仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
「クロト! そろそろ休まないとゲームオーバーになっちゃうよ!」
鏡総合クリニックの2階。
一心不乱にキーボードを叩き続ける檀黎斗に、まるで母親のようにポッピーピポパポが注意する。
そもそも椅子に座る姿勢が悪い。
それでは下肢のリンパと血の流れが悪くなり、血栓が出来てエコノミークラス症候群になる可能性が――。
「私のクリエイティブな時間を邪魔するなァ!」
「……ポパピプペナルティ、退場」
ポチッ。
「ヴェアアアアア!」
ガシャコンバグヴァイザーⅡへ吸い込まれていく檀黎斗。
「マダガシャットノチョウセイハオワッテナインダゾ!」
中からでこの大きさということは、奴が表で本気の声量を発揮するとどうなるのか。
巴マミの戦闘データを採取しウィザードゲーマーで戦えることが証明されてから1週間程。
檀黎斗は朝から晩までデータを取る時以外、基本的にガシャットの調整を続けている。
マジックザウィザードガシャット以外にその性質を加えるには手間がかかっているようだ。
本来魔法を扱うガシャットではないためだろう。
タドルクエストガシャットは剣と魔法のファンタジーRPGであったためか、最初に調整が終わった。
次に小児科医のマイティアクションXガシャットが済み、今はバンバンシューティングガシャットに取り掛かっている。
「命あっての物種ですよ」
小児科医の言う通りだ。
俺としては正直檀黎斗は疎ましい存在だが、ガシャットの調整を行える人材は他にいない。
開業医も(一発殴らせろとは言っていたが)概ね同じ意見で、監視しつつ利用するという、いつかに似た状況でもある。
「それじゃっ! お夕飯までバイバーイ♪」
「マッ
プツンと、ガシャコンバグヴァイザーⅡの電源が落とされて声が聞こえなくなる。
この世界で共同生活を快適かつ円滑に送るために、俺たちはいくつかのルールを設けた。
その中で毎日の家事を分担・当番制にすることが決まり、今日は監察医と女子ゲーマーが夕食を作る当番だ。
「自分、実家が洋食屋だからな」
「言ってなかったっけ? 父親が板前だって」
「母親がイタリアンレストランのシェフでさ~」
監察医の料理はどれもまあ美味だが、一々出てくるセリフの真偽は定かではない。
ちなみに……女子ゲーマーが当番の日は、開業医は当番ではない日でも手伝わされている。
パラドは同じ部屋で小児科医と、檀黎斗が女子中学生たちに与えた物と同じ携帯型ゲーム機で遊んでいるところだ。
「大我、意外と野菜とか肉とか切るの上手だよね」
「お前が下手なんだよ」
「ハァ!? アタシだって料理くらいできるっつーの!」
「どうせ家庭科の授業でやった程度だろ……」
「バカにすんな!」
「イッテ! 包丁持ってんのに蹴んな! 危ねぇだろうが!!」
今日も相変わらず騒がしいが、食欲をそそる香りが漂ってきていた。
――巴マミは、ちゃんと食べているだろうか?
不意にそんなことが思い浮かぶ。
しっかり者の彼女のことだ。偏った食生活をしているとは思わない。
家でジャージのままダラダラ過ごしたりダイエットしようとして独り焼肉でリバウンドしたりなど考えられない。
だが、巴マミがまだ中学生であることは事実だ。
まだ精神的に揺らぎやすい段階であり、子どもであることにも変わりはない。
たとえどれだけ過酷な人生を過ごしていようともそれは当てはまる。
……いや、だからこそか。
小児科医があの雨の日の事故の真相や家族のことを話さなかったように。
巴マミもまた、そんな運命を辿って巡ってきたからこそ、気丈に振る舞っているのかも知れない。
背伸びをするという、成長における大切な過程。
虚勢が崩れた時、その子を受け止める大人が近くにいること。
結果的に挫けても支えてくれる人がいる安心感を抱けること。
巴マミ……お前は、誰かに寄りかかることができるか?
「飛彩さん?」
険しい顔をしていたつもりはないのだが、小児科医が心配そうに顔を覗いてきた。
「ご飯、出来たみたいですよ?」
「ああ。……小児科医、お前は「早く来い! 私を焦らすなァァアアア!!」
――お前は今、ちゃんと俺たちに背を預けてくれているか?
そう問おうとしたのだが、ガシャコンバグヴァイザーⅡから出されテーブルで待つ檀黎斗に遮られた。
台無しだ。
「はいはい、すぐ行きますよ! ……飛彩さん?」
「いや……。今日のメニューを聞こうとしただけだ」
「中華料理みたいですけど……」
「そうか。辛そうな香りだな」
「あれ? 大先生、辛いのダメだった?」
「苦手という程でもないが……何を使った?」
「ああこれ? 辛味噌ゥッ!」
……なんだその発音は。