仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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STAGE 06-05 (side:doctor-H.T.)

「紅茶でよろしいですか?」

「疲れているんじゃないか? 俺が淹れよう」

「いえ……こうしている方が、気が楽ですから」

 

ブレイブの申し出を断り、慣れた手つきでティーポットとカップを用意するマミ。

部屋の中は一見すると綺麗に整理されていて、掃除も行き届いているようだが。

これは――この異様な清潔感は

 

「ねぇ、大我……」

「……ああ」

 

戦場の砂漠の中のオアシス。傷を癒せる唯一の居城にして、世界から隔絶された砦。

ここはマイティノベルで訪れたエグゼイドの部屋と同じ空気に満ちていた。

 

ゲームで言えば進行不能バグ。

何か新しい情報を掴める訳でもなく、魔女と使い魔の増加以外の変化もなく、ひたすら診察と戦闘を続ける日々。

所謂落ちゲーでゲームオーバーにならないよう足掻いている状況と言った方が近いかもしれない。

 

連続して永遠とも思える戦いに挑むのなら、何度かのパンデミックで経験済みだ。

だが、断続的にってのはどうしても緊張の糸が緩む瞬間が出て、むしろ精神的にもキツい。

 

それは魔法少女の方も同じだったようだ。

パトロール中だった俺とブレイブ(とニコ)は、2体の魔女相手に疲弊してたマミを先程助け、やっと話す気になったらしい彼女の家に招かれていた。

この部屋の空気を感じればその葛藤も窺い知れる。責めるつもりはない。

無意識でもコミュニケーションを避けていたのは、おそらくこっちも同じだろう。

 

「単刀直入に聞こう。佐倉杏子のことについてだ。後輩だったらしいが?」

 

長居をするつもりは俺もない。

淹れられた紅茶を一口飲んで、ブレイブがそう切り出した。

 

「……。宝生先生とパラドさん程ではなかったけど、私たちいいコンビだったと思います。

 呑み込みも早かったし、教え甲斐もあったし……部活の先輩後輩のような。

 彼女が住んでいたのは風見野だったけれど、この家にもよく来てくれて。

 こうしてお茶したり、パイをご馳走したり、もちろん一緒に魔女や使い魔とも戦って……。

 いつしか、2人でならワルプルギスの夜だって倒せるとさえ思い始めていました」

「なに、ワルプルギスの夜って?」

「あっ、魔法少女たちの間で噂されているとても強力な魔女のことです。

 その力は果てしなく、他の魔女とは比べ物にならないとか、簡単に1つの街を滅ぼせるとか……。

 強過ぎる魔力で、結界が現実世界を侵食するとも聞きました。

 局地的な自然災害として報じられる中に、ワルプルギスの夜の被害が隠されているとも……」

 

……ワルプルギスの夜という名称は、マミが名付けた訳ではなく魔法少女間での通称なのか。

ドイツ辺りの祭りの名前にそんなのがあった気がするが、何か関連があるのか?

 

何より気になるのは、現実世界を侵食する結界ってのがゲムデウスやプロトマイティオリジンのゲームエリアと似ていることだ。

レーザーに倒された直前の状態での復活、魔法に関するデータの収集、黒い魔法少女殺し、姿を消したキュゥべえ……。

不気味な程怪しい匂いしかしない。

 

「そんなのが来ても目じゃない、本当に世界を救える。あの子もそう言ってたのに――」

 

少し冷めつつある紅茶の香りが鼻をくすぐった。

 

使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 グリーフシードを落とさない使い魔を狩ったところで魔力を無駄に消耗するだけ。

 ……そういう考えの魔法少女は、他にもたくさんいました。

 グリーフシードが手に入らなくなったらあなたのせいにしてもいいのか、とか。

 立派な考えだとは思うけどそこまでする意味はない、とか。

 ただ善意で戦い続けることなんかできない、とか……」

「……大人でも利他的になるのは難しいだろう。まして己の命が懸かることなら」

「ああ。お前の考えが間違ってる訳でもなければ、その魔法少女たちが悪という訳でもない」

「……。この子は他の魔法少女とは違うって思ったんです。

 魔法少女同士でそんなにもわかり合えるなんて思わなかったし……。

 心の奥底で密かに求めていた、本当の仲間にやっと私は巡り会えたんだって。

 でも、彼女もそう言って――!!」

 

一度溢れ出した涙は、そう簡単には止められない。

 

「もう二度と誰かの幸せや命のために戦うつもりはないって!

 これからはもう自分のためだけに魔法を使うって!

 引き留めようとしたけど、でも私、あの子を撃てなくて――。

 またひとりぼっちに戻っちゃったって感じて……っ!!」

「……。佐倉杏子は何故急に――」

 

プルルルル。デフォルトの着信音が、ブレイブのスマホから流れてきた。

 

「失礼。監察医? 急患か!?」

 

ピッ。

 

「今どこ!?」

 

スピーカーモードでもないのに聞こえてきたレーザーの大声。

なにやらかなり切羽詰まっているらしい。

 

「マミの家だが、何があった? ――そうだ、3人で来ている。

 ――決闘だと!? さやかと杏子が!?」

「えっ!?」

「ああ、ああ。――わかった。こちらもすぐに向かう」

 

電話を切って、ブレイブは説明する必要もないだろうと立ち上がった。

それに続いて俺もニコも動いたが、座って俯いたままのマミに気付いて全員止まる。

 

「……さやかはお前の後輩だが、アイツもそうなんじゃねぇか?」

「――Say and Do」

 

顔を上げたマミの目に、覚悟の光が灯っているのを見た。

 

「私が2人を止めます」


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