仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
「流石ね。
魔法を使って近付いたのに、銃弾をかわされてすれ違う瞬間、そう耳打ちされる。
――私が経験したどの時間軸よりもイレギュラーだらけだった。
これまでに遭遇したことのない、仮面ライダーという存在。
異世界からの来訪者とキュゥべえから聞けば、空き地だったハズの場所に鏡総合クリニックが出現していたのにも納得がいった。
どういう経緯でこの世界に……この時間軸にやって来たのかは本人たちにもわからないらしい。
ただ、予想通り彼らは私たちに深く関わり続けてきた。
仮面ライダーでも魔女を倒せるようになった時は、驚きはしたけど檀黎斗への警戒心の方が勝った。
巴マミが魔女に殺されなかった時は、安堵もしたけど檀黎斗への疑問の方が勝った。
美樹さやかは魔法少女になってしまったし、協力を呼び掛けた佐倉杏子も彼女と衝突してしまったけど、2人とも脱落せずに済んだ。
その時も檀黎斗だ。彼の言葉が切っ掛けとなって巴マミも美樹さやかも佐倉杏子も踏み留まった。
いえ……もう1人、千歳ゆまがいた影響も大きい。
千歳ゆまはキュゥべえの気を鹿目まどかから逸らすために、
それが魔法少女にならないままなのだから、千歳ゆまを唆す存在はいないと思っていた。
なのに、この時間軸には美国織莉子までいるというの……!?
「暁美ほむら、貴女は時を止めることができる」
佐倉杏子と美樹さやかにそれぞれ左右から斬り掛かられても。
美国織莉子は体を少し逸らせただけでいともたやすく避け、カウンターを仕掛けてみせる。
彼女の武器は浮遊する宝石。
飛ばしてぶつけてくることも、刃を生やすことも、魔力を過剰に込めて小規模な爆発を起こすこともできる。
その爆発を2人は寸での所でギリギリ避け、次の攻撃が来る前に飛び退いた。
「アイツ……通りで動きが読めなかったワケだ!」
「なんであんたが知ってんのさ!?」
「私が視たのは、1つの未来だけではない」
まどかに向かって放たれた3つの宝石の内、1つを私が、1つを巴マミが撃ち落とす。
もう1つは赤い仮面ライダーになったパラドが弾き返した。
彼は強過ぎるが故に魔法
同じく変身したポッピーピポパポはレベル1たちのサポート、西馬ニコは彼らへの指示出しをしていた。
「予知なら時止めも攻略できるか……!」
「魔法を酷使しすればどうなるか、あなたもわかっているでしょう!?」
パラドと巴マミの言う通りだ。
ただでさえ多量の魔力を消費する予知を、彼女は後先考えずに使い続けている。
私と巴マミが何発撃っても的確に防いでいる。
佐倉杏子と美樹さやかは宝石に阻まれて接近することも難しい。
「運命を変えられるなら、私たちは尽きても構わない。
未来を恐れてばかりの貴女たちとは違う!」
呉キリカの能力、速度低下によって動きを遅くされてるせいで、私たちは余計に美国織莉子を捉えられない。
もっと強力な爆弾を用いればなんとかなるかも知れないけど、ここにはまどかもいる。
この妙な空間が崩れれば巻き添えになる恐れもあるし、なにより……彼女の
「わ、わーるきすのよる? に、みんなで戦えないの!?」
「そうだよ! 魔法少女だけじゃない、仮面ライダーだっているよ!?
織莉子ちゃんもほむらちゃんも、みんなで協力すればきっと――
「仮面ライダーを生んだ檀黎斗は、既にドクターの前から姿を消した。
彼が何をしでかしてきたかは貴女たちも知っているでしょう?
あの悪魔さえ止められなかったドクターに何ができるというの!?
それに――。オラクルレイ!」
美国織莉子が、全ての宝石に刃を付与して高速で飛び回らせる大技を放つ。
「っ!!」
まどかと自分への刃を弾くので精一杯。
佐倉杏子も美樹さやかも巴マミも体中を斬り裂かれて倒れていく。
何度も耐えてきたパラドも、千歳ゆまを庇った結果変身が解除され膝を突いた。
「美国……織莉子……!!」
いつかの時間軸で戦った際は、私・巴マミ・佐倉杏子・千歳ゆまだけでも勝つことができた。
何故こんなにも苦戦を強いられるの? 同じように決死の覚悟でも、まだ希望を捨てていない?
彼女たちはこの戦いの先に何かを期待している?
「それに――これからこの世界を滅ぼす運命の貴女に、何を言う資格があるの?」
「そ、そんなこと言われても……だってわたし、まだ何も……」
「まどかはっ……ずっとあたしたちが、仲良くなれるって、信じてくれた……!」
「そんなこの子を、手に掛ける資格が……あなたにはあるの……!?」
「アンタの、ただ一つだけ……最後まで成した遂げたいものは、本当にこれかよ!?」
「っ……。私は――」
呻く3人の言葉に美国織莉子が返そうとしている間に
ドクターたちのキックが魔女(?)に炸裂する。
相打ちも同然で、彼らは爆発に吹き飛ばされ地に伏せた。
≪ガッシューン≫
両腕の鉤爪が砕け散って、巨体がピクセル化して崩れていって
「ポッピー!」
「任せてニコちゃん!」
中から落ちてくる呉キリカをポッピーピポパポが受け止める。
その傍には、殆ど真っ黒になったままのソウルジェムも一緒にあった。
「キリカ!?」
パン、パァン。
美国織莉子の両肩を1発ずつ撃ち抜く。
以前は体だけになった呉キリカを庇って隙を晒した彼女だけど、今回はほっとしたせいか。
でも関係ない。私は近付いて、彼女の胸のパールのようなソウルジェムに銃口を突きつける。
その手が鉤爪のカケラを拾っていたことも気付いている。
「撃たないの?」
「撃つわ」
ダメだ、やめろ。
必死に止めようとする全員の声を無視して、私は最後の問いを投げかけた。
「一つ答えて。あなたたちは何故こんな戦いを挑んだの?」
無意味だということくらい、予知できていたでしょうに。
「私たちの世界を守るためよ」
呉キリカの遺したカケラを手にした美国織莉子が、最期の一撃をまどかに放つ、その前に。
私は引き金を――
\フッハッハッハッハハハハハハハ!!!/
「っ!? ……っっ!!?」
私と美国織莉子の間。
不愉快な笑い声のした足下を見れば、いつの間にか紫色の土管があって。
そこからなんとも気の抜ける効果音と共に檀黎斗が生えてくる。
≪テッテレテッテッテー≫
「は?」