ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第28話 大西洋に消ゆ Bパート

「うまくいったらしいな」

「はい」

 

 ブーンの機をマッドアングラーを浮上させ迎え入れるシャア。

 

「アフリカ戦線ではないのだな?」

「は、間違いなく南米の宇宙船用ドックへ向かいます」

 

 シャアに答えるブーン。

 

「こっちに来ないのはありがたいが、マッドアングラーはここを動けん。アフリカ戦線の様子も見なければならんしな」

 

 思案するシャアにブーンは、

 

「私はパイロット上がりです。モビルアーマーをお貸しいただけませんか?」

 

 そう申し出る。

 

「グラブロか? 整備はしてあるが」

「仇討ちとは言いたくありませんが、私は四機のモビルスーツを沈められています。やらせてください。モビルアーマーならここから発進しても木馬をキャッチできます」

「うん、いいだろう」

 

 そうしてブーンは水中用モビルアーマー、グラブロで出撃する。

 史実と異なるのは、グラブロが両腕のクローの先に掴んだワイヤーでけん引する機体がズゴックではなく、アッガイだということ。

 

 

 

「離れませんね。七時の方向に現れてます」

 

 オペレーター席のマーカーからの報告に、ブライトは眉をひそめる。

 ジオンには偽装した情報を流したし、進路も変えた。

 それなのにどうして敵が来るのか。

 ミハルとは別口か。

 ともかく、

 

「潜水艦が追いつく訳ないだろう。ミサイルだけ気をつけて」

「来ました、ミサイルです!」

 

 やはりこうなるか。

 

「後部ミサイル発射。七時だ!」

 

 すかさず指示を出すが、

 

「第二波、第三波、続きます」

「いや、第四波、第五波も下から来ます」

「対潜攻撃だ、全機スタンバイ!」

 

 なし崩し的に戦闘に入る。

 

 

 

「フッ、捕まえたぞ、木馬め。部下の仇、討たせてもらうぞ」

 

 ブーンのグラブロは強力な水中航行能力をもってホワイトベース直下に接近。

 垂直発射管から放たれる、その有翼の形状からブーメランミサイルと呼ばれる対空ミサイルで攻撃を仕掛ける。

 さらに援護のアッガイが左腕ロケット発射管からロケット弾を発射した。

 

 

 

 突然始まった戦闘。

 ホワイトベースの船体に走る着弾の衝撃。

 

「ああっ!」

 

 とっさに飛び出た部屋の外、そこでミハルが目にしたのは彼女の弟と妹、ジルやミリーのように幼い子供たちが悲鳴を上げて転げる様。

 

「持ち上げんの、よいしょっと」

「よいしょっと」

 

 消火器を運ぼうとするカツ、レツ、キッカたちの姿。

 

「あんな子供たちが居るの? この船に」

「ミハルっ、救命具を着けていろ。死んじゃあ、なんにもならねえんだから!」

 

 駆け付けたカイに救命胴衣を押し付けられるミハル。

 

「カイ、何で……」

『分かりましたカイさん!』

 

 そこにモビルドールサラが報告する。

 

『先ほどのミハルさんの通信、音声データに混ざって暗号化されたテキストデータが送信されていました!』

「何だと、どういうことだサラ」

 

 つまり、

 

『……ミハルさんはパナマ基地と伝えたはずなのに偽装がばれたのは、ミハルさんの通信装置に盗聴器が仕掛けられていたためです』

 

 ミヤビの前世、西暦の時代でも音を検知して、音がする間だけ記録する盗聴装置があった。

 その音声データをさらに音声認識ソフトでテキスト化。

 圧縮暗号化したデータを通常の音声通信波に混ぜて送信したのだ。

 これならばデータ量は極小。

 すぐに盗聴した会話の確認が可能。

 つまりミハルが居た場所でブライトが口にした行先の変更、およびミハルが懐柔され虚偽の報告をしたこともブーンにはばれてしまったのだ。

 

 元々、音声通話も人の声の周波数帯域のみ(電話であれば音声周波数帯域は0.3から3.4kHz)を切り出してデジタル圧縮、暗号化をかけているものなのでデータを混ぜ込まれても気付きにくく。

 教育型コンピュータの演算力を使って暗号解析し、ようやく判明したことだったが。

 

「オムルのやつ中途半端な仕事しやがって…… ダメじゃんかよ、ブライトさん!」

 

 唇をかむカイ。

 そしてミハルはカイに言いすがる。

 

「私にも戦わせて」

「できる訳ねえだろう!」

 

 そこに船体に走る衝撃。

 

「ああっ!?」

 

 そろって足元をすくわれ、ミハルはカイの上に倒れ込む。

 

「あ、あたしのせいなんだ」

「お、おい?」

「あたしがジオンに騙されて盗聴器を持たされたりしたから、あたしのせいで情報が流れたばっかりに、カイさんたちが」

「いや、情報が漏れたのは俺たちの考えが甘かったからで、お前のせいじゃねぇよ」

 

 そう答えるカイだったが、ミハルは彼の胸元にすがり付いて離れない。

 

「……ごめん、カ、カイ。あたしが、あたしがあんたたちを」

「おい、ミハル」

 

 

 

「コア・ファイター、パワー90、95、100、120、行きます!」

 

 左舷モビルスーツデッキではリュウのコア・ファイターに続き、ハヤトのコア・ファイターがカタパルトで射出、出撃していた。

 同時に右舷のデッキではミヤビのドラケンE改可翔式が出撃する。

 直後、敵のミサイルが両舷デッキに突き刺さる!

 

「ホワイトベースが!」

 

 

 

「衛生兵(メディーック)! 衛生兵(メディーック)!!」

 

 ホワイトベースのモビルスーツデッキは阿鼻叫喚状態だった。

 

「衛生兵(メディック)はこんな危ねー場所には呼べねーよ! 応急処置したらさっさと中央ブロックの医務室に運べ!」

 

 実際、現代戦での戦闘救護は自分か仲間による止血が第一。

 小隊に一人しか居ない貴重な衛生兵(メディック)は敵の弾が届かない後方に置いて、より高度な応急処置を担当させ、さらに後方の治療施設へ送ることに専念させる。

 ミヤビの前世、旧21世紀の時代のアメリカ軍だと戦闘現場には一般兵が訓練を受けて養成されるコンバットライフセーバー(CLS)がつき、分隊用救急品(CLSK:Combat Life Saver Kit)を使った処置を担当していた。

 映画やドラマで『衛生兵(メディック)!』と呼ばれ銃弾飛び交う戦場に駆け付ける存在は、こちらの方が近いか。

 まぁ、年代や国によっていろいろあるのだが。

 

「止血帯は要るか!?」

「いや、直接圧迫止血でいける。止血ガーゼと圧迫包帯を!」

 

 出血の95パーセントは直接圧迫止血で抑えられる。

 止血帯は最後の手段だ。

 とはいえミヤビの前世、アメリカ軍では片手で絞められる新型のターニケット(救命止血帯)が開発され配布されていたように過酷な戦場下では現役の装備なのだが。

 

「ノーマルスーツが邪魔で手当てが……」

「ストラップカッターで引き裂くんだよ、腰のケースに入ってるだろ!」

 

 ノーマルスーツの腰ベルト、応急修復用パッチなどが入れられているケースには小型のストラップカッターが入っている。

 これは緊急時、衝撃などでバックルが変形して外せなくなったシートベルトを切って脱出するためのもの。

 要するにシートベルトカッターだ。

 ロープや装備のストラップ等、様々なものを切断する用途にも、そして負傷を悪化させずに患部を診るため衣服を素早く安全に裁断する用途にも使われる。

 それゆえミヤビの前世、旧21世紀でもアメリカ陸軍歩兵個人装備にも含まれていたのだ。

 

 一方、

 

『大丈夫ですか、ハワドさん!』

「あ、ああ、サラちゃん。君が庇ってくれたおかげで何とかね」

 

 そう、ミヤビの知る史実だとこの攻撃で人体が吹き飛ばされ宙に舞うほどの損害を受けていたホワイトベースだったが、サラが単独制御するドラケンE改がとっさに盾になったおかげか、少なくとも死者は出ていなかった。

 

「けど……」

 

 どこもかしこも傷だらけ。

 その上、片腕が千切れ飛んだドラケンE改を痛ましそうに見るメカニックの少年、ハワド。

 

『大丈夫ですよ。私、ロボットですから』

 

 むん、と残った片腕を掲げ力こぶを作るようなポーズを取って。

 

『例えこの身がバラバラになろうとも、それで助けられる命があるなら本望です。何故なら私は、いいえ、すべての道具は人の役に立つためにこそ、人の手によって造られるものなんですから』

 

 道具というのはとても、とてもけなげなものだ。

 いつだって彼女たちは人のために働き、役に立とうとする。

 その道具に少女の人格というものを与えることは、とても……

 とても切ない気持ちを人に抱かせることになる。

 そして、

 

「マクシミリアンの姿が見えないぞ!?」

「マクシミリアン? あいつはエンジンルーム担当だろ?」

「いや、臨時で応援に来てもらって……」

 

 このように災害等発生時に安否確認忘れなどといった問題が出るので、現場の人員については常に把握しておかないといけないのだが。

 

「向こうでもう一機のドラケンE改と一緒に作業を……」

 

 指し示された方向には、倒壊した器材の瓦礫の山が……

 

『どいて下さい! 私が掘り起こします!』

 

 ドラケンE改に残された片腕の肘から先がカニのハサミのように二つに割れる!

 大きな荷物をつかめる機能を備えた二重下腕肢を振り上げ、満身創痍状態の機体に鞭打ってサラは撤去作業に向かった。

 

 

 

『マクシミリアンさん、マクシミリアンさんっ!!』

「……サラちゃん?」

 

 切迫したサラの声に意識を取り戻した少年、マクシミリアンはとたんに全身に走る鈍痛に顔をしかめる。

 

『マクシミリアンさん、急いで私の中に入ってください。瓦礫を支えるのも限界ですっ』

「っ!?」

 

 目の前には、倒壊した器材をパワーローダータイプに換装された両腕で支えてくれているドラケンE改が。

 そう、その機体を制御するサラがとっさに庇ってくれたおかげで瓦礫の間にできたわずかな空間が彼の命を救ったのだ。

 

『は、早くぅ』

「あ、ああ、分かった!」

 

 慌てて半開きになったハッチから、痛む身体を庇いながらもなんとかコクピットへと滑り込む。

 直後、限界を超えた腕部が破損。

 ドラケンE改の機体は完全に瓦礫の中に埋もれることに。

 

『マクシミリアンさん、コクピットに備え付けのエマージェンシーパックに含まれている救急品キットで手当てを』

「あ、ああ」

『ケガした直後はアドレナリンが分泌されているおかげで痛覚がマヒしていることが多いです。落ち着いて全身を確認してくださいね』

 

 交通事故などでもそうだが、負傷した直後は痛みを認識できない場合が多い。

 何もないようでも一服するくらいの時間を置いて、身体を確かめる必要があるのだ。

 そして自分で応急手当てを進めるマクシミリアンに、サラは勇気づけるように語りかける。

 

『手足が折れちゃって身動きはできませんけど、このコクピットの中なら瓦礫の重みにも耐えられます。通信装置が壊れて外部との通信もできませんが、助けは必ず来るはずです』

 

 緊急事態だが、マクシミリアンには不思議と安心感があった。

 ミドルモビルスーツの狭いコクピットには、包み込まれるような感覚があって、それに……

 

「……何だかいいにおいがする」

『ミヤビさんの移り香ですね』

「っ!」

 

 顔を真っ赤にするマクシミリアン。

 

『手当てが終わったら休んでもいいですよ。体力を温存してください。寒いですか? エアコンは死んでますけど燃料電池の熱を直接引き込んだヒーターぐらいなら使えますよ』

「そんな機能があるんだ」

『その昔、20世紀ごろの車には様々な方式のヒーターがあったらしいですよ』

 

 エンジンルームの熱を直接引き込んだり、電気ヒーターを使ったり。

 水冷エンジンの場合だとラジエーターに戻ってくる温水を利用したり。

 空冷エンジンの場合は旧ビートルのように排気ガスの廃熱を熱交換器で回収したり、それで足りない場合はオプションの温風ヒーターでガソリンを燃やしたり。

 同じく空冷のヨタハチ、トヨタ・スポーツ800なども、このガソリン燃焼の温風ヒーターを搭載していた。

 

「へぇ」

『どうしてなのかミヤビさんはそういうのに詳しいんですよね。ドラケンE改のヒーターも、ミヤビさんがこういう過去の事例を参考に付けたって話です』

「………」

『マクシミリアンさん?』

「ありがとう、サラちゃん」

『えっ?』

「君が居なかったら今頃瓦礫に潰されていたし、奇跡的に生きていても不安でパニックになっていたと思う」

 

 過酷な環境下でも自分を想ってくれる、声をかけてくれる存在が居る。

 それは大きな心の助けになるのだ。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)もまた防ぐことができるだろう。

 しかし、こうして人の役に立つのはサラにとって当然のこと。

 だからこう言うのだ、

 

『例えこの身がバラバラになろうとも、それで助けられる命があるなら本望です。何故なら私は、いいえ、すべての道具は人の役に立つためにこそ、人の手によって造られるものなんですから』

 

 常に。

 

「サラちゃん……」

『そんな顔をしないでください。私は人を模して造られたAIですから、これは人と同じ。誰かの役に立つことで自分には価値があると確かめたい。承認欲求みたいなものです』

 

 例えばミヤビの前世でも、災害が起これば自衛隊員が、そして全国の医療機関や電力会社等、人の命とライフラインを支える人々の応援隊が送り出され、救助、復旧作業に従事したものだ。

 過酷な環境下で彼らの士気を支えるのは誰かの役に立つことをすること、胸を張れる、誇りを持つ仕事ができること。

 

 無論『やりがい搾取』みたいなものや、被災者のため不眠不休で働け、などという弱者や被害者の立場に沿って発言している風を装って、実際には弱者、被害者を自分の主張を通すための道具に、相手の言論を封殺する盾にしようとするような、心か頭、あるいは両方がおかしい者の言うことは論外。

 効率的な救助、復旧作業のためには体調への配慮、十分な休養は必要不可欠であるし、働きに見合った報酬はあって当然のことではあるが、それはともかく。

 

 人間と同じ心を持ち、人の役に立てることを喜ぶ。

 だからサラに対し、マクシミリアンは素直な想いを口にするのだ。

 

「サラちゃんはかわいいなぁ」

『あ、ありがとうございます、マクシミリアンさん』

 

 いや、まぁそれも正直な気持ちなのだろうが、どこかずれた発言。

 だがほっこりとする両者だった。




 ジオン側も当たり前ですが保険はかけているので簡単には騙されないよ、ということで戦闘の開始です。
 そして戦争のリアルを表現するのに死を描くというのも一つの手段でしょうけど。
 負傷者をどう助けるか、というのもまた一つの方法だと思うのですがどうでしょう?

 なお次回はアッガイの腕部武装ユニット『ダイブストライク・アームズ』の登場など、その新たな能力、戦い方が披露される予定です。
 ご期待ください。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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