リアルチーター   作:glaci

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やっと、やっと書けたよ・・・。(←だらけまくって投稿を先伸ばしにし、勝手に満身創痍になっているglaci)深夜テンションやらで変なこと書いたかもしれません。多目にみてください!


File 07 たった一つのライフの為に

「これはどこに向かっているんですか?」

 

「ああ、病院だね。どうやら優穏が被害の範囲から中心地を特定したらしいよー」

 

「なんか難しそうにゃ~」

 

私は藍沢さんが運転している車に乗ってとある病院に向かっている・・・、らしい。フォッグくんは相変わらずとてものんきだ。

 

「ごめんねー、一緒にいけなくて。でも、全力でサポートするからそこは期待しててね!」

 

「ありがとうございます。桃園さん。私も全力で任務を遂行しますっ!」

 

とはいっても今日はあくまで偵察。できるだけ多くの情報を手に入れたいが、敵との戦闘は避ければいけない。

 

「ニャーは何か出来ないのかにゃ?」

 

「フォッグくんは私がヘトヘトになったらもふらせてねー」

 

藍沢さんはフォッグくんのことをかなり気に入ってしまったらしい。しかし、フォッグくんはその事に関してはあまり気にしていない──、いやむしろフォッグくんも彼女のことが好きのようにも見える。

 

「おっけーにゃ!にゃーに任せるにゃー」

 

「ふふふ、この子を手に入れた私は無敵!さあ、ちゃっちゃと終わらせるよ!」

 

「雨唯・・・。任務もちゃんとしろよ。こっちはもう体調に影響が出てきてるんだ。早くしねぇと俺がくたばっちまう」

 

先に現場付近にいる柳葉さんは周囲の環境等を私たちに伝える役割だそうだ。どうやら今柳葉さんがいる位置でもうすでにチートの影響が出てきているようだ。

 

「りょうかーい!」

 

「わ、私も頑張ります・・・」

 

「着いたみたいね。じゃあ、迷彩を起動するわよ」

 

桃園さんがそう言った後に服が自分の私服になった・・・、ん?

 

「ちょっと待ってください!どうして私服の迷彩があるんですか!?」

 

「え、ああ私がこの前、晴夜ちゃんが学校に行ってるときに部屋に侵入してとってっ来たんだよー。ちなみに他にも冬服とか水着まで──」

 

「なにしてんですか!自宅に侵入とか!」

 

「ま、まぁいいじゃん!取り敢えず、柳葉も限界が近いだろうし早く行くよ」

 

さらっと犯罪行為を流された・・・、後で何とかしよう。取り敢えずこの広い病院内からチーターを探し出さなければ。

 

「別れて探そう。怪しい所があったらすぐに教えてね。特にフォッグくんは近づかないように!」

 

「わかったニャー。はるよお姉ちゃんも気を付けるニャー」

 

「うん。ありがとうフォッグくん」

 

フォッグくんが一階を、藍沢さんが二階を、そして私が三階を担当することになった。1フロアに約40室ほどある。これをしらみ潰しで探す。

 

「まずはこの列から・・・」

 

「おーい、大丈夫か新人」

 

「柳葉さん。はい、今のところ異常はありません」

 

イヤホンの向こう側から柳葉さんの声が聞こえる。

 

「敵の能力が少し弱まったようですね。あまり体がだるく感じません」

 

「そうらしいな。まぁとりあえずチーター探しを――」

 

耳から目へ集中力を移したその一瞬。目の前から高速で走ってくる人影があった。認識したときにはすでに目の前にナイフが迫っていた。私はとっさの反応で左に倒れ込んだ。

 

「チッ・・・。外したか」

 

「くっ・・・!あなたがこの事件の犯人ですか!?」

 

しかし、動きが人間の速度ではないその人物は私に次々と攻撃を仕掛けてきた。

 

突然、目の前に人影が現れて―――。

 

「待たせたな新人」

 

「もう一人いたのか!」

 

隣の建物から飛び移ってくるという荒業を見せてくれた。

しかし、何故か柳葉さんの体は透けていた。

 

「くそっ、死ねぇ!」

 

逆手に持ったナイフを犯人らしき人物が振るう。音は風を切る音ではなく、もはや空気の壁を割り、その衝撃をこちらまで飛ばしてくる勢いだった。

 

そんなナイフ、腕、手は柳葉さんの体を通り抜け、大きくからぶった。それはさながら柳葉さんがホログラムであるかのように。

 

そして今度は柳葉さんが突入してきた窓が突然割れ、何もない空間に"もう一人の柳葉さん"が現れた・・・?

体勢を崩した相手は()()()()()()()()()()()()()ナイフを落とし、()()()()()()()()()()()()()()()後ろに飛んだ。

 

「ぐっ・・・」

 

「悪いが、それは八秒後の違った時間軸の俺だ。俺はラグを作り出すことができる。見たからもうわかるだろ?」

 

「なめやがって・・・!」

 

相手はゆっくりと立ち上がりもう一度こちらへ走る。そして何度も、何度も柳葉さんを切りつける。だが全て通り抜けてしまう。もはや早いだけの暴走機関車と化している。

 

「クソッ!クソッ!なんでだよ!なんで当たんねぇんだよ!」

 

相手は自分の力を過信していたせいもあってなのか焦りを見せ、無我夢中、自暴自棄になって切りつける。しかし、目に見えない柳葉さんの連撃によってその行動は無意味に終わった。

 

―――私は状況を全く把握できずにただ茫然とそこに座り込んでいた。

 

「大丈夫ー?晴夜ちゃーん?って、柳葉!?ここに突入してきたの?」

 

「ああそうだ。いつもの事だから別にいいだろ?」

 

「やっと追いついたにゃ!お姉ちゃん!ダイジョブかにゃ!?」

 

遅れて藍沢さんとフォッグくんが駆けつけてきた。やっぱり、フォッグくんは私の妹にとてもよく似ている。元気で甘えんぼな・・・って、今はそれどころじゃなかった。

 

「皆さん、先を急ぎましょう」

 

「そうね、早く病室に急いだほうがいいわ。さっきのはどう考えても犯人じゃない。チートの範囲から見て病室からずっと動いてなかったからあんなには動けないはずだわ。でも、チーターではあるからちゃんとその人も捕まえて来てね」

 

桃園さんとの通信を終え、気絶した犯人の横を素通りして指示された病室の中へ入る。しかし、予想通り――

 

「・・・、逃げられたのか」

 

「遅かったにゃ・・・」

 

誰もいない病室で白く透けたカーテンが風に揺られていただけだった。

 

 

――

 

―――

 

――――

 

数日後。私たちは基地へ戻ってきた。改めて作戦を立て直す必要があるだろう。

 

「さて、状況を改めて整理しようか。まず晴夜ちゃんの話からチーターはあの病室の扉から出ていない。そしてあの病室のチーターは受付どころか誰にも目撃されていない。つまり、窓から逃げたと考えるよ」

 

「恐らくだけど、護衛は二人だと思うわ。一人は加速チーター、もう一人は多分窓から動けない病人を抱えて三階分の高さを飛び降りるだけの力を引き出す筋力増加系チート。そうだとすれば識別コードはどちらも1615230518となるわ」

 

「そして、あのチーターから引き出した情報によれば〝自分は雇われただけ"と言っていましたね。どうやら真相についてはほとんど何も知らない様子でした」

 

そして、最も肝心なこの事件の首謀者、つまりチーターの情報についてだ。

 

「首謀者の名前は宇尾 秋角(うお あきずみ)。14歳。職業は学生。10歳の頃に病に襲われ、それ以来入院。その病がかなりの難病で手術も困難を極めているらしい」

 

「そのちーたーの子、病気だったのかにゃ・・・」

 

「ああ。そうらしいな。そしてそいつはチートを使うほどに悪い奴じゃないって、クラスメイトの奴が教えてくれたよ」

 

―――今回のチーター本当に悪い人なのだろうか?でも、それは実際に確かめるしか・・・。

 

「油断禁物。全部が全部悪とは確かに言えない。でも、疑ってからこそ信じられんじゃないかな、晴夜ちゃん」

 

「そうね。やっぱり行ってみるしかないわ。じゃあみんな!場所については無線で誘導するわ!行くわよ!」

 

「えい、えい、おー!にゃ!」

 

やっぱり、藍沢さんはいつも通りみたいだ。私もちゃんと気を引き締めていかないと。

 

――

 

―――

 

――――

 

前回の病院とからは遠く離れた大きな病院についた。この中から前回のように探す・・・、と言うことはもうしなくてもいい。なぜならもうすでに位置情報をつかんでいるからだ。護衛はもう一人ついている。しかし、今回は前回とは違う。

 

――アルファ現在病院裏手を警戒中。異常は無し――

 

――ブラボー現在病院正面入り口を警戒してます。異常はありません――

 

――チャーリー現在病院内受付付近を警戒。異常は見られません――

 

色々な聞きなれない人たちの声が無線から大量に聞こえる。そう。今回の作戦別部隊の人たちも応援に駆けつけてくれたのだ。それにしても藍沢さんの人脈は凄い・・・。

 

「了解!みんなそのまま続けて!」

 

「こちら柳葉。病院の隣にあるビルから警戒中。異常は無いぜ」

 

全員の準備を着々と進めていく中フォッグくんが藍沢さんの裾を引っ張り、声をかけているのに気が付いた。そして藍沢さんは一度頷き――

 

「よし!フォッグ!特訓の成果を見せる時だ!」

 

「らじゃにゃ!」

 

そうフォッグくんが敬礼しながら叫ぶと体が見る見るうちに小さくなっていき気が付くとそこには一匹の子猫が居た。

 

にゃー!

 

「こ、子猫?」

 

「そう!こんな日の為にフォッグくんにはチートの使い方をちゃんと教えておいたのだ!じゃあ、フォッグ!そのまま潜入!」

 

にゃにゃにゃにゃー!

 

子猫はそのまま病院内へ走り去っていった。

 

「あの・・・。病院内にあの状態のフォッグくんが入っても大丈夫なんでしょうか?」

 

「大丈夫!フォッグくんにはたっぷり忍びの術を教え込んでおいたから!多分!」

 

「はぁ・・・。まあいいでしょう。それじゃあ私達も行きましょう」

 

私がそう言ってすぐ桃園さんが全員に合図を出し作戦は開始した。私と藍沢さんはゆっくりと病院へ歩き始めた。

 

――こちらチャーリー!病院内にいる人物が倒れ始めました!あ、わ、私もふらついて・・・――

 

「被害が大きくなる前に急いで、はるよちゃん!」

 

「ただしあんまり体力は使わないように!どう考えても相手は体力を奪ってきてるからね!フォッグくんの体力はほぼ無尽蔵だけど私たちはきついからね!」

 

私は最大限体力を温存しながら病室へ急いだ。場所は五階のエレベーター及び階段から一番遠い病室。エレベーターを使うのは危険だが体力温存のためには仕方がない。

 

「藍沢、エレベーターを使用する!」

 

「あの、藍沢さん、やっぱり今回のチーター・・・」

 

「気を緩めちゃだめよ晴夜ちゃん。最後の最後まで集中してね」

 

きっと藍沢さんも同じことを考えているはずだ。だがしかし、藍沢さんの言う通り集中しなくてはならない。そもそもチーターに同情を抱く必要性があるのだろうか?だが私の直感がそう告げている。倒してはならないと。殺してはならないと。

 

「そう、ちゃんと()()()()()()()()()()()()()()()()()()集中してね・・・。っ!?」

 

エレベーターの扉が開く瞬間目の前に人影があると思ったその瞬間人が殴り掛かってきた。弾丸のような拳が私の前に飛んでくる。それを遮るように藍沢さんが横から入り、召喚した一番近くにある凶器点滴の棒を使って受け止めた。棒は一瞬にして破壊された。

 

「私がここは引き受けるから!晴夜ちゃんは早く!」

 

「は、はい!」

 

今のでだいぶ体力を失った。だがこの距離を走り切るには十分な体力だ。徐々に奪われる体力を維持しつつ遂に病室にたどり着いた。

 

「はぁ、はぁ・・・。この病院・・・、無駄に広い・・・。でも・・・、やっと着いた!」

 

扉を横に勢いよく開く。

 

「う、動かないで・・・、下さい!」

 

「あなたがリアルチーター対策本部の方ですね。僕の名前は宇尾 秋角。もっともあなた方には知られていると思いますが・・・」

 

中学生とは思えないとても丁寧な口調で話し始めた。どうやら本人のようだ。

 

「どうしてこんな事を?あなたはチーターに手を染める程悪い人ではないと聞きました」

 

「・・・。そういって頂けるのはとてもうれしいですね。僕が病気にかかっているのはご存じかと思います。数日前、僕のもとへ手紙と注射器・・・、改造版リアルチートが贈られてきたのです」

 

――宇尾 秋角様

  あなたのような素晴らしい頭脳を

  病によって失ってしまうのは惜しい。

  是非、このチートを使用し()()()()にも

  ()()()()にも生きて頂きたい。――

 

「僕は生きたい・・・。生きなきゃいけないんだ!母さんや父さんいや・・・、世界の人々の為に!」

 

「そのために他の人たちを巻き込んでいたんですか!?自分勝手にもほどがあります!」

 

「いいや、そんなことはない・・・。だってリアルチートの改造技術を作り上げたのはこの僕だ!この技術はいずれ世界を救う!」

 

「何を言ってるんですか!改造リアルチートは世界中で犯罪を引き起こしています!救うどころか危機に追い詰めています!」

 

「そんなことは・・・、知りませんよ」

 

「!!」

 

私は怒りを覚えた。人の事を殺す発明をしておきながら〝知りません″・・・だと?

――怒りを遮るように藍沢さんの言葉が入ってくる。『ちゃんと相手を見極めて適切に判断できるように・・・』

 

まだ、怒るのには早いかもしれない。

 

「本当に、本当に言ってるんですか?」

 

「ええ、もちろん」

 

チート無効化カプセルを構え発射する。突如部屋の中に出現した小さな竜巻によってカプセルの弾道は大きくそれた。

 

「もう一人、いたんですね・・・」

 

「ああ、もちろん。護衛を付けずにここに残るわけがないでしょう?」

 

どうやら、この護衛との戦闘が始まるようだ。カプセルを構える。何度か護衛にも宇尾くんにも発射したが竜巻によって全て無駄になる。自分の体にものすごい風が通り腕に切り傷が入る。

 

「ッ!長い戦いは危険ですね・・・体力もだんだん減ってきましたし・・・」

 

しかし、打破する方法は見つけられず風により壁にたたきつけられた。

 

「さあ、あなたは誰にも助けられず、そのまま死ぬのです・・・!」

 

「くっ・・・」

 

ああ、この光景は前にも見たことがある。駅前で起きたあの事件。首を握りつぶしたカイブツがこっちにゆっくり歩いてくるあの悪夢(絶望)が。背筋が凍る。もうおしまいなのかな・・・。

 

にゃー!

 

「え・・・?」

 

護衛の顔に子猫が張り付いている?もしかしてフォッグくん!?

 

「今だ新人!アイツの首にぶち込んでやれ!」

 

「わ、わかりました!」

 

カプセルを急いで取り出し放った。しかし相手も案外冷静でフォッグくんを振り払い竜巻を起こし弾道を変えたのだ。

 

「・・・!またか!」

 

「残念だが、今吹き飛ばしたカプセル、二秒後の奴だぜ」

 

相手の首の後ろからショートする音が聞こえる。どうやらラグを作り出してくれていたようだ

 

「た、助かりました・・・」

 

「別にいいんだよ。それよりアイツを早く解放してやりな。お前はあいつが洗脳されていると思っているんだろ?」

 

「はい。やっぱり信じられません。多くの人たちから優しい、優秀等の評価を得るのはそんなに簡単なことじゃないと思います。やっぱりこの人は悪い人じゃない・・・。そうあって欲しい」

 

「やめてくれ!僕は・・・。僕は生きなきゃいけないんだ!これがなくなったら僕は・・・。死んでしまう・・・」

 

強く勇気づけるように言った。

 

「あきらめるのはまだ早いと思います。誰も未来を決めることはできません。それを言ったら悪い方向に転ぶこともあるかもしれませんが、それと同じようにいいことも山ほどあります。だからあきらめないで手術を続けてみましょう!」

 

「ッ・・・!」

 

驚いた表情で・・・、と言うよりは目を覚ましたかのような表情で――

 

「僕は・・・。今までなにをしていたんだ・・・。たくさんの人を救うはずだったのに。こんな・・・」

 

「大丈夫。今からでも間に合いますよ。あなたのその頭脳を使えばね」

 

――

 

―――

 

――――

 

この事件に関係していた護衛部隊は全員緊急逮捕。今まで倒れていた人たちは体力がすべて元に戻り、宇尾君は事情聴取を受けることになった。

 

「助言にしてはちょっと雑だったんじゃないか?」

 

「そう・・・、ですよね。やっぱりこんな言葉じゃ彼は救われませんよね・・・」

 

「ちょっと柳葉!大丈夫晴夜ちゃん!私はすっごくいい言葉だと思うよ!」

 

藍沢さんはずっと柳葉さんを連打している。柳葉さんは迷惑そうに黙っている・・・。でも、私の言葉をほめてくれたのはちょっとうれしいかも。

 

「にゃ~。もう疲れたにゃ。柳葉を連れてきたのはにゃーにゃ。ちょっとは褒めてくれてもいいにゃー」

 

「フォッグくんもよく頑張ったわ。あの状況でフォッグくんややなぎばさんが居なかったら今頃はるよちゃんは・・・」

 

本当に感謝している。今回手伝ってくれた別部隊の皆さんにもここにいる皆にも。

 

やっぱり私って誰かに手伝ってもらわないとダメなのかもしれない。

 

「よーし!あの怪力と戦って疲れたし、帰ったらじっくりモフるぞー!」

 

「にゃー!」

 

 

――

 

―――

 

――――

 

数日後。取り調べによると四年前、病気に襲われた時からあまり記憶がはっきりしていなかったようだ。恐らくそういった系統のチートに襲われたのかもしれない。手紙の差出人は不明。指紋も完全に拭き取られており、文字は全てパソコンによって出力されたものだった。つまり今回の真犯人を突き止めるまでには至らなかった。だが――

 

「宇尾くんが護衛に聞かされていた情報・・・。〝後ろには巨大な組織があって俺たちはそこから派遣されて来た″と・・・」

 

「ういちゃん。これって・・・」

 

「うん。すっごく嫌な予感がする・・・」

 

 

 

 

こうしてまた一つの事件が終わった。私は一人ではない。それを実感した瞬間だった。この事件はきっと巨大な陰謀の一角に過ぎない。だけど、私は一人じゃない。絶対に・・・、絶対にもう誰にもあんな思いはさせない!

 

これはとある少女の悲しい悲しい物語。

その少女は実に純粋無垢だった。

父親とは外に出てはしゃぎまわり、母親とは様々なことを教えられた。

その少女が中学生になるとき。

失った。紅色に染まった現実はその少女の心に食い込んでひびを入れた。

悟った。”ここから逃げなければ”と。

走った。薄暗く広がる街の中をただ遠く、遠く。

どこまで走っただろう。泥だらけになった足はずきずきと痛み、乾いた眼は光すら入らない。

止まった。立ちはだかる壁は実に無慈悲だった。

その少女は背後に気配を感じて青ざめた。”ああ、もう来たのか”

振り返るとそれは紅色の人の形をした”カイブツ”

眼を瞑った。入らないはずの光を消した。”もうダメだ”

眼を開いた。それは光。少女にはそう見えた。差し伸べられた手に少し恐怖を感じた。でも、光は言った。

”怯えなくてもいい。俺は敵ではない”すぐに信用できた。なぜだろう。暖かい。

それからその少女は光の元で育った。大きく育った少女は光と共に歩き、薄暗い闇に立ち向かうことを選んだ。

もう少女は眼を枯らさない。きっと、あの日を思い出してしまうから。

これはとある少女の悲しい悲しい物語。

 

――都内 某時刻 廃工場にて

 

「対象を捕捉。命令を実行します」

 

「待ってくれ頼む!ただ一回へましただけじゃねぇか!頼むから!みのがしてくれぇぇぇ!」

 

大量の鉄パイプによって串刺しにされた人だったものはもう何も語らない。

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