ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第38話 シャア、ぶっちゃける Aパート

 アムロは、

 

「誰だ? 誰が僕を見ているんだ?」

 

 とテキサスコロニー内で周囲を警戒していた。

 見ているというのは直接視認しているという意味ではなく、ニュータイプがクリアボヤンス、千里眼のような超能力じみた力で見ている、というのも正確ではない。

 

 ニュータイプは空間認識能力により戦場を俯瞰し、把握し続けられる能力を持つ。

 つまり直接目にされていなくても、ニュータイプに位置を捉まれている限り、それは見られているのと同じこと。

 アムロが気にしているのはそこである。

 

 

 

 シャアはララァのバギーと合流し、

 

「急いでザンジバルへ戻れ」

 

 と指示を出す。

 

「はい、大佐」

「私はガンキャノンを食い止める」

「はい。でも大佐は?」

「ララァ、私の心配なら無用だといつも言ってるはずだ。さあ、早く行くがいい」

 

 ララァはうなずくと、

 

「赤い彗星のシャア、信じています」

 

 そう言い残し、バギーを走らせる。

 

 

 

「アムロも気がかりだが、さて、この状態では先に動いた方が不利になるしな」

 

 つぶやくブライト。

 今、ホワイトベースとマ・クベ艦隊はテキサスゾーンの漂流物に身を隠し、互いの位置を確認できないまま対峙していた。

 

「ミライ、どう思う?」

「そうね。アムロは大丈夫、生きているわ」

「なぜそんな事が言えるんですか!?」

 

 歯ぎしりと病んだ寝言を発しながら寝ていたところを叩き起こされ、世界のすべてを呪うような暗い瞳をしながら通信手の席についていたフラウが叫ぶ。

 

「そうね……」

 

 ミヤビの知る史実ではニュータイプとはまた違ったカンの冴えを見せたミライは「なんとなくわかるのよ」と答えたものだったが、しかし、

 

「姉さんとサラちゃんたちがついているもの」

 

 そう答える。

 そうしてフラウは視線を通信機に戻すとつぶやく。

 

「アムロ……」

 

 嫉妬に狂った女、そのものの顔で。

 一方、

 

『ブライトさん、ミヤビさんから伝言です』

 

 と、ホワイトベースの戦術コンピュータにインストールされているサラから提言がある。

 

「伝言?」

『もし膠着状態に陥ったら、ドラケンE改とツヴァークを無人偵察機として出せばいいと、事前に提案が』

「ふむ?」

 

『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』のマンガ版で、本編未登場の兵器のエピソードも追加されていた『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』でもYOP-04試作観測ポッド、バロールが登場していたように。

 無人の偵察機というのは結構普通な発想ではある。

 ミノフスキー粒子のおかげで出しても行方不明になりがちな現時点では廃れているものだが、サポートAIサラのおかげである程度の自律行動と独自判断が可能なドラケンE改とツヴァークならば可能だろうし。

 

『どちらもステルス性が高い機体ですし』

 

 ドラケンE改は機体が小さくステルス塗装が施されている上、濃い赤の塗装は低光量環境下で周囲に溶け込む迷彩効果を発揮する。

 また発熱の小さい燃料電池が動力源であり、その少ない発熱も熱回収器を介して推進剤の加熱に使われているため排熱が少ない点も隠密性を高めることにつながっている。

 それでも利用しきれない余剰熱は放熱器から放出されるが、軍用機においては放熱器のアクティブ・ステルス制御機能がソフトウェアで実現されている。

 これは放熱器を自動制御し敵の検知にかからない方向のみ放射する方式で、両肩、尻に放熱器が分散配置されているドラケンE改において効果的に作用するものである。

 

【挿絵表示】

 

 ミヤビの前世の記憶ではゼータガンダムで実用化された技術である、とした資料があって、それを参考にミヤビが組み込んだシステムだった。

 

 一方、ツヴァークはボディがプラスティック製で、ステルス加工された耐弾強化繊維が封じ込められている。

 ステルス戦闘機、F-35 ライトニングIIでは機体表面に用いられるカーボン複合材にはカーボン素材の段階からレーダー波吸収材(RAM)が混合されていたわけだが、それと同様の仕組みだ。

 

 そして、

 

『元は作業用重機ですから、このテキサスの暗礁地帯のような障害物の多い空間での行動にも適していますし』

「なるほど……」

 

 ということ。

 

 

 

 ジオン側でもこの膠着状態にウラガンがじれていた。

 テキサスコロニーに向かったままのマ・クベが心配なのだ。

 

「デラミン艦長、戦力ではこちらの方が圧倒的に有利であります、攻撃を」

 

 このチベの艦長を務めるデラミンにそう進言するが、

 

「いかん。敵は一隻とはいえ大型戦艦だ。こちらがのこのこ出て行けば」

「しかしこちらはバロメルが攻撃を受けて」

「ウラガン中尉」

 

 デラミンはウラガンの発言を遮ると、こう申しつける。

 

「君はマ・クベ大佐の下に長年居て何を学んだのだ? あ? まもなくバロム司令の艦がここに着く。それまで待つ」

「は……」

 

 ウラガンはそれに従う他なかった。

 そう、戦いには待つべき時には待つという忍耐は必要である。

 しかし彼らのようにただ待つだけか、ホワイトベース側のように待ちながらも次の手を打つかで、その先の展開は変わってくるのだが……

 

 

 

『それじゃあ行きますね。今週のビックリドッキリメカ発進!』

 

 サラが提供するドラムロールの後、モビルスーツデッキのハッチが開くと軽快なBGMと共にカタパルトで次々に撃ち出される小型メカ。

 つまり、

 

『ドラケン』『ドラケン』『ドラ、ドラ、ドラケン……』

 

 お約束な掛け声をかけながら発進するドラケンE改たちと、

 

『ツ、ツヴァーク……?』

 

 これでいいのか、と不安そうにつぶやきながら後を追うツヴァークたち。

 

 慣性飛行で航行し、スペースデブリの影を伝って移動。

 岩塊に身をひそめ、ひょっこりと頭に相当する5連式多目的カメラモジュールだけを出して、ミヤビが金に飽かして揃えた高性能センサー群を使ってセンシング。

 クリアーした後に岩塊を蹴って次のデブリへ。

 

『ワイヤーアンカー射出!』

 

 ツヴァークは左腕、11ミリ3連装機関銃の代わりに内装されたオプションのワイヤーウィンチモジュールから、先端にフックを取り付けたワイヤーを電磁誘導方式で撃ち出す。

 

【挿絵表示】

 

 この装備は元々『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で登場人物たちがモビルスーツデッキ等での移動に使っていたワイヤーガンのように宇宙空間作業時、推進剤を消費せずに移動を行うためのもの。

 それゆえアンカーにはオンオフ可能な電磁石も仕込まれている。

 コロニー残骸に吸着させ、巻き取ることで取り付く。

 さらに足裏のマグネットをON。

 ローラーダッシュでその表面を伝って移動する。

 これはドラケンE改でもできることだが。

 

 ロケットエンジンの利用は最小限に。

 姿勢制御は手足をぶん回すAMBAC(active mass balance auto control。能動的質量移動による自動姿勢制御)とローラーダッシュ機構を利用したリアクションホイールで行う。

 

 探索の結果はレーザー通信で秘匿送信し、中継機を配置することでリアルタイムに共有される。

 そうやってスペースデブリの影に潜んでいる敵艦隊の位置を探って行く。

 

 

 

「妙だ。もう一機のモビルスーツが見えない」

 

 アムロはガンキャノンを移動させながら周囲を警戒する。

 

「迂闊だったな、あれは赤いモビルスーツだった、シャアかもしれないんだ。ん?」

 

 砂漠化が進み、砂塵が舞うコロニー内を走る一台のバギー。

 

「車だ」

 

 そしてアムロは気づく。

 

「あの車、ララァ?」

『アムロ?』

 

 サラツーにはアムロがつぶやいた名前に覚えはなかった。

 

 

 

「見つけたぞ、ガンキャノン」

 

 岩陰から、135ミリ対艦ライフルを構えるシャアのFZ型ザク。

 

 

 

「ララァだ、ま、間違いない」

 

 しかし、とっさにガンキャノンの身をかがませるアムロ。

 次の瞬間、ガンキャノンの機体を超高速の砲弾がかすめ、削り取って行く!

 

「シャアが、う、後ろから仕掛けたのか? それとも別の敵か?」

 

 振り向くと同時に、手にしていたヒートホークに再びエネルギーを供給する。

 

『ごめん、アムロ。空中の砂ぼこりが邪魔で敵が見つけられないよ』

 

 済まなそうに告げるサラツー。

 この戦場、視界が悪すぎた。

 

 

 

「厄介なことになりそうだ。ガンキャノンのパイロットもニュータイプだとはな。もう一度試してみるか」

 

 シャアは再び位置を変えて狙撃。

 

 

 

 今度は狙撃点を把握できた。

 

「わあーっ!」

 

 アムロはガンキャノンを低くジャンプさせ前進。

 高く跳ねては空中で絶好の的になってしまうからだ。

 

 

 

「チィッ」

 

 シャアは疑似ホバー機動で素早く後退。

 遮蔽を取り続けながら射撃する。

 

 

 

 アムロはシャアのFZ型ザクが隠れていた岩山に取り付き、後を追おうとするが、

 

「うわっ……」

 

 シャアは山の中腹に榴弾を連続して叩き込み小規模な崖崩れを起こすことでガンキャノンの前進を阻み、足止めする。

 135ミリ対艦ライフルは西暦の時代にドイツのAMPテクニカルサービスが開発した法執行機関向け狙撃銃『DSR-1』のように、ライフル本体に予備弾倉が取り付けられるようになっている。

 シャアはその予備弾倉に切り替えることで弾種をAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)から榴弾に変更。

 砲撃を加えたのだ。

 

 

 

「間違いなさそうだな。私の射撃は正確なはずだ、それをことごとく外すとは」

 

 シャアは障害物を利用し、悟られないよう位置変えをする。

 

 

 

「あっ、よ、横からか」

 

 とっさに回避するアムロだが、砲弾はランドセルを削り取りながら掠めていく。

 さらに、

 

「クッ、今度は前からか」

 

 別方向からの攻撃にとっさにヒートホークをかざし、当てて見せるアムロだが、しかし砲撃を弾くところまでは行かない。

 

「さ、さすがだなシャア」

 

 とつぶやくアムロだったが、射撃にヒートホークを合わせて見せる、それだけでも神業としか言いようがない。

『ルパン三世』の石川五ェ門レベルであるのだが。

 アニメじゃない、本当のことなのに……

 

 

 

 何故、シャアがアムロを翻弄し続けることができるのかというと、

 

「あのパイロット、ここの地形データを持ち合わせていないな」

 

 ということ。

 逆に言えばシャアのFZ型ザクの戦術コンピュータにはこのテキサスコロニーの地形データがインプットされている。

 だから砂漠化が進んで砂塵が舞い、視界の効かないこの環境下でも的確に狙撃ポイントを選んで活動し続けられるのだ。

 

「戦いとは、いつも二手三手先を考えて行うものだ。活動する場所の概要ぐらい、事前に調べておくのだな……」

 

 

 

「どこだ? シャア。どこから?」

 

 岩陰に身をひそめ警戒するアムロだったが、その時、

 

『ごめんアムロ、遅れたわ』

「ミヤビさん!? あ、これは!!」

 

 通信と共に駆け付けたミヤビのドラケンE改から送られてきたデータは、

 

『このテキサスコロニーの地形データです』

 

 と、サラが言うとおりのもの。

 ミヤビはこれを入手するために今まで戦場から離れていたのだ。

 

 実際には、アムロとシャアの戦場という超危険地帯に恐れをなし、

 

「こんな危ない所に居られるか! 私は一人で行動する!!」

 

 などと言って逃げ出し、しかしそれだけでは敵前逃亡となるのでこのテキサスコロニーの情報端末から地形データを吸い出していた、ということ。

 

 好意的に解釈するなら、ミヤビ・ヤシマという人物は自分が凡人であると自覚しているがゆえに己の力を過信せず、できないことはできないと瞬時に見切りをつけ、できることだけをやるようにしていると言える。

 まぁ、

 

 なにをしないのかを決めるのは、

 なにをするのかを決めるのと同じくらい大事だ。

 ──スティーブ・ジョブズ

 

 という言葉もあるとおり、物事を成し遂げるにはミヤビのような考え方、見切りは理にかなっている、とも言えるだろう。

 

 一方、地形データを目にしたアムロは、

 

「ようし、これなら!」

 

 とうなずく。

 アムロの脳裏に浮かぶ戦場の俯瞰図。

 これまでは砂塵に視界を阻まれ限られた範囲しか想定できず、しかもぼやけていたものがミヤビから受け取ったデータでぐっと広がり、同時にくっきりと詳細が映るようになる。

 

 今の自分の位置、シャアがこれまで射撃を行った位置。

 そして周囲の地形、遮蔽となる岩山の配置。

 ならば次にシャアが居るのは、

 

「シャア、読めたよ」

 

 アムロはガンキャノンを跳躍させる!




 テキサス戦、シャアとの戦闘の続き。
 そしてホワイトベース側もまた動き出すのでした。
 決着は次回更新に持ち越しですが。


>『機動戦士ガンダム MS IGLOO -1年戦争秘録-』のマンガ版で、本編未登場の兵器のエピソードも追加されていた『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』でもYOP-04試作観測ポッド、バロールが登場していたように。

 マンガ版のオリジナルではなく、映像化されなかったエピソードおよび機体をマンガにしたものですね。
 他にもジオンが運用したジムもどき『ゲム・カモフ』などが登場していて面白いですよ。
 第一巻の表紙にも描かれているとおり、135ミリ対艦ライフルも活躍していますし。


 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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