仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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STAGE 03-05 (side:magica-T.M.)

「言ったはずよね。二度と会いたくないって」

 

マンションまで息を切らしてやって来た鹿目さんに案内されて。

美樹さんたちが呑み込まれた結界に飛び込んで。

キャンドルで両側を飾られた道を、テレパシーで彼女たちを探しながら進む途中。

魔女は自分の獲物だと言ってきた暁美ほむらを、私はリボンで拘束していた。

 

「バカっ! こんなことやってる場合じゃない! 今度の魔女はこれまでの奴らとは訳が違う!」

「大人しくしていれば、帰りにちゃんと解放してあげる」

 

その忠告を出まかせと思い込み、私は鹿目さんの手を引いて先へ進む。

後ろからはまだ引き止める声が続いていたけど、鹿目さんが見ていない隙に口も塞いでしまえば静かだ。

 

「あっ、マミさん。あの……!」

 

動揺していた彼女は途中で立ち止まり、私の手を離した。

 

「願い事、わたしなりに色々と考えてみたんですけど……」

「決まりそうなの?」

「はい。でも、あのっ、もしかしたらマミさんには考え方が甘いって怒られそうで……」

「どんな夢を叶えるつもり?」

 

それまでモジモジとしていた彼女は、ゆっくりと話し出す。

美樹さんたちのためにも先を急ぎたかったけど、さっきの暁美ほむらのことが要因となったのか、鹿目さんは今話したいようだった。

 

「……わたしって、昔から得意な学科とか人に自慢できる才能とか、何もなくて。

 きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま迷惑ばかりかけていくのかなって。

 それがイヤでしょうがなかったんです。

 でも、マミさんやドクターの人たちと会って、誰かを助けるために戦ってるの見せてもらって。

 同じことがわたしにもできるかもしれないって言われて。

 何よりも嬉しかったのはそのことで……。

 だからわたし、魔法少女になれたらそれで願い事は叶っちゃうんです。

 こんな自分でも誰かの役に立てるんだって胸を張って生きていけたら、それが一番の夢だから」

 

鹿目さんの目には強い意志が宿っている。

それはどんな嘘偽りでも欺けないような、覚悟の光だ。

 

「大変よ? 怪我もするし、恋したり遊んだりしてる暇もなくなっちゃうのよ?」

「でも、それでも頑張ってるマミさんに……わたし、憧れてるんです」

「憧れる程のものじゃないわよ、私……」

「えっ?」

「無理してカッコつけてるだけで、恐くても辛くても誰にも相談できないし、ひとりぼっちで泣いてばかり。

 いいものじゃないわよ? 魔法少女なんて……」

「マミさんはもう、ひとりぼっちじゃなんかじゃないです!」

 

――2回目だった。

憧れを抱かれて、一緒に戦いたいと言われるのは、これで2回目だった。

 

最初のあの子に離れられた時、あれだけ辛かったのに。

けれど、私はもう一度誰かの手を取りたくなって――。

誰かに寄りかかりたくなっていた。

 

早く楽になりたかったのかもしれない。

 

「本当に……これから私と一緒に戦ってくれるの? 傍にいてくれるの?」

「はい。わたしなんかで、良かったら

「参ったな……まだまだちゃんと先輩ぶってなきゃいけないのになぁ。やっぱり私、ダメな子だ……」

 

溜まった涙が零れ落ちそうになるのを必死に堪えて、私は無理に笑みを浮かべる。

 

「でもさ。せっかくなんだし、願い事は何か考えておきなさい」

「せっかく、ですかね。うーん……」

「億万長者とか素敵な彼氏とか――じゃあ、こういうのはどうかしら?

 この魔女をやっつけるまでに願い事が決まらなかったら、キュゥべえに最高に贅沢なご馳走とケーキを頼みましょう!

 それで、みんなでパーティするの。私と鹿目さんの、魔法少女コンビ結成記念よ!」

「わ、わたし、ケーキで魔法少女に?」

「イヤなら自分で考えるっ!」

 

ええ……と苦笑いする鹿目さんの手を、私は再び引いて駆け出した。

 

「今日という今日は速攻で片付けるわよ!」

 

 

 

 

 

「お待たせ!」

 

巨大なドーナツやケーキ、フルーツ、フォークとスプーンが散らばるカラフルな空間。

物陰に身を隠していた美樹さんとキュゥべえ、すぐ近くで使い魔たちと戦っている仮面ライダーの2人と合流する。

でも、無事再会できたことを喜んでいる暇はない。

 

『本体が出てくるよ!』

 

欧米風のシリアルケースを突き破って現れる姿は、キャンディみたいな頭を持つ小さなぬいぐるみ。

 

飛び出した私は、その魔女が座る高い椅子の足をリボンで壊した。

そのまま、落ちてきた所をマスケット銃で思いっ切り殴り飛ばし、壁にぶつかった魔女を追って連射を始める。

 

『性質は執着。生前大好きだったお菓子を司る魔女だ! 気を付けて!』

「大丈夫よ。だって――」

 

鹿目さんの目を見て微笑めば、彼女は照れたように微笑み返してくれた。

 

だって、今なら何でもできるような、そんな気分だから。

 

「せっかくのとこ悪いけど、一気に決めさせてもらうわよ!」

 

体が軽い!

 

「巴マミ! ひとりで出過ぎるな!」

 

心が躍る!

 

「力を合わせないと!」

 

重い荷物がなくなっちゃったみたい!

 

「なんか、変じゃない?」

 

こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて!

 

「マミさん……?」

 

ひとりぼっちじゃないもの!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう何も恐くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティロ・フィナーレ!」

 

魔力が銀の砲を作り出す。

弾丸が魔女のお腹を貫く。

その口から別の顔が伸びて。

黒い体が迫って来て。

大きな口が、開いて――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、警告音が響いた。

 

 

 


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