仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
お料理をするのは楽しい。誰かと一緒に作ってるなら、もっと楽しい。
クロトとカレーを作っていてすごく楽しかった。
でも、今日は私がひとりでご飯を炊いて、お味噌汁を作って、おかずを用意して……。
みんな、ごめんなさい。今晩だけはおいしくできたって自信がない。
鏡総合クリニックの2階。大きなテーブルがあるから、私たちの食卓にもなってる場所。
クロトはハイパームテキをコンピューターに繋いで、ずっとキーボードを叩いてる。
突っ伏してみんなを待ってるけど、まだ誰も帰ってこない。
カタカタって音だけしか聴こえない。
「――私たちがこの世界に来る少し前、近くで魔法少女が襲われる事件があったんだって」
みんな、ごめんなさい。私もう我慢できない。
「その子が遺した言葉はね、
「…………」
「クロトじゃない……よね? クロトは、魔法少女も救おうとしてるんだよね……?」
「…………」
何も言ってくれない。何も応えてくれない。
ねぇ……聴かせて、心に秘めた気持ちを。
「どうして目を逸らすの? どうして黙ってるの?」
教えてよ……その心はどこに向かっているの?
「ポッピー、君は
「っ……」
そんなこと、わかって――
「ポッピー! 救急箱を!」
叫びそうになった時、下の階からエムの声が聞こえてきた。
大変! 誰かケガしたの!?
「こんな身体、手当てする必要なんか……」
慌てて降りてみると、エムが肩を貸していたのはマミちゃんだった。
待合室のイスに座らせてあげるけど、なんだかすごく元気がなくて、それはケガをしてるからじゃなくて……。
「……。手当てって、
手を当てられるだけで心が落ち着くこともある。
オカルトな意味じゃなくて、身も蓋もない言い方をすれば思い込みだけど。
でも……僕の気持ちが、こうしてれば、ほんの少しでも伝わらないかな……?」
「あ……っ」
消毒して包帯を巻きながら、エムが優しく語り掛ける。
下唇を噛んだマミちゃんの目から、涙がポロポロ零れてくる。
仮野明日那の姿でお手伝いする私も同じ。
その様子を少し離れてクロトが見ていたことは、その時には気付けなかった。
「何があったのか、聞いてもいい?」
「……私、佐倉さんに自分を殺してもらおうかなって思ったんです」
エムの手が一瞬止まって、でもすぐ動き出す。
「キュゥべえが言ってました。こんなことになる運命を選んだのは、私自身だって」
また止まりかけて、なんとか動かし続ける。
「ずっと色んなことを考えてました。
願い事をやり直せるとしたら、迷わず家族の命を繋ぎ留めたいと祈るとか……。
それが辛くて……だから、もうやめたいなって……。
なんてこと考えるんだって、きっと怒ってますよね。ドクターだもの」
「そんなこと、これっぽっちも思わないよ……。僕には特別な何かもなかったけど、でも……」
「えっ……?」
「それで? 佐倉杏子はどうした?」
「檀、黎斗さん……」
エムの呟きに驚いていたマミちゃんだけど、クロトに話しかけられると体がピクッとした。
もう。せっかく少し落ち着いてきてたみたいなのに、また緊張に戻っちゃったじゃない。
「やれやれ、この期に及んでまだ私を警戒しているのか。
少なくとも私は、君よりは命の尊さを理解しているんだが?」
「……人類を救うためのゲーム、ですか?」
「そうとも。私の渡したゲームはプレイしたか?」
「……始めてすぐゲームオーバーになって、やめました」
「なるほど。君はコンテニューしなかったんだな」
腕を組んで、ゲームを続けなかったことに怒ってるのか、何かわかって納得してるのか、よくわかんない顔。
「あの、ごめんくださーい。……マミさん!?」
エムが帰ってきた時ロックを外した自動ドアから入ってきたのは
「まどかちゃん? どうしたの、こんな時間に?」
「あ、えっと――」
――まどかちゃんの話とマミちゃんの言ってたことをまとめると。
お友達がさやかちゃんに、キョースケくんに告白するって宣言してきて。
さやかちゃんは自分の身体がああなってるから、どうしようもないって思い詰めちゃって。
そのことを相談されたマミちゃんも追い詰められてて、わざとキョーコちゃんを挑発して、やめようとした。
ああ、どうして色んなことのタイミングが重なってしまうんだろう?
今はキョーコちゃんがさやかちゃんを探しているみたいだけど……。
「私たちも探さなきゃ! ヒイロたちにも連絡しないと!」
「うん。……黎斗さんなら、すぐに探し出せますか?」
エムの目はクロトを脅しているような――ううん、信頼してるの……?
「もちろん。彼女たちの魔力の波長は記録している。
ここでも方角程度ならわかる。正確な位置は、近付けばわかるだろう」
「なら、行きましょう」