リアルチーター   作:glaci

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File 05 チュートリアルステージ 1-2

8時30分。学校。

 

「起立!礼!着席!」

 

「えー、ホームルームを始める。未だにリアルチーターは捕まっていない。今日も早めに下校するように」

 

「起立!礼!着席!」

 

まさかそのチーターがここにいるとはみんな思わないだろう。私と本人以外はね。

 

「おー、ホームルームとか懐かしー!」

 

「そうね~」

 

あと、通信機の向こう側のお二人さん以外・・・かな?

 

「さ、まずは目星をつけるために学校中をくまなく探してくれたまえ!」

 

「とは言っても学校(うち)は中高一貫校ですよ・・・。昨日も言った通り、約1500人がいる中でたった一人を特定できるんですか?」

 

「もちろん作戦はあるさ。多分、そのチーター殺し自体は二回しかやってないけど重症者がたくさん出てるんだ。重症になった毒はいろんなタイプで検出されているからきっと試しているんだろう。学校内でもその被害が出ているから被害者を辿っていけば───」

 

チーターが見つかるというわけか。なるほど。でも早めに終わらせないと死傷者が出るかもしれない。

 

「じゃあ、こっちからも情報が入り次第バックアップしていくわね」

 

「了解です!」

 

教室中に渾身の了解が響き渡った。この感じだと数名私の通信(ひとりごと)を聞かれていたかもしれない。

 

「あいつ、意外と面白いやつだな」

 

「うふふ、不思議な子・・・」

 

視線が集まってしまった。皆が思い思いの言葉を述べる中、私は一人赤面していた。

 

「うう、恥ずかしい・・・」

 

「晴夜ちゃんって意外とおっちょこちょいなんだね~」

 

まぁ、そんなことは気にせず早く探さないと。でも、授業はちゃんと受けないとね。

 

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「一時限目終了。授業中クラスメイトに不審な点は見られません。捜索を開始します」

 

「オッケー!じゃあ、よろしく!あ、あと銃弾の確保もしておいてね」

 

教室には数人しかいなくなっている。授業中はクラスメイト全員に見られているため何かしでかすとは考えにくいだろう。だとすればこの休み時間中。もっと大きなことをするならば、昼休み、もしくは放課後。その辺りを重点的に調べてみよう。

 

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「昼食終了しました。これより昼休みに入ります」

 

「わかったわ。きっと、この時間帯チーターは大きく動くわ。最大限警戒してね」

 

「了解ですっ・・・」

 

今度は周りに聞こえないくらい小さな声で言った。今までの二、三、四時限目のあとの休憩時間では二人の生徒が突然倒れたことが分かった。直ぐに周囲を見渡したがそれらしき人物は見当たらなかった。

 

「うーん。何処にいるんだリアルチーター・・・」

 

そのときだった。

 

ピンポンパンポーン

 

「避難訓練。避難訓練。ただいま、一階で火災が発生しました。三階避難用階段を使用し、校庭まで()()()()のルールを守って直ちに避難して下さい」

 

「なっ・・・」

 

ひ、避難訓練だって!?まずいな・・・。どう考えてもこのタイミングじゃない!どうする・・・。どうすれば・・・。

 

「晴夜ちゃん!落ち着いて!」

 

「あ!す、すみません。落ち着きます」

 

「いい?この状況で何処で一番人が集中すると思う?」

 

さっきの放送でも分かる通り当然・・・。

 

「三階避難用階段ですね」

 

「そう。きっと、リアルチーターはそこに毒ガスをばらまくと思う。そして、この状況下においてその行動が可能な役職は?」

 

「まさか・・・」

 

そうか!私は注目すべき点を間違っていたのかもしれない。つまり───。

 

「生徒ではない・・・。教職員!」

 

「その通り!生徒が避難所にいなければ不自然だが、教職員がいなくても比較的不自然ではない。つまり、今回の相手、成人した大人だ」

 

何てこった。相手はチーターだし、どのみち警戒はしていた。でも、それが私より年齢が上の人物と考えると戦闘になったら圧倒的に不利だ。

 

「でも、大丈夫だよ!私がちゃんとバックアップするからさ!」

 

「分かりました。じゃあ、急いで向かいます!」

 

私は勇気を出して一歩、また一歩と走り出す。

 

「お願い!間に合って!」

 

恐らく、今頃みんな教室前で整列しているところだろう。私一人いなければ少しは時間稼ぎができるかもしれない。

 

「はぁ・・・、はぁ・・・。あの曲がり角を曲がれば!」

 

曲がり角を曲がると見覚えのある男性の後ろ姿があった。

 

「はぁ、あ、あなたは!」

 

「君は・・・。晴夜さんさんじゃないか。どうしてここに?早く整列しなきゃ駄目じゃないか!」

 

「あなたは・・・。佐曽利先生!?」

 

佐曽利 龍夏(さそり りゅうな)先生。私のクラスの理科教師だ。比較的温厚な先生でとても殺人などを犯すようには思えない。

 

「晴夜ちゃん。無闇な戦闘は避けた方がいい。出来るだけ相手を刺激しないようにね」

 

もちろん。わかりきっていることだ。

 

「先生こそどうしてここに?」

 

「私は生徒の避難経路を確保しに来ただけだ。心配なんてする必要ないよ」

 

なるほど。あくまでしらを切るつもりか。でも、その顔には若干の焦りが見える。このまま戦闘を避けて話を引き伸ばすことは可能だ。無理矢理な発言でもいいから話を引き伸ばすしかない。

 

「そうですか。私も先生に頼まれてここに来ました。私もお手伝いしま───」

 

「単刀直入に言おう。お前、チーターだろう」

 

「なっ!?」

 

そ、そんな馬鹿な。いつ気がついた?

 

「お前は朝から様子がいつもと違った。教室からあまりでないお前がそんなに活発に動くなんて警戒するに決まってるだろ?」

 

佐曽利先生の目がどんどん私を追い詰める、鋭い目付きに変わっていく。まるで別人。くっ!ここに来て教師を気にしていなかった弊害が出てくるなんて・・・。

 

「俺には今ここでお前を殺す事だって出来るんだ。知ってて来たんだろ」

 

「・・・」

 

私は返答せずに睨んだ。それを全く気にせずに手に持っていた液体の入った瓶を目の前に出した。

 

「話には聞いていたんだ・・・。本部のやつらが俺を警戒してるってなぁ。だから、そいつを殺すプランだってあるんだ」

 

少しにやけた表情で私をバカにするように語り出した。

 

「俺のチートは知ってんだろ?このスプレーを毒ガスに変えてこの辺りにばらまくつもりだったんだ。でも、お前を殺すのはこのただの水だった毒だ。こいつをたった今毒に変えた。こいつが空気に触れた瞬間蒸発し近くにいる人間が即死する。もちろん俺には効かねぇ」

 

「あなたは一体何がしたいんですか・・・。生徒を大量虐殺したってあなたにはなんの利益も──」

 

「黙れぇぇぇぇ!」

 

大声で怒鳴りつけられた。怒りが混じった強い声だ。震えていた体が更に震え出した。

 

「生徒のお前に何が分かる?前の学校でもその前の学校でも!俺は生徒にいじられてきた。学級は崩壊し、俺へのいじりは更にエスカレートしていったんだ。だから・・・。だから思い知らせてやるんだよ。この腐ったガキどもになぁ!」

 

「そんなのただの八つ当たりじゃないですか!私達はちゃんと授業をうけていたし、この学校はその件とは何も関係ない!」

 

「うるさい・・・。うるさいうるさいうるさいぃぃぃっ!」

 

佐曽利先生はこっちに向かって思いっきり振りかぶった。狙った方向は私の足元。恐怖で足が動かない。狙撃も逃げることもままならない。佐曽利先生が瓶から手を放そうとしたその瞬間──。

 

バン!

 

「ぐ、ぐあぁぁぁ!」

 

背後から発砲音が聞こえたと思うと、ガラス瓶の割れる音と同時に佐曽利先生の叫び声が聞こえる。中の液体は一瞬で蒸発し、銃弾で怪我をした先生の手から血が吹き出る。

 

「言ったでしょ。ちゃんとバックアップするってさ!」

 

「あ、藍沢さん!?」

 

二重に聞こえた声に驚きを隠せなかった。後ろを振り向くとそこには藍沢さんが堂々と立っていた。

 

「どうしてここに?本部にいるんじゃ・・・」

 

「ふふっ!まさか!入ったばかりの新人さんにそんな危ないことさせるわけないでしょ!」

 

まさか、藍沢さんは私が敵に遭遇することを想定してここに潜入していたのか・・・。しかも、迷彩せずに潜入するなんて、もしかしてこっちも先生たちの中に紛れていたのか!?

 

「さあ、あの毒使いにとどめを刺してやろう!」

 

「は、はい!」

 

「そんな簡単にやられるかよ!」

 

佐曽利先生は試験管を私たちの方に投げつけた。割れた試験管からは僅かながら粉のようなものが舞っている。

 

「晴夜ちゃん!危ない!」

 

「わっ!」

 

藍沢さんは困惑で動けていない私のことを突き飛ばして代わりに明らかに毒の粉を被った。

 

「くっ・・・。視界を奪う毒か・・・」

 

「その通りだ、藍沢 唯雨。もう知っていると思うが毒によって()()()()()男女は俺の犯行だ。そして、お前も実験体(あのおんな)と同じように殺してやるよ・・・。橙山 晴夜。お前はその後だ・・・」

 

まずい。このままじゃ私たち・・・。いや、それだけじゃない。被害は学校中に──。

 

「はるよちゃん!通信が届いているならよく聞いて!あなたはそこに行く前約束したじゃない!”絶対に生きて帰る”って!だったら、やることはただ一つよ!」

 

そうだ・・・。そうだった。私は決めたんだ。世界を救うって。お母さんの仇を・・・!

 

私は右足、左足とゆっくり立ち上がり、銃弾用に持ってきた消しゴムを先生だった者(カイブツ)に向けた。

 

「動くな。そして、離れろ」

 

「あぁ?」

 

強く言い放った言葉は相手の視線を引き付けるには十分だった。

 

「なんだお前。先に死にたいのか?いいぜ。お前からじっくり毒で痛めつけながら殺してやるよ・・・」

 

 

「いいえ。殺されるのはあなたの方だ。チーター」

 

 

私は心の底からのリアルチーターへの憎しみで弾丸(消しゴム)に力を込めた。しかし、その軌道はとても真っすぐでまさに冷静だった。

 

放たれた弾丸は対象(カイブツ)の額を正確に打ち抜いた。その衝撃は脳まで達し、相手は気絶。その場に倒れこんだ。手に持った瓶は偶然割れなかった。

 

「これで終わりですよ、チーター。最後は痛くしないようにしますね・・・」

 

私は倒れたチーターの背中の上でカプセルを割り、無力化した。

 

「・・・。よ、よくやったわ!警察はもう呼んでおいたわ。後は、チーターを拘束してゆっくり撤退してね。ういちゃん!もう終わったから後ははるよちゃんと一緒に帰ってきてねー!」

 

「お、オッケ~」

 

藍沢さんは少し疲れた声で言った。私はひとまずネクタイで階段の手すりに拘束した。その場で座り込んでいる藍沢さんの肩を組んだ。

 

「ありがと、晴夜ちゃん~」

 

「いえいえ。いや、ほんと緊張しました・・・」

 

「かっこよかったよ!晴夜ちゃん!初めてであんなこと言えるなんてすごいよ!」

 

私はフフッと少し笑って、歩を進めた。

 

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___

 

____

 

 

基地まで来た頃には、藍沢さんの視力は毒が抜けて元に戻っていた。

 

「よかったですね。猛毒だったら結構まずかったのに・・・」

 

「でも、晴夜ちゃんを守るためだからさ」

 

「もう!ういちゃんったら無茶するんだから!そうゆうことしてると本当にいつか・・・」

 

藍沢さんはえへへと言って、軽く謝っていた。

 

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___

 

____

 

後日。佐曽利 龍夏はリアルチートの不正使用の現行犯で逮捕された。なお、うちの学校はその影響によってしばらく休みになった。

 

「佐曽利は取り調べを受けたんだけど、未だに情報が出ないみたい・・・」

 

「そうですか・・・。でも、一人でもリアルチーターを逮捕できただけ大きな収穫だと思います」

 

すべての情報を黙秘しているのか。でも、確か昨日あいつは二人殺したと言っていたけど、実際はもう片方は重症・・・。何か意味が?いや、ただの勘違いか。

 

「まぁ、何はともあれはるよちゃんが無事に帰ってきてくれて嬉しいわ。これからもよろしくね!」

 

「はい!」

 

つい昨日まで毒によって殺されそうになったようには思えないほどに基地内は笑顔であふれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日、某時刻。路地裏にて。

 

「はぁ・・・。はぁ・・・。誰か、助けて・・・()()

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