仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
今日のお夕飯はおいしくできたって自信がなかったのに。
「ダメですよ飛彩さん。確認なしに唐揚げにレモンかけちゃ」
「ヘタすりゃそれだけで戦争が起きるぜ?」
「そういうものか……。すまない、これは俺が適切に処理しよう」
「ゆまはねー、マヨネーズがいいーっ!」
「その前にお口の周りを綺麗にしましょうね」
「よーし! さやかお姉ちゃんが拭いて進ぜよーう!」
「おい、あんまり甘やかすなよ?」
「ウェヒヒwなんだか親子みたいww」
「塩コショウも美味いぞ?」
「大我それ……ケチャップかけてんの?」
「……? 普通じゃねぇのか……!?」
みんな集まって一緒に食べれば、とってもおいしく感じちゃうんだ。
マミちゃんとキョーコちゃんとゆまちゃんと、お家の人にマミちゃんの所で食べて帰るって言ったさやかちゃんとまどかちゃん。
作っておいたのだけじゃ足りないからスーパーでお惣菜も買ってきた。
これが結構おいしくて、ちょっと妬けちゃう。
……ずっとドタバタしてて気付かなかったけど。
こうして……クロトも入れたみんなでニコニコご飯を食べるのって、私の夢だったんだ。
「コンテニューしてでもクリアする」
何回転んでも関係ない。どれだけ傷を負っても諦めない。
その度に立ち上がってやり直すだけ。この手の中、進むべき命を生きていくだけ。
クロトとエムの姿を見て、魔法少女たちは元気を取り戻した。
「生きます、私。ただ泣いて投げ出すなんてもうしません。
魔女になる未来が待ち構えていても、最後まで足掻いてみせます」
マミちゃんは絶望に立ち向かう覚悟を決めて、
「諦めちゃうなんて、ちょっとあたしらしくなかったかもね……。
自分のこともみんなのことも、恭介のことも、全部全部欲張ってやろうじゃん!」
さやかちゃんは不安と向き合う勇気を抱いて、
「マミさんは、友達ってのとはちょっと違うっていうか……家族だと思ってたんだ。
アタシたち、友達にも家族にもなれないかもしれないけどさ、それでも――仲間にはなれるよね?」
キョーコちゃんにはみんながもちろん! と力強く返した。
『魔法少女システムは宇宙の救済を成すためのものなんだ。
君たちはエントロピーっていう言葉を知っているかい?』
忘却の魔女の遺したグリーフシードでソウルジェムを浄化した後、キュゥべえはそんなことを話し始めた。
『語弊を恐れずに説明してあげるよ。
エネルギーの往来は外部からの介入がない限り徐々に緩やかになり、やがて静止する。
冷凍庫に入れた水は氷になるけど、再び熱を与えて温めない限り独りでに水へ戻ることはない。
規模を拡大して考えれば、いずれ宇宙内でエネルギーの往来が完全に静止するのがわかるかな?
それこそがエントロピーの飽和、熱的死だ。
たかだか100年しか生きられない君たちには、他人事としか思えないだろうね。
でも、この宇宙にどれだけの文明がひしめき合い、エネルギーを消耗しているかわかるかい?
だから感情をエネルギーへ変換しエントロピーを凌駕する技術を生み出したんだ。
ところが生憎、当の僕らが感情というものを持ち合わせていなかった。
そこで、最も効率良い料として目を付けたのが君たち第二次性徴期の少女の絶望さ。
君たち人類だって、いずれはこの星を離れて僕たちと同じレベルにまで達するだろう。
その時になって宇宙の終末が迫っていても困るよね?
長い目で見れば、君たち魔法少女の絶望は究極の救済をもたらしているんだ。
僕も地球人と過ごす中でラーニングしたよ。
君たちはこういうのを尊い犠牲と呼び、神聖視するんだろう?』
煽るつもりでも、難しい言葉を並べて言い包めるつもりでもない。
キュゥべえは本気でそれが最高最善の道だと言っているのが、私にもわかった。
それがどれだけ独り善がりで傍迷惑でも関係ない。確信しているんだ。
「語らないで……あなたがわたしたちの絶望を、語らないで!!!」
『……。もうすぐワルプルギスの夜が来る。
君たちが力を合わせたところでひっくり返せる運命じゃない。
滅びの結末が訪れた時には……まどか、君が魔法少女になるしかこの世界を救う方法はない』
「まどかちゃんの運命は――魔法少女の運命は、僕たちが変える」
エム、パラド、まどかちゃん、ヒイロ、マミちゃん、タイガ、ニコちゃん、さやかちゃん、キョーコちゃん、ゆまちゃん、キリヤ、クロト……。
この世界を守りたいっていう気持ちはみんな同じ。
だから、私たちはチームにまとまって解決していける。ほむらちゃんだってきっと。
そう思っていた、のに――。
「やめろ――って、あっ? 夢じゃない!? ちょ、全員起きろッ!!」
「喧しいよキリヤ! こんな夜中に、どうしたの!?」
「どうせいつもの悪夢でしょー?」
「いなくなってる……! ゲンムがいないぞ!?」
「やっぱり、アイツが全部仕組んでたんじゃねーか!!」
「俺たちは……また騙されていた!?」
「……」
その夜、クロトは私たちの前から姿を消した。