仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
「ここで会うのも久し振りね」
18時前。人気のない公園。
いつかどっかの誰かさんとやり合った場所。
「なんだよ、学校サボったのか」
その誰かさんは、制服ではなく私服を着ていた。
見滝原中からここまではちょっと距離がある。
下校中や一旦帰宅してからだとしたら不自然だ。
「……その子は?」
「ゆまはゆまだよ。こんばんわ」
「……こんばんわ。私はマミよ」
いつもと違う不器用な笑みをゆまに返して、マミは視線をこっちに戻した。
「説明してもらえるかしら?」
「話しかけてきたのはそっちだし、こっちの質問には答えてないのにか?」
「……」
コイツ、本当に巴マミか?
そりゃあメンタル弱いことくらい知ってるけどさ、ここまで生気のない目は初めてだ。
「美樹さんを探しているの。知らない?」
「また質問返しかよ」
「さやかおねぇちゃん? 知らないよ」
「そう……」
何かあったのか、って聞いてもフツーに答えてくれそうにないねぇ。
アイツもかなり弱ってるだろうけどさ……。ここはちょっと突いてみるか。
「過去の後輩なんざどうでもいい。今の後輩が可愛くて仕方ないってか?」
「……あなた、自分を私の後輩とか友達とか思ったことないんでしょう?」
「っ!」
「マミさんは、友達ってのとはちょっと違うっていうか……」
古い記憶が蘇った。
「ええ、そうよ。あなたのことなんかどうでもいいの。
美樹さんのお友達が、彼女の想い人に告白するって鹿目さんから聞いて。
今日学校に来てないって連絡を受けて、一応先輩らしく心配してみてるけど。
本当は私、美樹さんのこともどうでもいいのかもしれない」
「お、オイ……マジでどうしたんだ?」
「こんな先輩幻滅でしょう? 一緒になんか戦えないでしょう?
でも仕方ないわよね。なれないクセに正義の味方を気取って。
あなたたちを欺き続けたのも、私の選択した運命だもの」
「いい加減に――ッ!?」
すっと見せてきたソウルジェムは黒く染まっていて、形もなんだか歪んで見えた。
「少し前、この近くで魔法少女が殺される事件があったのを知っているかしら?
あなた、他の魔法少女を……特に美樹さんや私みたいな子を邪魔に思ってたわよね?」
「お前……本気で言ってんのか?」
「……あなたは後輩でも友達でもないけれど。
でも、戦い方を教えた身として、私があなたを止める」
黄色い光が溢れてマミを包んで、目が眩んでる間にいくつもの銃が召喚されていた。
アタシもソウルジェムを取り出してすぐに変身して、一気に駆け出す。
「キョーコ!」
「離れてろ!」
走れ、跳べ、ともかく動け。小回りの利く速さならアタシが上。
マミの銃は構えてから撃つまでに少し間がある。
当たらなければどうってことない、けど……!
「面白いモン作れるようになったじゃんか!」
範囲攻撃ならアタシの得手だったハズなのに。
張り巡らされたリボンが槍の行方とアタシの動きを邪魔する。
「大したモノじゃないわ。素早い子にはこっちの方が効果あるもの」
「ただでさえ手数で勝負のアンタが、いつまで魔力が持つかねぇ?」
変だ。確かにアタシには有効な戦術だろうけど。
マミのソウルジェムも濁ってんのに、こんな燃費の悪い方法を採るか?
「まさかマミ、――ッ!」
何を狙ってるか気付いた時、ショックで反応が遅れた。
弾丸に頬を掠められてさらに少し動きが鈍る。
「終わりにしましょう」
これだけのフリーズでも動き回ってたアタシに銃をぶっ放すには充分のハズだ!
マズイ、どうする……!?
「ダメっ!」
ゆま。今のアタシにいる家族。
「佐倉さんも、不得手な治癒魔法をカバーできさえすれば、右に出る者はいないくらいに成長すると思う」
「そ、そう?」
「そうよ! だから自信を持って?
こんなに優秀な子が友達になってくれて、私も鼻が高いんだから!」
「……ねぇマミさん。アタシのこといつも友達って言ってくれるけどさ。
アタシにとってのマミさんは、友達ってのとはちょっと違うっていうか……」
「……どういうこと?」
「えーっと、変な意味じゃなくてさ。その――ううん、やめとく!」
ああ、そうだ。マミはアタシの――
「えっ!?」
マミが捉えたアタシの姿が、ほんの僅かな間歪んで消えた。
「ハアアア!」
標的を失った銃口が動けない隙に、矛先がマミを叩く。
幻惑の魔法。幻で信仰を踏みにじり人を惑わし嘲り笑う魔法。
無意識に拒絶して封じてしまった、アタシの願い。
「使えるように……?」
「わかってんだろ。こんなの一瞬感覚が戻っただけさ。
けど、アタシを本気で殺すつもりのないアンタには充分だったね」
変身を解くと、地面に転がったマミは呻くように返してきた。
「あなただって……私を、本気で、殺しにきて……ない、じゃない」
「アタシも魔法少女だ。
まっ、戦い始めた時点でちょっとノせられてるけど。
魔法少女殺しの被害者の遺言は
フツーに考えりゃアタシじゃないし、マミだってわかってたハズだし。
だからって、自分の命を投げ出す選択なんかしてほしくなかったけれど。
「……美樹さやかはアタシが探し出してやる。行くぞ、ゆま」
「でもっ!」
「行くんだ!!」
子ども相手にマジになるなんざ、アタシも大人げない。
けど、早くしないと――追い詰められたアイツはきっと自滅するだけだ。
希望を祈れば、それと同じ分だけの絶望が撒き散らされる。
優し過ぎる奴が最後にどうなるかは、アタシはよく知ってる。今も見た。
「ねぇ、佐倉さん……。私はあなたの、何なの……? 私は、何になれると言うの……?」
「……もしアンタが本気で撃つ必要を感じたなら、アタシはそれを受け入れる。
そのくらいには、まだ信じてるんだ」
アタシたち、友達にも家族にもなれないかもしれないけどさ、それでも――