仮面ライダーエグゼイド×魔法少女まどか☆マギカ [改編]翻転のstory   作:柳川 秀

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採取が終わる。反撃が始まる。


ステージ2『それはとってもhappyだなって』
STAGE 02-01 (side:doctor-K.H.)


「魔法少女……まさか実在するとはねぇ。まっ、今更驚かねーけど。

 しっかし、なーんで自分がそのまとめだけじゃなく、経理の仕事までやらされてるかねー?

 大先生今日だけでいくつスイーツ買ってんの。これ全部経費で落とすとか職権乱用だろ……。

 ア~~~メンドクセ~~~~~」

「……」

「永夢か。どうした?」

「頑張ってる貴利矢さんを応援したい」

「おー。手伝ってくれんの? ノリがいいじゃない」

「でも、自分の力で成し遂げないと」

「大先生?」

「意味ねーんじゃねーか?」

「白髪先生?」

「それなら、届け!」

「「元気ハツラツパワー!」」

「キャラ違わない?」

「レベルアップだ!」

「え、何飲ませようとしてモゴッ!」

「ビタミンC!」

「ビタミンBも!」

「着色料・保存料0!」

「一緒なら、何でもできる!」

「カハッ、ゴホゴホ。悪ノリが過ぎる、ぜ……」

「「元気ハツラツ! オロナ●ンC!」」

「ちょっ、待って、やめて、やめろーーーッ!」

 

 

 

「やめろーーーって! あっ? 夢かよ!?」

「いや、喧しいな監察医」

 

鏡総合クリニックの3階、階段を上がって左の大部屋。

今は男部屋として使われているそこに、本来は患者を寝かせるためのベッドが6台。

その1つから跳び起きた監察医を注意して、俺は再び横になった。

 

ドクターたる者、いつ何時でもベストコンディションでいなければならない。

当然、質の良い睡眠をとることは大切だ。

 

小児科医・開業医・パラド・檀黎斗は起きていない。

残りライフが1つでは過労死もできないだろうと言うと、檀黎斗は意外にも素直に眠りに就いたな。

ポッピーピポパポの視線が厳しかったのも影響していたようだが。

 

小児科医はお泊り会みたいだとパラドと共に心を躍らせていて、中々寝ようとしなかった。

俺の場合親父の助言で何回かは家に友人を泊まらせたこともあるが……。

小児科医には過去の様子からしてそんな思い出もなく、こんな歳になってからではするのも恥ずかしいだろうからな……納得もいく。

 

さて、夜も明けていないが再び眠るにはまだ時間がかかりそうだ。

睡眠の導入代わりに、俺は昨日の出来事をぼんやりと思い返すことにした。

 

 

 

「――改めて自己紹介するわね。私は巴マミ。見滝原中の3年生。

 そして、キュゥべえと契約した魔法少女」

 

俺たちはあのショッピングモールから巴マミの住むマンションに案内されていた。

中学3年生と言ったが、ひとり暮らしか。

この世界では珍しくない可能性もあり、無暗に詮索する気もないが、小児科医の件もあったことだ。

留意はしておこう。

 

「あ、わたしは鹿目まどかです。2年生です」

「あたしは美樹さやか。同じ2年生!」

「鏡飛彩。……鏡総合クリニックの院長だ」

「俺はパラド。そこのお手伝いみたいなもんだ」

「僕は同じクリニックの小児科医で、宝j「宝生永夢ゥ!」

 

小児科医、またチベットスナギツネのような顔になっているぞ。

檀黎斗、女子中学生たちを驚かせるな。

 

「私は檀黎斗。理由あってそのクリニックにいる、天才ゲームクリエイターさ」

「ゲームクリエイター? あの仮面ライダーというのを作ったのも、あなたですか?」

「君は察しが良いな。……今は()()()()()()()()()()()という説明に留めておこう」

 

白々しいと感じるが、こいつのことだ。

何か考えあって詳しく説明しないのだろう。

手札を公開せずいくつもの切り札を用意する。

敵に回すと恐ろしいが味方につけると(腹立たしくも)頼りになる男だ。

 

「今度君たちにも私のゲームをプレイさせてあげよう!」

「ゲームの面白さ(だけ)は保証できるな」

「……先にこちらの事情から説明させたいようですね。

 キュゥべえに選ばれた以上、鹿目さんと美樹さんにとっても他人事じゃないし……」

「うんうん、何でも訊いてくれたまえ」

「さやかちゃん、それ逆」

 

巴マミは微笑み、話が長くなるからとティーポット・カップ・ケーキ・フォークを用意した。

小さなテーブルを囲んでいる鹿目まどか・美樹さやか・巴マミ自身・俺の物はティーポットとセットのカップだ。

小児科医・パラド・檀黎斗はダイニングテーブルの方に座っており、そちらは別のカップだ。

 

「すまないが、メス……ナイフも出してもらえるか?」

「ナイフですか?」

「きっと面白い物見れるよ」

 

見世物ではないが、まぁいい。

ナイフを受け取ってケーキを手際よく切ると、女子中学生たちから感嘆の声が漏れた。

 

「スイーツとはこうして食す物だ……」

 

また微笑んで(少し違うように見える気もするが)、巴マミが変身などに使っていた黄色い宝石を取り出す。

 

「これがソウルジェム。キュゥべえに選ばれた女の子が、契約によって生み出す宝石よ。

 魔力の源であり、魔法少女であることの証でもあるの」

「契約……?」

『僕は、君たちの願い事をなんでも1つ叶えてあげる』

「願い事って?」

『なんだって構わない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ。

 でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム。

 この石を手にしたものは、魔女と戦う使命を課されるんだ』

 

それで女子中学生に過ぎない巴マミが魔女と戦っていたのか。

 

「魔女とは何だ? 放っておくことはできないのか?」

『願いから生まれるのが魔法少女だとすれば、魔女は呪いから生まれた存在。

 しかもその姿は普通の人間には見えないからタチが悪い。

 不安や猜疑心、過剰な怒りや憎しみ、そういう災いの種を世界にもたらしているんだ』

「理由のはっきりしない自殺や殺人事件は、かなりの確率で魔女の呪いが原因なのよ。

 形のない悪意となって、人間を内側から蝕んでいくの」

 

なるほど、檀黎斗が調べ上げた事件・事故の原因は魔女。

繋がったというやつだな。

 

「そんなヤバイ奴らがいるのに、どうして誰も気付かないの?」

『魔女は常に結界の奥に隠れ潜んで、決して人前には姿を現さないからね。

 さっき君たちが迷い込んだ、迷路のような場所がそうだよ』

「結構、危ないところだったのよ。

 あれに飲み込まれた人間は、普通は生きて帰れないから」

 

巴マミ、そしてキュゥべえの視線がチラッと檀黎斗に向く。

 

「どんな願いも叶えられる代わりに命懸けの戦いへ挑むことになる、か。

 永夢、ドクターとして認められるかい?」

 

しかし、気付いてないとでも言いたそうな顔で檀黎斗は話の流れを変えさせなかった。

この件は開業医が聞いても真っ先に止めに入るだろうな。

 

「そんなの、認められる訳ない……。

 でも、マミちゃんが命を懸けてまで叶えたかった願いって……?」

「それは――また今度お話しします。

 さて。提案なんだけど、2人ともしばらく私の魔女退治に付き合ってみない?」

「「えっ!?」」

「魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめてみればいいわ。

 その上で、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの。

 もちろん安全は私が保障するし、()()()()()()()()()()も助けてくれますよね?」

 

巴マミの優しい目は檀黎斗にだけ鋭く向く。

だが奴は彼女に対し、いつもの不敵な笑みを返すだけだった。

 

……いや、今ならわかる。

その時奴の目は別の存在を捉えていた


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