仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
嘘だって、すぐに言えませんでした。
そんなことする人じゃないって、すぐに言えませんでした。
ほむらちゃんを信じられない自分が、すごくどうしようもないダメな子に思えたのです。
どうしてわたしなんかが生まれてきたんだろう。
どうして一番いいと思えることが、みんなが当たり前にできることができないんだろう。
こんなわたしが誰かの本当の友達になんてなれる訳ないのに……。
「……あれ?」
泣きながらどこへともなく走って、呼吸の限界がきて立ち止まった時。
人影の少ない公園を歩いている仁美ちゃんを見つけました。
もう日も落ちたのに……不思議に思って、ごしごしと涙を拭って話しかけます。
「仁美ちゃん! 今日はお稽古事は――」
「あら、鹿目さん。ごきげんよう」
いつもと同じおしとやかで上品な挨拶。
けど、顔はわたしの方を向いているのに、仁美ちゃんの目はわたしを見ていないようで。
なによりその首筋にはブラウン管テレビみたいな痣が……魔女の口づけがあったのです。
「ど、どこに行こうとしてたの!?」
「どこって、それは……
カクカクとした動きで、虚ろな目でまた歩き始める仁美ちゃん。
「仁美ちゃん! 待って!」
今度はわたしの言葉も届いてないみたいでした。
「マミさんを……っ」
携帯を取り出して住所録を開いて、やっとマミさんの電話番号を聞いていなかったことに気付きました。
それに、昨日あんなことがあったのに……。
マミさんにはまだ戦ってほしくないな、と感じたのです。
そんな間にも仁美ちゃんは歩き続けていて。
わたしはまた工場跡地の方にやって来ていました。
近くには大我先生も、ほむらちゃんもいるだろうけど……。
呼びに行くことは――彼女と今会う勇気を、わたしは持てませんでした。
「俺はダメなんだぁ」「居場所がない」「苦しい」
「えっ!?」
暗い霧の中から仁美ちゃんと同じようにカクカクとした人たちが見えてきます。
おじさん、おばさん、若い人もいて。
十数人くらいがひとつの廃工場へ進んでいました。
仁美ちゃんに続いて、最後にわたしもその中へ入ると、後ろにあったシャッターがガシャンと落とされます。
「なに、なんなの……?」
灯りがなくて、埃を被ったなにかの機械や道具が少し散らかっている中。
集まった人たちは下を向いたままブツブツと独り言を繰り返しています。
「そうだ、病院に電話すれば!」
わたしは携帯でインターネットを開いて鏡総合クリニックを検索しました。
もうとっくに閉まっている時間だけど、あそこに住んでるって言ってたし、誰かは出てくれるハズ!
でも、トップに表示された番号に急いで電話を掛けようとすると
「どうしました?」
仁美ちゃんがいつの間にか顔をすぐ隣まで寄せてわたしを見ていました。
「ひっ!」
怯んでいる内に仁美ちゃんはわたしから携帯を取り上げてしまいます。
「かっ、返して!」
「今はこんな物、必要ありませんわ」
わたしが取り返そうとするのを片手で抑えて、携帯をポイっと後ろに投げる仁美ちゃん。
携帯は地面にガンッとぶつかって割れてしまいました。
これじゃあ助けを呼ぶこともできません!
「楽になりたい」
誰かのそのセリフを合図にしたみたいに、みんなの呟きが止まりました。
中心に一人のおばさんがよろよろと歩いてきて、持っていたバケツを置いて、何かを注ぎ始めます。
「あれって……トイレ用の洗剤?」
そこにもう一人、おじさんが小さなポリタンクを持って近付いていました。
書かれていた漂白剤の商品名と混ぜるな危険の警告文。
わたしは前に、スパゲティで汚れたタツヤの服を漂白するママに言われたことを思い出します。
「いいか、まどか?
この手の物には、扱いを間違えるととんでもないことになる物もある。
混ぜちまったら猛毒ガスであたしら家族全員あの世行きだ。
絶対に間違えんなよ?」
「ダメ……それはダメっ!」
「邪魔をしてはいけません。あれは神聖な儀式ですのよ?」
飛び出そうとしたわたしのお腹を、仁美ちゃんが片手で押さえて止めました。
「だって、あれ危ないんだよ? ここにいる人たちみんな死んじゃうよ!?」
「そう。私たちはこれからみんなで、素晴らしい世界へ旅に出ますの。
それがどんなに素敵なことかわかりませんか?」
彼女は、それはもうとても嬉しく楽しそうな顔をしています。
「
鹿目さん、あなたもすぐにわかりますから」
パチパチパチパチ。
廃工場に響くまばらな拍手。
「放してっ!」
力づくで仁美ちゃんから逃げて、人々の間を走り抜けて、バケツを奪って、投げて。
洗剤ごとパリンと窓ガラスを突き破って、バケツは外へ。
「ああ」
肩で大きく息をしているわたしに人々が詰め寄ってきました。
まるでわたしに傷付けられたと責めるように、恨みのこもった目で。
「あ、あぁ……!」
怯え声をあげながら、咄嗟にすぐ近くにあったドアへ入って鍵を掛けます。
ドンドンドンと外から殴りつける音に、わたしは耳を塞いでへたり込みました。
「ど、どうしよう……どうしよう……」
その時、積み上げられていたブラウン管テレビに砂嵐が映し出されて。
気味の悪い声といっしょに、天使のような小人が現れて。
わたしは魔女の結界の中へ連れて行かれます。
「あっ……イヤっ……誰か、助けて――」