ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第4話 ルナツー脱出作戦 Cパート

 不意の衝撃と共に室内照明が非常灯に切り替わり、

 

「……遠心重力装置が止まったぞ」

 

 とブライトが言うように重力が無くなった。

 

「どうやら電源部分がやられたらしいな」

 

 父親が技術者であるというカイが状況を把握し、

 

「シャアだ」

 

 と、アムロが確信したようにつぶやく。

 そしてミヤビは、

 

(ダメだったか……)

 

 と肩を落としていた。

 

 

 

 ルナ2司令部でも状況は把握していた。

 

「ザクが現れた!? 監視レーダーをくぐられたというのか?」

 

 ホワイトベースのもたらした戦闘詳報によりノーマルスーツによる特殊工作隊の潜入の可能性が示唆され、実際に発見、通報を受けて対応を急いでいたが、ザクによる警戒網の突破はさすがに想定外だ。

 現在急行させている陸戦隊では対処できない。

 

「は、司令。敵はおそらくノーマルスーツによる潜入工作でザクを呼び込んだものと思われます」

 

 ルナ2司令部、そしてミヤビの予測は確かだったが、シャアの知略はさらにその上を行っていた。

 ワッケインはここに至って決断する。

 

「マゼランを出撃させる」

 

 

 

「ここを開けろ!」

 

 オレンジ色の非常灯に切り替わった室内で、ブライトは必死にドアを叩いていた。

 

「僕たちのことなんか忘れられたんじゃないですか?」

 

 そうそうアムロ君、あきらめるように言ってあげて、とミヤビは内心祈るように思うが。

 

「しかしこのままでは。このっ!」

 

 ブライトはあきらめず、そして……

 

「ん? 開くぞ」

 

 ああ、気づかれてしまったかとミヤビは嘆息した。

 

「え? そうか、電源が切れたんで電子ロックも効かなくなったんだ」

 

 と、アムロ。

 

 まぁこれに限らず自動制御される対象は、動力が切れた際は『安全な方向』に動くよう作られている。

 ボイラーだったら燃料弁が閉まる方向に動くとか、そんな感じで。

 ここは一般の休憩室だったから、電源が切れたら安全のため当然ロックが解除されるようになっているのだ。

 

「行こうぜ!」

 

 リュウに促され、勇んで部屋を飛び出す面々。

 そして、

 

「ミヤビさん!」

 

 アムロに手を引かれてドナドナされるミヤビ。

 

(一緒に行くとは一言も言ってないんだけど!)

 

 と内心パニくり固まったままのミヤビは、そのまま無重力の通路を牽引される荷物のように運ばれていくのだった。

 

 

 

「マゼラン急速発進。ドッキングロック解除急げ」

 

 ワッケインの指揮する戦艦マゼランが発進しようとしている中……

 

 

 

「だあっ」

「うおっ」

 

 脱出のため警備の兵を殴り倒すブライトとアムロ。

 

「やったあ」

 

 と快哉を上げるリュウだったが、ミヤビは内心、

 

(やったぁ、じゃないって! 命令違反に暴力。シャレにならないわよこれ! なんでみんなそんなに物騒なの!?)

 

 と頭を抱えていた。

 そんなミヤビの嘆きをよそに、ブライトは次々と指示を出す。

 

「仲間を集めろ。ホワイトベースを港から出すんだ。アムロはガンキャノンの封印を解け」

「はい」

 

 そうしてブライトやアムロたちがホワイトベースの出港準備を整える中……

 ミヤビの前世の記憶どおり、シャアの仕掛けた爆弾により出港途中のマゼランが港を塞ぐ形で擱座してしまったのだった。

 

 

 

 どうしてこうなった。

 ミヤビは痛切にそう思う。

 

 ホワイトベースの左舷モビルスーツデッキに有無を言わさず連れ込まれたミヤビだったが、そこで目にしたのは左手の二重下腕肢先端に取り付けられた精密作業用三つ指マニピュレーターにレーザートーチを持ってガンキャノンの封印を切断しているサラ、ドラケンE改の姿だった。

 三つ指、とは言ってもよくある非人体的なものではなく、親指、人差し指、そして残りの指が一体化したような役割を果たしているもの。

 要するに軍隊で使われる親指と人差し指だけ独立しているトリガーフィンガーミトンみたいなものだ。

 銃の引き金を引くことも、こんな風に道具を器用に扱うこともできる。

 

【挿絵表示】

 

『あ、待っていましたみなさん、早く手伝ってください』

 

 と、サラ。

 何をやってるの、とミヤビは呆れるが、いつものように表情には出ない。

 そして、それを見たアムロたちはどう思うか?

 

「さすがミヤビさん!」

「ああ、そうだな」

 

 穏便にルナ2司令部に警告する裏では、こんな風にダメだった場合に備えて着々と次の手を打っていたんだ!

 

 と感動されることになる。

 

 もちろんミヤビはサラにそんな指示など出していない。

 このままじゃあザクの相手を自分がさせられる、ということに気づいたサラが恐怖から先走っただけである。

 他にもRXシリーズにインストールされた妹たちサラシリーズがこのままではかわいそう、ということもあったが。

 サラシリーズは幼い少女の人格を持ったAI。

 その彼女たちが人間で言えば拘束具でギッチギチに縛り上げられ、自由を奪われている状態であるからその気持ちは分からないでもないが。

 

 しかしミヤビはこう思う。

 

 ……このAI、自由(フリーダム)過ぎるでしょ。

 

 と。

 A・Iが止まらない!

 やっぱり自分はこのポンコツ・ロボットに三重絶対精神拘束(アジモフ・ゲアス)をかけるべきなのではと悩む。

 

『ロボットじゃないですよ。電子の海に生まれた生命、電子生命体です』

 

 うるさい。

 あなたなんてロボットで十分よ。

 

『とほほ』

 

 そんな主従をよそに、ブライトたちは精力的に出撃準備を進める。

 無論、ミヤビの意思を誤解し、勝手に感動して盛り上がっているだけだが。

 それを目にしたミヤビがまた「何でこの人たちこんなに戦いたがっているの!?」と恐怖するという、バカバカしいまでのすれ違いを見せていたのだが。

 

 そして当然、

 

「貴様らそこで何をしとるか! ホワイトベース立ち入り禁止は厳命したはずだ」

 

 こんなことをやっていれば、ワッケイン司令が来るわけで。

 

 どうしてこうなった。

 ミヤビは痛切にそう思う。

 

 さらに、

 

『ワッケイン君』

「う、パオロ艦長」

 

 サラの操作でルナ2医務室のパオロ艦長との通信がつながる。

 

 余計なことをしないでーッ!

 

 内心、絶叫するミヤビをよそに語り始めるパオロ艦長。

 

『……どうだろう、ワッケイン君。ホワイトベースにしろ、ガンキャノン、ガンタンクは今まで機密事項だった』

「はい」

『だからなのだ、不幸にして我々より彼らの方がうまく使ってくれるのだ。……すでに二度の実戦の経験がある彼らに』

 

 いや、古い戦闘ドクトリンに縛られる旧来の軍人より、最初からそういった思考の縛りの無い者の方が柔軟に現実に対処できるって理屈は分かりますけど。

 

 古いドクトリンに縛られた軍隊が新兵器を扱えず甚大な損害を被った例は過去、枚挙にいとまがない。

 例えばアメリカ合衆国において最も死傷者を出したのは第二次世界大戦でもベトナム戦争でもない、国内の内戦である南北戦争だ。

 それまで使われていたマスケット銃は命中率が悪く、先込め式なので伏せて装填することができない。

 そのため戦列を組み、お互い立ったまま集団で大体の敵の方に向かって撃ち、兵の士気がくじけた方が負け、という戦列歩兵という戦術が取られていた。

 そこに登場したのがミニエー銃というライフル。

 有効射程50ヤード足らずのマスケット銃に対し、その有効射程は300ヤード。

 そして3倍以上の集弾性を持つ、当時にしてみれば破格の新兵器だ。

 そんなものを南北戦争の指揮官たちは戦列歩兵という旧来の戦闘ドクトリンで用いたのだ。

 一説によると敵の白目が見分けられる距離になったら撃ってもいい、というマスケット銃の、戦列歩兵の射程はミニエー銃にとってみれば必殺の至近距離。

 しかもお互い棒立ちで、密集した状態での撃ちあいだ。

 見る見るうちに互いの死傷者は増え、最終的に両軍合わせて50万人近くの戦死者を出した。

 ミヤビの前世の記憶ではアメリカの歴史上、最悪の死者数となっていた。

 古いドクトリンに縛られるというのはそういうことである。

 

 そして実戦の洗礼はたやすく訓練の成果以上のものを兵にもたらすというのも事実。

 だがしかし、それでも!

 

「しかし艦長」

 

 ほらワッケイン司令も反対しているじゃないですか。

 良識ある軍人ならこんな少年少女たちを戦場に放り込むなんてしないでしょう?

 

『……そう、しかし彼らはしょせん素人だ。司令たる君が戦いやすいように助けてやってくれたまえ…… わしが責任を持つ』

 

 止めてぇぇぇぇ!

 そんな嫌すぎる責任の取り方しないで!

 騙されないでワッケイン司令! 負けちゃダメ!

 あなただけが残された良心、最後の希望!

 

 しかし、

 

「……わかりました、艦長のお言葉に従います」

 

 オワタ……

 ミヤビの希望は、失われた。

 

 まぁ、これは仕方がないとも言える。

 尊敬する先達の言葉にほだされたという面もあるが、それ以前に権限の問題がある。

 ワッケインはルナ2方面軍司令だが、ホワイトベースはその管轄下には無い。

 V作戦は軍上層部肝いりのオペレーションであり、レビル将軍の直轄。

 そのうえパオロ艦長の方がワッケインより階級が上。

 良心に従い軍規を盾に抗命するにも限度というものがあったのだ。

 

『頼む、ワッケイン君、ミヤビ君』

 

 はい?

 さらっと最後に私の名を付け加えるな!

 そして力尽きたように目を閉じるな!

 それほど重傷じゃないって知ってるんだぞ!

 

 絶叫したくてたまらないミヤビ。

 しかし例によって表情にはまったく出ないので、周囲にはそれが「パオロ艦長の依頼を当然のように受け入れている」ようにしか見えない。

 その毅然とした様子と内に垣間見られる厳しい覚悟(まったくの誤解)にブライトたちはもちろん、ワッケインまで感嘆を覚えているのだが当人は気づいていない。

 当人が知ったら「なんでそうなるの!」と叫んでいただろう。

 

 ちなみにミヤビにとってみれば唐突なパオロ艦長からの言葉だったが、一歩引いた視点で考えると、

 

・戦闘詳報でシャアの脅威を警告。

・サラを使って侵入したシャアを発見、ルナ2司令部に通報後、遅滞戦闘で時間を稼ぐ。

・ザクの侵入に対し、即座にガンキャノンの封印解除作業に取り掛かる。

・ワッケインの説得のため通信をつなぐ。

 

 パオロ艦長から見てこれだけのことをやっているように受け取れるのだから「君の思いはわかった。責任は自分が取るからあとは頼む」と言われるのは当然だった。

 

 そして……

 こんな風にドタバタやっているせいで、ミヤビは見落としていた。

 サイド7出港後、初めて足を踏み入れた左舷モビルスーツデッキ。

 そのどこにもガンダムの姿が無かったという衝撃の事実を。




 誤解が誤解を呼ぶ脱走編でした。
 そして衝撃のラスト。

 次回はお待たせしておりました戦闘ですのでご期待ください。
 ガンキャノンに新しい武器が登場する予定です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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