事は。

 

 

 

 

 

 

 

「おうお帰り戦兎!!見た感じ怪我はなさそうだな」

 

 

 

 

 

 

 

本当にこれに尽きる。

俺が言うのもおかしな話だが、大事な娘だ。

 

娘を心配しない父親に成り下がった覚えはねぇからな。

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎!お帰り!ねえねえ、さっきテレビでやってたんだけどさ、殺人犯が脱獄したんだって!!」

 

 

 

 

 

 

 

美空が鼻息荒く戦兎にかけよる。

無事に帰ってきたのが余程嬉しかったんだろう。

 

そりゃそうだ。大事な家族だもんな。

 

 

 

 

 

 

 

「あ……うん。実はその事なんだけどさ……」

 

 

 

 

 

 

 

戦兎が気まずそうに呟く。うん。わかってるよ。

わかってますよ戦兎ちゃん。よし、臨戦態勢に入るぞ。

よしこい。さぁこい。いつでもかかってこい。

 

反応する準備は蝙蝠野郎(笑)に壁ドンされてた時から用意してたんだよこっちは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうも」

 

 

 

「……こいつが多分、美空が言ってる脱獄犯なんだよね……拾ってきちゃった。あは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よし。想定内!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「はああああああぁぁぁぁあ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

さすが我が娘。かんっぺきなシンクロだな。

 

 

 

 

 

 

 

「いやいや!?戦兎なにしてんの!?子犬拾ったみたいなノリで言ってるけど拾ったの脱獄した殺人犯だからね!?わかってんの!?共犯だよ!?というかそいつに私たちまで殺されるかもしれないでしょーが!!!」

 

 

 

 

 

 

 

我が娘は目を見開いて戦兎に詰め寄る。

あ、万丈くんが動いたら変な声出して後ずさりしちゃったよ。

 

可愛いなぁもう。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あのなあ戦兎さん。どういう経緯でそうなったのか全く理解出来ないんですけど……え?何?もしかして遂に出来た念願のボーイフレ」

 

 

 

「黙れ放蕩中年!!!」

 

 

 

「がはぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

戦兎さんの二重の鉄拳がぼくの心と身体を貫く。想定外だ。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……違うんだって。話を聞いて!実は色々あってさ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――なるほどなぁ。ブラッドスタークねえ」

 

 

 

 

 

戦兎から一通り話を聞き、戦兎に殴られた頬を擦りながら万丈を見る。

 

放蕩中年と罵られた心は瀕死のままだ。

 

 

 

 

 

 

 

「うん……その辺は何となくわかったけど……でもその人、万丈の事は本当に信用出来るの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

さすがは美空。うんうん。

世の中何でもかんでも信用しては危ないからな。

 

まあでもここはお父さんが戦兎に助け舟を出してやるか。

 

 

 

 

 

 

 

「……うん。まあしかし、見た所、万丈君だっけか?彼はなんというかな。ほら、見た感じそんな人殺ししそうなタイプに見えないし?」

 

 

 

 

 

 

 

我ながら最高のフォローだな!

 

 

 

 

 

 

 

「そういう問題じゃないでしょ!!!ややこしくなるからお父さんは黙ってて!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

今度は美空からとんでもないカウンターが来た。想定外です。

 

 

 

 

 

 

 

「うん。美空がそういうのもわかる。でもわたしもね?マスターじゃないけど、こいつがそんな事をするようなやつだと思えないんだ」

 

 

 

「こいつの……心っていうかさ。……それに、多分わたしはこいつと同じ事をされたんだよね」

 

 

 

 

 

 

 

おいおい戦兎。それじゃあ美空からのカウンターをもろに……

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ……戦兎がそこまで言うなら。私も信じるよ」

 

 

 

 

 

 

え?なんで?何この違い?

父としての尊厳とはこれ如何に?

 

完全に想定外なんですけど。

 

 

 

 

 

 

 

「お前らも……俺の事を信じてくれんのか……今まで誰も俺の言葉を信じてくれなかった……本当に、ありがとう……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

……ったりめーだよ。

信じるに決まってるでしょーが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……待てよ。戦兎がさっき、こいつと同じ事をされたって言ったよな?

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ。戦兎。お前、こいつと同じ事をされたって言わなかったか?お前それってもしかして――」

 

 

 

「うん。思い出した。わたしの記憶。……全部じゃないけど……多分きっと、わたしの記憶が無いことに関わってる事だと思う」

 

 

 

 

 

 

 

……そう、か。早いな。

もう、そこまで来てるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしは、暗い研究室みたいな所に居た。そして、1人が入れるくらいの大きさの箱に入れられた。わたしは叫んでるの。助けて、やめて、って。でも誰も耳を傾けてはくれなかった」

 

 

 

「ずっと叫んでたら、その箱にガスが充満してきたの。……そのガスはきっと有毒なんだと思う。わたしの全身に言葉じゃ表せないほどの激痛が迸ったから」

 

 

 

 

 

 

 

「そして、記憶が闇に沈む前に確かに見たの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

趣味の悪い王座に、気持ち悪い蝙蝠がいたんだ」

 

 

 

 

 

 

 

美空は絶句している。そうだろうな。

お前も似たような体験をしてきたし……ちっ。

 

 

 

 

 

 

 

「……俺も、同じ様な事をされた。全身に激痛が走るガスとかも全く同じだ。それに……あの蝙蝠野郎も」

 

 

 

 

 

 

 

万丈の眼からは憎しみの炎が宿っている。

……しょうがないけどな。でもこのままじゃ、な。

 

 

 

 

 

 

 

「……なるほどなあ。戦兎の記憶が1つ、解放されたって訳だな。そしてさっきいきなり現れたって言ってた血塗れの様な蛇が、その蝙蝠野郎に類似してんのか」

 

 

 

 

 

 

 

血塗れの蛇、か。上手いこと言うもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「酷似してる訳じゃないし、全く一緒って訳じゃない。でも、同じなんだよ。なんていうかコンセプトが同じ、って言えばいいのかな」

 

 

 

 

 

 

 

やかましく頭を掻きながら戦兎が答える。

……はは。コンセプトとはさすがだな。

 

 

 

 

 

 

 

「そうか。うん。とりあえずはわかった。……そうしたら。うん。万丈!」

 

 

 

 

 

 

 

俺にいきなり名指しされた万丈が驚く。

ふっふっふ。まだまだ修行が足りないようじゃの。

 

 

 

 

 

 

 

「まあお前他に行くとこ無いんだろうし。指名手配されてるしな。幸いうちには空き部屋がいくつかあるからここに住め。最近うちの元ひきこもりも働きだしたし、なんとかなんだろ」

 

 

 

「「えぇ!?」」

 

 

 

 

 

 

 

娘2人が詰め寄ってくる。しょーがねーだろこんなん。

ほっぽりだしたらまた監獄行きだってーの。

 

 

 

というか戦兎。お前はここに万丈を連れてきて住まわせる以外、どうするつもりだったんだよ詳しく教えろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと!?お父さん!?いくら信じるとしても、うら若き乙女が2人いる家に男子を住まわせるのはいかがなものかと……」

 

 

 

「そ、そうだよマスター!いいの!?マスターの愛する娘2人が危険な目にあっちゃうよ!?男はみんなケダモノだよ!?戦兎さんぱっくんちょされちゃうよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ははっ!大丈夫……万丈はな。

 

 

 

 

 

 

 

「まーしょうがねえだろ。それにこいつはそんなことしない気がするしよ。まあ万が一俺の可愛い娘たちに手ェ出そうとしやがったら……わかってんな?万丈よ?」

 

 

 

 

 

 

 

きっと今、俺の背後には魔王が君臨している事だろう。フフフ。

 

 

……あれ?万丈君泣いてない?え。嘘じゃん。

 

え?脅かし過ぎたの?俺?

まじかよこの子こんなナイーブな子だったのかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺、捕まってからずっと誰にも信じて貰えなかったから……誰に何言おうと信じて貰えなかった……自分以外の全てが敵に見えた……だから……まさか信じて貰えるなんて……ありがとう。本当にありがとう……」

 

 

 

「万丈……」

 

 

 

「あんた……」

 

 

 

 

 

 

 

……はあーあ。ったくよー。娘2人だけでも大変なのに。

でっかい息子を持っちゃったなー。

 

 

 

 

 

 

 

「知るかよ、そんなもん。俺やこいつらにとっては目の前に居るお前が全てだ。周りが何と言おうと俺たちは自分たちが見た事を信じる。どこのどいつがお前の敵なのかは知らないけどな。少なくともここに居る3人はお前の味方だ」

 

 

 

 

 

 

 

少なくとも、俺の大切な娘たちにはそう教えてるつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……ふう。まあお父さんの許しも出た事だし!ちゃんと家事手伝っ

てよね!」

 

 

 

 

 

 

 

さすがは俺の天使だ。

そのままいい子に育つんだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

「……ま。実験の手伝いも欲しかったし、ちょうどよかったわ」

 

 

 

 

 

 

戦兎は本当に素直じゃねえなぁ。だから彼氏できねえんだぞ。

ま、彼氏連れてきても俺のお眼鏡に適うかどうかは別問題だけどな。

 

 

 

 

 

 

 

「つーわけだ万丈。ここに住むからにはお前も家族の一員!甘やかさねえから覚悟しろよ?な?」

 

 

 

 

 

 

 

息子が欲しいお年頃だったしな。

さすがにキャッチボールをやるには大きい息子だけども。

 

 

 

 

 

 

 

「……ありがとう。よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

こうして新しい家族が増えたわけだ。

……立派な大黒柱になってくれよ、【頼れる龍】。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そしたら改めて!わたしはちょっとだけ記憶を取り戻したてぇん!さぁい!物理学者の桐生 戦兎だよ。年は24歳のぴちぴち乙女!敬意を払い戦兎様とお呼びなさい!!」

 

 

 

「あー。この自称天才は気にしないでね。私は石動 美空。年は18歳。まあ色々やってるし。てゆか眠いしもう。よろしく」

 

 

 

「うんうん。あの自称天才は本当に気にしなくていいからな。俺は石動 惣一。この店《nascita》のマスターだ。ま、惣一さんでもマスターでもなんでも好きに呼んでくれ」

 

 

 

「まぁ俺は客が全く来ないこの店の存亡のために、色々バイトやってっからあんまり居ないかもしれねえけど、わからない事があったら戦兎や美空に聞いてくれ」

 

 

 

 

 

 

 

俺の心が溶けていく。

憎しみに包まれていたマグマが、この空間の優しい清水で流されてゆく。

 

 

 

 

 

 

 

「ぶーぶー!マスターも美空もわたしの扱い酷くない!?自称って何さ自称って!!」

 

 

 

 

 

 

 

へっ。なんだろうな。すげえ居心地がいい。

それに戦兎、こいつの事は昔から知っているような……

 

 

 

 

 

 

 

「改めて、俺の名前は万丈 龍我だ。元格闘家の22歳。好きな物はラーメンとプロテイン!嫌いな物は勉強全般だ!よろしくな!」

 

 

 

「ぷぷぷ。プロテインが好きで勉強全般が嫌いて。それにその自信満々な顔。バカ丸出しじゃーん!あはははは!」

 

 

 

「あはははは!これから万丈のあだ名はバカだね!おかしいし!あはははは!」

 

 

 

「お、おい!?バカって何だよバカって!?せめて筋肉をつけろ筋肉を!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ははは。家族が一人増えるもんでこんなに賑やかになるとはなぁ。

 

いつまでも、いつまでもこの空間に居たい。

こいつらと笑っていたい。

 

 

 

でもそれは、俺には贅沢過ぎる。

こんな汚らわしい身体の俺が、こいつらの隣に居るのは大罪だ。

せめて、後少しだけ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そう言えば、少し引っかかる事がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――そういや万丈。お前家族とか知人に連絡しなくていいのか?ほら、信用出来る相手くらいには連絡取った方がいいだろ」

 

 

 

「きっとお前の事心配してんぞ。よかったらほら、電話使えよ」

 

 

 

「ん?連絡?」

 

 

 

 

 

 

 

散々バカにしてきた戦兎と美空を追いかけ回してる最中に、マスターがふとぼそりと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あー……そうだな。

親はもういねえからいいとしても、香澄には連絡しないと。

 

あいつ、俺がこんな事になって心配してるだろうし……

 

 

 

 

 

 

 

それにいくつか聞きたい事もあるしな。

 

あいつが俺を……

いや、香澄に限ってそんな事はねぇ。絶対ねぇよ。

 

 

 

 

 

 

 

「確かにそうだな。あんがとマスター!色々聞きたいこともあったし――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【それじゃあお前は何も守れねぇかもなァ。……例えば愛する彼女、とかな】

 

 

 

 

 

 

 

……おい嘘だろ……いや、そんなはず……

 

確かにあの蛇野郎は言ってた。

いや、でも、そんなはずは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……おかけになった番号は、現在電源をお切りになっておられるか、電波の届かない場所におられます。大変申し訳ありませんが、おかけ直し下さい』

 

 

 

 

 

 

 

嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だうそたうそだうそだうそだうそだ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……おかけになった番号は、現在電源をお切りになっておられるか、電波の届かない場所におられます。大変申し訳ありませんが、おかけ直し下さい』

 

 

 

 

 

 

 

だめだ。何度かけても繋がらない。

嘘だ。だめだ。そんな事あっちゃいけない。

 

 

 

そんな……あいつは、あいつは幸せにならなきゃダメなんだ……くそっ、くそ!!!

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、どうした万丈。なんかあったのか」

 

 

 

「どしたの?怖い顔して?」

 

 

 

「本当だし。どしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

今はそれどころじゃねえ。くそっ!!!

早く、早くあいつの所に行かねえと!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ!?どこ行くの!!」

 

 

 

 

 

 

 

足早にどっかいっちゃった万丈。

あいつ自分が指名手配されてんのわかってんのかな?

 

 

 

さいっあくだなもう……

 

 

 

 

 

 

 

「戦兎!!今すぐ万丈を追いかけろ!!!早く行け!!」

 

 

 

 

 

 

 

急にマスターが怒声にも似たような大声を張り上げる。

えっえっ?なになに?わたしなんかしたっけ?なんかあったの?

 

 

 

もしかしてバカバカ言い過ぎて怒っちゃったのかな。

……だって反応が面白いんだもん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……探し出してちゃんと謝ろ。

きっとマスターはそれで怒ってるのかな。

 

 

 

そうだよね。自分の事を誰も信じてくれない状況に居たんだし、ちょっとしたことでも傷心に染みちゃうよね。

 

 

 

 

 

 

 

「うん!わかった!!万丈のこと探し出してちゃんと謝ってくる!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから風のように戦兎は店を出ていった。

 

ちっ、勘が当たらなきゃいいが……

あいつ、余計な事してねえだろうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まあ大丈夫だろう。

そんなすぐにはあいつも……

 

 

 

 

 

 

 

……ていうかなんで戦兎は謝るだかなんとか言いながら出てったんだ?あいつ万丈になにかしたの?

 

うーん……年頃の男女はわからんもんだなー。

 

 

 

 

 

 

 

「万丈、怒っちゃったのかな?帰ってきたら私も謝ろ……」

 

 

 

 

 

 

 

美空が落ち込んだ様子で床に言葉を零す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?嘘?美空ちゃんも?え!?なんで?

 

 

もしかして……三角関係なの?え、ちょっと早くない?

えーそういうのはさ、ほら段階を踏まないとさ?

 

 

 

……お父さん準備出来てないんですけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかも娘2人が同じ男を……?何この修羅場。

えっ、パパ的にはどっちを応援したらいいの!?

 

というかむしろパパはどっちも嫌なんですけど!

 

 

 

 

 

 

 

しかも万丈はついさっき家族の仲間入りをしたばかり……

しかも長男……いやだめだろおおおお!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな……そんな昼ドラみたいなドロドロした展開……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さんは許しませんよおおおおおおおおお!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

「……お父さん。いきなり叫んでどうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……To be continued

 

 

 

 

 








乙女が恥じらうが如き薄桃色をした花弁が舞い散る。
きっとそれは、幸せな夢の1日。

ふと薫るのは、胸に淡く広がる桜の君。
ふと想うのは、胸に凛々と輝く君の笑顔。







【また……一緒に……観に来れるかな】


【……あぁ。これからもずっとずっと、観に来れるよ。一緒に】














「……私と出会わなければ、もっと幸せな人生があったはずなのに……ごめんね……」






「待てよ!行くな!!約束しただろ! ?」



















「今までありがとう……龍我」



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