ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第29話 ジャブローに散撒(ばらま)く! Cパート

『モビルスーツ降下部隊の第一波、突入します。シャア大佐の部隊も突入を開始してください』

「了解した、少佐」

 

 シャアはマッドアングラーにて報告を聞くと、赤いアッガイを発進、水中に身を躍らせる。

 

「フフフフ。リー・ホァン、ジッタル、行くぞ。離れるなよ」

 

 

 

「ガウの編隊、モビルスーツを降下させ始めました!」

「迎撃!」

「駄目です、地上からは定時爆撃の煙が邪魔して狙うのは困難です!」

「ならばフライマンタ隊に墜とさせろ、ガウはモビルスーツ投下時には機首のハッチを開ける。時速100キロ以下でなければ飛べないやつらはいい的……」

「フライマンタ隊より報告!」

 

 地上からの管制ができず哨戒機であるディッシュを上げ、高空からその優れた通信機能を使ってジャブローの他の地域とレーザー回線を確保。

 そうしてようやく通信がつながるが、

 

「ガウはスピードを落としていません」

「何!?」

「前部ハッチではなく、後部デッキより次々にモビルスーツをパラシュート投下しています」

 

 これはガルマが検討していた手段が実用化したのだ。

 

 ガウの後部デッキはモビルスーツを降ろすには高さが足りないが、そこは床面にローラーを並べてパラシュート装備したモビルスーツをあおむけに寝かせる。

 そして、引き出し用のパラシュートを付けたけん引ワイヤーを機外に放る。

 ワイヤーの先で開いたパラシュートに引っ張られ、モビルスーツは横たわったままローラーの上を運ばれ機外へ。

 空中にて降下用のパラシュートが開き、それに吊り下げられることで強制的に降下姿勢を安定。

 状況に応じてパラシュートを切り離しランディング。

 

 つまりアニメ『機動警察パトレイバー the Movie』にて航空自衛隊のC-4輸送機から空挺降下した99式空挺レイバー、通称ヘルダイバーと類似の方式だ。

 これならガウは正面のモビルスーツハッチを開くことなく、迅速なモビルスーツの投下が可能。

 モビルスーツ側も空中での機体制御、およびランディングに自信が無ければ地表近くまでパラシュートを使い続ければいいし、対空砲火やフライマンタからの攻撃を避けることを優先するなら機体姿勢の安定後、速やかにパラシュートをパージすればいい。

 

 なお、ミヤビの前世では現実に照らし合わせ、ジャングルの木々を刈り取らないとモビルスーツといえども空挺降下できないだろう、という意見もあったが。

 実際にはジャブローでは61式戦車どころかビッグトレーまで配備されていたように林道が整備されており。

 さらに連邦軍に何の損害も与えていない、とされた従来の定時爆撃により植物が吹き飛ばされた空間がところどころにランディングスポットを作っていた。

 そう、定時爆撃にはモビルスーツの降下を容易にする下地作りという側面もあったのだ。

 単純にナパーム等で森林を焼いたりしなかったのは、この意図を隠すためでもあり(あからさまにやると、そこが地雷原にされたり、あらかじめ砲兵による着弾スポットに設定されてしまうこともあるし)、ある程度森が残っていた方が降下後にモビルスーツが身を隠すのに都合が良いということでもある。

 

 そして先行の、定時爆撃に見せかけたガウが放った発煙弾、および爆撃の煙の影響で地表からの対空砲火は阻害され、頼みのフライマンタ隊は護衛のドップに阻まれる。

 挙句の果て、ディッシュも狙い撃ちにされて墜とされ再び通信が途絶。

 ディッシュのような哨戒機は敵から優先して攻撃されやすいのだ。

 

 ミヤビの知る史実では大きな損害を出した空挺降下だったが、この作戦によりほぼ無傷でジオンのモビルスーツ隊は地上に降り立っていた。

 

 

 

「ガルマもやる」

 

 水中を航行しながらシャアはつぶやく。

 史実ではスピードを優先し、ズゴックで部下たちとガウからの空中降下を行っていたが。

 今回は……

 

「メガ粒子砲は撃てるようになりましたけど、まだ不安が残りますから私が見ないと」

 

 と、コ・パイロット席に同乗しているアルレットのために安全策を取ったのだ。

 

「先発隊と接触するのが第一だな」

 

 シャアは先行したボラスキニフの隊との合流を目指す。

 

 

 

「視界不良で確認は取れませんが、おおよそ40機以上のモビルスーツが降下したようです」

「かなりの大部隊だな」

 

 報告を聞いたゴップはうなずく。

 この報告は降下したものであって、この他にマッドアングラー隊の水陸両用モビルスーツ部隊が別に潜入している。

 

「とはいっても、ジャブロー全体を攻撃するのには少なすぎる」

 

 同席していた将官の言葉を聞きながら、戦術マップを確認。

 

「狙いは宇宙船ドックのあるAブロックのみ」

 

 無事降下できたモビルスーツの数に変動はあれど、この辺の会話内容は史実どおり。

 そう、ミヤビの前世ではたったこれだけのモビルスーツで本気でジャブローを落とす気があったのか正気を疑うレベルの投入戦力という意見もあったが、ジオン軍とてこの戦力でジャブロー全体を攻略しようとなどしていないし、連邦軍もそれは承知しているということだ。

 そして、

 

「ホワイトベース、つけられましたな」

 

 ということでもある。

 

「ああ。永遠に厄介者かな、ホワイトベースは」

 

 つぶやくゴップ。

 ただでさえイレギュラー過ぎる存在であるのに、ヤシマの二人の令嬢まで乗り込んでいる。

 利害関係者の調整をするのにどれだけ手間取ったことか。

 いっそのこと降ろして保護してしまいたいのだが、そうもいかないのが難だった。

 

 

 

「作戦本部からの情報がまるっきり入りません」

 

 マーカーの報告に苛立つブライト。

 

「すべてのテレビを船外監視用に切り替えろ、これでは戦いようがない。あとで作戦本部にどなりこんでやる」

 

 まぁ作戦本部からすると、頼むから大人しくしていてくれ、ということなのだが、軍内の政治など分からないブライトには無理。

 これだから『機動戦士Zガンダム』の時代にはシャトルの船長なんて閑職に回されてしまうのだ。

 

 

 

 ジャブローにばら撒かれたジオンのモビルスーツ部隊はグフを主体に少数のドム、ザクI、そしてマッドアングラー隊にも配備された前後両面ボディに超短足の新型機が5機。

 火力による支援が売りの新型機による砲撃、そしてグフ、ドム、ザクIが敵火点に対し手持ちのバズーカを撃ちまくり沈黙させる。

 密林が天然の掩体となり砲爆撃の効果を削減してしまうとはいえ、水平射撃に切り替えてくる対空砲や戦車など、モビルスーツに比べ小型の的に対してはやはり効力範囲の広い榴弾で大まかに狙って吹き飛ばすのが一番だからだ。

 そうしてバズーカを撃ち尽くすと、腰にマウントされていたマシンガンを引き抜く。

 コンパクトにまとめ上げられたそれはザクマシンガンではなく、ガルマが占領下にあるヤシマ重工の北米工場で造らせたYHI YF-MG100、100ミリマシンガンだった。

 

 ジオンのモビルスーツは開発、試作段階でヤシマ重工製100ミリマシンガンの供給を受けた過去があるため、その地球連邦軍向け量産モデルのYHI YF-MG100もまた射撃管制装置(FCS)ドライバーは普通に認識し、そのまま使える。

 

 そして敵と同じ武器を使っていれば発見されても味方と誤認される可能性がある。

 また撃ち合いになっても同じ発砲音なので敵味方の判断が難しくなり少数で動く襲撃者側に有利に働く。

 戦場で鹵獲した敵の弾薬がそのまま使えるということもあるし。

 

 実際、このように敵側の武器を使うのは特殊部隊や傭兵、民間軍事会社では良くある話。

 ベトナム戦争時、アメリカ軍の特殊部隊、SOGでは東側の武器であるAK47、RPD軽機関銃、これらの中国におけるライセンス生産品を使って偵察任務についていた。

 

 こういった事例を踏まえ、現場の兵の意見を聞きながらガルマが用意させた武装なのだった。

 そして、

 

「ジャングル戦じゃあ取り回しの良いこいつの方が木や蔦に引っかかりにくくて使いやすいな」

 

 実際、使ってみたパイロットからはそんな呟きが漏れる。

 

 小型で取り回しが良い上に陸戦型ザクIIの胴体を貫通する威力があるYHI YF-MG100はジャングル戦に、そしてバックアップとして携帯するのに便利なのだ。

 西暦の時代、ベトナム戦争などのジャングル戦でも好まれたのはカービンタイプの短縮されたライフルだったのだし。

 

 またザクマシンガンはアメリカ軍がベトナム戦で投入したアサルトライフルM16の銃口と同じく、フラッシュハイダーのスリットが開口しているタイプで、ここに蔦や枝が挟まりやすい。

 フラッシュハイダーが付いていないYHI YF-MG100はその点でも有利だ。

 

 この辺はアメリカ軍でも対策としてM16A1でフラッシュハイダーを先端が開いていないバードケージ型に改良したり。

 また戦闘服、ジャングルファティーグもジャングルでの作戦行動時、藪にボタンが引っかかって行動を阻害したり、ボタンが取れたりしたため後期型ではすべて隠しボタン式に改められていたし、ジャングル戦では重要な要素なのだ。

 

 モビルスーツで言うならザクでは脚部に張り出し歩行時に植物に引っかかりがちだった動力パイプが、陸戦専用のグフでは内装式に改められているのもこれが理由の一つ。

 そして史実ではザクが多数を占めていた降下部隊がグフ主体になっているのもガルマがこの辺りを配慮した結果だった。

 無論、マ・クベの部隊が少ない消耗でオデッサを撤退していること。

 例の新型が上空からばら撒けるほど数があったため、編成に余裕があるということもあったが。

 

 グフ、ドム、そして新型機でまかないきれないところは動力パイプが内装式のザクIを少数、補助戦力、バックアップとして投入している。

『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』にて小隊長であるトップが部下の乗っているザクIIよりも旧型のザクIを愛機としていたが、単純な愛着だけではなく植物等の障害物が多い地球上では張り出した動力パイプが意外と問題になる、それを嫌っての選択であったのかも知れなかった。

 

 

 

『まいったな。迂闊に外に出てはジャブローの入り口を敵に教えることになるし、このままでは』

 

 ガンタンクで待機するカイの耳に、アムロからのぼやきが届く。

 セイラもまた、

 

「敵の動きが一切わからないというのも戦いようがないわね」

 

 と同意。

 カイにしてみても、

 

「こっちから出て行って、目の前に敵がいたんじゃあわねえしな」

 

 ということ。

 そうしている間に戦闘の振動が、ここまで伝わってくる。

 

「来るな、ジオンめ」

 

 カイは汗を額ににじませながらつぶやく。

 

 

 

「ん? そこか」

 

 水中に流れる一筋の赤い染料。

 

「蛍光染料トレーサーですね」

 

 コ・パイロット席のアルレットが言うとおり。

 わずかな量でも機能するもので、ミヤビの前世においても水の移動、海流や潮流、水流の調査・研究に利用されたり、アメリカ海軍では海難事故時に所在を知らせるマーカーとして用いられていた。

 映画『トップガン』で主人公たちがトラブルにより座席射出で海に着水したシーン。

 蛍光グリーンに海が染まっていたが、そういう風にして救助者に位置を知らせるのだ。

 

 シャアは岩陰に潜む先発隊と接触。

 

「ボラスキニフ、首尾はどうなのだ?」

『は、爆薬を仕掛けたところであります。突入しますか?』

「いや、正面からか?」

『はっ』

「ほかに入り口は?」

『500メートル上流にもう一つ小さいのがあります』

「うん、両面でいこう。ここはアッガイ四機でやらせる。私はボラスキニフたちの新型と上流から進入する。ついて来い」

 

 一見、合理的な作戦に聞こえるが、要は正面のアッガイを囮にして自分たちは裏口から潜入すると言っているのだ。

 それを感じさせないのは、さすが赤い彗星のカリスマか。

 

「それにしても……」

 

 移動しながらシャアはつぶやく。

 

「大佐?」

 

 どうかしたのかと問うアルレットに、

 

「いや、アッガイの爪でどうやって爆薬を仕掛けたのかと思ってな」

「ああ、先発隊の二機のアッガイは腕部武装ユニットをバイス・クロウアームズに交換していますから」

「バイス・クロウアームズ?」

「ええ、そんな大したものでは無く、アッガイの六本の爪のうち、外側の三本と内側の一本だけを残して、他の二本は撤去、ロケット発射管と交換してあるのです」

「うん?」

「こうすると、人差し指、中指、薬指に相当する外側の三本、親指に相当する内側の一本を指のように使っての作業が可能になるのです」

 

 要するにミヤビの前世の記憶にあるズゴックの発展版、ズゴックEのバイス・クローを既存の器材の組み合わせで再現したようなもので、簡易的ではあるがマニピュレーターのように使用することが可能となっているのだ。

 

 

 

 爆破されるジャブロー入り口。

 

「来た」

 

 ロケット弾が撃ち込まれ、その爆発を目くらましにして敵のモビルスーツが乗り込んでくる。

 

「ホワイトベースには近づけさせるものですか!」

「なめるな!」

 

 セイラとカイの操るガンタンクが、その火力にものを言わせて牽制。

 さらにガンキャノン、ドラケンE改可翔式の射撃が敵を釘付けにした。

 

 

 

「量産型ガンキャノンも集まって来たし、ここは何とかなるかしら」

 

 ほっと息をつくミヤビだったが、すぐに、

 

『アムロ、ミヤビさん、別の入り口が突破されました。そこはガンタンクとジャブローの部隊に任せて指定のポイントに回ってください』

 

 ホワイトベースのフラウからの通信。

 足の遅いガンタンクをここの防衛戦力として残し、即応できるアムロのガンキャノンとミヤビのドラケンE改可翔式を回す手だ。

 しかし、

 

(へっ? 別口ってもしかしてシャアとゾック?)

 

 ということでもある。

 

『分かりました、行きましょうミヤビさん!』

 

 そうアムロに促され、仕方なしに機首を返すミヤビ。

 

(それでもアムロなら…… アムロならきっと何とかしてくれる……!!)

 

 と、他力本願な希望を胸に抱きながら……

 

 

 

「ジオンの侵入を許したのか!?」

「ウッディ大尉、どうします!?」

 

 狼狽する部下にウッディは、

 

「大丈夫だ! こんなコトもあろうかと…… 私は新しいモビルスーツを用意しておいた!!」

 

 と言い放つ。

 ウッディ配下の作業員たちがホワイトベースの修理のために乗り込んでいる作業用重機は、

 

「ドラケンE改の簡易量産型モビルスーツ、SM(サム)!!」

 

 ……細部が簡略化されたドラケンE改。

 目立ったところではコクピットのスリット型の覗き穴が(凸)な形をしたグラスルーフに変更され、その代わりに機体各部に仕込まれていたカメラおよびHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を使った表示システムはオミット、直接視認による操縦に変更。

 5連式多目的カメラモジュールおよび機体左右の丸目ライトは省略され、頭頂部に設置した角型ライト1灯に置き換え。

 

 要するにヤシマ純正ではなくジャブローで造られたライセンス生産品である。

 

「シンプルな機能美にあふれ…… なおかつドラケンE改よりも低コスト!!」

 

 ゴップ大将にも、

 

「さすがだぞウッディ君!」

 

 と手を叩いて褒められた逸品だ。

 

 まぁ、低コストな分だけ造りがひどくて兵には不評。

 細かいところが手を抜かれているし油(オイル)もれも多いしメカノイズもすごいという代物だった。

 

 第二次世界大戦時のアメリカ軍M4中戦車シャーマンのように生産を優先させたことで各工場で仕様違いのものが並行生産されてしまうのは戦時中には珍しくないことではあるが……

 さすがにこれをうちの製品と一緒にするなとヤシマ重工からクレームが入ったので、簡易型ミドルモビルスーツ(Simple Middle mobile suit)、通称SM(サム)と名付けられているのだ。

 

「作業員も防戦にあたらせろ」

「は」

「私が担当したこのホワイトベースを、目の前で沈めさせることはできん」

 

 そう言って自らもミサイル・ホバークラフト、ファンファンで出撃する。




 降下作戦の開始。
 ガウの後部デッキを使った降下方法等、皆様から頂いたご意見、ご提案を反映して書き上げたものです。
 このようにお寄せいただいたご感想は物語に役立たせてもらっていますので、今後も応援頂ければと思います。
 そしてSM(サム)の登場……

 次回はいよいよシャアによる量産機の腹ブチ抜きシーン。
 そしてようやく前後両面のボディに短足な新型機の正体が明かされます。
 ご期待ください。
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