私は今走っている。いや、無理矢理引っ張られていると言った方が正しいだろうか。
「一体、どこに連れていく気ですか」
私より少し年の離れた女性は言う。
「どこって・・・。訓練所だよ!」
あ、良かった。もしこれで現場にいこうとか言い出したら本気で逃げ出すところだった。いや、待てよ・・・。だったらどうして施設内じゃないんだ?
「ほら!ここが出口だよ!」
振り返ると、十階ほどの高さがあるビルがあった
「ここって、近所のビルじゃないですか」
「そう!ここは私たちの組織を隠ぺいする飾り・・・。なので、上の階は全部カラ!」
こんな所に施設が隠されていたなんて・・・。もしかしたらほかの場所にも隠された施設があるのかもしれない。
「一応、この町のいたるところに組織の諸々があるよ!例えば・・・。あそこにあるDVDショップ。その棚の内側にはたくさんの武器が入ってるんだー!それとね!あそこの・・・」
「あの・・・。さらっと人の心を読むのはやめましょう・・・」
この人は本当に一体何なんだ・・・。この人の能力は凶器を取り寄せる能力のはずでは・・・。基礎能力が高すぎる。もう、戦闘とかじゃなくてあるとすればスパイとか交渉役にした方がよかったんじゃないのか?
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数十分ほど歩いて、町はずれに来た。
「ほい!ここが訓練所でーす!」
廃工場まで来た。屋根のトタン板には焼き焦げて穴が開いていて、なんていうか全体的にボロボロ。周りに人気は全くない。
「もしかして、施設内で能力の訓練をすると危ないからここに来たんですか?」
「そう!だって、晴夜ちゃんの能力って壁貫通しちゃうからこういうとこじゃないと施設の方の訓練所が壊れちゃうもん!」
そんなに強かったのか・・・。私の能力。壁を貫通、これは実戦で役立つかもしれないな。
「じゃあ、まずはあそこにあるドラム缶にこのネジを打ち込んでみよう。こういうチートは当たらなきゃ意味がないからね。さ、しっかり踏ん張って狙いを定めて・・・」
バン!
発射したとほぼ同時にドラム缶・・・、の横にある壁に破裂音をあげて貫通した。
「あちゃー・・・。ま、想定内だし別にいっか」
「なんか、すみません。でも、ちゃんと練習して当てられるようにしますね・・・」
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数時間後。ドラム缶と壁に大量の穴を開けた私はお昼休憩に入ることにした。どうやら藍沢さんが私の練習中にお弁当を買ってきてくれたようだ。
「早く食べよー!」
「はい!」
こういうちゃんと話せる機会にいろいろ聞いておいた方がいいのかもしれない。
私はドラム缶に座っていろいろ聞いてみることにした。
「そういえば、あの時私が出くわしたあいつは・・・」
「・・・、倒し損ねちゃった」
「そうですか・・・」
「でも、大丈夫!私たちが絶対にみんなを守るから!」
私はお弁当を口に運びながらよそ見をして頷いた。あのチーター、野放しにしておくとまずい。
「きっと、倒せますよね」
「ああ、できるだけ殺したくはないけどね」
藍沢さんは「そういえば!」と言ってポケットからカプセルがたくさん入ったケースを私の手のひらにぽんと置いた。
「それはチーター相手に投げつけると対象付近で破裂してチーター本体にショックを与えて無力化する装置・・・。まぁ、殺さないためのカプセルだね。でも、できるだけ背中の近くじゃなきゃだめだし、チートの侵食率が高いと効かないこともあるけどね」
「そんなものまで開発されてるんですね。って、リアルチーター対策本部だから当然か・・・」
「まあね」
藍沢さんは少し誇らしげに笑った。私は内心ほっとした。リアルチーターには恨みがある。しかし、殺すとなると少し気が引ける。確かに奴らは私の大切なものを奪った。でも、それは・・・。
「殺しても報われない。そんな人のためにこれは作られた」
「・・・。ありがとうございます。私のために」
「いやいや、これは全員に渡すものだから義務みたいなものだよ。それは持っておいて!絶対、必要になるからさ!」
ほぼ同時にお弁当を食べ終わり、空の弁当箱を置いてふと割れた窓越しに外を見てみるとスーツ姿の男性がこっちを見ているのに気が付いた。
「ん?あれは・・・」
相手も私に気が付いたのかすぐにどこかへ行ってしまった。
「あの、ここって立ち入り禁止区域ですか?」
「え?ああ、よく気が付いたね」
「こんなに人気がなかったら気付きますよ」
となると、あの人も組織の人間だったりするのだろうか。今度会う機会があったら聞いてみよう。
「じゃ、射撃練習再開しようか」
「はい!」
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私は落ちているネジを拾い上げ、しっかり踏ん張って狙いを定めた。腕は真っすぐになったし、なんだか落ち着いて打てるような気がする。
バン!
放たれた
後ろからは藍沢さんの拍手が聞こえた。
「すごい!すごいよ!よくこの短時間でその技術を取得するのは結構すごいことだよ!」
「あ、ありがとうございます・・・」
なんかちょっぴり嬉しい気がする。これは、普通の生活を続けていれば絶対に学ばないようなことだが私はそれを習得し喜んでいる。なんとも不思議な体験だ。
「よし!じゃあ、一旦基地に戻るよ!」
「わかりました!」
私たちは同時に走り出した。長時間の運動をした後のはずなのに足はなんだか軽い感じがした。
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しばらくして、私たちは基地に戻ってきた。様々な情報が映し出されたモニターがたくさんある広い部屋に来るとそこには見知らぬ女性が立っていた。
「おかえり。ういちゃん」
「うん、ありがと!ゆのん!」
「ゆのん?」
知らない人物名だ。眼鏡の内側には包み込まれるような優しい目をしていて、身長は158㎝の私と同じくらいで藍沢さんと同じスーツ姿だった。
「紹介し遅れちゃったね。この子は
「リアルチーター対策本部のバックアップや開発を行っている桃園です。ういちゃんから話は聞いてるわ。よろしくね、はるよちゃん」
「あ、は、はい!よ、よろしくおねがいします・・・」
幼馴染か。しかも小学生からともなると互いの中は最大限にいいだろう。正直言って私に幼馴染といえるほど仲が良かった友達は・・・。まぁ、一人くらいかな。最近会ってないからもう覚えてるかわかんないけど。
「ういちゃん。これも渡さなきゃ」
「ああ、ごめんごめん。カプセルは渡したんだけど忘れてた」
そう言って、横の操作用キーボードとモニターのような机に置かれていたスーツ一式を渡してきた。
「それは、はるよちゃんのために用意した特製防護服。それを着れば斬撃、弾丸、爆風は防げるし、耐火や防水とかもついてる。あと、操作すれば光学迷彩もできる優れもの!」
「これは優穏が作ったんだよー!」
「へー、すごいですね・・・。これを私に?」
「ええ、遠慮なく使って!」
ここでも最先端技術を見せつけてくる。このスーツにその機能が備わっているのは結構すごいことだと思う、多分。この組織の制服、といったところだろうか。
「それと、これも渡しておくよ。これは晴夜ちゃんのIDカード。これがあればこの組織のあらゆるコンピュータのセキュリティ解除ができるようになるよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「折角だから、着てみない?」
「あそこに更衣室もあるからさ」
私は「そうですね」と返事をして更衣室で着替えてみることにした。質感も質量もごく一般的なスーツだ。これにすごい機能が備わっているとは到底思えない。
更衣室の扉を開けると二人が立っていた。
「おお!似合ってる!」
「そうね~、フォーマルな感じが際立った感じがするわ」
「そ、そうですか?」
まだ自分は高校生なのにこれを着ているとなんだか社会人まで上り詰めた感じがする。
「これで、はるよちゃんも私たちの一員ね!」
私は少し笑って「ありがとうございます」と言った。二人は笑顔で「どういたしまして!」と返した。
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私はしばらく色々な説明を受けて帰宅している。よくある話だが、この組織に所属していることは言ってはいけないらしい。口を堅くしなければいけないな。
自宅のマンションが見えてきた。だが、屋上に人影があることに気が付いた。
「あそこは立ち入り禁止のはずでは・・・?」
そういえば、帰り際桃園さんに「尾行とかも気を付けてね」って言われたなー。もしかして、リアルチーターにも組織があるのか?だとしたら私の情報を手に入れるために尾行を?
「ちょっと危険だけど、このままずっと尾行されるのも嫌だし、少しけん制してみようかな」
相手と目が合わないように建物内まで歩いて進み、敵の疑いがある人物が逃げる前に私は急いで暗い階段を駆け上った。そして、私は屋上の扉のドアノブに手をかけた。
「もうここまで来ちゃったし、やるしかないか。でも・・・。ここで死んだりしたら・・・」
足がすくんだ。私はドアノブから手を放し、逃げるように階段を駆け下り踊り場に足をかけようとした瞬間。
「おい」
「きゃっ!?」
後ろから少し低い男性の声がした。まさか、私の存在に気付いてここに・・・。
私は咄嗟に何も弾丸になるものがない状態でその男に
身長は高め、緑色の瞳に私と同じスーツ?
「それじゃあ攻撃できないだろ?
「ん?もしかして、組織の人ですか?」
「ま、言ってしまえばそーゆーことだ。あといい加減その警戒態勢を解いてくれないか。別に俺は敵じゃない」
私はゆっくりと手を下した。男はため息をつき再度話し始めた。
「何も知らないと信用できないだろ?自己紹介させてもらうぜ。俺は
「なるほど。ちなみに柳葉さんはなぜここに?」
「俺の役割は遊撃だからちょっと見てただけだ」
遊撃か。もしかして、私を助けに来てくれた藍沢さんの隣にいたのは柳葉さんだったのかな?
「ああ、そういえばあのチーターに攻撃したのは俺だ。最も、逃げられちまったけどな」
「え!?」
この人も心が読めるのか・・・?本当にいろんな人がいるなこの組織は。
後日。学校が終わり、例のビルの中にある基地にいた藍沢さんに昨日の夜のことを話すと
「ああ、彼にあったのかい?」
「知り合いだったんですか?」
「まあ、そうだね。そんなに会わないからたまに一緒にチーターを無力化するくらいかな。彼とも仲良くしてね」
藍沢さんは少し視線をそらして答えていた。何かありそうだが、聞くとまずそうなので聞かないでおこう。
「わかりました。柳葉さんとはまたお会いできるでしょうか?」
「うーん、どうだろ。彼気分屋だからそんなに顔見せないんだよねー。戦闘になれば来てくれるかもね」
遊撃部隊と言っていたから戦闘中に近くにいたら会えるかもしれない。でも、それは少し後になるのかも。
「私はちゃんと戦えるでしょうか・・・」
「うん。きっと大丈夫だよ。危なかったら私たちが何とかするからさ。みんなで世界を守ろう!」
「はい!」
私は改めてこの人の意志の強さを再確認し、私自身も覚悟を決めた。私がこれから世界を救う・・・!