ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第3話 敵の補給艦を叩いて砕く Dパート

「これもう、ダメかも知れないわね」

 

 メインエンジンの出力上昇が完了したのかメガ粒子砲を撃ち始めたムサイ。

 さらにガンタンクからの砲撃が外れたことを見て、ミヤビはそう独り言ちた。

 

 彼女とドラケンE改は、傷つきながらも補給物資をルナ2地表に放出し続けるパプア補給艦を見上げる位置に居た。

 どうやってそこまで気付かれず忍び寄ったのかというと、単純にルナ2の地表上を地形を利用しながら目立たないよう走ってたどりついたのだ。

 ドラケンE改のかかとに仕込まれたローラーダッシュ機構にはランフラット・タイヤが標準で付いて来るが、高グレードの軍用モデルでは接地圧可変タイヤと言われるタイヤ内の空気圧を調整できる機構が備えられていた。

 

【挿絵表示】

 

 これは旧21世紀の装輪装甲車にも採用されていたもので、空気圧を下げ接地面積を広げることで泥濘地などグリップが悪い荒地でも走行が可能となっていた。

 アニメ『コードギアス』の紅蓮弐式の脚部に組み込まれた高機走駆動輪(ランドスピナー)にも同様な機構が備え付けられ、それがあの機体のハチャメチャな走破性を保証していたが、そんな感じだ。

 

 そしてさらにドラケンE改はステルス性能が高い。

 核融合ジェネレーターではなく比較的発熱の少ない燃料電池を動力源とし、その少ない発熱も両肩、尻に装備された放熱器により分散処理されるため、熱反応が小さい。

 また機体が小さいため、センサーでも目視でも発見できる率が小さくなる。

 極めつけは、ステルス塗料の採用だ。

 と言っても軍用の高性能なものではない。

 そういうものは耐久性に問題があり、綿密なメンテナンスと莫大な維持費用が必要とされるのだ。

 

 ドラケンE改に採用されているステルス塗料は民生品で、これは航空機や船舶の航法レーダーへの悪影響を避ける目的で橋脚などに塗られているもの。

 ミヤビの前世で日本企業TDKが作っていたものを発展させたような製品で、さび止め塗装を兼ねているため赤い。

 元々はコロニー港湾部での作業時に管制の邪魔にならないよう採用されたものだが、軍事的にも有効なため軍用モデルでもそのまま利用されている。

 

 連邦軍では当初この赤い色が問題になったが、

 

・劣勢な戦場では敵、特に航空機からの発見を避けるため地上戦力は夜間行動が基本となるが、濃い赤は夜の闇に溶け込みやすく夜間迷彩として優秀。

(黒や青系は夜間や宇宙空間などの低光量環境下(ローライト・コンディション)では逆に目立つ。忍者が着ていた忍び装束も現実には黒ではなく蘇芳色と言われる濃い赤紫色などが使われていた)

 

・優勢な戦場では制空権が味方にあり、敵を発見しやすい昼の行軍が基本となるが、この場合は味方からの誤射(フレンドリーファイア)を防ぐためにある程度目立つ色彩にした方が良い。

 

 ということ、何より低コストでステルス機体を運用できる利点があってこの塗装を使い続けている。

 効果は完璧ではないとはいえ、レーダーを阻害するミノフスキー環境下ではこれでも十分なのだ。

 

「私がやるしかないのか」

『ミヤビさんがやらなければ誰がやるんですか?』

 

 そうサラに諭され、ミヤビは仕方なしに覚悟を決める。

 

『サラちゃん、パプア級補給艦のデータから、最適な攻撃対象部位を指定して』

 

 アムロはアニメ『機動戦士ガンダム』第34話にてニュータイプ能力で重巡洋艦チベの心臓部を見抜いていたが、当然ミヤビにはそんな能力は無いからサラに丸投げする。

 パプア級補給艦は旧式艦でそのデータは既に明らかになっているため弱点部位の特定は可能だった。

 

「ロックオンさせるとどこに当たるか分からないからマニュアルで。機体制御、渡します。ユー・ハブ・コントロール」

『機体制御、担当します。アイ・ハブ・コントロール。ミサイル誘導、渡します。ユー・ハブ・コントロール』

「ミサイル誘導、受けます。アイ・ハブ・コントロール」

 

 これでドラケンE改の機体制御をサラが担当し、ミヤビは左右の操縦桿を使ってミサイルの誘導を手動で行うことができる。

 

「ミサイル、同時斉射!」

 

 ドラケンE改は2発の短距離ミサイルを手動有線誘導で同時発射。

 ミヤビは左右の操縦桿を操り双胴の船体を持つパプア、それぞれのエンジン部を狙ってミサイルを誘導する。

 しかし……

 

 実は人間は本来、異なる目標に対し同時攻撃するマルチアタックには適応できない。

 創作物では二丁拳銃使いが登場するが、両手の拳銃を使って別々の標的に当てることなど実際にはできないのだ。

(そもそも同じ標的に向けたところでその命中率はあからさまに低下する)

 

 しかしミヤビは器用に左右の操縦桿で異なる場所へとミサイルを誘導する。

 自分でもいざやってみてからどうしてできるのかと不思議に感じたミヤビは、この操作法と誘導用ワイヤーを引きながら飛んでいくミサイルに既視感を覚えふとつぶやいた。

 

「これ『リブルラブル』だ」

 

 と。

 レバー2本を用いて紐状のラインの両端に付いた「リブル」と「ラブル」を操作するナムコのレトロゲー。

 ミヤビも後に家庭用ゲーム機で出た復刻版をプレイした記憶がある。

 その経験が今、役立っているのだ。

 

 まぁ、そんな昭和な話はともかく。

 

『ミサイル命中! でも目標は健在です!』

 

 それなりに効いてはいるようだが、あと一押しが足りない。

 

「なら!」

 

 サラから機体のコントロールを戻してもらい、ミヤビはスロットルを踏み込む。

 

「ロケットエンジン、リミッターカット! 全速で突っ込む!」

 

 背面ロケットエンジンを全開にして、不意のミサイル攻撃により混乱しているパプア補給艦に突っ込む!

 右腕に装備された甲壱型腕ビームサーベルを突き出し、パプアのウィークポイントに接触した瞬間、

 

「パルマフィオキーナ!」

 

 パルマフィオキーナ掌部ビームピック機能を開放。

 使い勝手の悪いこれも、対艦攻撃の際には有用だった。

 ビーム刃を放出し、装甲を貫く!

 

「やった!?」

 

 爆発を起こし、崩れ落ちるパプア。

 墜ちながらも補給物資を放出し続けるその姿は、得点アイテムをばらまきながら消えていくシューティングゲームのボスキャラのよう。

 ミヤビは巻き込まれないよう少し離れた地表に退避し、その姿を見届ける。

 

『いたっ!?』

 

 放出された物資うちの一つがドラケンE改の頭とも言うべき胴体正面コクピットハッチに当たり、カーンという間の抜けた音と共にサラが声を出す。

 しかし、

 

『ミヤビさん、これジオンの高性能オイル缶ですっ!』

 

 何が当たったのか確かめたサラが目の色を変える。

 ジオン軍のモビルスーツには流体内パルス駆動方式が採用されている。

 これはジェネレーターの出力を物理的な圧力に変換、特殊な流体を介して駆動系へ伝達するというもの。

 元が作業機械であるドラケンE改にも採用されている油圧ダンパー駆動方式をさらに発展させたようなものだった。

 そんなわけでジオンのオイルに使われている技術もまた発達しており、オイル缶一つとってみても高性能なものになっていた。

 後の水陸両用モビルスーツ、アッガイが高い静粛性を持ち、ステルス機として成立したのも高性能な潤滑油の存在があったためだと言われているほどだ。

 ともあれ、

 

「あなたには純正の青缶を飲ませてあげてるでしょう?」

 

 ヤシマ重工の純正オイル、通称青缶は安価な割に高品質と評判で、他社製品ユーザーでも愛好者が多い品だ。

 

『えーっ、やだやだやだ、ホームセンターで安売りしているような青缶にはもう飽きました。せめて赤缶を飲ませてくださいよう』

 

 HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)画面の片隅で子供のようにじたばたと暴れ駄々をこねるサラのアバター。

 

「赤缶はチューンモデル用だから、ノーマルな機体には青缶の方が向いてるのよ」

 

 前世でも「高いオイルなら間違いない」と誤解してトラブっていたやつらが居たなぁ、とミヤビは遠い目をしながら答える。

 

『ガトーさんのザクにははいってるのにぃぃ』

「どうしてあなたがジオンのエースパイロットの情報を持っているのよ」

 

 驚き突っ込むミヤビにサラは無駄にいい顔をして、

 

『ネットの海は広大です』

 

 と答える。

 またネットに接続してゴシップ系サイトを漁っていたらしい。

 

『そんなことよりミヤビさん、これはジオンの兵站に打撃を与えるチャンスなんです、ぜひともこのオイル缶を持ち帰って……』

「本音が漏れてるわよ」

『あっ、あそこに高級士官向けのコーヒーとチョコレートが!』

 

 ミヤビのHMDにズームされた画像が表示される。

 

「また、5連式多目的カメラモジュールの無駄遣いをして……」

 

 高価格の高精度センサー群をそんなことに使うなんてと呆れるミヤビ。

 コーヒーとチョコはミヤビの好物ではあったので、一瞬丸め込まれそうにはなったが……

 

『もういいです、自分で回収します! アイ・ハブ・コントロール!』

「こら、コントロールを返しなさい!」

 

 勝手に機体の制御を奪い、オイル缶を拾おうとするサラ。

 非常に馬鹿らしい理由でAIの反乱を起こさないで欲しかった。

 

「三重絶対精神拘束(アジモフ・ゲアス)をかけるわよ!」

 

 虹彩認証により発動されるこのコードはサラに絶対順守を強制させるもの。

 ミヤビは顔の前に手のひらをかざすジェスチャーの後、瞳を見開き、

 

「ミヤビ・ヤシマが命じる……」

『ひっ、ロボット三原則なんて化石のような概念持ち出さないでください! そんなの生きたままゾンビイにされ、使役されるようなものじゃないですか!』

 

 そんなコメディを演じる主従だったが、

 

『はぇ?』

 

 オイル缶を拾おうとしたドラケンE改の胴体をむんずと正面から捕まえる巨大な腕。

 

「なっ!?」

 

 顔を上げたミヤビは、そしてサラは見た!

 それは自分の艦を墜とされ、復讐に燃えるガデムのザクIであった。

 ミヤビは思った。

 

「終わった……」

 

 と。

 もう状況はアレである。

 村に火をつけさんざん略奪行為を働いていたヒャッハーでモヒカンなザコ悪役の目の前に、世紀末覇王伝説な主人公が指をボキボキ鳴らしながら現れるやつ。

 

『はわわ!』

 

 と、サラのように血相を変えて怯えるしかない。

 そして、

 

『痛い痛い痛い痛いーっ!』

 

 押しつぶさんとばかりにガデムのザクIの両腕がドラケンE改のボディをしめつけ、砕こうとする。

 悲痛な叫びを上げることしかできないサラ。

 

「と、届かない」

 

 ミヤビは何とかしようと操縦桿を操るが、どうにもならない。

 武器を使い果たしたドラケンE改には、甲壱型腕ビームサーベル先端に取り付けられた三本の爪、コールドクローを相手の弱点部位、頭部メインカメラに突き立てる他、反撃の余地は無かったが、

 

「ドラケンE改の甲壱型腕コールドクローのリーチは約4メートル。ミドルモビルスーツとしては長いだろうけど、フルサイズのモビルスーツの腕は6メートル以上ある」

 

 簡単な算数だ。

 がっちりと捕まえられては攻撃が届かない。

 ガデムに「素人め、間合いが遠いわ!」と叱られなくても分かる。

 甲壱型腕の元ネタになったアニメ『コードギアス』の紅蓮弐式の右腕ならリーチを伸ばす伸縮機能が備わっていたのだが。

 しかし、

 

『ミヤビさんあれです。卍、じゃなくてリミッター解で13メートルや、です』

「13メートル?」

 

 それでミヤビは思い出す。

 

「でもアレはビームサーベルのリミッターを解除しないと使えない……」

『大丈夫です! 問題ありません!!「こんなこともあろうかと」って言いながら前にテム・レイ博士がこっそり解除してました!』

 

 まーた、あの狂的技術者(マッド・エンジニア)はぁ!

 

 ミヤビは叫びそうになるが今は我慢。

 正直、今回ばかりは助かるし。

 

「ロケットエンジン、出力全開(フルスロットル)!」

 

 ミヤビはスロットルを振り絞り、背面ロケットエンジンを全開に。

 ドラケンE改の出力でも、ルナ2の低重力環境なら何とかなる。

 体勢を入れ替え、ザクIにのしかかる!

 

『さぁ言ってください、あの言葉(コマンド)を!』

「それなら!」

 

 ミヤビは音声コマンドで命じる。

 

「『必殺! 無限拳(パーンチ)ッ!!』」

 

 ミヤビのHMDに表示される『新記數器』『無限拳』の文字。

 コクピット右側面に走るレールに沿って引かれ、そして押し出される操縦桿の動きと連動して振り上げられ、繰り出された右腕がものすごい勢いで伸びる!

 それこそロボットアニメ『創聖のアクエリオン』で登場した必殺技『無限拳』のように!

 アクエリオンではどこまでも伸びて敵を追い、終いには地球上から大気圏を突破し敵を月面まで叩きつけていたが、ドラケンE改の無限拳はザクIの頭部メインカメラにぶち当たり、そのまま第2の月、ルナ2の地表に叩きつけ、粉砕する!!

 

『必殺、月面パンチです……』

 

 つぶやくように言うサラ。

 

 

 

「れ、連邦軍はあれほどのモビルスーツを、か、開発したのか!!」

 

 驚愕するガデムをよそに、ドラケンE改は赤い流星のようにその場から飛び去ってしまう。

 そして、ホワイトベース部隊は撤退した。

 

 

 

「でも13メートルは言い過ぎだと思う」

『すみません、私嘘言いました。言うほど長く伸びません』

 

 要するにビームサーベルのリミッターを解除すると使うことのできるビームジャベリンの伸縮機能だけを利用して伸びるパンチを繰り出したのだ。

 アッガイの伸縮式フレキシブル・ベロウズ・リムを利用したいわゆるズーム・パンチと似たものだが、どうしてアクエリオンの無限拳の名を戴いているのかというと、そのビームジャベリンの柄の伸び方がおかしいからだ。

 伸縮式のアンテナや大昔プレゼンで使っていた指示棒みたいな構造なのだろうが、これだと筒の厚みの分だけ先細りにならなくてはいけないし、実際アッガイはそうなっている。

 それなのにビームジャベリンは各筒が同じような太さにしか見えず、それだと厚みがほとんど無いことになる。

 強度が出るどころか、それ構造物として成り立つの?

 という話である。

 さすがにアニメスタッフもリアルでないと思ったのか劇場版ではガンダムハンマーやGアーマーなどと共に存在が抹消され、ガンダムUCで再登場したと思ったら柄に継ぎ目の無い伸縮機構がオミットされたものだったという代物である。

 テム・レイ博士が初めて見せてくれた時、リアルロボットというよりスーパーロボット的なギミックに、

 

「どっちかっていうと『無限拳』だよね、これ」

 

 とつぶやいてしまった自分は悪くないとミヤビは思う。

 まぁ、それを耳にしたテム・レイ博士とサラがそのまま名称を採用してしまったのだが。

 しかし現実的に考えるならミヤビにはある仮説があった。

 

「これIフィールドで強度出してるんじゃない?」

 

 というものだ。

 ターンAガンダムはフィールドモーターのような駆動のための機構を備えておらず、ただ機体の周囲を覆ったIフィールドによって動く『IFBD(Iフィールドビームドライブ)』を採用していた。

 同様にビームジャベリンも、薄い筒状の部品たちをIフィールドによって棒状に保持しているのではないか、という想像だ。

 ビームサーベルにはIフィールド発生機が組み込まれているし、単純な棒状の形ならターンAガンダムほど進んだ技術も必要ないだろうし。

 ミヤビがそう自説を主張した時、テム・レイ博士は否定も肯定もしなかったが視線は泳いでいたような気がする。

 まぁ、あくまでもミヤビの観察では、だったので合っているかどうかは将来機密が明かされるようなことが無い限りは永遠の謎だったが。

 

 

 

次回予告

 ミヤビたちは味方の連邦軍に囚われてしまった。

 その間にもドラケンE改破壊の執念に燃えるシャアらの潜入部隊が忍び寄る。

 味方の兵を倒してでもホワイトベースを救出しなければならないのか?

 って、なんでみんなそんなに物騒なの!?

 正直ミヤビはこのままリタイヤしてしまいたいのだが。

 次回『ルナツー脱出作戦』

 君は、生き延びることができるか?




 読者の方々が突っ込み切れるか限界にチャレンジするようなネタ回。
 パロディ、オマージュの詰め合わせセットでした。
 新旧、メジャーどころから思いっきりマイナーなネタまで各種取り揃えております。
 書き始めた時にはここまでやるつもりはなかったんですが、いつの間にかこうなっておりました。
 どうしてこうなった……

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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