仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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STAGE 04-03 (side:doctor-H.T.)

「暁美ほむらってのはお前か?」

 

工場跡地が並ぶ地区の廃墟の屋上。

そこに佇んでいた女子中学生に俺は声をかけた。

隣にはニコもいる。

 

「……よくここがわかったわね」

「フン。後ろめたいことがある奴ってのは、こういう場所で考え込むもんだろ」

 

夕闇に呑み込まれつつある街を、今日の終わりを迎えつつある街を見渡せる場所。

そこに他者の存在は必要ない。

隣に誰も置かずただ遠くから喧噪の中にいる人々を眺める。

そうしていると、より自分が世界から除外されているのを実感できる。

 

いや、俺が自ら世界を拒絶したんだ。

そのことを忘れないために繰り返し孤独を確かめ――

 

「はいはい。どうせポエミーな奴同士、発想が同じだけでしょ」

「おい」

「ポエミー……?」

「心の中で詩人になるタイプって本題まで時間かかるんだよね」

「おいッ」

「詩人……」

 

コホンと咳払いして、これ以上ニコに何か言われる前に本題へ入ることを決めた。

 

「お前が魔法少女殺しか?」

 

 

 

家で一日じっくり休んで心を落ち着かせた方がいい。

エグゼイドにそう言われたにも拘らずマミがクリニックに来たのは、17時を過ぎたついさっきのことだ。

 

「黎斗さんには、秘密にしたいんですけど……」

 

早々に、ゲンムの見張り役を負ったレーザー・ポッピーピポパポを置き、他の5人とマミで近くの公園へ場所を移す。

 

俺もゲンムのことは信頼していない。

今もガシャットの調整をしているようだが、そこに何の意図や思惑があるかはわからない。

昨日マミを助けたってのにも裏があるに決まっている。

 

「そんな……魔法少女が……!?」

 

だが、マミの口から聞かされたのはそのことについてではなかった。

 

エグゼイドが声を上げずにはいられなかった話……俺たちがこの世界に来る少し前、近くで魔法少女が殺される事件があった。

キュゥべえが見つけたその魔法少女は、魔女にやられたにしてはまだ意識も身体も残っていた。

肝心なのは、

 

「遺言は()()、か」

「ゲンムは第一容疑者だな」

「絶対アイツだって! どうせまたゲームのためでしょ!」

 

ブレイブ、パラド、ニコが即座に口にする。

そうだ。推定無罪なんて言葉もあるが、アイツの前科は多過ぎる。

 

「でも、その時はまだ黎斗さんもこの世界にいなかったんじゃ……?」

「永夢、それを確かめる手段はないだろ?」

「キュゥべえも、皆さんがいつからいるのかはわからないみたいでした」

 

俯いていたマミが謝るように頭を下げた。

 

「助けられたのは事実でも、どうしても怪しくて……」

「あっ! 黎斗さんが犯人なら、あんなに体張ってマミちゃんを助けるのは変ですよ!」

「都合の悪い情報を掴まれ襲ったが、まだ他の魔法少女は利用する気かも知れない」

「信じさせるためのブラフか。ゲンムならそのくらいやるだろうな」

 

ブレイブの言葉に賛同するパラドだが、エグゼイドだけはまだ違った。

 

「でも――」

「いい加減にしろ」

 

その胸元に手を伸ばしかけたが、なんとか自制する。

 

「アイツのゲームにお前が付き合うのは勝手だ。それが治療だってんならな。

 俺は付き合う気なんかねぇ。これ以上ゲームは――アイツに誰かが傷付けられるのは、ごめんだ」

「大我さん……」「大我……」

 

エグゼイドの過去もゲンムの過去も、マイティノベルでの覚悟も知っている。

だが、俺やブレイブに奴を恨む気持ちがないと言えば嘘になる。

 

「……もう一人、怪しい人がいます」

「ほむらだな?」

「パラド、何を言って!?」

「キュゥべえを躊躇いなく撃てるんだ。可能性は否定できない、残念だが……」

「飛彩さんまで! そんなこと……!」

 

 

 

俺だって子どもがそんなマネをできるなんて信じたくはない。

だが、もし本当にほむらが魔法少女殺しなら一刻も早く止めなければならない。

子どもの命を、子どもの笑顔を守るのは俺たち大人の義務、だろ?

 

……俺はひとりで探すつもりだったし誰にも言わずに出たが、ニコは勝手に付いて来た。

 

「私がノーと言えば、あなたはわたしを信じるの?」

 

もちろん、馬鹿正直に聞いてもハッキリとした答えが出ないのはわかっている。

俺の狙いはほむらの口からイエスかノーか聞くことじゃない。

 

「信じてほしいのか?」

「私は誰に信じられなくても構わない」

「まどかって子にもか?」

「っ……」

 

図星って反応だ。

 

マミから聞いた話だとほむらはまどかのことを妙に気に掛けていた。

そこを突いていけばその真意も探れるハズ。

 

FPSの対戦ゲームではボイスチャットで相手を煽り、ミスを誘うようなプレイヤーもいる。

そんなことをエグゼイドが語っていたのを思い出した。

 

「殺人犯なんかに思われたくないんでしょ!?」

「ほむらちゃんが犯人!?」

 

そして、そういうプレイヤーこそ痛い目に遭うことも。

 

「まど、か……!?」

 

俺たちが振り返ると、柱の陰にまどかの姿があった。

その目には驚きや哀しみの色が浮かび、ごちゃ混ぜになっている。

 

「なんでここにいるッ!?」

「そんな……そんなのって……!」

 

走り去るまどかと入れ替わりに現れたキュゥべえが、追おうとした俺とニコを遮った。

コイツが……、ほむらが犯人だと思わせるために、コイツが連れて来たのか!

 

「テッメェ!!」

『何か勘違いをしていないかい?』

「アアッ!?」

『僕は魔女の出現を、近くにいた魔法少女……暁美ほむらに知らせに来ただけだよ』

 

レーザーと違って俺には嘘を見抜く特技などないが、ゲンムの白々しいセリフなら見抜ける。

しかし、なんだコイツは?

アイツと同じ白々しさだけじゃない……もっと不気味なものを感じる!

 

『急がないと、既に結界が開いている』

「そんな! 早く行かなきゃ!」

 

ニコの言う通りだ。考えていても仕方ない。

だが、ほむらはその場で固まったまま動けないでいる。

 

「行くぞ」

「でもっ!」

『ひとりで勝てるとは思えない相手だ』

「……それでも、やるしかねぇだろ」

 

手の中のバンバンシューティングは、昼に調整が終わったばかりだ。


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