ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第26話 赤いアッガイ Bパート

 海中を航行するアッガイのコクピット。

 

「大佐は……」

「うん?」

「どうして大佐は私なんかを引き取ってくれたんですか?」

 

 コ・パイロット席についたアルレットはそう聞いてみる。

 シャアはしばし考え込むと、

 

「それは最初に会った時に言ったはずだが?」

 

 

「――君はどうやら、ニュータイプ能力を人に対してではなく、マシーンに対して発揮できるらしい。

 直感的にメカニズムを理解できる―― とでも言えばいいのか……

 ――ジオン・ズム・ダイクンは、あらゆる者がニュータイプになる時代が来ると予言した。

 ならばパイロットだけでなくあらゆる分野でニュータイプが生まれてきてもおかしくないはずだ。

 私はそれに期待したいのだよ、アルレット・アルマージュ――」

 

 

 確かに、シャアはそう語った。

 

「多様性の原則だ」

「それは…… 生物多様性みたいな意味で?」

「それもあるが、それだけではない」

 

 シャアは語る。

 

「ニュータイプの驚異的な能力に危機感を抱き、ニュータイプが人類に代わる進化した存在であるのなら、進化に取り残されたオールドタイプは、かつて現人類に滅ぼされた旧人類のようにニュータイプに駆逐されるのではないかという強迫観念に取り付かれた科学者が居たそうだが……」

 

 ミヤビの前世の記憶にある『機動戦士ガンダム サイドストーリーズ』における『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』再現シナリオに登場のクルスト・モーゼス博士のことだ。

 

「その考え方自体は、珍しくは無いものだ。

 人は自分の過去の経験や属している文化等の観点から少しでも逸脱した情報を示されると、相手の意見に耳を傾けるのを苦痛に感じるものだ。

 従来の価値観を一新する革新的な存在の話にいたっては耳を塞ぐ……

 それどころか相手を攻撃することで安心を求める者も居る」

 

 それがニュータイプを滅ぼすためのシステム、EXAMをクルスト博士が開発した理由。

 

「たとえ聞いても、自分の望む形に話を歪めてはめ込もうとする」

 

 人の革新ではなく、兵器として自分の下で利用しようとするキシリア、そしてフラナガン機関。

 

「これはいわゆる現状維持バイアスというもので、変化に伴うメリットよりリスクを過大に評価する心理作用からくるものだが」

 

 しかし……

 

「初めて私が明確なニュータイプであると確信した人物に遭遇した時、私は彼らを愚かだとは言い切れない恐怖と戦慄を覚えたのだ」

 

 その声に何を感じたか、自分を見つめるアルレットにシャアは言う。

 

「彼女は嘘を嫌い、嘘を憎み、嘘を見抜き、心を読んだ」

 

 イセリナ・エッシェンバッハ。

 

「人の変革、ニュータイプへ進化するとはそういうことなのか? 彼女のように心を読み互いに意思疎通ができるようになるということは、嘘がまったくつけなくなる世界を造り出すということなのか?」

 

 父、ダイクンの唱えた新人類、ニュータイプとは、そんな恐ろしい世界を産み出すものなのかと。

 

「大佐……」

 

 ニュータイプに対する認識が、ミヤビの知る史実とはまったく違う、ねじ曲がったものになってしまったシャア。

 

「だが、私はもう一人のニュータイプ、ララァと出会った」

 

 そしてイセリナと同じく高いニュータイプ能力を持つララァに拒絶感を覚えず、逆に安らぎすら感じたことにこう納得する。

 

「ニュータイプに目覚めたからと言って、ジオン・ズム・ダイクンが唱えたようにお互いに判りあい、理解しあい、戦争や争いから開放されるなど、幻想に過ぎない。

 私はそれを知ったのだよ。

 結局、ニュータイプ能力の有無に関係せず、相手を認め、受け入れられるかは相手の人格によるのだと」

 

 ニュータイプに幻想を抱く前、早い段階でそれを実体験により心の底から納得できたシャア。

 

「そして君は、新たな可能性を私に見せてくれた」

「可能性?」

「そう、本来、可能性とは多様性を認めるところから生まれる」

 

 多様性を認めず、一つの価値観でものごとを進めても新たなものは生まれない。

 

 例えば機動兵器の開発。

 従来の価値観に沿って最適解を求め、それ以外を排除して突き詰めていけば宇宙戦闘機の延長線上にある、より優れた宇宙戦闘機を作ることはできる。

 だが発想の転換、人型機動兵器モビルスーツというまったく違う新しい概念を生み出すことはできない。

 なぜならそれは人間が持つこだわりや嗜好という一見、非効率で非論理的としか思えないものから生み出されるものだからだ。

 

 こういったものを生み出せるのはイノベイターと言われる通常の人間とは違った、強烈なこだわりを情熱をもって追求し続けられる存在だけだ。

 ミヤビの前世で言うなら、スティーブ・ジョブズなどが典型的な例か。

 異端的ともいえる発想を信念をもって追求できる人物だけが『新しい何か』を生み出すことができるのだ。

 

 逆に言えば、ニュータイプを兵器としてしか見ない一方的な価値観で、サイコミュ装置を動かせないからといってアルレットを破棄しようとする。

 それは彼女の持つ『ニュータイプ能力を人に対してではなく、マシーンに対して発揮できる』という才能、人の持つ可能性を手折ることでもあるのだ。

 

「多様性は尊重されるべきであり、様々な意見や価値観があることは望ましい」

 

 そう、シャアは言うが……

 

「人の多様性には「対話するより殺した方が早い」「自分の思いが叶わない世界なら滅亡してしまえ」というものもあります。その言葉、聞こえは良いけど実際には茨の道でもあります」

 

 非人道的な人体実験を繰り返す科学者たちを見てきたアルレットには、ただのきれいごとにしか聞こえない。

 

「そんなことか」

 

 アルレットの反論に笑う、シャア。

 

「そんなことって……」

「そういう危険思想を持つ人物が居たとして、実害を出せば、あるいは未遂であっても、いずれ普通に法で裁かれるだけだろう?」

「は?」

「アルレット、極端な例外事項を挙げることで全体を否定しようとするのは詭弁というものだ。ディベートの授業なら減点の対象だよ」

 

 つまり彼女のような年若い少女に向け噛み砕いて言うと、

 

「多様性の尊重とは「どんな意見も受け入れろ」ではなくて「いろんな意見があるという現実を受け入れましょう」というものだ。つまり「自分が正しいと思っていることを受け入れない者も居るが、それは当たり前のこと」。自分と違った意見があっても嫌なら無理に合わせる必要は無いし、自分の考えに従うよう相手に強要する必要も無い――」

 

 そこでシャアは言葉を途切れさせる。

 

「大佐?」

「……うむ、やはり君は、いや君たちが私の翼だ。私に本当に大切なことを気づかせてくれる」

 

 つまりアルレットがシャアとの会話で、自分の発言から自分が詭弁じみた考えに取り憑かれていたことに気付けたように。

 シャアもアルレットの言葉に答える、自分の考えを言語化したことで気付けたことがあった。

 自分の言葉が自分自身への回答になっていたということ。

 

 彼女ぐらいの年のころに、自分がしてみたかったこと、誰かに言って欲しかった言葉。

 自分が少年だったころには誰にも、そして自らも望まなかったそれらを考え、与えることは思いのほか楽しい。

 そして幼い子供を導き育てているつもりで、自分の未熟な部分までも育て直されているような気にもなる。

 対象なくしては決して感じられることは無かっただろうこの感覚は、父性というものだろうか。

 

「大佐――」

 

 しかしアルレットは頬を膨らませ、

 

「私はそんな風に思ってもらえるほど小さな子供じゃないですよ」

 

 とニュータイプならではのカンなのか、シャアの心の内を捉えて見せるが、それもまた楽しい。

 

「安心したよ」

「何がです?」

「そういうセリフが出るということは――」

 

 シャアは我知らず笑みを浮かべながら言う。

 

「まだまだ子供ということだからな」

「大佐!」

 

 無論、アルレットには怒られるのだが……

 

 

 

「敬礼」

 

 入室するレビルに対し、ブライトの号令で敬礼するホワイトベースの一同。

 レビル将軍は返礼すると、

 

「ご苦労、座ってくれたまえ」

 

 そう言って自分も席に着く。

 

「全員、休め」

 

 着席。

 

「サイド7以来の諸君らの働きには感謝の言葉もない、ん?」

「すいません」

 

 そこにフラウが空気を読まずに子供たちを連れて入室。

 ……最初からちゃんと出席させられないのであれば、欠席させればよいものを、どんな軍人だってカツ、レツ、キッカにレビル将軍の話を聞け、などとは言わないだろうに、という話だが女性特有のめんどくさいこだわりなどがあるのかも知れない。

 そしてレビル将軍は、

 

「さて、諸君はここで補給と修理を受けてパナマ基地に行ってもらう」

 

 と、賢明にもスルー。

 何事も無かったかのように話を始める。

 それは彼が主戦派の筆頭たる武人でありながらも柔軟な思考と寛容な面も持つ人柄ゆえのものだったが、一方でフラウのようなやっかいな人物には深くかかわらない方がいい、という年長者の処世術であるのかもしれない。

 だが、

 

「あ、あの」

「ん、なんだね?」

 

 そのやっかいなフラウが起立、挙手するので、発言を許可する。

 

「はい。軍隊に入りたくない人はどうするんですか?」

 

 レビルは相手を刺激しないよう、つとめて冷静に回答する。

 

「すでに諸君らは立派な軍人だが、軍を抜けたいというのなら一年間は刑務所に入ってもらうことになるな」

 

 その答えに思わずアムロは、

 

「そ、そんな。それじゃあ嫌だっていう人でも……」

 

 そう漏らす。

 しかしレビルは、

 

「君たちは元々、軍隊で一番大事な秘密を知ったのだ。本来なら一生刑務所に入ってもらわねばならんところだ」

 

 そう答える。

 その意味では、確かに温情的、そして良識的処置ではあるのだ。

 

「軍人か……」

 

 ショックを受けたように小さく口の中でつぶやくアムロ。

 しかし、

 

(まぁ、うちで雇えばいいんだけど)

 

 というミヤビの考える抜け道もあるが。

 つまりヤシマ重工からRX計画、そして後に統合されたV作戦のためにミヤビが出向したように。

 軍と守秘契約を結んだ取引先会社の技術者という立場を用意すればいいのだ。

 要するに機密情報の漏洩防止ができれば良いのだから、扱いが微妙な少年兵を軍内で飼い殺しにし続けるよりは、ヤシマ重工に管理責任を押し付けられればそれに越したことは無い、そう軍も考えるはずだった。

 

「次にもっと重大なことがある」

 

 レビルはそう発言することで注目を集めると、

 

「ジオン軍の動きが大変活発になってきていることだ。ことにガンキャノンの出現によって、彼らは総力を挙げてモビルスーツの量産に入っている」

 

 その言葉を裏付けるように、

 

「君」

 

 と同席していた士官を促し、スクリーンに多数の異形のモビルスーツ、すなわち水陸両用モビルスーツの機体群の図面を表示させる。

 

「まだ未確認情報だが、ひとつにはガンキャノンの使い方を学んだという。強力なモビルスーツならば数はいらない、一機二機でも戦果が十分得られると考えたのだろう」

「し、将軍、後ろのモニターの図面、みんな違うモビルスーツなんですか?」

 

 次々に切り替わる図面に、思わずアムロは声を上げる。

 レビルは大いにうなずくと、

 

「おそらくな。しかもジオンはモビルアーマーというタイプの物も実用テスト中と聞く」

 

 と語る。

 

「モビルアーマー?」

「ガンキャノン一機が呼び水となった」

「呼び水」

 

 第二次世界大戦のT-34ショックみたいなものだろう。

 しかし史実とは違い、ジオンはキシリアの命によって、開発対象モビルスーツの絞り込みによるリソースの集中化を実施している。

 それがどのような影響をもたらすのか、前世の記憶を持つミヤビでも分からぬことだった。

 

「今後、敵の攻撃は強力になろう。ともかく手に入った情報は諸君に渡す。十分対策を検討するように」

 

 

 

 生体認証端末に手のひらを押し当てるカイ。

 おそらく静脈認証、または指紋認証とのハイブリッドかも知れない。

 

「どうぞ」

 

 警備兵から出力された入退出管理票を手渡され、

 

「へー、めんどくさいのね」

 

 とつぶやき……

 と言うには大きすぎる声で暗に文句を言うが、セキュリティカード所持を義務付けられ、首から下げることを強要されるよりは生体認証なだけマシだろう。

 オートロックのホテルでキーを持たずに部屋を出て締め出される(大抵全裸や下着姿)、という動画がネットに上がったりするが、そんな感じでカードを忘れたら入れないなど面倒なのだ。

 システムのセキュリティ担当だったりすると、もの凄い枚数のセキュリティカードでパンパンになったネックストラップを首から下げたりするし。

 

 まぁ、レビル将軍が居て、ホワイトベースはAAAの軍事機密ともなれば、多少なりとも利便性を損ねてもセキュリティレベルを上げざるを得ないのであるが。

 そして、

 

「兵隊さん、なんか買ってくれない?」

 

 二重のフェンス、その1枚目と2枚目の間のスペースに居た少女、ミハルが声をかけてくる。

 カイは少女の手にあるバスケットを覗き込み、

 

「あん? 碌なもんないじゃんか」

 

 などと遠回しに拒絶するが、ミハルはめげない。

 

「みんな土地のもんだよ。うまいもんだから」

 

 食い下がる彼女にカイも話を合わせ、

 

「かわいいね。苦労してるようだけどさ」

 

 と、同情するふりを見せ、

 

「じゃあ買ってよ」

 

 と、乗って来た少女に、

 

「またな」

 

 と手を振って歩き出す。

 ミハルは、

 

「ケチ!」

 

 と言い捨てると、今度は続けて出てきたアムロに狙いを定める。

 

「ね、買わない?」

「え? い、いえ」

 

 こういうことに慣れていないアムロは不器用に断る。

 

 なお、セキュリティの話をすると二重のフェンスの間に民間人であるミハルを入れているのは問題だったりするのだが(マンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では似たような状況でアムロがツッコんでいたが)そこは地元民への配慮として黙認されている。

 

 ミヤビの前世で言えば、工場敷地内にある緑化スペースやテニスコート、釣りのできる護岸等を開放していたり。

 工場立地やら何やらで、地元との付き合いには一定の配慮が必要なのだ。

 

 それじゃあ一般の、街中にある社屋はどうかというと、こちらはこちらで保険会社のおばちゃんが昼休み、勧誘のため事務所まで入って来たりする。

 本社ビルなどのように情報セキュリティのための対策が必要な場所だとさすがに無い…… と、思いきやわざわざ保険相談スペースを設けたり。

 これはなぜかというと、保険会社というのは多くは自社の大株主であり、やっぱり配慮が必要だからだったりする。

 

 こんなことが許された日本は欧米と違って基本的に性善説な風土があって、情報セキュリティについての重要性が叫ばれたり、個人情報保護法が施行されて対策が必要になったりした時点で、もの凄い苦労が発生したという。

 セキュリティというのはどんなに優れたシステムを入れても利便性は犠牲になるところがあって。

 先ほど、ちょっとした不便でもカイが文句を言ったように、セキュリティの必要性を実感しない多くの人間にはただ余計な手間としてしか認識されない……

 社内の抵抗勢力がとんでもないことになるのだ。

 ミヤビも自社のセキュリティ教育で、当時の推進担当だったという偉い人から酷い苦労話を聞いて同情した記憶がある。

 

 そしてセキュリティゲートからは、

 

「やさしいおじちゃんだったよね」

 

 続けて金の髪の幼女、キッカがレビル将軍のことをそう評しながら出てくる。

 その姿を見るフラウの複雑な表情にアムロは、

 

「フラウ・ボゥ、嫌なのかい?」

 

 と聞く。

 

「嫌っていうよりも」

 

 フラウの視線の先ではキッカが警備の兵に対し、

 

「ご苦労!」

 

 とレビル将軍の真似か敬礼している。

 

「あたしたちが軍隊に入ったらこの子たちの面倒、誰が見てくれるのかしら? みんなホワイトベースに馴染んでいるのよ」

 

 フラウの言葉に、アムロは、

 

「そうだね」

 

 としか言いようがない。

 まぁ、ミヤビが聞いたら、

 

「大人に任せるべきだし、戦艦に乗せるより施設で育つ方がマシじゃない?」

 

 と身も蓋も無く言うだろうか。

 戦場に身を置くということはPTSD(心的外傷後ストレス障害)の危険があるということで、ミヤビはその辺を配慮したうえでそう言うのであろうが。

 

「おらおら、お前らドックに入っちゃ危ねえんだよ。あっちで遊んでろ」

「ホワイトベースのトイレの掃除、ベッドカバーの取り換え、やること一杯あんの!」

「かわいくねえの」

 

 カイと言いあう子供たちに、フラウは、

 

「別れたらかわいそうよ」

 

 と重ねて言う。

 

「………」

 

 アムロは前にミヤビから説明された男性脳と女性脳の違いというものを思い出し、賢明にも口をつぐむ。

 古来男性は狩猟を営み、女性は村で共同生活を営んでいた。

 ゆえに男性の会話は素早い問題解決のためのもの。

 対して女性には狭い村社会で仲間はずれ、村八分にならない力、共感力が必要とされた、ということに端を発していると言われる違い。

 

 相談に対しても、男性は解決策を提示してほしいと願われていると捉え、女性は悩みを聞いて自分の気持ちを分かってほしいと考える。

 だからフラウもアムロに話を聞いてもらい、彼女の想いに共感して分かってもらいたいというだけで、アムロに何とかしろと言っているわけではない。

 

 ただ……

 男性脳で理系タイプのアムロには問題解決をしようともせずに延々と非生産的な愚痴を聞かされているように感じられて、とてつもなく苦痛なのだ。

 

 子供たちのために心を痛める、それはフラウが優しい心の持ち主だから。

 それは分かる。

 

 でも客観的に見れば、その場にしゃがみこんでぶつぶつ言っているだけなのと、何が違うだろうか。

 建設性など微塵も無いんじゃないか。

 

 そう考えてしまう自分は薄情なのだろうか。

 でも自分の気持ちにウソはつけないし、自分を騙すこともできない。

 しかし、

 

「私たちみたいな技術系の理系脳タイプは絶対の正解があって、正しいことは正しいから正しい、だから正しいことは受け入れられ、尊重されるべきと考えがちだけど」

 

 かつてミヤビが教えてくれた言葉。

 

「でも自分が理論的だと思っている人の中には相手の身になって考えない、相手に配慮しないことを『客観的』だと思っている。……実際には相手のことを考えないって、つまり自分の主観だけの偏見に満ちた罵倒になりかねないんだけどそれに気づかない。感情のまま罵詈雑言を垂れ流しても、自分がそう思った、そう感じたのは事実だから、正直な気持ちなんだから許されて当然と思う。そんな人も居るわ」

 

 そんなことを「正しいことは正しいから正しい、だから正しいことは受け入れられ、尊重されるべき」と当然のように押し付ける人間も居る。

 

『人は正義に駆られている時ほど反省を失うことはない』

 

 とは言うが、自分は正しいと思い込んでいる人間ほど厄介なものはないのだ。

 だから、

 

「そういう人にならないよう気を付けてね」

 

 ミヤビにそう言われたから、口をつぐみ、自分を客観視しようと努力するのだが……

 しかし苦しいものは苦しい。

 それも事実。

 

 どうしても比べてしまうのだ。

 悩みごとや問題ごとなどを伝えると、打って響くかのように明確な答えや解決策を示してくれたり、それができなくとも一緒になって問題解決に取り組んでくれるミヤビと。

 彼女はレビル将軍に呼び止められ、この場には居なかったが。

 ミヤビとだったら、どんな会話が交わせたのだろう。

 どんな言葉をかけてもらえただろうと考えてしまう。

 

 もっともミヤビの中身はアレなのだから、アムロの男性的で理系な考え方と合うのは当然。

 

 一方で、女性の脳は人の話を聞いて共感し、それを生きる知恵として頭に蓄積するようになっている。

 そのつもりで会話を求める女性に男性が「ならこうすればいいじゃん」と提案する解決策は「現実に基づいていない、実際には使えない屁理屈」と受け取られる。

 現に、最適と思われる解決案でも人の感情やしがらみのせいで使えないというのは普通に、というか数多くあることで、使えない、誰も納得しない解決案に意味はない……

 

 そして、この女性の脳特有の働きを促すために、女性は自分の話に相手が共感してくれると快感を覚えるようにできているのだ、とも言われる。

 だから会話をして共感し合うことは、女性にとって必要なやり取りであり、同時に疲れやストレスの軽減にもつながるのだ。

 

 フラウだってこうやって悩み、史実ではその想いを受け止めてくれたハヤトが居たからこそ、最終的にはカツ、レツ、キッカを自分たちで育てるという決断を、解決策を出せたわけで。

 合う合わないはあっても、どちらが優れているとか、そういう話でも無いのだが……

 ミヤビという『理系男子にとって理想的な嫁』(に見える存在)を知ってしまったがために、アムロは苦悩するのだった。




 シャアとアムロの内面の変化のお話でした。
 シャアは色々あって真っすぐに捻じ曲げ直されたという感じで、その上でアルレットの存在が良い方向に働いていますね。
 一方アムロは良くなっているようでいて、かえってミヤビに惑わされているような感じですか。

 なお男性脳、女性脳の違いってネガティブに捉えられがちですが。
 逆に言うと「『聞き上手』な男性って女性にもてる」などと言われるように、この特性の違いを踏まえてコミュニケーションすると好感度が得られるという話です。
 好きな人が居て親密になりたい、という場合は有効ですよね。

 次回からはゴッグとの戦闘が始まりますが、Gブルやハイパーハンマーの代わりにテム・レイ博士のビックリドッキリメカが登場の予定。
 また、アッガイについても「何でこれが量産機として生き残ってシャアの乗機になってるの?」というお話をする予定です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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