リアルチーター   作:glaci

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File 08 赤いBotは何も語らない

私達は通行人の通報によって急行したはずの警察からの呼び出しでここに来た。

 

内容は近くの廃工場から悲鳴が聞こえたというものだった。

 

普通なら突然、何の調査もせずに警察が私達を呼び出すはずが無い。

 

()()()()()の話だが。

 

だって普通だったらこんな風になるはずが無いのだ。こんな―――

 

人が何本もの鉄パイプに串刺しにされて死ぬなんて

 

「これはどういう事ですか・・・」

 

「まあ、この様子だとどう考えてもチーターが犯人だろうね。しかも、かなり凶悪だ」

 

「・・・、もしかしてこの前の組織が絡んでるんでしょうか?」

 

「断定は出来ないね。何せあの犯人に協力していた奴が本当のことを言っているのかも怪しいし、かと言って組織的犯行も否定は出来ない」

 

仰向けになった人間のようなものが上から様々な角度にパイプを大量に刺されて死んでいる。視線を向けるのが辛くなるほどに。

 

「身元の確認は時間がかかりそうだね。とりあえずこっちも連絡して周辺の警戒に当たってもらうよ」

 

この近くに犯人が居たら周辺の住民の人たちに被害が及んでしまう。当然のことだ。

 

「じゃあ、まずは私達もパトロールして情報を集めよう。ゆのんー!私たちはどこに行けばいい?」

 

「えっとね・・・。今は住宅地の方の警戒が少ないからそっちに行ってほしいわ。宜しくね、ういちゃん」

 

私の方も通信は聞いていたので行く方向は分かった。私たちが住宅地の方向へ向かおうとしたとき、通信機の方から声が聞こえた。

 

「ねえお姉ちゃん!にゃーはどこへいけばいい?」

 

「フォッグくんー!君は私がもふるためにそこで待機しててくれー!今回は危ない事件だしねー」

 

「りょうかいにゃー!」

 

フォッグくんは素直で助かる。それにしても、先輩ともいえる存在がこんな状況下でこんなにはしゃいでいるのがとても不思議だ。そしてこの譲許王に慣れつつある自分が恐ろしい。

 

だが、人の死体を見ると()()()の恐怖で頭がいっぱいになる。そこで崩れてしまいそうになるほどに。これだけはやはり慣れない。

 

「行きましょう。藍沢さん」

 

「オッケー、晴夜ちゃん!」

 

―――

 

――――

 

―――――

 

住宅街のパトロールを終え、基地に戻るとあの死体の身元が特定されていた。

 

「死体の身元が特定できたわ。前回の事件の時病院の護衛をやってた人みたい。この顔見おぼえあるでしょ?」

 

「こいつは・・・。私にエレベーターで襲ってきたやつ・・・」

 

「もしかして―――」

 

組織による犯行が予想された以上、この結論に行きつくのは何も不自然ではない。これは―――

 

処刑(しまつ)された・・・。私たちがこの前の作戦を成功させたから・・・。この人が護衛を失敗したから・・・」

 

「さすが晴夜ちゃん。確かにそうだね、組織があるなら役立たず(こいつ)を消しただけなのかもね」

 

「ひどいにゃー・・・。一回失敗しただけで人を殺しちゃうなんて」

 

しかし、この推測によってより組織的な犯行が現実味を帯びてきた。

 

「だけど、リアルチーターの組織があるとしたらその組織の目的は何なのかしら?」

 

「まだそこに至るまでの情報(ピース)は集まってないね」

 

「人をきずつけるなんてひどいことにゃー!どんなりゆうがあってもゆるせないにゃー!」

 

その通りだ。こんなひどいことはさせちゃいけない。もう誰にも傷ついて欲しくない。

 

「ひとまず、手掛かりがないことには始まらない!みんなで聞き込みだー!」

 

「聞き込みね。それだったら別の部隊の人たちにも協力してもらって情報をとことんかき集めましょう!私もバックアップするわ!」

 

「えい、えい、おーにゃ!」

 

こんなに頼りになる人たちがいてくれて私は本当にうれしい。今までずっと一人だった私が、この人たちに支えられていることがとても―――

 

―――

 

――――

 

―――――

 

聞き込み開始から数時間。商店街、住宅街、駅前。いろんな場所でいろんな人たちに聞き込みをした。話を聞いているとリアルチートによる様々な被害を聞くことができた。すべてのリアルチートを消し、この世界から平和を取り戻したい。その思いはより強くなった。

 

「手に入った情報はこんな所かな」

 

聞き込みした話をまとめたメモを見ながら今までの情報を整理する。

 

「この情報・・・。〝周りのものを空中に浮かせて人を殺しているチーターを見たことがある″。これって・・・」

 

「ああ、多分晴夜ちゃんがベランダで見たって言ってたあの事件の事だと思う。どこで見たのかは知らないけど」

 

「この中だとこれが一番あの串刺しの状況を作り出せそうだわ。実はね、みんなが聞き込みしてる時こっちでもいろいろ調べてみたの。そしたらたくさん出てきたわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()があったっていう事件」

 

それもきっとあれと同じように始末された人たちだろう。今回それが発見できたのはあまりにも不自然だったからだ。しかし、その状況もこのチートなら再現できるだろう。

 

「ただ、これが分かったとしてもどうやって探すかですね・・・」

 

「うーん。張り込みとか?」

 

「張り込みですか。まあ確かに情報を聞いてから駆けつけるよりかは確率は高いかもしれませんね」

 

「じゃあ、今夜から開始ね!」

 

私は幸い夏休み中だったので深夜の活動も可能だった。ただ、夜中まで外にいると補導されてしまうのではないだろうか。

 

「それなら大丈夫!私がちゃんとついていくからさ!」

 

「・・・。そ、そのほうがいいですね。じゃあ、それでいきましょう!」

 

―――

 

――――

 

―――――

 

変化があったのは三日目の夜の事だった。工事現場で張り込みをしていた私たちは真夜中に鳴り響く悲鳴を聞きつけてすぐさま突入した。

 

「た、頼むよ・・・。お願いだから!殺さないでくれぇ!」

 

「対象を捕捉。処刑を開始します」

 

着いたとき、一人の男性と月夜の光に照らされて美しくきらめいている赤髪をもつ少女がいた。

 

その少女の周りには二本の鉄骨が浮遊している。駆け寄ろうとした瞬間―――

 

視界が赤に染まった。浮遊した鉄骨は正確に逃げ出そうとした男の背中を貫いた。

 

「お前・・・。何をしているんだ・・・。お前は誰なんだ!」

 

藍沢さんは怒りをもって召喚した銃を突きつけその少女に叫んだ。

 

少女はゆっくりと落ち着いた様子で口を開いた。

 

「私は伊手 茜(いて あかね)。ただいま命令通り処刑を実行いたしました」

 

「何のために?どうして私たちにそれをしゃべる!?」

 

「命令です。橙山 晴夜、藍沢 雨唯に目的を話せという。そして理由はあなたたちをこれから処刑するから・・・。だそうです」

 

「どうして私たちの名前を・・・!処刑ってどういう―――」

 

問い詰める間もなく茜さんは手を私たちの方向に向けた。すると周囲におちているねじが宙に浮き、自由落下するかのように私たちの方に飛んできた。

 

「くそっ!」

 

藍沢さんと私も攻撃を仕掛けたものの弾丸は全て私たちの方へ飛んできた。

 

「ど、どうなってるんですか!?」

 

「きっとあれは重力の方向を変えてるんだよ!だからすぐには飛んでこないで自由落下が起こるように加速してる!」

 

「・・・」

 

茜さんはなおも無言で、冷たい目をして攻撃を仕掛ける。その攻撃はとても正確で隙が無い。まるで操り人形のようだった。

 

「・・・」

 

「ここまで逃げ続けたけどこの先は行き止まり・・・。不味いな・・・」

 

完全に追い詰められていた。ここまで誘導されていたということか・・・。

 

少女は私たちの前に立ちはだかり鉄骨を宙に浮かべた。それで私たちを先程のように串刺しにするつもりだろう。

 

「藍沢さん・・・。私を信頼できますか・・・?」

 

「え?う、うん。もちろん!」

 

「じゃあ、今から・・・、私が何とかします・・・!」

 

一歩前に踏み出し手を構えた。この私の拳銃(チート)がどこまでできるか分からないけど、やるしかない。

 

あの鉄骨が自由落下のように加速しながらこっちに来るなら、多分見切れる!

 

「・・・」

 

茜さんは腕を振り下ろした。すると案の定、鉄骨はこちらに徐々に加速しながら向かってきた。

 

「指先に触れた瞬間、その一瞬に全てを!」

 

鉄骨の冷たい感触が伝わった瞬間、指に力を入れる。するとこっちに向かっていた鉄骨は真反対に跳ね返った。

 

「・・・!」

 

茜さんは状況に気づいたらしくとっさに横に回避した。

 

「・・・。まさかこの攻撃が突破されるなんて。しかし、これを考慮してもう一度―――」

 

茜さんは攻撃を再開しようとしたその時少し驚いて手を止めた。

 

「・・・。はい。撤退ですか。しかし、命令が・・・。分かりました。伊手 茜、撤退します」

 

耳につけている通信機で誰かと話している。途中で藍沢さんがバールで攻撃を仕掛けたが、手からすり抜けバールは壁にたたきつけられてしまった。

 

「・・・。では、またお会いしましょう」

 

それだけを言い残して茜さんは空を文字通り飛んで行ってしまった。

 

「攻撃しても跳ね返されるでしょうね。あれもチートでしょうか」

 

「くそっ・・・。もうちょっとで倒せたのに!」

 

「大丈夫です藍沢さん。十分情報は手に入れられました。やはり組織的存在があること、あの少女がチーターであること。これだけでも大きな収穫です」

 

「ありがと、晴夜ちゃん。そうだね。まずはこの情報を伝えなくちゃね」

 

藍沢さんの強い気持ちが伝わってきた。私も悔しい。だが、今は悔やんでいる暇なんてない。私たちはとにかく前へ進み、謎の組織の企みを阻止しなければいけない。

 

私たちが止めるんだ。この街を、この世界を守るために。

 

燃え盛る部屋の中に私はいた。

大人たちはみんな倒れていてただ一人私の前には私より四、五歳年の離れた少年が立っていた。

――キミはこれから僕の手下だ。

そう告げられた。

あなたは誰ですか。

――名乗る必要なんてないよ。キミはここから逃げたいんだよね。

・・・。はい。

――ほら手を取って。ここから脱出しよう。話はそれからだ。

・・・。はい。

どんな手品を使ったのかわからないが、目の前の火が見る見るうちに消化されていく。

手を一切使わずに。

これが私と主様の出会いだった。

 

――都内・某時刻。

「ギャハハハハハハハ!てめぇら全員ぶっ殺してやるぜぇ!」

 

「や、やめてくれぇ!なんでこんなにたくさんいるんだよぉ!」

 

瓜二つの男たちはゆっくりと隊列を成し人々を殺した。

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