リアルチーター   作:glaci

2 / 9
File 02 笑顔からのリスタート

「はぁ・・・」

 

「うん?どうしたの?そんな疲れた顔して」

 

「いや、そりゃ疲れない方がおかしいでしょう・・・。昨日の夜ベランダが車に破壊されて、朝に隣町に行ってみたらカイブツに襲われて、謎の女子大学生に謎の施設に連れ込まれ、ハイテンションで状況説明されたら・・・」

 

「あはは、それは楽しい一日だったね」

 

「・・・。てか、女子大学生ってそんなにテンション高くて子供っぽいものですか・・・?」

 

「え、あ、そう?もっとじとーっとして、暗闇そのものみたいな風がいいかなぁ・・・」

 

「いや、そこまで言ってないですよ。オーバーでしょ」

 

「じゃあ、このままでいくね!」

 

顔がすっごく明るくなった気がする。それにしても、こんな巨大で最先端技術の塊のような場所に平然としている自分が恐ろしい・・・。これは藍沢さんの才能なのだろうか。自然と口調も軽くなった気がするし。

 

「さてと、雑談はここまでにしてそろそろ本題に入ろう」

 

今まで笑顔だった表情がほんのちょっと真剣な表情になった気がする。

 

歩きながら話して、ミーティングルームのような部屋まで連れてこられた。私と藍沢

 

「うちの組織はリアルチーターの逮捕や処刑などを行っている。リアルチートにはリアルチート。組織のメンバーは全員リアルチーター。そうでなければいけない。しかし、リアルチートを扱えるのは約0.01%の人間だけ。さすがに、人数が足りなくて手が回らない。そこで私達が行ったのは日本全国からのスカウト。そうでもしないと、多くの人が死ぬ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください。処刑って・・・。そんなこと許されるんですか・・・?」

 

「場合よっては・・・ね。でも、限りなく少ない。今で5件しかない」

 

「それでも、人殺しですよ・・・」

 

「殺されるような奴はもう"人間"じゃない。それこそ"カイブツ"だ」

 

「じゃあ、もしかして・・・」

 

「ああ、もちろん殺したさ」

 

余りにも平然と言ってきたので、少し反応にラグがあった。そう、この人は道徳的に最もしてはいけない事を簡単にやったのだ。だが・・・。

 

「そう。多くの人間とたった一人の"カイブツ"。天秤にかけてみればその結果は明らかだ」

 

たった一晩で町を地獄に変える"人間"・・・。いや、"カイブツ"が死ぬのならそれは本望ではないか?なぜなら、私にはリアルチーターを恨むそれなりの理由がある。それだったら、その存在を消すこの組織は正しい・・・?

 

私の顔を見て彼女は話を続ける。

 

「話を戻そう。君は学校で血液検査を行わなかったかい?」

 

「え、ああ、やりましたよ。突然検査の話が来てクラス全員が受けましたけど・・・」

 

「それ、うちの組織の仕業だよ」

 

「!?」

 

「実はその検査全国の学校や会社でやっていてその中から適合者を探してるんだ。ちなみにあなたの高校にはあなた一人しかいなかったよ」

 

適合者を探すためだけにこんなことをするこの組織は・・・。さすが政府公認の組織だ。こんなこと国の協力がないときっと出来ない。

 

「リアルチートのことはあんまり知らないと思うから教えておくけど、リアルチートを使えるようにする機械を背中に埋め込んで神経からそのメカニズムを脳に伝達させるんだ。でも、適合がないと拒絶反応で最悪死に至る。リアルチートにも色んな種類があってそれぞれ適合者が違うんだ」

 

「藍沢さんのチートは何だったんですか?」

 

「私のは・・・」

 

喋り始めると、藍沢さんは椅子から立ち上がって腕を前に伸ばし、手を開いた。すると、周りの空気が一気に藍沢さんの手のひらに集中し、次の瞬間

 

「これが私のチートだよ」

 

彼女の手には日本刀が握られていた。しかし、それをデスクの上に置いてまた手のひらを前に出すと今度は拳銃が握られていた。

 

「仕組みはよくわかんないんだけどね。便利でしょ」

 

「また、物騒な能力ですね・・・。じゃあ、私のは・・・?」

 

もう、リアルチートのあるこの日常になれてしまったのだろうか。そんなに驚かない。

 

「えっと、確か・・・」

 

そう言って藍沢さんは部屋に入ったときから置いてあった資料をペラペラとめくり始めた。

 

「えーっと、あ!これだ!あなたの適合チートは"物体を弾丸にするチート"だって!」

 

「へ?」

 

「もっと細かく言うと中指と人差し指の先にある物体をかなりのスピードで吹っ飛ばすっていう能力らしいよ」

 

もっとわからない。なんだそれ。今までの空気が吹っ飛んだ気がする。

 

「えーっと、つまり?傘とか石とかを何でも弾丸にするってことですか?」

 

「理解が早くて助かるよ。でもね、力には代償が必要。背中の機械が破壊されたりしたら神経が一気に全部ちぎれて死ぬ」

 

「それって、ここにいる人たちは死と隣り合わせで・・・」

 

「うん。私達は沢山の命を助けるために自分自身の命を天秤にかけてる。それくらいの覚悟があなたに出せると信じて私はあなたに話してる」

 

「・・・。ここで私が断ったら?」

 

「あなたの今日の記憶を全て削除したのちあなたの家に帰すよ」

 

なるほど。さすが、最先端技術の塊と行ったところか。記憶の削除が出来るということは記憶の削除専門のリアルチーターがいるということかな。

 

「まあ、あなたなら断らないと思うけどね」

 

「・・・。はい・・・」

 

「多少無理矢理だったこもだけど、あなたが数少ないリアルチート適合者であった以上学生の力を借りるしかない。でもフォローはもちろんする」

 

「人を・・・、殺したりも・・・」

 

「そんな事をいきなりきたあなたに出来るとは思ってない。てか、そんなこと出来ることならさせない」

 

「・・・。でも、私はもう二度とリアルチーターが誰かを殺すようなことはさせたくない。だから私は戦います!」

 

私は椅子から立ち上がり

 

「いいやる気だね。あなたなら出来るよ!今度こそね」

 

そして、藍沢さんは私の方に来て手を引っ張りドアの方へ駆け出した。

 

「さあ!そうと決まれば早速準備に取りかかろう!」

 

「あ、あんまり引っ張んないでくださいよー!」

 

まず、私は数枚の書類に個人情報等を記入した。少々抵抗があったが、藍沢さんによると「だいじょぶ!だいじょぶ!個人情報はうちで流失しないように厳重なセキュリティがあるから!」ということだそうだ。

 

次にその書類を持ったまま別の部屋へ。そこには幹部的な人がいた。藍沢さんは大分フレンドリーな感じがしたが、そんなんでいいのだろうか。

 

そして、私は手術室のような部屋に来た。

 

「こ、ここは?」

 

「リアルチートを埋め込むための部屋だよ。背中の神経に機械を埋め込んでチートを導入するの。でも、安心して!ちゃんと麻酔はかけるし、後遺症も残らないから!」

 

「そんなこと言われても、怖いものは怖いですよ」

 

「いいから、早くここに寝て!」

 

藍沢さんに無理矢理手術台に乗せられ、心拍数が跳ね上がる。若干の恐怖を感じた次の瞬間。

 

プスッ

 

「ふぇ?」

 

何かが動く様子を見て最後私の意識は途絶えてしまった。

 

しばらくして目が覚めると、気を失う前とほぼ全く同じ状況で手術台の上にいた。

 

「え、あれ?なんともない?」

 

「あんまり動かない方がいいよー。あと、後遺症は残さないって言ったでしょ。じゃあ、感覚が戻ってきたら次いくよー」

 

「は、はいっ!」

 

意識を失っていた間何をされていたのだろう。背中を触ったが全く何かが埋め込まれた感覚はない。本当に私はチーターなの?

 

しばらく歩くと、広い空間に出た。カウンターの様なところがありその向こう側にはターゲットが描かれた板があった。

 

「はい!到着!ここは射撃場でーす!」

 

「ここで、何をするんですか?」

 

「それはもちろん、あなたはチートが使えるようになったんだ!少しは実感してもらわないとね」

 

そう言って、藍沢さんは私に小さな何かを手渡した。

 

「これは・・・」

 

銃弾・・・。

 

「それを"拳銃を使わずに"撃ってもらおうか」

 

「私のチートを試せってことですね」

 

藍沢さんは笑顔でうなずいた。私はゆっくり的の前へ立ち、手を銃の形にして構えた。

 

「こんな感じでいいんですか?」

 

「うんうん!様になってるよ!」

 

弾丸を指の先に当てて、直ぐに手を離した。その一瞬の間で手に力を込めると指先にあった弾丸は勢いよく放たれた。その勢いで私の腕は真後ろに引き下がり、自身の体は真後ろに頭から吹っ飛んだ。

 

「いった!」

 

頭から床に頭を打ち付けてしまった。結構撃った場所から離れていた。

 

「だ、大丈夫!?」

 

「いてて・・・。まあ、なんとか」

 

放たれた弾丸をみると的を少し外れて右上の方にそれていた。

 

「すごい!あのスピードは普通の拳銃じゃたぶん出せないよ!さすが私が見込んだだけあるわ。じゃあ、次はこれを・・・」

 

そう言って持った来たのはビニール傘だった。なんのへんてつもないただのビニール傘だ。

 

「これで何をしろと?」

 

「これを弾丸にしてもらおうかと。あなたのチートは弾丸を発射するだけじゃない。どんなものでも弾丸に出来る!そこで手始めにそれっぽいビニール傘を使って撃ってみてよ!」

 

「わかりました。取り敢えずやってみます」

 

さっきみたいに手の形を変えて傘の柄の部分を指に当てる。スナイパーのように構えて的の中心を狙う。傘の重さから少し上を狙って、今度は倒れないように思いっきり踏ん張って力を込めた。放たれた傘はそのまま少し上に当たった。

 

「なるほど。どうやらこのチートは傘を直線で飛ばす威力があると言うことですね。しかも的を貫通するほどの」

 

「本当だ・・・。すごいよ普通に!」

 

自分でも正直驚いている。物体を超スピードで吹っ飛ばすチート。これは物凄い殺傷力を秘めていそうだ。

 

「もしかして、これ物体を吹き飛ばすなら空気も吹き飛ばせますかね」

 

「あ、確かに!やってみる?」

 

「はい。是非。色々試してみたいので」

 

的に向かって物凄い風が吹いた。しかし、的は大きく揺れただけで何も変化はなかった。

 

「もしかして・・・」

 

私はカウンターを乗り越えて的の数センチ前の場所で構えて、空気を放った。すると金属製の板に一瞬のうちに亀裂が入った。

「あ!こ、これ大丈夫ですか・・・」

 

「だいじょぶ、だいじょぶ!これくらい沢山替えはあるからさ」

 

空気でも武器になりうるということか。これは覚えておこう。

 

「それじゃあ、まあ、試しも終わったしそろそろ実践にいこうか」

 

「へ?実践?」

 

対して練習もしてないのに実践だって?そんな・・・。

 

「大丈夫だよ!実践って言ってもあなたは見るだけ。見学っていった方が正しいかもね」

 

良かった。ほっとは出来ないが、まだそんなに深く関わらなくても大丈夫そう、でもこれから私は一体何人の人を殺すのだろう。何人の人を救えるだろう。

 

「あなたなら今度こそ・・・。きっと、この惨劇を・・・」

 

「え、何か言いました?」

 

「いいや、何も。それよりは早く行こう!」

 

私は藍沢さんに連れられて光の差す外へ向かった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。