仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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STAGE 02-02 (side:magica-K.M.)

「あの転校生、あんたのこと狙ってんじゃないの?」

『学校の方が安全だと思うな。マミもいるし』

「この程度の距離ならテレパシーの圏内よ」

 

 

 

魔法少女と仮面ライダー、そして魔女を初めて見てから次の日。

わたしは昼休みにさやかちゃんと屋上でお弁当を食べていました。

 

転校生のほむらちゃんがキュゥべえを襲っていたのは、新しい魔法少女が生まれるのを阻止するためのようです。

魔女を倒すと(まだ詳しく知らないけど)見返りがあるそうで。

魔法少女みんなで協力できればいいのに、実際は競争になってしまうことが多いのだとか。

 

キュゥべえはテレパシーを中継することができて、今はそれでマミさんが見守ってくれています。

 

「ねぇまどか。願い事、何か考えた?」

「ううん。さやかちゃんは?」

「あたしも全然。なんだかなー。いくらでも思いつくと思ったんだけどなー」

 

青空に向かってひとつ伸びをするさやかちゃん。

 

「欲しい物もやりたいこともいっぱいあるけどさ。

 命懸けってところで、やっぱ引っ掛かっちゃうよね。

 そうまでする程のもんじゃねーよなーって」

「そう、だよね……」

 

口には出さないけれど、わたしたちの頭の中には永夢先生の顔が残っていました。

仮面ライダーに変身している間はちょっと不思議な感じがしたけど、ずっと優しそうな雰囲気で、小児科医って聞くとピッタリだなぁと思えて。

でも、あの一瞬……黎斗さんに契約を認められるか聞かれた時、その目は怒りとか哀しみとか、よくわからないけどすごく怖かったのです。

いつも命に真摯に向き合っているドクターだから、だと思うけど――。

 

「まぁきっと、あたしたちがバカなんだよ。幸せバカ。

 別に珍しくなんかないハズだよ。命と引き換えにしてでも叶えたい望みって。

 そういうの抱えてる人は世の中には大勢いるんじゃないのかな」

 

ゆっくりと目を閉じて想像してみます。

たとえば、救えなかった命を取り戻したい? いつかの友達を引き止めたい? 過去をやり直したい?

 

「だから、それが見付からないあたしたちって、その程度の不幸しか知らないってことじゃん。

 恵まれ過ぎてバカになっちゃってるんだよ」

 

ドクターの人たちが願い事を叶えられるなら、患者さんを治すとか病気を失くすとか願うのかな?

 

「……なんで、あたしたちなのかな? 不公平だと思わない?

 こういうチャンス、本当に欲しいと思ってる人は他にいるハズなのにね……」

 

その言葉で、さやかちゃんが上条くんのことを言っているのだとようやく気付きました。

 

たしかに彼の苦しみや辛さに比べれば、わたしたちなんて幸せバカなのかもしれません。

さやかちゃんはそこまで真剣に悩んでいるのに、わたしは何も言ってあげられなくて、こんな時ママなら気の利いたことを言えるのかな……。

さっきまで教室で、もし魔法少女になったらと衣装を想像してラクガキしていた自分が情けなくなります。

 

「……あっ」

 

屋上への階段を上がる足音が聞こえて振り返ると、そこにはほむらちゃんがいました。

スタスタと歩き寄ってくるその目は、わたしのことを真っ直ぐ見ていて。

責められているような気持ちになって、わたしは思わず目を逸らしてしまいます。

 

「大丈夫」

 

隣の校舎の屋上にいたマミさんからのテレパシー。

その手の中のソウルジェムが黄色く光ったのを横目に見ながら、ほむらちゃんは少し近くで立ち止まりました。

 

「昨日の続きかよ?」

「いいえ、そのつもりはないわ」

 

キュゥべえを抱いたわたしを庇うように立って、喧嘩腰なさやかちゃん。

臆する様子もなくほむらちゃんはキュゥべえを睨みつけます。

 

「ソイツが鹿目まどかと接触する前にケリをつけたかったけれど、今更それも手遅れだし……。

 で? どうするの? あなたも魔法少女になるつもり?」

 

それはさやかちゃんにではなく、ハッキリとわたしに聞いていました。

どうしてわたしだけ……?

 

「わ、わたしは――」

『僕は強制してないよ。まどかたちも今、迷ってるところだ』

「どっちにしろ、あんたにとやかく言われる筋合いはないわよ!」

 

2人の言葉も無視して、もうひとつほむらちゃんがわたしに尋ねます。

 

「昨日の話、覚えてる?」

「……うん」

 

自分の人生が貴いと思ってるか。

家族や友達を大切にしてるか。

今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思っちゃいけない。

でないと全てを失うことになる……。

 

「ならいいわ。忠告が無駄にならないよう、祈ってる」

 

あの時は意味がわからなかったし、今でも真意はわからないけど……。

でも、彼女がわたしを本気で魔法少女にしたくないということだけは、わかります。

 

「あ……ほむらちゃん」

 

踵を返して去って行くほむらちゃんが数歩のところで振り向いた時、その長い黒髪が風に舞いました。

 

「あなたは、どんな願い事をして魔法少女になったの?」

 

命を懸けてまで叶えたい願い。

それが何なのかわかれば、ちゃんとひとりひとり話し合えば、魔法少女みんなで協力して魔女と戦える……。

そんな甘い考えがこの時のわたしにはありました。

 

「……!」

 

けれどそれは、ほむらちゃんが見せた瞳の冷たさと揺らぎに、一瞬で崩れました。

 

わたしが衝撃を受けたのは、まるで自分が彼女を傷付けてしまったように感じられたからなのです。


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