ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第26話 赤いアッガイ Dパート

「うっ、やったな、タンクもどきが!」

 

 ラサは毒づくとゴッグを立ち上がらせ、今度は両手で受け止める体勢になる。

 ゴッグの両腕は水中抵抗を減らすために肩アーマーへの収納を可能とした伸縮式のフレキシブル・ベロウズ・リムとなっている。

 これはショックアブソーバーとしての機能も有し、だからこそミヤビの知る史実でもガンダムのハイパーハンマーを受け止めることができたのだ。

 

「ヘヘッ、馬力ならこのゴッグも負けんぜ」

 

 しかし胴体に当てるだけではダメと悟ったのか、頭に向かって放たれた鉄球は……

 

「たっ、鉄球(タマ)が落ちた!?」

 

 途中で軌道が変化し、左わき腹に直撃!

 片側の魚雷発射管とメガ粒子砲が潰される!

 

「かっ!?」

 

 衝撃に息を詰めるラサだったが、

 

「片腹痛いわ!!」

 

 と、強がりを吐く。

 

 

 

 モニターに映るガンキャノンタンクの戦闘映像に、テム・レイ博士は一人、メガネをくいと押し上げると満面の笑みを浮かべ叫ぶ。

 

「そおーだ、アムロ。その新兵器は単に『ワイヤーで繋がれた鉄球(タマ)』ではない。『有線制御の鉄球(タマ)』! それゆえにワイヤード・ハンマーと呼ばれるものなのだっ!!」

 

 見た目はミヤビの前世の記憶の中にあるロケット噴射装置付きハンマー、ハイパーハンマーの鎖をワイヤーに変えただけに見えるが、それだけではない。

 ワイヤーの中には通信ケーブルが仕込まれており、これにより単にロケット噴射で加速するだけではなく、軌道を制御し、コントロールすることができるのだ。

 しかも、

 

 

 

 ハンマーの軌道を戦術コンピュータの補助により予測しようとしたラサだったが、計算エラーと脅威警報に目を見張る。

 

「これは!」

 

 乱数が2つもある!

 弾道の解析ができない!

 

「パイロット自身の能力で見切るしかない、だとぉ!?」

 

 

 

 再びのハンマーの命中を確認し、サラツーは言い放つ。

 

『このハンマーはアムロとパートナーである私の、二人の連携で操作されてるのよ! 戦術コンピュータ頼りでは予測できないわ!!』

 

 AIであるサラツーによるアシストを経て制御されるこれは、後の準サイコミュ兵器『インコム』の質量兵器版と言っていい性質を持っている。

 さらにワイヤーを引いたり、手首のひねりでしごいたりして物理的な力を伝達することで、単純なロケット噴射制御では不可能なダイナミックな動きを可能としているのだ!

 

 

 

(ホーミングするハンマーって、レイダーガンダムの破砕球『ミョルニル』!?)

 

『機動戦士ガンダムSEED』登場のアレかと目が点になるミヤビだったが、この兵器が成立するのも彼女のせい。

 サポートAIサラの補助を受けてドラケンE改で有線制御ミサイルを制御する。

 その延長線上にある技術であり、同時に彼女の存在が生み出すバタフライ効果でRX-78ガンダムがペーパープランに終わった上、無事だったテム・レイ博士が開発してしまった。

 そういうことである。

 

 

 

『装甲は耐えられても、中身は無理でしょう!』

 

 サラツーは、ショックの伝達による内部機器の故障を狙うが、

 

 

 

「うぐぁあああぁっ!!」

 

 パイロットの方が先に持たなくなりそうではあった。

 

 

 

『ラサ曹長!!』

 

 僚機の危機に、もう一機のゴッグが駆け付ける。

 

 

 

『アムロ、スプレーミサイルランチャー、ファランクス・モードだ!!』

 

 父、テム・レイ博士からの通信に、戸惑うアムロ。

 

「スプレーミサイルランチャー?」

 

 今、ガンキャノンタンクの右肩には、従来使用されていた低反動キャノン砲に代わり小型ミサイルランチャーが装備されていた。

 ガンキャノンのオプションで、砲撃よりも弾幕の形成に有効な兵装。

 ミヤビの前世の記憶の中でも、試作段階まで進んだ装備で、接近戦において使用されるものだが実用化に至らなかった。

 もしくはミノフスキー粒子下では実用的な命中精度を発揮できなかったため、実戦ではほとんど使用されなかったとされる装備だったが……

 

『スプレーミサイルランチャー、ファランクス・モード』

 

 サラツーの制御でスコープに表示されるのは敵機を中心とした12の着弾点と、その効力範囲。

 

「行けるか!?」

 

 すかさずトリガーを引くアムロだったが、

 

「何!?」

 

 通常、収束式ミサイルランチャーは、1発ずつ、連続発射することで継続的な射撃を行うが、このファランクス・モードでは、一度にすべての発射筒からミサイルが放たれるのだ。

 そして弓なりの軌道を経て敵機の周辺に同時着弾、爆発する!

 つまりミノフスキー環境下で誘導が効かず実用的な命中精度を発揮できないなら、面で攻撃すればいいという発想だ。

 さらに、

 

 

 

「うわあああっ、あ、熱い!」

 

 着弾点から爆発的に炎が広がり、ゴッグを中心に灼熱の火炎地獄が形成される!!

 

 

 

「なっ……」

 

 目前に広がる炎の海に目を見張るアムロ。

 そんな彼に父、テム・レイ博士の笑い声が届く。

 

『ははははは、どうだアムロ、スーパーナパーム弾頭の威力は!!』

 

 そう、スプレーミサイルランチャーのファランクス・モードで面制圧をするにあたり、テム・レイ博士はそのミサイル弾頭に、サイド7でRXシリーズの焼却に使ったスーパーナパームと同じ燃焼剤を利用したのだ。

 ルナ・チタニウム製のRXシリーズを焼き尽くし、スクラップにした高熱がゴッグを焦がしていく。

 

 

 

「クッ…… 子供だましだ!!」

 

 確かにすごい炎だが、機体に直撃を食らったわけではない。

 ラサとマーシーは、炎の中から逃げ出そうとするが、

 

「う…… あッ!!」

 

 機体が上手く動かず転倒する。

 

「ち……ッ、ちくしょう!」

 

 熱膨張で、各可動部パーツのクリアランスがおかしくなっているのだ。

 水陸両用モビルスーツは水密構造を有するがゆえに、そのあたりはシビアなのだ。

 その上、熱のせいでジェネレーターの冷却にも問題が出て、メガ粒子砲を撃てないばかりか、出力が上げられない。

 

『も、もうあいつに抵抗する術は何もないのかッ!? お…… 俺たちのゴッグはあいつの戦果になって撃墜されるだけなのかッ!?』

 

 恐怖に震えるマーシーに、しかしラサは、

 

「いや! 策はあるぜ!」

 

 そう言い放つ。

 

『え!? なんですって? ラサ曹長』

「たったひとつだけ策はある!!」

『たったひとつだけ……?』

「ああとっておきのやつだ!」

『とっておき?』

 

 それでマーシーも思い当たる。

 

『はっ、ラサ曹長! ま…… まさか! そのとっておきというのは……!?』

「いいか! ジェネレーターが止まるまでとことんやるぜ!」

『ジェネレーターが止まるまで? どういうことですッ!』

 

 そんな、まさかとマーシーの顔が引きつる。

 

「フフフフフフ」

 

 ラサは不敵に笑うと、

 

「漏らすんだよォォォーーーーーッ」

 

 ジョジョーッ!!

 

『うわーっ、やっぱりそうだったァァァァァァン~~~~』

 

 バラストタンク、ブロー!!

 最後の手段で、バラストタンク内に蓄えられた海水を排出し、機体表面温度を下げようとする。

 ゴッグは陸上での活動時には本体内のバラストタンクに冷却水を貯めて行動するようになっている。

 反応炉の冷却上の制限から陸上での活動時間は長くなく、せいぜい1、2時間が限度。

 その冷却水を捨てるのだから、本当に最後の手だ。

 水でナパームは消せないが、機体表面温度は急冷される。

 そしてすかさず、

 

「逃げるんだよォ! マーシーッ! どけーッ、連邦のザコどもーッ!!」

 

 とベルファスト基地の防衛戦力としてゴッグの進路前方に集まってきていたミサイルエレカーなどを蹴散らしながら逃走を図る。

 海、海に戻れば冷却できるのだ。

 

 

 

「逃がすかーっ!!」

 

 追撃のワイヤード・ハンマーを放つアムロ!

 

 

 

「マーシー!?」

 

 背面バックパックに直撃を食らい動けなくなる僚機に、ラサは、

 

「このぉ!!」

 

 と最後の武器、ミヤビの前世の記憶ではガンダムの頭に穴を開けたアイアンネイルで掴みかかるが、

 

「なぁにィ!!」

 

 カウンターで繰り出されたハンマーに両手の指、アイアンネイルを砕かれる!

 

「ん~な!! な…な…な!! なああ~!!」

 

 当たり前の話であるが、鋼を熱して急冷すれば焼入れが成される。

 しかし、そのままでは固いだけで脆いため、焼もどしという工程で粘りや強靭性を高めることが必要。

 ナパームの炎で過熱され、冷却水のブローで急冷されたゴッグのアイアンネイルは、焼き入れだけで焼き戻しが成されていない状態。

 だから脆くも砕け散ってしまったのだ。

 

 

 

「指が無くては突きようがないか……」

 

 アムロはとどめのハンマーを繰り出す!!

 そして史実ではハイパーハンマーの鎖を引きちぎり、水中戦でガンダムを翻弄、その頭に穴を開けたゴッグは、恐るべき本領を発揮するまでも無く撃破されたのだった。

 

 

 

『やりましたね、ミヤビさん』

「そうね」

 

 今回は戦闘に参加しなくても良かったし。

 

「レストランは無事そうだし、ね」

 

 アイルランド料理を未だ諦めていないミヤビだった。

 

 

 

 確かに、レストランは無事だった。

 が、

 

「何で……」

 

 閉まっているのかと呆然とするミヤビに、

 

「戦闘の直後だし、みんな避難から戻ってないんじゃ?」

 

 と答えるアムロ。

 まぁ郊外とはいえ、彼が、いやテム・レイ博士のせいで焼け野原になった土地もあるし……

 

 そんな彼女たちに声をかける少女が一人。

 

「あ、あの兵隊さんたち。あたしなら、今でも開いてそうな店を紹介できると思うんだけど」

「えっ?」

 

 ミヤビが目にしたのはミハル・ラトキエ。

 前世の記憶の中にある彼女であった。

 

 

 

「間違いない、木馬だな」

 

 アッガイで帰投途中、アルレットのまとめてくれたデータを横目で確認し、シャアは笑う。

 

「でも、出撃したゴッグは二機ともやられて……」

「フフフ、それでいい、アルレット。私はあれ…… 木馬のモビルスーツ、ガンキャノンだけは私の手で倒したいと思っているくらいなんだ」

「は?」

「子供じみているだろう? フフフ、そう、私のプライドを傷つけたモビルスーツだからな」

 

 シャアの物言いに、アルレットは――

 

 

 

 ――闘争の本質、

 

「それを打ち倒さねば己になれない」

 

 彼は戦わねばならないのだ。

 そうでなければ一歩も前に進めないから。

 進む術も知らないのだから。

 

 彼は子供だ。

 父が死んだときから何一つ変わっていない痩せっぽちの男の子だった。

 

 本来、彼が打ち倒さなければならなかったのは、家庭を顧みず、家族を、そして何より自分が愛した母を不幸にし、死の運命に追いやった父、ジオン・ズム・ダイクンなのだ。

 しかしダイクンは死んで神格化され永遠に、絶対に殺せない存在(概念)と化してしまった。

 

 だから彼が彼であることを証明するには勝ち続けることが必要なのだ。

 父を打倒できないのであれば、せめて誰にも負けないことで自分を維持することしかできないのだから。

 そんな彼が勝てなかった相手、それがアムロ・レイであり、そのためにシャアは何もかもをひっくり返して叩き売りにする。

 一年戦争の終局、ア・バオア・クーの戦いでも!

「シャアの反乱」と言われた第二次ネオ・ジオン抗争でも!

 

 

 

「アルレット?」

 

 心配そうに自分を見るシャアに、アルレットは答える。

 

「――刻(とき)が見えました」

 

 シャアが、この後に辿るはずの運命を。

 未来の自分は結局、この人の希望には、可能性にはなれなかった。

 

 でも、違いもある。

 本来の歴史なら自分は地球ではなく、宇宙(そら)で、シャアの次の機体、YMS-14先行量産型ゲルググの完成に寄与しているはずだった。

 だが、今の彼はアルレットを手元に置いている。

 この違いが、どんな未来をもたらすのかアルレットには分からなかったが、

 

「希望がある、ってことでもあるはず」

 

 そう、つぶやく彼女だった……

 

 

 

次回予告

 シャアの指揮のもと、ホワイトベース殲滅の攻撃が続く。

 軍人を嫌うカイ・シデンは仲間との別れを告げたものの、

「これを持っていきなさいな。売ればいくらかになるわ」

『ひいいっ、私を売るつもりなんですかっ!?』

 ミヤビによってアムロの工具箱の代わりに手渡されるモビルドールサラ……

 そして再び戦いに加わるカイだが、その彼の後ろに少女が居た。

 次回『女スパイ潜入!』

 君は、サラの涙を見る。




 テム・レイ博士のビックリドッキリメカの大活躍でした。
 なお、ホーミングするハンマーに右肩のファランクスでナパーム弾を投射、ついでに低重心というコンセプトはカトキハジメ氏デザインのロボット3D対戦ゲーム『電脳戦機バーチャロン』登場の機体、ドルカスからヒントを得ています。

 一方で矛盾の塊のようなシャアの内面のお話は様々な方が色々な解釈を行っていますけど、アルレットが見たこれも、その内の一つということで。
 ただ、シャアのYMS-14先行量産型ゲルググってアルレットが居ても調整が間に合わずテキサスで撤退していたわけですけど、これがどう影響するのか。

 そして次回予告でアムロの工具箱の代わりに『モビルドールサラ、売るよ!』されているサラの運命は……

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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