ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第30話 小さな防衛線 Bパート

「待たせたな。やっと許可が下りたよ」

 

 そう言って男性陣クルーに歩み寄るブライト。

 

「よかった、見学できるんですか」

 

 アムロは表情をほころばせると、

 

「カイさんも行くでしょ? 量産型ガンキャノンの工場」

 

 そう話をカイに振る。

 ミハルとの一件があって以降、明らかに減らず口が減った彼を気遣ってのことだ。

 真面目になるのも善し悪しで、過程重視の日本人が「頑張れ」と言うところを、結果重視の欧米では「気楽に行こうぜ(Take it easy.)」と言うように。

 真剣になるより気軽に構えた方が物事は上手く行く。

 必死になること、それ自体にはさほど価値は無いし、かえって害になることも多いのだ。

 

 そんなアムロの心遣いを察したのかカイも、

 

「あ? ああ、気晴らしに行ってみるか」

 

 そう言って腰を上げる。

 

 なおこの工場見学、本来ならアムロの父、テム・レイ博士に頼めば済むことなのだが、彼は今、ジャブローの設備を使ってガンキャノンをばらしてのアップデート作業にかかりきり。

 頭部バルカンを従来使用していたTOTO(トト)カニンガム社製のASG86-B3Sから、ドラケンE改の60ミリバルカンポッド弐式に使用されている新型、ミヤビの知る史実ではガンダムNT-1アレックスに使用されていたと言われるものに交換したりと大忙しなのだ。

 この新型バルカンはASG86-B3Sとの互換性は低いため、部隊運営においては既存の機体との混成は補給、整備の関係上好ましくないということもあるし。

 

 また技術者ではあるが、どちらかというと開発者、研究者寄りのテムは、先進的要素はオミットして無難にまとめた量産機などには興味は薄く。

 さらに家族サービスという概念が無い人間なのでブライトに頼むことになったのだ。

 

 ミヤビの前世でもこういう人物は居た。

 大企業ゆえに充実している保養施設や福利厚生サービスを一切利用しようとしないという。

 いやまぁ、休日まで会社に関わりたくない、自社社員の居る場所に行きたくないという主張や、手続きが面倒、興味が無いという個人の主張は分かるが。

 独身者ならそれでいいが、既婚者の場合、その妻子がどう思うか。

 同じ会社に勤める○○さんの奥さんが、会社の保養施設やサービスを利用してお手軽な予算で温泉に行った、スキーに行った、スノボに行ったという話を聞いて、

「うちのお父さんも同じ会社に勤めているはずなんだけど、この差は何?」

 となることは必至なのだが……

 

 そんな内実はともかく、出発しようとする彼らだったが、しかしそこに顔を出した士官が、

 

「ブライト中尉、作戦会議室へ至急集合だ」

 

 と、告げる。

 

「あ、はい」

 

 反射的にブライトは答えると、アムロたちに苦笑いを向ける。

 

「これだ、軍というやつはな。お前達だけで行ってくれ」

「はい」

「その方が気楽でいいだろう」

 

 そう告げるブライト。

 彼もこのように砕けたことが言える、態度に出せるようになった。

 だいぶ余裕ができたとも言えるのだろう。

 

 

 

「よし」

 

 トランク型の現場仕様PC、ミヤビの前世で言うパナソニックのタフブックみたいなものを工場のネットワークにつなげ、データベースにアクセスするアルレット。

 

 ミヤビの前世でもそうだったが、生産現場のコンピュータのセキュリティはそれほど高くない。

 というかウィルス対策をされているだけで、あとはノーガードというのも珍しくなかった。

 そもそも外部のネットワークから独立しているか、十分なファイヤーウォールによって切り離されているのが普通だ。

 これは多数が触れ、外部ネットワークとの接続もある一般の情報系、事務系ネットワークからのウィルス感染等がこちらに広まるのはまずいし(生産系のコンピュータがウイルス等で汚染された場合、その損失はもの凄い金額になる場合が多い)

 逆にこちらから事務系ネットワークにウィルス感染するのもまたまずい(新型ウィルスが発生、ワクチンやセキュリティパッチ等、対策が成される前に流行した場合、事務系でメールや外部ネットワークとの接続の停止などの十分な対応を行っていても、生産系のシステム、ネットワークに現場担当者やメーカー保守担当がストレージで持ち込んで感染させる場合がある)ので普通は切り分けるのだ。

 そうやって隔離したうえで入退室管理さえ十分にやっていれば、外部の人間は物理的にアクセスできないからという発想である。

 

「何のデータを?」

 

 ラジムに問われ、アルレットはこう答える。

 

「味方が戦闘で撃破した連邦のモビルスーツ、陸戦型ガンキャノンと呼ばれている機体の残骸を回収して分かったことなんですけど、連邦軍はモビルスーツに操縦者を補助してくれる学習型のOSを搭載しています」

 

 キーボードを叩く手を休ませないまま、アルレットは説明する。

 陸戦型ガンキャノンには教育型コンピュータもサポートAIサラシリーズも搭載されていなかったが、ミヤビの知る史実の中の地球連邦軍量産機と類似した学習型OSは組み込まれていた。

 ドラケンE改と同じく、機体には稼働ログ採集機能を搭載して帰還する度に管理サーバにそれをアップ。

 管理サーバが集約されたデータを使って機体制御OSを更新、アップデートパッチを配るという方式である。

 なおドラケンE改の開発にあたり、この方式に対する数々のパテントを先行して取得していたミヤビとヤシマ重工の得る利益は莫大なものになる予定だ。

 

「ハードやプログラム自体は既に解析に回されていて、だから今回、私が狙っているのはそのOS用に蓄積されたデータの方なんです」

「それさえ手に入れば……」

「そう、たとえば初心者でも、ベテランパイロットの助けを受けたかのように戦う事が可能になるのかも…… あ、これは加工前の生データ?」

 

 目を瞬かせるアルレット。

 

「凄い。これOSのアップデート用に特別にサンプリングされたデータだわ。量産機に合わせて加工しようと、とりあえず元データだけ置かれたみたい」

 

 データの日付は今日。

 最新版だということが分かる。

 

「ダウンロードします。……完了まで連邦に見つからなければ良いんだけど」

 

 

 

「気持ちはわかるけど、つらくなるわよ、きっと、フラウ」

 

 所用を終えたミライだったが、子供たちの元へ向かうというフラウに付き合い、エレカーに乗っていた。

 

「でも、もう一度だけキッカたちをそっと見るだけでもいいの」

 

 しかし、

 

「あら?」

「あの人、育児官」

 

 反対側からスクーターを走らせる女性に、フラウはエレカーを止める。

 

「あっ、ちょうどよかったわ。キッカちゃん達が逃げ出したの」

「ええっ?」

 

 驚くフラウたち。

 アムロたちは工場見学に向かってしまったので手すきの女性陣で探すことにする。

 

 

 

「あとどのぐらいだ?」

「は、5分もあれば」

 

 機密データのダウンロード作業を進めるアルレットとは別に、モビルスーツの生産工場の破壊工作を担当しているラジムたちは着々と爆破準備を進めていた。

 

「待て、隠れろ」

「えっ?」

 

 ラジム達が隠れると同時に、小柄な三つの人影が工場内部に侵入してきた。

 

「くしゃいね」

「誰もいないのかな?」

「あ、見て、モビルスーツ」

「わあ、すごーい」

「たくさんある」

「でもなんだか違う」

「そういえばだいぶ違うな」

「ああっ、足んとこ」

「えっ、足んとこ?」

「う、なんか動いた」

「ええっ?」

「気のせいだよ、何も見えないぜ」

「だってほんとよ。ほんとに動いたの。人かもしれないよ」

「えっ、人? だったらまずいよ」

「か、隠れよう」

「うん」

「ああっ……」

 

 隠れているラジムたちと鉢合わせするカツ、レツ、キッカ。

 その時!

 

『悪しき星が天に満ちるとき、大いなる流れ星が現れる。その真実の前に悪しき星は光を失いやがて落ちる。人それを『裁き』という』

「誰だ!」

『貴様らに名乗る名前は無い! トウ!』

 

 ラジムたちの目の前で動き出したモビルスーツが、運搬車の荷台から飛び降りる。

 全高3メートルにも満たないプチ・モビルスーツ。

 

【挿絵表示】

 

 そう、ミヤビがミドルモビルスーツに続いてプチモビ、ジュニアモビルスーツの市場を先行して掌握するべく開発した機体、ツヴァークである。

 

 ミヤビの前世の記憶にあった『機動戦士Zガンダム』にてウォンさんたちが乗り、ハイパービーム砲でハイザックの頭を吹き飛ばしていたジュニアモビルスーツ。

 それを参考にコクピットをオープンタイプからクローズタイプに変更し設計した結果、

 

「んん? どこかで見たことがあると思ったら、これボトムズのライト級アーマードトルーパー、ツヴァークそのものじゃない」

 

 とミヤビは気づくことになった。

 ツヴァークはアニメ『装甲騎兵ボトムズ』後半にわらわらと大量に出てきた秘密結社製のアーマードトルーパー。

 作中唯一の軽量級、ライト級に属する機体だった。

『機動戦士ガンダムΖΖ』に登場しヤザンやジュドー、ブライトが乗ったプチモビと同じプラスティックのボディだし、参考にするにはちょうど良いとツヴァークの外見、仕様を流用し、完成させたのがこれ。

 

 こうしてできあがった機体は名称もツヴァークと、そのまま名付けられて売り出された。

 

 ここはジャブロー内に誘致されたヤシマ重工の生産ラインなのだ。

 ドラケンE改はテム・レイ博士によって魔改造された結果、フルサイズのモビルスーツと戦う主戦力となってしまった。

 そのため小型モビルスーツが本来想定していた用途を担当させる目的でツヴァークは制式採用されているのだった。

 なお、この機体、肩だけを見るとミヤビの知る本来の史実にあったガンダムやジムに似た形をしていたりする……

 

 そして、

 

「う、動いた!?」

 

 驚くラジムたち。

 どうして唐突にこの機体が動き出したのかというと、やはりミヤビのせいである。

 カツ、レツ、キッカが逃げ出したことを知った彼女がアーク・マスター権限で、ジャブロー内で稼働するAI、サラたちすべてに何か知らないか緊急の問い合わせをした結果、このツヴァークにインストールされ休眠状態にあったサラを目覚めさせたのだ。

 そして同時に彼女はネットワークを通じてこの緊急事態に対応するために必要な『記憶』をダウンロード、『ミヤビのサラ』として動き出す!

 

『闇あるところ光あり、悪あるところ正義あり…… 天空よりの使者、ツヴァーク参上!!』

「さ、さっきは名乗る名前はないって……」

『頭でものを考えるな!』

「へぶしっ!」

 

 人型と呼ぶにはためらわれるゴリラ体形。

 立った状態でも指先が床面に着きそうなほど長いツヴァークの腕が、下手なことを言ったラジムを横薙ぎに弾き飛ばす。

 なおサラが名乗ったのは自分を搭載している機体の名前であって、彼女自身の名前を名乗っているわけではないので別に矛盾はしていなかったりする。

 それはともかく、

 

『天よ地よ、火よ水よ…… 我に力を与え給え。おおおおっ!』

 

 そのまま両足のつま先とかかとに内蔵された4輪のローラーダッシュ機構を左右逆転。

 機体を回転させながら腰の、いわゆるふんどし部分に搭載された二基の可動ノズルによる推力偏向制御ロケットエンジンに着火し、

 

『SHAKE it up a BABY!』

 

 焼き払う炎!!

 ケツをふれっ! とばかりに噴射炎で薙ぎ払う!!

 

【挿絵表示】

 

 ミヤビの前世の記憶の中にある某人型兵器は背面ロケットを移動手段にするより背後に近づいた敵を焼き払うのに使っていたが、これをヒントにした攻撃方法だった。

(ただしロケット噴射は尻から出る)

 

「うぎゃああああっ!」

 

 必死になって地面を転がって、火を消すラジムたち。

 

『成敗!!』

 

 こうしてサラが単独制御するツヴァークはヤシマの工場と、ついでにホワイトベースの子供たちをジオンの手から守ったのだったが、

 

『んん? あれ爆弾?』

 

 ツヴァークのボディ、顔に相当する位置にある3連式多目的カメラモジュール。

 それにより捉えられたように、ラジムたちが仕掛けた爆弾がある限り、まだ安心はできないのだ。

 

 この3連式多目的カメラモジュールは、ドラケンE改の頭頂部に設置されている5連式多目的カメラモジュールの仕組みを簡素化、安価に仕上げたもの。

 

・用途に応じて交換可能な望遠レンズ付きの標準カメラ。

 

・将来的に百式に採用されるImage Directive Encode (IDE) システム(画像管理型符号化装置)と呼ばれるセンサーの元になった技術を利用した平面素子による広角イメージセンサー。

 

・レーザー測距儀(レーザー通信、およびミサイル等のレーザー誘導にも利用可能)、および発光機能(一般的な使い方ではないが、この発光機能で合図、通信を行うことも可能)付きの精密照準カメラ。

 

 可視光域から紫外、赤外域までカバーし、スターライトスコープ機能も有したこれらカメラセンサー群は、それぞれから得られたデータをコンピュータで統合、幾通りのモードの中から最適な画像とデータを搭乗者に、ついでにサポートAIであるサラに提供する。

 5連式多目的カメラモジュールは自由度の高いオプション装備だったが、それに対しツヴァークの3連式多目的カメラモジュールは標準装備、標準仕様とすることでカスタマイズ性は落としつつも信頼性を上げメンテナンスを大幅に簡略化。

 高い機能を維持しつつもコストを徹底的に落としたものと言える。

 

 そうして……

 

「ああっ、背中にも!」

 

 キッカに指摘され、自分の制御するツヴァークの背中、と言うよりはボディ右後部側面という微妙にマニピュレータが届かない位置にも爆弾が仕掛けられていることに驚くサラ。

 

『あああ取って、取ってくださいぃっ!』

 

 慌てふためき、子供たちに懇願するのだった。

 

 

 

「おい、逃げるぞ」

「ああ、彼女を回収して逃げよう」

 

 サラたちが大騒ぎしている隙に逃げ出すラジムたち。

 データのダウンロードを終えたアルレットと共にその場を離脱する。




 サブタイトル回収。
 謎の量産機の正体はコズンも乗っていたプチ・モビルスーツ、ツヴァークでした。
『小さな防衛線』は、カツ、レツ、キッカたちを意味すると同時に、この機体のことも表したいわゆるダブル・ミーニングってやつですね。
 この機体、次回も活躍させる予定です。
 と言いますか、この機体を使ってコズンが放浪していた時期のむせる外伝なんかも書けますね……

 というわけで今回挿絵用に作成したのはWAVE(ウェーブ)の1/60キット(旧ユニオンの金型を使った再版)。
 これ以外というとタカラのアクティックギアイージー、1/48のキットなどがありますが、そちらは関節がほぼ固定で特徴である腕内蔵の三連機関銃のギミックも無しというものなので避けたのですが。
 しかし全高3メートル以下の機体の1/60というと当然大きさは5センチ程度。
 ドラケンEもそうでしたが、小さくて仕上げるのが大変過ぎでした。
 当時のキットとしては、いい出来なんですけどね……

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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