仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory 作:柳川 秀
「不可解な周波数が観測された」
駅前の複合商業施設に来た後、飛彩さんに率いられて何件かスイーツ専門店を回ってから、黎斗さんがそう呟いた。
詳しくはわからないけど、周波数といっても電磁波などではないらしい。
ヒントがようやく見つかったということで、ともかく僕たちは黎斗さんに案内されるまま施設の奥へ進む。
「立ち入り禁止と書かれている……」
改装中のフロアの入口で止まった飛彩さんを
「緊急事態ですから」
と促して中へ。
コンクリートの壁や柱が剥き出しになり、鉄材や土嚢や工事用機材があちらこちらに置かれている。
真っ暗で埃っぽく、非常口の緑と消火栓の赤のライトが不気味に光るだけで、とても誰かがいるとは思えなかったけど――
「誰かいませんか!?」
その緊迫した女の子の声に、僕たちは迷わず駆け出した。
医療に関わって数年、何度も聞いてきた
「大丈夫ですか!?」
「あなたたちは……?」
「(半分は)ドクターだ」
見つけたのは制服を着た中学生くらいの女の子と……その腕の中で痙攣している、見たこともない白い生物。
「……」
「怪我をしてるのはソイツか? お前は大丈夫か?」
「は、はいっ」
パラドの質問に頷いた女の子から、飛彩さんが慎重に白い生物を受け取る。
「わかるんですか?」
「母は奇跡の獣医と称されている。俺もかじったことはある、が……」
彼もやっぱりこんな生物見たことない様子だ。
この世界では普通に生息しているのだろうか?
「……ソイツから離れて」
「ほむらちゃん!?」
いつの間にか近くに、黒と白と灰色でデザインされた不思議な服を着た女の子が立っていた。
こっちの子のクラスメイトかな?
ゲームに出てくる変身ヒロインみたいな格好だけど、これも普通?
「動物虐待とは、感心できないな」
「そ、そうだよ! ひどいことしないでっ!」
「あなたたちには関係ない」
……いや。中学生の女の子がこんな冷たい目をしてるなんて、絶対におかしい!
「だって、この子わたしを呼んでた!
聞こえたんだもん! 助けてって!」
「……あなたたちは?」
「僕たちはこの子が助けを呼んでたから来た、ドクターだけど――」
その時、僕はほむらちゃんという子の手に拳銃が握られているのに気付いた。
血の気が引く。それは、子どもには絶対に持っていてほしくない物のひとつだ。
ボフン!
急にほむらちゃんが白い煙に包まれた。
これってもしかして、消火器!?
「こっち!」
「さやかちゃん!」
声がした方には最初の子と同じ制服の女の子がいて、消火器を思いっ切り噴射している。
チラッと飛彩さんの抱える生物を気にしてから、最初の子がさやかちゃんと呼んだ子の方へ走って行った。
意外にも黎斗さんがそれに続いて、遅れて僕たちも走り出す。
「消火剤に人体への害はないが……」
「言ってる場合じゃないでしょ!」
飛彩さんに反論し、さやかちゃんは消火器が空になってからそれを勢いよく投げ捨てた。
「走れっ!」
「なによアイツ! 今度はコスプレで通り魔かよ!?
つーかなにそれ! ぬいぐるみ、じゃないよね……生き物!?
オジサンたちお医者さん? その子、大丈夫なの?」
「俺が……オジサン……」
「(半分は)ドクターだ」
ほむらちゃんから逃げてしばらく走った後、僕たちは白い生物を診るために積まれた鉄材の陰にいた。
さやかちゃんたちもこの生物のことは知らないようだし、ほむらちゃんのこともわからないみたいだ。
まさか、彼女があの原因不明の事件の犯人とかじゃないよね……。
「出血しているということは生物で間違いない」
「呼吸もしていますね」
「ああ。しかし、どういう体なのかまではわからない……」
飛彩さんと連携してとりあえず止血を施す。
「急いで近くの獣医に「いや、ダメだ」
立ち上がってすぐ、それまで黙っていた黎斗さんに止められた。
「何を言ってるんですか!?」
「私としたことが……その生物の監察に集中するあまり、周囲の警戒を怠ったか」
「「!?」」
ハッとして辺りを見回す。
コンクリートの壁に不気味な何かが重なってはブレて消え、また別の何かが映る。
薔薇、蝶、目、柵、看板、それに……人?
「どんどん景色が変わっていく!? 永夢、気を付けろ!」
「やだっ! 何かいる!?」
「まどか、あたしたち悪い夢でも見てるんだよね!?」
最初に会った、まどかちゃんに白い生物を任せる。
彼女とさやかちゃんを四方から庇うようにして僕と飛彩さん、パラド、黎斗さんが立った。
なにがなんだかわからないことだらけだけど、この子たちを危険に晒す訳にはいかない。
そして、何度目かのブレが収まると景色は一変していて、僕たちは既に囲まれていた。
まどかちゃんたちと同じくらいの身長で、綿みたいな頭にカイゼル髭。
頭から生える手と体は細長く、下は蝶で、ユラユラとしながら何か歌っている。
丸い目と青紫色の唇は、僕たちのことを嗤っているようだ。
黎斗さんの作ったゲームのキャラとは違って、もっと気味が悪い。
「パラドと黎斗さんはまどかちゃんたちを頼みます!」
僕と飛彩さんがゲーマドライバーを装着して、それぞれガシャットを構える。
「あなたたちは……?」
驚くまどかちゃんの目に、僕たちの背中が映った。