仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
≪テッテレテッテッテー≫
「は?」
バグスターワープを応用した奇をてらう行動に、呆気に取られるほむらちゃん。
その隙に黎斗さんはサッと銃を奪い取り、腰に巻いたゲーマドライバーを見せつけた。
「今私はいつでもハイパームテキを発動できるようセットしている。
このガシャットは文字通り無敵だ。あらゆる攻撃を一切無効化する。
もちろん魔法性も与えた。時止めも通じない。無駄な抵抗は止すんだな!」
「なん、ですって……?」
ほむらちゃん以外の子たちも驚いているけど、僕以外が使えるのは10秒間だけ、とは言わない。
「檀黎斗……」
「美国織莉子……私は君たちが相手していた
しかし引き継いだ者として、君にクリア報酬を授けよう!」
黎斗さんの手から差し出された2枚のエナジーアイテムを、織莉子ちゃんは怪しみつつも受け取った。
≪回復!≫
片方を自分に使い、まだ睨んでくるほむらちゃんを彼に任せ、
≪回復!≫
ポッピーの所へ走って行ってもう片方をキリカちゃんに使う。
「ん、むあ……」
「よかった! 目がさめぐあっ」
「織莉子ぉー! ありがとう織莉子!!
試合には負けたけど勝負には勝ったってヤツだね!
私たちの愛は不滅だぁーーーっ!!」
キリカちゃんはポッピーの腕から飛び出して織莉子ちゃんに抱き着いた。
織莉子ちゃんは、子どもをあやすようによしよしとキリカちゃんの髪を撫でている。
まだソウルジェムは予断を許さない状態かもしれないけど、一先ずピンチは去ったようだ。
「ったーく、色々とやってくれるじゃないの。
ぜーんぶキッチリ説明してもらうぜ、檀黎斗神?」
「……私が君たちと同時にこの世界へ現れたのは嘘じゃない。
しかし、何故かプロトオリジンだけは先に流れ着いていた。
そこから生まれた私の
呉キリカが過失で殺してしまった、と思い込んでいた魔法少女に、彼はゲーム病を感染させた」
「
納得するマミちゃんに次いでポッピーが喜び出す。
「じゃあその子は……!」
「ああ。他の消滅者と同じく、プロトオリジンの中に保存されているよ。
やがて彼は全ての真実を知り、魔法少女システムをゲームに利用しようとし。
最終的に、目を付けていた美国織莉子と呉キリカに倒された。
プロトオリジンをキュゥべえに回収させたのは――」
「ええ、わざとよ。貴方はキュゥべえに注意を向け、未来は徐々に変わった」
「織莉子の筋書き通りにいったね!」
「プロトオリジンを取り戻した私は彼の記憶を吸収し、メモを書き直した。
最低最悪のエンディングを避けるための攻略手順に、ね。
悩みの種だった彼女たちの動向も、忘却の魔女のフィルムデータで知ることができた。
宇宙からずっと魔法少女を記録していたのかも知れないが……定かではない」
「あの気持ち悪い脳みそ魔女ね……」
「あ、オリコたちも映ってたかも!」
さやかちゃんの言う通り異形な魔女だったけど、ゆまちゃんはその中で織莉子ちゃんたちを見付けていたらしい。
「なんで急に事を起こした?」
「もうすぐワルプルギスの夜が来るからさ」
黎斗さんは当たり前というように大我さんの質問に答えた。
「私の作ったハイパームテキさえあれば敗北など有り得ない!
だが敵は自然災害級。優秀なドクターが数人いても手が足りないだろう?
誰も落とさず、しかも更なる戦力を得る必要があった」
「初めから協力してって言えばいいじゃん!」
「見滝原・風見野・あすなろ……他にも魔法少女がいるだろ?」
「下手に真実を語れば一気に絶望が加速しかねない。
噂話として広まれば、誇張が加わり混乱を招く恐れもある」
ニコちゃんとパラドの言うこともわかるけど、黎斗さんの返しにも一理ある。
「それに、私が頻繁に単独行動していれば君たちが黙っていなかったハズだ。
だから鹿目まどかと出会い、自ずと真実を知る魔法少女に絞った。
美国織莉子はもちろん、呉キリカと佐倉杏子も優秀な戦力だよ」
「裏があるとは思ってたが……アタシたちは駒扱いかよ」
「院長として聞く。デッドコピーとやらはこうなることを予測していたのか?」
「敢えてゲーム病に感染させ、レベル1で魔女の成分ごと切り離させ、戦力にする……。
彼がこの未来を予知していたかは不明だ。
私の姿をしただけの他人と言っても過言ではないのだからね。
2人の動向を探り、万全の準備をし、襲撃と妨害のタイミングを調整したのはこの私だ!」
「……僕たちに黙ってたのはどうしてですか?」
「君たちに邪魔されず自由に動くため、というのもあるが……。
一番の理由は、暁美ほむらにさとられず彼女の魔法を解明するため。
美国織莉子と戦わせ、彼女の魔法に関するデータを集めるためさ」
「ほむらちゃんの魔法って……時を止める魔法?」
まどかちゃんの呟きの後、ほむらちゃんから少し距離を取る黎斗さん。
「時を止めると一口に言っても理屈は様々だ。
喩えるなら、時間の流れは走り続ける車。
エンジンを破壊する、ブレーキを掛けさせる、パンクさせる……。
タイヤを止めるという結果は同じでも過程は異なる。
暁美ほむらは何をしているか……確証を得るまで苦労した甲斐はある。
彼女の魔法では時間の流れる力に変化はない。タイヤは止められていない。
走り続けようとする車を、魔法という腕を使い無理矢理押し止めている。
では――止めるに留まらず
「そんなことしたら、車は後ろに――」
自分の言葉に、仮面ライダークロノスの姿が……檀正宗の姿が脳裏を過った。
「君の隙のなさは本当に私を手こずらせてくれたよ……」
黎斗さんがほむらちゃんを真っ直ぐに指差す。
かつて僕がゲーム病であることを暴露した時のように。
「「ッ!!!」」
あのセリフを知っている人は全員が身構えた。
様子の変化に気付いて、魔法少女たちとまどかちゃん、ゆまちゃんも疑心に満ちた目を黎斗さんに向ける。
けど僕は――。
「鹿目まどかを魔法少女にさせない……君はそう動いていた。
今こそ君の旅が終わる時だ。その真実を、明かす!」
命を尊び、独り善がりで、ひとりで
だからこそ、黎斗さんは僕が――
「暁美ほむらゥ!
何故君がキュゥべえと契約せずに、魔法少女に変身できたのか。
何故秘められた事情に詳しいのか。
何故時に関する魔法を司るのくわァ!」
「っ、それ以上言うな!」
「その答えはただ一つ……」
「やめなさい!」
「アハァー♡ 暁美ほむらゥ!」
「ッ!!」
「君が! 時間を押し戻し、
鹿目まどかを救おうとしている少女だからだぁーーーッ!!
ハハハハハッ!!
ヴェーハッハッハッハッハッハッハ!!!」
「ほむらちゃんが、時間を……!?」
「わたしを救おうとしてる!?」
「……もう、全て話す時よ」
ポーズ、リセット、リスタート、コンテニュー。
膝から崩れたほむらちゃんが明かすのは、彼方からの
友達を救うために運命へ叛逆した少女の物語。