ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第35話 ソロモン攻略戦 Cパート

 ダミーバルーンのおかげで一次攻撃のパブリク隊は無事、その腹に抱えていたミサイルによりビーム攪乱膜を張り終えていた。

 もちろん無傷とは行かなかったが、全滅に近い損害を出した史実よりは格段にその損害は減っている。

 

 

 

「敵は強力なビーム攪乱幕を張ったぞ。リック・ドム、ザクの部隊は敵の侵攻に備えろ。敵は数が少ない。ミサイル攻撃に切り替えるのだ」

 

 ソロモンでもドズルがこの状況に対応していた。

 

「ミルヴァ艦隊、左翼に展開しろ。ハーバート隊、後方を動くな。ティアンムの主力艦隊は別の方角から来るぞ」

 

 あくまでも正面の敵は囮という認識。

 確かにそれは間違いではない。

 

 

 

「ビーム攪乱幕、成功です」

「よし、各艦、任意に突撃」

 

 ワッケインの指示により、第3艦隊は前進。

 

「二次攻撃のガンキャノン、ドラケンE改、各モビルスーツ隊を発進させろ」

 

 その指示を受け、サラミス改級の艦首カタパルトから次々にモビルスーツが撃ち出される。

 ミヤビの知る史実ではジムとボールによる編成だったが、この世界では量産型ガンキャノンとドラケンE改に置き換わっている。

 量産型ガンキャノンはジムの3倍程度のコストがかかるが、火力、装甲、推力、ジェネレーター出力等ははるかに上回る。

 足りないのは接近戦能力と数だが、そちらはドラケンE改が補うという編成。

 さらに母艦がサラミス改級となっているためカタパルトによる素早い戦力投射、および初期加速の追加(前進するサラミス改のスピード+カタパルト加速)、推進剤の節約が可能となっているというもの。

 それゆえにガンダム、ジムが無くても割と何とかなるというか、戦力的にはさして変わらないという状況である。

 

 

 

「各モビルスーツ、コア・ブースター、発進始め。陽動作戦だということを忘れるな」

 

 ブリッジ、ブライトからの指示を受け、

 

『ミヤビ、ドラケンE改発進します!』

 

 真っ先に出撃したのは、ホワイトベースでは一番性能の低いドラケンE改に乗っているミヤビ。

 

【挿絵表示】

 

「ミヤビさん……」

 

 ブライトは言葉に詰まる。

 この厳しい大規模戦において、先頭をきって出撃する、その勇気。

 彼女とて、恐怖は感じているだろうに……

 

『みんな、彼女に続くんだ。出遅れるなよ』

 

 スレッガーがそう言ってドラケンE改可翔式で追いかけ、

 

『ザンジバルさえ居なければ』

『ガンキャノンL、行くぜ!』

 

 とセイラとカイのガンキャノンL、ロングレンジタイプが出撃。

 

『アムロ、行きます!』

 

 そしてアムロのガンキャノンが、リュウのコア・ブースターが発艦する。

 

 

 

 ようやく修理を終えたコア・ブースターに搭乗し、発進準備をするハヤト。

 切迫感が漂うほど余裕の無い彼の表情に、サポートAIであるサラナインはモニターの片隅から心配そうな視線を向けるが、

 

「僕はアムロに勝てない限り、一歩も先に進めない男になってしまった。アムロは…… 僕にとって壁なんだ」

 

 ハヤトはそうつぶやく。

 

『思い詰めるのは危険ではないでしょうか?』

 

 そう言って彼のノーマルスーツヘルメット、そのバイザーに身を寄せ口づけを落とす小さな人形。

 モビルドールサラ。

 

「サラナイン……」

 

 最近、塞ぎ気味な彼のことを慮って、サラナインがミヤビに頼み込んで貸してもらった義体だ。

 

『ハヤトさん、覚えていてくださいね。あなたの後ろにはいつも私が居るということを』

 

 そして、ハヤトの乗るコア・ブースターは発進する。

 通信機越しに、アムロのつぶやきが伝わる。

 

『これが、戦場か』

 

 これまでガンキャノンで戦い続けてきたアムロでさえ、息を飲みそうつぶやいてしまう戦乱のステージへと彼らは行く。

 

 

 

 なぜミヤビが先陣をきって発進したのかというと、皆を奮い立たせるためとか、そういう立派な考えがあったわけではなく単に、

 

(先行しておいた方が、後発で追いつくために加速しなければならない場合より推進剤が節約できるよね)

 

 という理系脳なことを考えていただけだったりする。

 機体が小さなドラケンE改はその分、通常サイズのモビルスーツより推進剤を積める量が少ない。

 無論、機体が軽い分、加速に必要な推進剤も少なくなるため単純比較はできないが、ともかくいざというときに惜しみなく使えるよう、節約するに越したことはない。

 それがミヤビの生存確率を上げることになるからだ。

 

(まぁ、今回はP缶を一本差しているから多少は余裕があるでしょうけど)

 

 とも思うが。

 実際、彼女以外の、サラミス改級より発進したドラケンE改もP缶、つまりプロペラントタンク1本と短距離ミサイル1発の混載により出撃している。

 サラミス改級がカタパルトを備えていることもあり、これで十分なのだ。

 

 

 

 迎撃に上がって来るガトル宇宙戦闘爆撃機。

 

「この野郎」

 

 カイはヘッドレスト横から照準スコープを引き出すと、ガトルから放たれるミサイルをビームスプレーガンで狙う。

 

『ビームスプレーガン・セレクター、『レンジショット』に切り替え』

 

 サポートAIであるサラスリーがビームスプレーガンを、ビームを拡散させ広範囲にダメージを与える『レンジショット』に切り替えてくれる。

 同時に照準スコープ内の映像に、その効力範囲が円錐として立体表示され、

 

「一発目!」

 

 無事撃墜。

 

「お次は?」

 

 標的を切り替えようとしたところに、

 

『危険です!』

 

 というサラスリーからの接近警報と共にザクの姿が割り込んでくる!

 

「うわぁお!!」

 

 叫ぶ、カイ。

 同時にガンキャノンL、両肩の120ミリ低反動キャノン砲が火を噴きザクを貫く。

 

「カイ、息を抜いては駄目よ」

 

 頭部、射撃手コクピットのセイラによる砲撃だ。

 

「セイラさん、愛してるよ」

 

 と、調子良く言うカイ。

 

 

 

「ラコック、ここを頼む」

「は、閣下」

 

 ドズルは参謀のラコック大佐に指揮を任せ席を立つ。

 

「すぐ戻る」

「は」

 

 ドズルは居住区の私室に赴き、

 

「万一の事がある、女どもは退避カプセルに移れ」

 

 と女官たちに指示。

 そして娘である赤子、ミネバを抱き上げ迎える妻、ゼナに、

 

「急いでな」

 

 そう告げる。

 ゼナは不安そうに、

 

「戦局はそんなに悪いんですか?」

 

 と問うが、ドズルは答えず、

 

「急げ」

 

 と侍女たちを追い散らした後に、

 

「このソロモンが落ちるものか。万一だ、万一の事を考えての事よ」

 

 彼にしては優しい声を出して、妻に抱かれた娘の顔を覗き込む。

 

「ようやくにも手に入れたミネバの為」

 

 ムズがるミネバ。

 

「お声が大きいから」

 

 ゼナに言われ、笑うドズル。

 

「ははははは、急げよ」

 

 そう言って背を向け、彼の戦場である司令室に戻る。

 

 

 

「ちょいこっち、ちょいこっち。そうそう、ほいっ!」

 

 HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)に映し出される照準ターゲットに飛び込んでくれたリック・ドム。

 スレッガーはドラケンE改可翔式のコア・フライトユニットに装備された空対空ミサイルAIM-79を撃ち込む。

 

『撃墜を確認。やりましたね、スレッガーさん!』

 

 サラの報告のとおり、見事、撃ち落とす。

 

 艦隊戦は激しさを増し、前進する巨大戦艦グワジン級。

 肉薄したリック・ドムのビーム・バズーカで撃沈されるサラミス改級。

 攻撃を受け砲塔を吹き飛ばされた後、続けざまに命中弾を受け爆散するムサイ級。

 

 ホワイトベース側も無傷とは行かず、ハヤトのコア・ブースターも被弾していた……

 

 生か死か、それは終わってみなければわからなかった。

 確かな事は、美しい輝きがひとつ起こるたびに何人か、何百人かの人々が確実に宇宙の塵となっていくということだ。

 

 

 

 一方、主力のティアンム艦隊はというと、

 

「ミラーの準備はあと?」

「は、あと4分ほどであります」

 

 宇宙空間に展開する鏡の群れ。

 ソーラ・システムを展開中だった。

 

「ん、ソロモンもそろそろこっちに気付くぞ」

 

 

 

「なに? 馬鹿な、サイド1の残骸に隠れていたのがわかりました?」

 

 声を荒げるラコック。

 

「どうしたか?」

 

 戻ったドズルの問いに、

 

「ティアンムの主力艦隊です」

 

 と回答。

 

「ん、衛星ミサイルだ!」

 

 とドズルは命じる。

 

 

 

 衛星ミサイルは岩塊に推進装置を付けた質量兵器だ。

 進路上の敵機、量産型ガンキャノンやドラケンE改を叩き潰しながら前進して行く。

 

「あれは?」

 

 その姿に気を取られるアムロ。

 

『アムロ、正面!』

 

 サラツーからの注意喚起に視線を戻せば、前方進路を塞ぐようにムサイが迫っていた。

 

「わあーっ!!」

 

 アムロは続けざまにビームライフルを撃ち込む!

 

 

 

「敵本隊に戦艦グワランとムサイを向かわせろ!」

「第七師団に援軍を求められましては?」

 

 そう言いながらコーヒーを差し出すラコック。

 

「すまん」

 

 とドズルはその大きな手で取っ手ではなくカップを鷲掴みにして受取ると、

 

「キシリアにか?」

 

 中に満たされたコーヒーを見詰め、

 

「フン、これしきのことで。国中の物笑いの種になるわ」

 

 そう否定する。

 ザビ家内の確執もあるが……

 この時点ではまだ、その判断も妥当。

 それほどまでにソロモンは堅固な防衛陣を構築しているのだが。

 

 

 

「ミラー配置完了」

「姿勢制御バーニア、連動システムOK」

 

 そう、ソーラ・システムという新兵器が無ければ、援軍無しでも持ちこたえることができるというドズルの判断は間違っていないのだ。

 

「ソーラ・システム、目標、ソロモン右翼スペースゲート」

 

 ティアンムはそれを打ち崩すべく指示を出す。

 

「軸合わせ10秒前」

「迎撃機接近、各艦注意」

 

 衛星ミサイル、そして敵艦隊が迫るが、

 

「構うな、焦点合わせ急げ」

 

 ティアンムは続行を指示。

 

「3、2、照準入ります」

 

 そして反射された太陽光がソロモンを焼き尽くす!

 

 

 

「ソ、ソロモンが焼かれている。あれが……」

 

 目を見張るアムロ。

 

 

 

「連邦軍の新兵器の威力なのか」

 

 ブライトもまた驚愕する。

 

 

 

「な、何事だ?」

 

 司令室のスクリーン1面を埋める光にドズルも叫ぶ。

 

「第6ゲート消えました、敵の新兵器です」

「な、なんだ?」

「レーダー反応なし、エネルギー粒子反応なし」

「レ、レーザーとでもいうのか? 方位は?」

「敵主力艦隊です」

「グワラン隊が向かっているはずだな?」

 

 

 

 ドズルが言うとおりグワジン級戦艦、グワランを主力とする艦隊の攻撃、それに撃墜はされたものの、砕けた岩塊の散弾となった衛星ミサイルにソーラ・システムは破壊されていく。

 そして、

 

「鏡などには……!」

 

 ブルーとグリーンの専用カラーで彩られたリック・ドムと、それを牽引しているモビルアーマー、ビグロの姿があった。

 ミヤビが見ていたなら、

 

「は? ソロモンの悪夢? アナベル・ガトー? 彼はドロワの所属でしょう?」

 

 と驚愕していただろう。

 

 ミヤビの知る史実、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』登場のアナベル・ガトーは、ソロモン撤退戦ではア・バオア・クーへ撤退するドロス級空母二番艦ドロワを中心とした艦隊のしんがりを務め、ジム部隊を全滅、または壊滅状態に追い込むなど連邦軍追撃艦隊に多大な損害を与えていた。

 この時「ソロモンの悪夢」の異名が付き、この戦闘で8隻の戦艦を撃沈したとされている。

 

 しかし……

 それをもって、後方に温存されているドロワが彼の所属する母艦であるとは言い切れぬのだし、この世界ではミヤビが起こしたバタフライ効果で状況が変化しているという可能性もある。

 また、ビグロを宇宙用サブフライトシステムのように用いれば、たとえ後方からでも打って出ることもできよう。

 そしてこのビグロはガトーの戦友、ケリィ・レズナー大尉の乗機だった。

 ソロモン戦でビグロ? という話もあるが、この世界では例のガンキャノンショックの影響でズゴックの量産化ができなくなった製造元のMIP社はモビルアーマーの開発・生産にシフトしており、その影響があるのかもしれない。

 

「ええい! コントロール艦さえ叩けば……」

 

 捨て身とも思える強襲を仕掛けるガトー。

 

「あ! あれか!」

 

 その膨大な通信量からコントロール艦を特定する。

 ティアンム艦隊旗艦、マゼラン級戦艦、タイタンだ。

 旗艦にそんな機能を持たせるな、という話だが、ソーラ・システムのコントロールには強力な通信機能が必要であり、この時点でそれを持てるのは艦隊の指揮のために通信機能を強化したマゼラン級以外には無かったための処置だった。

 

「南無三!」

 

 彼のリック・ドムが構えるビーム・バズーカが宇宙を切り裂いた……




 ガンダムが無いからジムも無いという状況で地球連邦軍の戦力は? というお話はこのように。
 ジムとボールが分担していた要素を分解して割り振れば、まぁ、これもありかなぁという感じです。

 ホワイトベース側も戦闘に突入。
 ハヤトがやられフラグを立てていますが、サラナインは果たして彼を守り切れるのか。
(というか立てているのはサラナインの死亡フラグ?)
 この辺は次回に。

 そして……
 史実どおりに居るんですよね、アナベル・ガトーとケリィ・レズナー。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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