以上、前書きを利用した補足説明のようなものでした。
私の理科の教師、佐曽利 龍夏先生が起こした事件から3日ほど経った。私みたいな素人が戦闘すると当たり前だが死ぬ。その為、私はあまり任務に参加する事は無い。しかし、顔を出さないのも申し訳ないので毎日基地に足を運んでいる。
基地に行くため駅に向かうまでの道のことだった──。
「ニ、ニャ〜」
今にも死にそうな
身なりはグレーのパーカーでフードを被っていて顔はほとんど見えない。スボンも服も全部ぶかぶかに見える。
「あ、あのー大丈夫ですか──」
「助けてニャァァァ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
その少年は突然私に飛びかかってきたのだ。余りに突然だったので思わず叫んでしまった。
「助けて!助けてくださいニャ!お腹が減って死にそうなんだニャー」
「ん?え、えーっと・・・。取り敢えずウチ来る?なんか死にそうだし・・・」
「ありがとニャ!ありがとニャー!」
その少年はそのまま力を出し切ったかのように倒れこんだ。
「大丈夫!?」
息はあるようだ。どうやら相当疲れていたらしい。
「と、取り敢えず家まで運ばないと」
少年を持ち上げたとき、とても軽いことに気がついた。まぁ、小さな動物一匹程度の重さだった。そしてもうひとつ気がついたことがある。
「ん?耳が・・・」
この少年、フードを外すと猫のような耳が出てきたのだ。引っ張ってみたが取れる様子はなく、どこかでがっちり固定されているようだ。それにしてもリアルだ。
「気にしてる場合じゃないな。ただでさえ弱ってるのに、早く運んであげないと」
数分後、冷蔵庫から適当に取り出したハムをあげてみた。
「二ゃ~、おいしいニャ!お姉ちゃんありがとニャ!」
「うん、どういたしまして」
どうやら喜んでくれたようだ。ハムだけで回復できるかは謎だが。
「パンとかで挟んで食べる?」
「いいのかニャ?食べたいニャー」
「じゃあ、待っててね」
パンにチーズとハムを挟んで少し焼いてからお皿にのせ、少年の前に差し出した。
「ありがとニャー。いただきますニャ!」
ものすごい食いつきだ。数秒後にはお皿の上にパンかすしか残っていなかった。
「ところで、君はどこから来たの?おうちの人は?場所さえ分かれば送ってあげるけど」
さすがに知らない少年を家に何日間も住ませることは出来ない。親御さん達も心配しているだろうし、私がそこまで送ってあげようとした。
「わかんないニャ・・・。沢山歩いたし、どこから来たのかわかんないニャ。おとーさんとおかーさんは気づいた頃にはいなかったニャ。でも、
「ご主人・・・様?」
この子に両親はいない?こんなに幼いのに可哀想だ・・・。実際まだ、生きているかもしれないが会えないのはいないのと変わらない。そしてご主人様とは?
「そうニャ!ごしゅじんさまは優しくてかっこよくていつもなでなでしてくれたニャ!でも・・・」
「でも?」
「ニャーのことを実験に使ったニャ。ちょっと悲しかったけどごしゅじんさまの役にたてるならそれでよかったニャ。痛かったけどそれでもニャーは頑張ったニャ」
人体実験・・・でいいのだろうか。でも、実験と言ったが・・・。
「ご主人様は何の実験をしてたの?」
「
「・・・!」
これは驚いた。まさかこんな小さな子にもリアルチートの影響が出てるなんて・・・。
「お姉ちゃん、どうしたニャ?そんなに驚いた顔して」
「とりあえず一緒に来て!」
「ニャ!?」
ひとまず、この子を調べなきゃ。私はその子を連れて基地へ向かった。その途中の電車で色々聞くことにした。
「そう言えば、名前聞いて無かったね。教えてくれる?」
「ニャ?あ!そういえばご主人様からは〝フォッグ″ってよばれてたにゃ」
「フォッグくんね!じゃあ、私もそう呼ばせてもらうね」
フォッグくんは笑顔で頷いた。
───しばらくして、基地にたどり着いた。警備の人には事情を説明して通してもらった。
「それで、この子を連れてきたって訳ね。リアルチートの実験台されたって・・・」
「・・・。取り敢えず、フォッグくんはこっちで検査を受けてもらうわね」
桃園さんの目は真剣なまなざしだった。やはり‶リアルチートの実験台"と言うことを知ってからだろうか。フォッグくんは少し不安そうにこっちを見つめてきた。
「大丈夫だよ。ここの人たちはみんな私の仲間だから」
「わ、わかったニャ。お姉ちゃん」
フォッグくんは桃園さんの後ろについていった。
そして、それと同時に真後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「あいつは誰なんだ?」
「うわ!柳葉さんじゃないですか!なぜここに?」
「なぜってお前、これでも俺はこの組織のメンバーだぞ。それより、あいつはな誰なんだ」
私はここにフォッグくんを連れてきた経緯を説明した。柳葉さんは少し不思議そうな顔をして――
「ほう。そいつには
「はい。多分、着け耳とかカチューシャのようなものだと思うんですが・・・。日常生活にそんなもの付けるなんて珍しい子もいるもんですね」
私は少し笑いながら冗談のように話したが――。
「いや、俺が思うにあれは
――うん?何を言っているんだこの人は?理解が少し追いつかなかった。
「柳葉、あんたボケたんじゃないの?まさかそんなに年老いて――」
「俺はまだ20代だ。馬鹿にすんじゃねぇ」
「って、言ってももうそろそろ30代でしょ~」
といって藍沢さんはひじでつんつんとつついていた。柳葉さんは少しうろたえていたが一つ咳払いをして――。
「それより検査はどうなったんだよ。もうそろそろ終わってんだろ」
「ええ、もちろん。うちの設備は優秀ですから」
桃園さんはカルテのような物を見ながらこっちにゆっくり戻ってきた。フォッグくんはこっちに向かって走り出し、私の腹部辺りに飛びついてきた。
「ごっふう!?」
「お姉ちゃん!けんさ終わったよ!」
「う、うん・・・。元気だね・・・。こういうとこ妹とすっごい似てるよ」
腹部にフォッグくんの加速されたタックルが襲い掛かった。
「だ、大丈夫・・・?それめちゃくちゃ痛いでしょ。てか、妹いたんだ・・・」
「と、とりあえず診断結果を教えるわね・・・。識別コードは0205011920。機能は人間以外の動物をそのまま人間にする・・・。つまり、フォッグくんは
「なんだって・・・」
そんな馬鹿な。リアルチートはこんなことも出来るのか・・・。つまりは猫にリアルチートを使ったということか。
「そうニャよ。僕は猫ニャ!ところでしきべつこーどってなんニャ?」
「ああ、識別コードっていうのはリアルチートの種類を分ける番号の事!」
「やなぎばさんが20091305でういちゃんが04180123、そして私が1805190520ね」
「よくよく覚えてるね・・・。さすが優穏!」
桃園さんは少し照れた様子だった。ちなみに数日前教えてもらったのだが私の識別コードは0718011420。この系統のリアルチートは
「この番号は血筋が似ていたりすると同じになるんだけど・・・。難しいことはわかんないよね・・・」
「わかんニャい!」
「はぁ・・・。で、こいつはどうするんだ?」
私たちは少し考えこんで藍沢さんが――。
「じゃあ、うちに入ってもらうっていうのはどう?監視するって名目で!」
「そうね!仮にもリアルチーターだし何するか分からないものね。サポート位ならできるかもしれないわね」
「保護・・・でいいのか?でも、行く当てもなさそうだしなぁ」
確かにフォッグくんには家族がいない。というかそもそも猫で実験台にされている。元の場所に返す方が酷というものだろう。
――
―――
――――
数日後、どうやら藍沢さんたちの活躍によってフォッグくんは私たちの班に加わることになった
「良かったな!フォッグ!」
「ニャハハ!くすぐったいニャー」
藍沢さんはずっとフォッグくんの頭をなでている。相当、気に入ったらしい。
「ナデナデしてるとこ悪いけど事件よ、ういちゃん!」
「内容は?」
藍沢さんはなでるのをピタッと止め、話を聞いた。フォッグくんは疲れている。
「最近、このあたりの市民たちが突如の体調不良、失神などを起こしているそうよ。この事件にリアルチーターが絡んでいる可能性が高いそうなので私たちに依頼が来たってわけね」
「体調不良ですか・・・。健康に影響するようなチートでしょうか」
「なにはともあれ行ってみおないことにはわからない!みんな行くよ!」
「ん?みんなー、待ってニャー!」
私たちは事件現場に向かった。その様子はとても賑やかで色とりどりだった。こうしてフォッグくんも増え、また一つ色が増えたのであった。