仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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STAGE 02-05 (side:doctor-K.H.)

魔女の結界の中はやはり悪趣味な空間だった。

歪んだビルの鉄骨に昨日と同じ綿のような使い魔が並び、こちらを嗤いながら薔薇の花を運んでいる。

階段を上り、人物画の飾られた高い壁の迷路を足音と歌声に追われながら彷徨う。

 

俺も小児科医も仮面ライダーに変身しているが、やはりステージセレクトもできずエナジーアイテムも出現しない。

だが、

 

「ハァ!」「ハッ!」

 

使い魔へ与えられるダメージは上昇していた。

やはりHITのエフェクトは出ず音だけだが、撃破までに必要な攻撃数は半分程に減っている。

もし檀黎斗が携帯型ゲーム機を作らずガシャットの調整に専念していれば、ということは考えても仕方ないな。

 

綿の使い魔の歌は耳障りだが、襲ってくるのは別の使い魔だ。

コーンタイプのアイスクリームに蝶の羽とカイゼル髭、複数の目が付いている。

 

俺にはゲームキャラクターのデザインに関する知識も興味もないが、檀黎斗のデザインとは異なることはわかった。

……それ自体が奴による罠ではないか、という疑問は失わないよう気を付けている。

 

「邪魔しないで!」

 

巴マミがマスケット銃を大量に召喚すれば、それは訓練された兵隊のように陣形を取り、一斉射撃で使い魔を掃討した。

 

「永夢! 上だ!」

「ああ、任せろ!」

「わっ!? 来んな!」

「きゃっ!?」

「手は出させない!」

 

先頭で彼女が道を拓き、パラドが庇う鹿目まどかと美樹さやかを後方の俺と小児科医が守る。

 

「……」

 

檀黎斗は女子中学生たちの近くにいながらも、いつものように腕を組んで使い魔との戦闘を観察していた。

 

「数が増えてきたな」

「最深部に行く程敵が強く多くなる……ゲームのダンジョンと同じってことか?」

「ええ。足を止めれば囲まれるかもしれません」

 

魔女さえ倒してしまえば使い魔も結界も消滅する。

帰路のことは考えなくていい。ただ前進あるのみだ。

 

「どう? 怖い、2人とも?」

「なっ、なんてことねーって!」

 

どこか躍起になって叫ぶ美樹さやか。

怖い時には怖いと素直に言えばいい。

虚勢を張る必要なんて子どもにはない。

 

だが、そうして背伸びをすることも成長における大切な過程だ。

虚勢が崩れた時、その子を受け止める大人が近くにいること。

結果的に挫けても支えてくれる人がいる安心感を抱けること。

それを理解することは、患者の私情に踏み入らない俺の信念と矛盾しない。

 

「怖いけど、でも……」

 

しかし、俺は鹿目まどかと美樹さやかのことは見えていたのに――。

また()()()()()()()()()()大切なことを見落としていた。

 

 

 

『あれがこの結界の魔女。薔薇園の魔女だ』

 

開けたドアの下に広がる、異様な壁で構成されたドーム状の空間。

中心部で鳴いている巨体……あれが魔女か。

胃のような体に数本の脚と蝶の羽、泥が垂れたような顔、複数の薔薇の目が付いている。

 

厳密に言えば、起立した状態のように食道から繋がる噴門が上で顔が付いているのではなく、十二指腸へ繋がる幽門部を首として顔が付いていて……。

失礼。今はそんな話はどうでもいい。

 

『造園の使い魔と警戒の使い魔を従え、誰も住まぬ廃墟を好み、その性質は不信を司るんだ』

「不信を司る……? お前、妙に詳しいな?」

『僕には魔法少女をサポートする役割もあるからね』

 

魔女の周りでは綿の使い魔(おそらく造園の使い魔)が忙しなく動いており、薔薇を整えていた。

 

「正にここは奴の、奴のためだけの薔薇園ということか」

「うっ……グロい……」

「あんなのと、戦うんですか……?」

「大丈夫。負けるもんですか」

 

鹿目まどかの震えた声に、巴マミはいつもの微笑みを返してふわりと薔薇園に降りる。

続いて小児科医が降りようとしたが、

 

「ここは私に任せてください」

 

彼女自身に止められた。

その目には油断ではなく自信の色が灯っている。

 

「けどっ!」

「大丈夫」

 

巴マミが魔女にカーテシーをすると、摘ままれたスカートの中からマスケット銃が落ちた。

魔女は自らの台座を投げるが、彼女はそれをヒラリとバク宙しながら迎撃する。

その間に魔女は壁に沿って飛び回り始めた。

 

「アイツ意外に動く!」

 

ベレー帽から召喚した多数のマスケット銃を、撃つ度に投げ捨てては代えてまた撃つ巴マミ。

だが魔女の動きは大きさの割に素早く、捉えることができていない。

 

「足元だ!」

 

小児科医の叫びも間に合わない。

その隙に足元から黒い蔦が生え、巻かれた彼女は宙へ逆さ吊りになった。

負けじと両手のマスケット銃を放つが、弾は地面に撃ち込まれるだけだ。

 

「あっ!?」「マミさん!?」

 

小児科医がガシャコンブレイカーを構える。

 

「大丈夫よ」

 

しかし、再びその微笑みに止められた。

 

「未来の後輩に、あんまりカッコ悪い所見せられないものねっ!」

 

先程までに弾が当たった地面や壁から一斉に黄色のリボンが伸びる。

気付いた魔女は酷く狼狽し、顔をアメーバのように潰し開いて黒い茨とハサミを現した。

それに切られるよりも早く、今度はリボンが魔女を縛り上げる。

 

「惜しかったわね」

 

巴マミが胸元のリボンを解くと、それは鋭く固くなり蔦を切除した。

そのままリボンは銀の巨大な銃となり――

 

「待て」

 

誰もが決着を予感した瞬間、奴はそれを許さなかった。


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