仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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The Third Round


STAGE 09-03 (side:magica-A.H.)

「あのさぁ……キュゥべえがそんな嘘吐いて、一体何の得がある訳?」

「それは……。私にもよくわからなくて……」

「あたしたちに妙なこと吹き込んで、仲間割れでもさせたいの?

 まさかあんた……ホントはあの杏子とかいう奴とグルなんじゃないでしょうね?」

「ち、違うわ!」

「さやかちゃん……それこそ仲間割れだよ」

「はぁ……どっちにしろ、あたしこの子とチーム組むの反対だわ。

 いきなり目の前で爆発とかちょっと勘弁して欲しいんだよね。

 2人は飛び道具だから平気だろうけど、あたし何度巻き込まれそうになったことか……」

「美樹さんの話にも一理あるわね……。暁美さんには爆弾以外の武器ってないのかしら?」

「……ちょっと、考えてみます」

 

 

 

 

 

「大丈夫、美樹さん?」

「あ……う、うん……」

「後は()()()()に任せてちょうだい!」

「……うん」

「あ、オイっ!?」

(体が軽い!)

「マミ、ひとりで出過ぎだぞ!」

(心が躍る!)

「巴さん、力を合わせないと!」

(重い荷物がなくなっちゃったみたい!)

「なんか、変じゃない……?」

(こんな幸せな気持ちで戦うなんて初めて!)

「……マミさん?」

(ひとりぼっちじゃないもの!)

 

 

「もう何も恐くない」

 

 

 

 

 

「マミさんが死んじゃった時、仁美と恭介のことで頭がいっぱいで、ボーっとしてたんだ。

 しっかりしてれば、マミさんを助けることくらい本当はできたんだ」

「なんで……なんでお前が自分を責めなきゃならないんだよ……?」

「誰も悪くなんかないよ! マミさんが死んじゃったのはすごく悲しいけど……。

 でもそれはさやかちゃんのせいじゃないよ!」

「……まどかは優しいよね。

 いつもフォローしてくれるのは嬉しいけど、そういうの時々ちょっとつらいっていうかさ。

 こんなあたしでもま一緒に組めるって言うなら、あんたたちのこと幻滅するかも」

「っ! 美樹さん、そのソウルジェム――」

「どうなってやがんだ……!?」

「希望と絶望のバランスは差し引きゼロだって、いつだったかあんた言ってたよね。

 今ならそれよくわかるよ。確かにあたしは何人か救いもしたけどさ。

 誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない。

 あたしたち魔法少女って、そういう仕組みだったんだね」

 

 

「あたしって、ほんとバカ」

 

 

 

 

 

「テメェ一体何なんだ!? さやかに何しやがった!?」

「さやかちゃん、やめて! お願い、思い出してっ!

 こんなこと、さやかちゃんだってイヤだったはずだよ!? ああっ!!」

「鹿目さん! しっかりして、ねぇ!?」

「――一度くらい、幸せな夢見させてよ」

「佐倉さん……?」

「行きな。コイツはアタシが引き受ける」

「で、でも――」

「アンタにとって、よっぽど大事なお友達なんだろ?

 だったら行きなよ。ただ一つだけ、守りたいものを最後まで守り通せばいい。

 ……ハハハ、なんだかなぁ。アタシだって今までずっとそうしてきたハズだったのに。

 それに……不出来な先輩が――家族が一因のことだ。尻拭いくらい、任せてくれ」

「っ……。ごめん、なさい……」

「――心配すんなよさやか。ひとりぼっちは、さみしいもんな」

 

 

「いいよ、一緒にいてやるよ……さやか」

 

 

 

 

 

灰色の空の下、崩れいく街の中。

私たちは結局ふたりだけで強大な存在に挑む。

 

多くの火器と多くの策を以てすれば、必ず倒すことができる。

古から幾度も現れ、人々には自然災害として認識されている程の存在。

一度は倒したことのある相手だ。対策だって立ててきた。

 

鹿目さんが涙を堪えて矢を放ち続ける。

私はあるだけの爆弾を全て投降して、残弾も全て撃ち切る。

 

いつどのタイミングでか、ハッキリと覚える余裕はなかった。

見滝原は壊滅状態だけど、ともかくワルプルギスの夜は倒せた。

でも、寄せ合った手の平のソウルジェムは、2つとも濁り切っている。

 

「わたしたちも、もうおしまいだね……」

「……グリーフシードは?」

 

首を横に振る鹿目さん。

 

「そう……。ねぇ、私たちこのままふたりで怪物になって……。

 こんな世界、何もかも滅茶苦茶にしちゃおっか……?」

 

その視線が自分に向いたことがわかって、私は言葉を続ける。

 

「嫌なことも悲しいことも、全部無かったことにしちゃえるぐらい壊して、壊しまくってさ。

 それはそれで、いいと思わない?」

 

辛いことの多い人生を送ってきた。

弱い心臓のせいで普通の子と同じように生きてこれなかった。

普通の子たちの笑顔が憎く見えてしまうことさえあった。

そしてその度に、そう考えてしまう自分を嫌いになった。

 

そんな極寒の私の世界に、あなたは春の陽だまりを注いでくれた。

もし終わる運命が避けられないとすれば、その瞬間はあなたと一緒に終わりたいと、そう思ってしまうのだ。

 

「え……?」

 

コツンと、何かが私のソウルジェムにぶつかる。

隣を見れば、嘆きの種の向こうに春のような温かい笑みが一凛咲いていた。

 

「さっきのは嘘。1個だけ取っておいたんだ」

「そんな……なんで私に!?」

「わたしにはできなくて、ほむらちゃんにできること……お願いしたいから。

 ほむらちゃん、過去に戻れるんだよね?

 こんな終わり方にならないように、歴史を変えられるって、言ってたよね?」

 

零れ落ちた涙が頬を伝う。

握り締めた手から、少しずつ温もりが消えていく。

 

「キュゥべえに騙される前のバカなわたしを、助けてあげてくれないかな?」

「……約束するわ。絶対にあなたを救ってみせる。

 何度繰り返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!」

「よかった……。もう一つ、頼んでいい? わたし、魔女にはなりたくない。

 嫌なことも悲しいこともあったけど、守りたいものだってたくさんこの世界にはあったから。

 たとえここで終わる時間でも、わたし、この世界を破壊したくなんてないから……」

「っ……まどか!」

「ほむらちゃん、やっと名前で呼んでくれたね。嬉しいな……」

「ああ! うっ……うわあああああああああああああ!!!!」

 

黒く濁っていくまどかの水晶を、私は撃ち砕いた。


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