仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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STAGE 08-04 (side:doctor-P.P.)

お料理をするのは楽しい。誰かと一緒に作ってるなら、もっと楽しい。

クロトとカレーを作っていてすごく楽しかった。

でも、今日は私がひとりでご飯を炊いて、お味噌汁を作って、おかずを用意して……。

みんな、ごめんなさい。今晩だけはおいしくできたって自信がない。

 

鏡総合クリニックの2階。大きなテーブルがあるから、私たちの食卓にもなってる場所。

クロトはハイパームテキをコンピューターに繋いで、ずっとキーボードを叩いてる。

突っ伏してみんなを待ってるけど、まだ誰も帰ってこない。

カタカタって音だけしか聴こえない。

 

「――私たちがこの世界に来る少し前、近くで魔法少女が襲われる事件があったんだって」

 

みんな、ごめんなさい。私もう我慢できない。

 

「その子が遺した言葉はね、()()だったの」

「…………」

「クロトじゃない……よね? クロトは、魔法少女も救おうとしてるんだよね……?」

「…………」

 

何も言ってくれない。何も応えてくれない。

ねぇ……聴かせて、心に秘めた気持ちを。

 

「どうして目を逸らすの? どうして黙ってるの?」

 

教えてよ……その心はどこに向かっているの?

 

「ポッピー、君は私の母(檀櫻子)ではないよ」

「っ……」

 

そんなこと、わかって――

 

「ポッピー! 救急箱を!」

 

叫びそうになった時、下の階からエムの声が聞こえてきた。

大変! 誰かケガしたの!?

 

「こんな身体、手当てする必要なんか……」

 

慌てて降りてみると、エムが肩を貸していたのはマミちゃんだった。

待合室のイスに座らせてあげるけど、なんだかすごく元気がなくて、それはケガをしてるからじゃなくて……。

 

「……。手当てって、()()()()()って書くんだ。

 手を当てられるだけで心が落ち着くこともある。

 オカルトな意味じゃなくて、身も蓋もない言い方をすれば思い込みだけど。

 でも……僕の気持ちが、こうしてれば、ほんの少しでも伝わらないかな……?」

「あ……っ」

 

消毒して包帯を巻きながら、エムが優しく語り掛ける。

下唇を噛んだマミちゃんの目から、涙がポロポロ零れてくる。

仮野明日那の姿でお手伝いする私も同じ。

 

その様子を少し離れてクロトが見ていたことは、その時には気付けなかった。

 

「何があったのか、聞いてもいい?」

「……私、佐倉さんに自分を殺してもらおうかなって思ったんです」

 

エムの手が一瞬止まって、でもすぐ動き出す。

 

「キュゥべえが言ってました。こんなことになる運命を選んだのは、私自身だって」

 

また止まりかけて、なんとか動かし続ける。

 

「ずっと色んなことを考えてました。

 願い事をやり直せるとしたら、迷わず家族の命を繋ぎ留めたいと祈るとか……。

 それが辛くて……だから、もうやめたいなって……。

 なんてこと考えるんだって、きっと怒ってますよね。ドクターだもの」

「そんなこと、これっぽっちも思わないよ……。僕には特別な何かもなかったけど、でも……」

「えっ……?」

「それで? 佐倉杏子はどうした?」

「檀、黎斗さん……」

 

エムの呟きに驚いていたマミちゃんだけど、クロトに話しかけられると体がピクッとした。

もう。せっかく少し落ち着いてきてたみたいなのに、また緊張に戻っちゃったじゃない。

 

「やれやれ、この期に及んでまだ私を警戒しているのか。

 少なくとも私は、君よりは命の尊さを理解しているんだが?」

「……人類を救うためのゲーム、ですか?」

「そうとも。私の渡したゲームはプレイしたか?」

「……始めてすぐゲームオーバーになって、やめました」

「なるほど。君はコンテニューしなかったんだな」

 

腕を組んで、ゲームを続けなかったことに怒ってるのか、何かわかって納得してるのか、よくわかんない顔。

 

「あの、ごめんくださーい。……マミさん!?」

 

エムが帰ってきた時ロックを外した自動ドアから入ってきたのは

 

「まどかちゃん? どうしたの、こんな時間に?」

「あ、えっと――」

 

――まどかちゃんの話とマミちゃんの言ってたことをまとめると。

お友達がさやかちゃんに、キョースケくんに告白するって宣言してきて。

さやかちゃんは自分の身体がああなってるから、どうしようもないって思い詰めちゃって。

そのことを相談されたマミちゃんも追い詰められてて、わざとキョーコちゃんを挑発して、やめようとした。

 

ああ、どうして色んなことのタイミングが重なってしまうんだろう?

今はキョーコちゃんがさやかちゃんを探しているみたいだけど……。

 

「私たちも探さなきゃ! ヒイロたちにも連絡しないと!」

「うん。……黎斗さんなら、すぐに探し出せますか?」

 

エムの目はクロトを脅しているような――ううん、信頼してるの……?

 

「もちろん。彼女たちの魔力の波長は記録している。

 ここでも方角程度ならわかる。正確な位置は、近付けばわかるだろう」

「なら、行きましょう」


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