仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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STAGE 05-04 (side:magica-S.K.)

見滝原市の空気を吸うってのは、いつぶりになるんだっけか。

元からコロコロ姿を変える街だったけど(再開発とかなんとか)、また随分と変わった。

行きつけだった駄菓子屋のばあちゃんも、ボケて施設に入ったって聞いたし。

 

そう、本当はもうこの街にアタシの居場所なんかないんだ。

それどころかこの世界のどこにもありゃしない。

自分の手で失くしたんだ。

 

……あーヤメヤメ。

こんなところでンなことウジウジ考えるなんて性に合わない。

孤独拗らせたポエマーかよってんだ。

 

あむっとクレープを頬張るアタシが座ってるのは、送電塔の上の方の鉄骨。

下校時間なのか、下には制服を着た子たちがグループで喋りながら歩いているのが見えた。

 

クリーム色の服に赤いリボンと黒のスカート。

見滝原中の制服。何度も見たことがある。

今は見るだけで少しイラっとしちまう。

 

クレープをもう一口食って、視線を魔法で強化した双眼鏡に戻した。

覗く先、病院の屋上にいるのはバイオリンを弾く男と、それを囲う大人。

そして見滝原中の制服を着た女。

……ふーん。アレがこの街の新しい魔法少女ねぇ?

 

巴マミに後輩の魔法少女ができたってキュゥべえから聞いたのは、昨日の夜のことだ。

いつもはグリーフシードの回収にやって来るくらいで、後はどこぞの魔法少女が死んだって報告だけなのに。

わざわざそんな話されちゃあ気になるのも仕方ない。

 

アタシはてっきり、マミの奴はとっくに魔女に殺られちまってると思ってたけど。

魔女以外にも()()()()()()()()()()()()までいるって話だし。

 

所詮魔法少女なんざグリーフシードを狙うライバル同士。

助け合おうとしたって足を引っ張り合うのがオチ。

同業者潰しに走る奴がいたって不思議じゃない。

どっちかってんなら、まだマミみたいな甘ったるい考えの奴が生き残ってたってことが不思議だ。

 

 

 

「アタシは佐倉杏子。隣町の風見野で魔法少女やってるんだ。

 さっきは本当に助かったよ。アンタが来てくれなきゃやられてたね……」

「どういたしまして。私は巴マミ。助けることができて良かったわ」

 

あの時マミは、巨大な斧を持つ魔女の幻惑魔法に引っかかったアタシの前に現れた。

 

「あの魔女、アタシが魔法少女になって初めて戦った相手でさ。

 一度ヘマして逃げられちゃったんだ。

 他の子の縄張りに踏み入るのは行儀悪いと思ったんだけど。

 どうしても自分で落とし前つけたかったからさ……。

 結局アンタに迷惑かけちゃったよね」

 

キュゥべえに決められた訳でもなく、魔法少女同士は縄張りを越えないことが暗黙のルールになっていた。

 

「いいのよ。大事なのは一人でも多くの命を守ることなんだもの。

 魔法少女同士で縄張り争いなんて、本当ならすべきことではないわ」

 

珍しく優しい魔法少女だな……なんて思いつつ、アタシはお礼を言って去ろうとする。

 

「おかげで魔女も倒せたし、それじゃあ……」

「待って! あなたも魔力を消耗したでしょう?

 ソウルジェムの濁りを浄化しておかないと」

「? でも、それは今日のアタシがもらう資格――」

 

被っても先に魔女を倒した方にグリーフシードを手にする権利がある。

誰かに助けられたら、相手に譲るのがマナーだ。

 

「ふたりで倒した成果よ。魔法少女は助け合いでしょ?」

「いいの?」

 

ニッコリとした笑みで返され、ふたりでグリーフシードの浄化を分け合って。

その後アタシはマミの家に招かれた。

 

「どうぞ召し上がって? 特性のピーチパイよ。

 焼き上がるまでお待たせしちゃってごめんね」

 

スイーツショップで売られている、プロのパティシエが作ったみたいなピーチパイ。

 

「ちょーおいしいっ!」

「まだまだあるから遠慮しないでね。ひとりじゃ食べ切れないから」

 

夢中になって頬張ってたアタシは、そんな自分に気付いて恥ずかしくなる。

 

「あっ、えっと……助けてもらった上にパイまでご馳走になっちゃって……。

 なんだか図々しいよね、アタシって」

「招待したのはこっちなんだし、気にしないで。

 私も魔法少女の子とお茶ができて、とても嬉しいもの」

「アタシの方こそ……マミさんと会えてよかったな。

 アタシ、魔法少女としてはまだ半人前だし、なにも考えずただ闇雲に戦ってたし。

 色んなこと教えてもらって勉強になったよ」

 

ピーチパイが焼き上がるまでの間。

これまでの戦いを自己分析したり魔法の使い方を研究したりしたノートを読ませてもらった。

 

「心構えもしっかり持ってて、実戦でも強くて頼りになる。

 こんなにすごい魔法少女がいたなんて、アタシ驚いたんだ」

「そんな、私なんて……」

 

照れくさそうに紅茶を一口すするマミ。

 

「だから……その、マミさん、お願いっていうか、図々しいついでっていうのもなんだけど――。

 アタシをマミさんの弟子にしてもらえないかな?」

「で、弟子!?」

「そう! 迷惑じゃなかったら……ダメかな?」

 

丸くなっていたその目が一度下に向けられる。

 

「弟子とは違うかもしれないけど……。

 ずっと前から私も、魔法少女の友達がいてくれたらなって、実は思ってたの。

 私にできることなら、先輩としてアドバイスさせてもらうわ」

 

 

 

アイツもあの時のアタシと同じこと思ってんのか?

他人のために魔法使って、後悔しないわけがない。

 

マミの後輩、魔法少女殺し、あれから全く現れないキュゥべえ……。

おまけに暁美ほむらや仮面ライダーとかいうイレギュラーまでいるって話だ。

フン、上等じゃん?

ブッ潰しちゃえばいいんでしょ? ぜーんぶ。


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