仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
まどかの体にしがみついていた片翼の天使を撃ち落とし、彼女を抱えて地面に降りる。
恐怖と驚愕に染まった顔をしているが、外傷はないらしい。
まだ自力で立てないであろうその体を隣のニコに預けて、俺は辺りを一瞥した。
「随分とクラシックだな」
フィルムとメリーゴーラウンドが回る、水に満たされたような螺旋状の空間。
馬はCRTモニターを乗せていて、同じモニターが顔になっている天使もいる。
俺のトラウマでも抉りたいのか、そこには百瀬小姫や牧治郎の姿が映されていた。
実際に魔女の結界ってのを見たのは初めてだが、ホラーではなくグロ寄りだ。
俺にはゲームキャラクターのデザインに関する知識も興味もないが、ゲンムのデザインとは異なることはわかる。
……それ自体がアイツによる罠じゃないか、という疑問は失わないよう気を付けているがな。
「クラシックつーか古臭いって! 液晶と有機ELの時代だっつーの!」
CRTモニターに向かってあっかべんーをしているニコ。
口にはしていないが、表情はマイティノベルで過去の大会へ行った時と同じだ。
この魔女(使い魔か?)は個人のトラウマを見せつけて楽しむ、イイ性格してやがるらしい。
コイツは何もわかってない。
確かに消せない罪ってのはあるし、俺もその過ちを犯した愚か者の一人だ。
だが、それでも前に進んで行くことしかできないし、俺はもう覚悟を決めている。
戦場の砂漠の中でも十字架を背負いながら一歩一歩進んで行けるのが俺たち人間の――
「ハイハイ。ポエミーな時間は終了ー」
「おいッ!」
「ニコさんと、大我先生……?」
やっと声を出せるようになったまどかが俺のことを丸い目で見ている。
そういえば、まだエグゼイド・ブレイブ・ゲンム以外のライダーは知らなかったな。
「そっ! この黄色前髪がアタシの主治医、仮面ライダースナイプ!」
「引っ張んなッ! 照準補正がダメになったらどうする!」
少しは落ち着いた様子でさらに訪ねてくるまどか。
「あっ、ありがとうございます! ……ほむらちゃん、は?」
「ええっと……」
「来てねぇよ。言っとくが、まだほむらが魔法少女殺しと決まった訳じゃない。
カマ掛けただけだ。……誤解させて悪かった」
ゲンムが魔法少女殺しである可能性については言葉を呑み込んだ。
真っ黒だがあくまで疑惑の段階。
まどかの不安をこれ以上煽るのは悪手だろう。
「大我……」
何か言いたげなニコもそれを呑み込む。
キュゥべえには1人だとキツイと聞いた。
ブレイブからも昨日の魔女は一段と強かったと聞いた。
今のところハンドガンモードのガシャコンマグナム3発程で倒すことができている。
既に20体以上を撃ち抜き、片翼の使い魔の残りは数体にまで減っている。
単なる思い過ごしなのか、それとも……。
「油断しないでよ! こういうのはザコ全滅させてからボス戦だから!」
そんなガンシューティングみてぇに――。
いや。エグゼイドの話では、今までの結界はダンジョンのように最深部に魔女がいた。
探索型でなくともザコを先に大量に投入してくる戦術は似ている。
……やっぱこれは、
「バァン!」
最後の使い魔を討つ。
すると、一回り大きな片翼の使い魔2体に連れられ、上からさらに一回り大きいCRTモニターが降りてきた。
羽のようなツインテールを生やしていて、アハハハと嬉しそうな笑い声を上げている。
「フン。さしずめ、ボスとその取り巻きのパーティか」
「回復やバフしなければ――って、大我いつの間にかゲーム詳しくなったよね」
「誰かさんのせいでな」
「おかげ、だっての!」
ニコにケツを蹴り飛ばされると変身中でも痛ぇと思ってしまうのは何故なんだ。
「来るよッ!」
飛んできた3体の内まず左右の使い魔に狙いを付ける。
ニコの言った通り、本体の魔女をサポートされると厄介だ。
「チッ」
だが3体とも意外と素早く、向かって右の奴には3発撃ち込めたが左にはかわされる。
ダメージを負いつつも倒れている訳ではない右に、すぐにもう3発撃って消滅させた。
「これならどうだ!」
≪ズ・キューン!≫
ガシャコンマグナムのAボタンを押し、ハンドガンモードからライフルモードに変形させる。
連射はできないが、多少かわされても爆風に巻き込めるハズだ。
しかし、左にいた使い魔をロックオンした時、俺の動きは一瞬止まった。
視界の端にいた魔女本体のモニターの映像に、気を取られた。
あれは……グラファイトにやられた俺の近くで怯えている、ニコ?
「きゃああああああっ!?」
再び湧いた小さな使い魔たちがその隙にまどかを攫っていく。
左の奴に弾を直撃させて銃口をそっちへ向けるが、ハンドガンモードにしてもまどかを誤射しかねない!
「やめろーッ!」
まどかの四肢を四方へ引きちぎろうとする使い魔たちに走り出した。
「ッ!?」
だが、先に別の存在が切り離して彼女を助ける。
俺は最初、色のせいかソイツをブレイブと誤認した。