ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

135 / 190
第34話 宿命に巻き込まれた出会い Dパート

「来たな」

 

 コンスコンもホワイトベース側の出港をキャッチ。

 

「しかし、サイド6の民間機が木馬にぴたりとついています」

「フン、物好きがいるものだ」

 

 一応、史実どおりカムランの船も同行している。

 

「木馬は進路を変えて反対方向から脱出するようです」

「リック・ドムを発進させい、領空侵犯も構わん。どのみち戦闘は領空外だ。シャアごとき若造になめられてたまるかよ」

 

 リック・ドムを発艦させ、艦隊もまた木馬を追う。

 

 

 

「来たな」

 

 ホワイトベースに迫るリック・ドム。

 

『ブライト君、ジオンのモビルスーツだ』

「はい。カムランさんはここで結構です」

『いや、領空を出るまでは。いや、この船が飛べる限りはお供させてもらいます』

 

 自家用船で先行しホワイトベースの盾になる。

 意地を見せるカムラン。

 

「ハッチ開け。ガンキャノン、ドラケンE改可翔式、発進急げ。ガンキャノンL、コア・ブースター、そのまま」

 

 

 

「ミヤビ・ヤシマ、ドラケンE改可翔式、出ます!」

 

 左舷デッキから出たアムロのガンキャノンを追うように、ミヤビは右舷デッキより再び乗り込んだドラケンE改可翔式で出撃する。

 

【挿絵表示】

 

 今回スレッガーは主砲の方に回っているのだ。

 その代役である。

 同時に、

 

(こんな危ない所に居られるか! 私は出撃する!)

 

 と、推理小説でありがちな死亡フラグめいた考えもある。

 今回の戦い、史実と違うのはリック・ドムがビームバズーカを装備しているということ。

 ホワイトベース直近に居座られてサイド6領空を離脱した瞬間に攻撃されたりしたら目も当てられない。

 それゆえに怖くて艦内から逃げだしてきたのだが、

 

 

 

「装甲の厚いガンキャノンのアムロはともかく、ミヤビさん、あなたまでドラケンでホワイトベースを守る盾になることは……」

 

 と、ブライトたちはいつものように『自己犠牲が過ぎるミヤビ』に対し歯がゆい思いをしているのだが。

 そして、ブライトはミヤビの負担を減らすためにも、自らが考えた策をアムロに命じる。

 

「やるんだ、アムロ!」

『了解です!』

 

 

 

「なっ、なにぃ!?」

 

 驚愕するリック・ドムのパイロットたち。

 木馬から飛び立った黒いガンキャノンは、大きく振りかぶるとワイヤーの付いた鉄球を躊躇することなく放ってきたのだ。

 

「バカなっ、ここはまだサイド6の領海内だぞ!」

 

 慌てて全力回避するが、

 

「曲がった!?」

 

 ガンキャノンが持つワイヤードハンマーはスラスターを備え、ロケット噴射で加速するだけではなく軌道を制御し、コントロールすることができるのだ。

 

「うわぁぁぁっ!!」

 

 追いかけて来る鉄球を危ういところで何とか避ける。

 

 

 

「な、なに?! やつら攻撃を仕掛けて来ると言うのか? 火器は厳禁のはずだ……」

 

 リック・ドム隊からの報告に驚愕するコンスコン。

 

「んん、火器を使用していないだと? なにぃ? ハンマー? 何だそれは?」

 

 事実を知り歯噛みする。

 

「むぐぐ、ええい汚いやつらめ!! サイド6の領海で攻撃を仕掛けてくるとは!」

 

 

 

(いや、さすがにハンマーでも当てたら大問題だけれどね)

 

 アムロのガンキャノンをフォローしながらミヤビは考える。

 そう、いくら発砲、そして抜刀していなくとも、当てたらサイド6領空内で戦争行為をしたことになり国際問題(外交問題)になる。

 しかし逆に言えば、

 

(当たらなければどうということはない)

 

 つまり単なる(と言うと語弊があるが)ニアミスということである。

 

『このハンマーはアムロとパートナーである私の、二人の連携で操作されてるのよ! 戦術コンピュータ頼りでは予測できないわ!!』

 

 通信機越しにガンキャノンの機体制御を行うサラツーの声が聞こえてくるとおり。

 AIであるサラツーによるアシストを経て制御されるワイヤードハンマーは、後の準サイコミュ兵器『インコム』の質量兵器版と言っていい性質を持っている。

 さらにワイヤーを引いたり、手首のひねりでしごいたりして物理的な力を伝達することで、単純なロケット噴射制御では不可能なダイナミックな動きを可能としているのだ!

 

(そのコントロール性を利用して、回避するリック・ドムに、命中しないスレスレの威嚇攻撃を行い追い払う)

 

 それがブライトの考えた作戦だった。

 ワイヤー付き鉄球、ハンマーの扱いなど想定していない規則の穴を突いた詭計である。

 まぁ迫真に迫りすぎていて、思わずリック・ドムが背のヒート・サーベルに手をかけていたりする。

 抜かれたら、やけくそになって反撃されたらヤバいのだが、サラツーはイケイケだ。

 

『そんな貧相な棒で、アムロの大事な鉄球(たま)に勝てるとでも!?』

 

「っ!?」

 

 思わず吹き出しそうになるミヤビだった。

 

 

 

『反撃、もしくは即時撤退の許可を! このままでは一方的に攻撃を受け、全滅しかねませんっ!! 助けてっ、助けてくださいコンスコン少将ーっ!!』

 

 コンスコンの元にも、リック・ドム隊からの悲鳴じみた報告が届く。

 

「きゃ、きゃつらは悪魔か……! ま、また全滅。こちらが攻撃出来ぬ事を良いことに、全滅させる気か……」

 

 前回、12機のリック・ドムを3分ももたずに全滅させられたことがトラウマになり彼の判断力を奪っていた。

 ブラフだと気づけないのだ。

 

「いや、順調にサイド6の領海から出てきている…… これは予定通りと言って良いのではないか? うむ」

 

 自己逃避的にそうつぶやいて自らを落ち着かせようとするのだが……

 

 

 

「うははは、馬鹿どもめ! サイド6の領海内ゆえ攻撃を躊躇したな」

 

 戦いをモニターするテム・レイ博士は上機嫌。

 

『親父ちょっと、悪人みたいだね』

 

 と息子、アムロから通信機越しに呆れたように言われ、

 

「な、馬鹿もの! 私は戦争をやっているのだ」

 

 と叫ぶ。

 

「どうせ敵はろくに攻撃できん。ハンマーで鉄くずにしてやれ」

『いや、まだ領空内だから駄目だよ』

「よし、そろそろサイド6の領海を抜けるな。ホワイトベースの火器も全開に出来るぞ」

『聞いてやしない……』

 

 

 

「カムランさん」

『中尉』

 

 カムランの船に通信をつなぐブライト。

 

「下がってください、我々は戦闘に入らざるを得ないでしょう」

 

 そしてミライも告げる。

 

「カムラン、ありがとう、お気持ちは十分にいただくわ。でも、でも。ありがとうカムラン、帰ってください。お父様お母様によろしく」

『ミ、ミライ』

 

 そうしてカムランを乗せた船は去って行く。

 結局、ホワイトベースに婚約者であるミヤビが乗っていたことなど知らないまま……

 

 

 

「ホワイトベース、最大戦速。対空戦闘に入る」

「はい」

 

 加速し、サイド6の領空を抜けるホワイトベース。

 

「メガビーム砲、まだ敵艦を撃つなよ。ビームがサイド6に入る」

 

 ホワイトベースはコンスコン隊の展開していた宙域から反対側に進み、コンスコン隊は領空侵犯しつつそれを追うという形。

 ゆえにまだ攻撃はできないのだ。

 

 

 

 コンスコン側もホワイトベースが出てきたことを確認。

 

「よーし、ドム隊、よく我慢した。攻撃を開始しろ」

 

 

 

 そしてガンキャノンに対し包囲網を仕掛けるリック・ドムだったが、

 

「何があったんだ? 今日のアムロの鉄球(たま)は妙にさえている」

 

 そうブライトが言うとおり、アムロがワイヤードハンマーを振るうたびに、確実に一機、また一機と敵が墜ちていく。

 

 

 

「……嘘だ、まさかこんな、ああっ」

「まるでこ、こっちの動きを読んでるようだぜ」

「き、気まぐれだよ、まぐれだ」

 

 次々に僚機が撃墜され、恐慌状態に陥るリック・ドム隊。

 言っている言葉も支離滅裂だ。

 

 先ほどまでのサイド6領空内でのアムロのハンマー攻撃は、わざとぎりぎり外されていたものと気づかず、相手が本気で放った攻撃を自分たちはかわしてきたと思ってきた彼ら。

 それゆえに今度はかわしたつもりで直撃を食らう、という目に遭っているのだ。

 

 

 

「見える、動きが見える」

 

 無論、アムロがララァとシャアとの邂逅によりニュータイプに目覚めてきていると言う点もあるが。

 

「見える」

 

 

 

『何度も繰り返すようですがこれは本当の戦争です。サイド6のすぐ外で行われている戦いなのです。連邦のホワイトベースは一隻でジオンの三隻に対して果敢な攻撃を行っています』

 

 テレビ局の中継に見入るララァにシャアはコーヒーカップ片手に問う。

 

「フラナガンはやさしくしてくれたか?」

 

 アルレットの扱いを見てきつく牽制はしておいたのだが。

 

「はい」

 

 というララァの答えにシャアはうなずく。

 

「よく見ておくのだな。実戦というのはドラマのように格好のよいものではない」

 

 まぁ、実際モニターの向こう側ではワイヤー付き鉄球をぶん回して相手を粉砕するという残虐ファイトが行われているわけだが。

 

『この事実を目撃したならば、今後我が国のとるべき立場をおおいに考えていかなければならないところでしょう』

 

 レポーターの声が室内に響く。

 

 

 

『アムロさんの黒いガンキャノンが勝ちますね』

「フフフッ、サラちゃんは賢いわね」

 

 あまりのアムロの強さに呆れるミヤビはネタで言葉を返すが、

 

『いえ、見れば分かりますよ』

 

 とマジレスされてそれもそうかとため息をつく。

 そうしてコンスコンの艦隊は敗れ去ったのだった……

 

 

 

「くっ、これで勝ったと思うなよっ!」

 

 歯噛みするコンスコン。

 ハンマーで滅多打ちにされたチベ、そしてリック・ドム。

 衝撃で装甲は見る影もなくベッコベコにされ内部機構が破壊されていたが、ジェネレーターが緊急停止(スクラム)して動けなくなりはしたものの、爆発したりはせずに宇宙空間を漂っていた。

 

 後のモビルスーツ、リック・ディアスは敵機の無力化・鹵獲のため、装甲に張り付き爆発の衝撃で内部損傷を狙う粘着榴弾(HESH(High Explosive Squash Head)またはHEP(High Explosive Plastic))などを装填可能なクレイ・バズーカを装備していたが。

 それと同様に見た目の凶悪さとは裏腹に非殺傷、『不殺(ころさず)』に向いている武器なのかもしれない。

 

 ミヤビが聞いたなら、

 

「モビルスーツが鎖付き鉄球で相手の機体をガンガン叩いて『不殺』とかバカじゃないの」

 

 と言うかも知れないが……

 

 

 

次回予告

 宇宙要塞ソロモンに地球連邦軍の総攻撃が掛けられた。

 ティアンム艦隊の先鋒たるホワイトベースが血路を開く。

 アムロたちは初めて戦場の真っ只中に身を晒す。

「デコイって…… 囮って…… サラたちによる単独制御の、無人のドラケンを敵に突っ込ませるってことなのか?」

 次回『ソロモン攻略戦』

 君は生き延びることができるか?




 ハンマー祭りでした。
 元ネタ、ゲーム『SDガンダム スカッドハンマーズ』から少しは工夫してありますけどノリはおおむね同じ……
 普通に問題になりそうですけど、そこはカムランパパがもみ消してくれるのでしょう。
 根拠もなにもないけど、でも、きっと、たぶん、おそらく、めいびー。

 次はいよいよソロモン攻略戦の開始です。
 次回予告に何だか不吉なセリフが入ってますけど……

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。