ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第38話 シャア、ぶっちゃける Dパート

 そうしてシャアは言う。

 

「だからもう一度言う。アルテイシアはあの木馬から降りるのだ」

「木馬? あのホワイトベース?」

「ああ。ここから地球に脱出するくらいの金塊を残していく。地球に行って一生をまっとうしろ。私は私のけじめをつける」

「けじめ? 何を考えているの兄さん」

「ザビ家はこれまで何度も私たちの命を狙ってきたし、これからもそうするだろう。生き延びるためにはやつらを排除せねばならぬ」

「兄さん!」

「無論、母とお前との生活を壊された怨み、母に闘病の末の孤独な死を強いた怨みの感情が私に無いとは言えない」

 

 安彦良和氏のマンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』でもシャアは、父に執着など持っていないと言い放つ一方で、

 

「お前の言うとおり、母の死への復讐が全てだった。母を無残な死に追いやったザビ家の連中をどんな手段を使ってでも根絶やしにしてやろうと思った」

 

 そう語っていた。

 シャアの心の奥底には、そういった復讐の業火が今もくすぶり続けている。

 しかし、

 

「お母様はそんなこと……」

「分かっている。だからこそ私は憎しみ続け、それに囚われ続けてしまわないよう、逃げずにけじめをつけたいのだ。そしてこれはあの日、母とお前を守ることができなかった幼く無力だった自分との決別でもある。分かってはくれないか、アルテイシア」

「そんな、言い方」

 

 ずるい、という言葉を飲み込むセイラに、シャアは、

 

「知らなかったか、アルテイシア。私はずるい人間なのだ。だからこうして仮面を着けて生きている」

 

 と笑って見せる。

 もうすでに、吹っ切れたという笑顔で。

 だからセイラは悟る。

 もう、兄は止められないのだと。

 こみあげる涙。

 それを見てシャアは、おどけるように言う。

 

「なに、父への恨みも込めてダイクンの名を使う。「これは私怨ではなく、父の遺志を貫く大望のためなのだ!」とでも言っておけば助力には事欠かないだろう。ジオン共和国建国の父、ジオン・ズム・ダイクンの名を利用しまくるのだ。旧ダイクン派と呼ばれる連中もだませるさ」

「ひどい……」

 

 身も蓋も無い言い方に、泣き笑いの表情を浮かべる妹、アルテイシア。

 

「父のことなど、もはや私にとってはその程度ということだ。それにザビ家を倒すことは彼らの意にも沿うのだ。悪いことでもあるまい?」

 

 かつてと変わらぬ仕草で笑ってみせる兄、キャスバル。

 

「兄さん」

「アルテイシア、その素顔をもう一度見せてくれないか?」

「思い直してください、兄さん」

 

 セイラはノーマルスーツのバイザーを開け、兄に願うが、

 

「きれいだよ、アルテイシア」

 

 シャアはそう言って背を向ける。

 

「お前に戦争は似合わん。木馬を降りろよ」

「兄さん、キャスバル兄さん」

 

 その場で膝をつくセイラ。

 

「キャスバル兄さん……」

 

 

 

「ブライト? ブライトどうしたの? アムロが?」

 

 ミライの声に、ブライトは意識を通信から今自分が居るブリッジへと戻す。

 心配そうにこちらをうかがっているミライに、

 

「……い、いや、なんでもない。雑音がひどくてな」

 

 と誤魔化して。

 

「そうなの」

「あ、ああ。心配だな、アムロたち」

 

 下手な演技。

 ミライはそれを見通しているだろうに、しかし黙ってうなずくのだった。

 

 

 

 アムロは動かなくなったガンキャノンの破損個所を調べ悪態をつく。

 

「駄目だ、みんな焼き切られている。こいつも」

『ふむふむ』

 

 そして彼の肩に乗ってそれを横から眺めているのは、サラツーが制御するモビルドールサラ。

 ガンキャノンの稼働ログ、警報ログと突き合わせ、

 

『ミヤビさん、部品リスト送ります』

「了解。……これなら何とか?」

 

 ノーマルスーツのヘルメットに付属のバイザー型HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)でリストを確かめたミヤビは、ドラケンE改のメンテナンスハッチを開けると、そこから部品を抜き始める。

 

「ミヤビさん?」

 

 疑問に思ったのか首を傾げるアムロに答えたのは、ドラケンE改にインストールされているサラ。

 

『私たちはこの性能も心も燃料も部品も、すべてマスターたちのためにあるのです。生死を共にするパートナー、そしてマスターを生還させるための予備パーツ供給元としても……』

 

 その言葉に複雑そうな表情を浮かべるアムロだったが、サラはまったく気にしていない、本気で言っているという声で、

 

『だから人のお役に立てるのがいちばん幸せなんです』

 

 そう告げる。

 ミヤビはというと、

 

「ドラケンE改は独自規格を極力排して設計されている上、オープン・アーキテクチャにして宙陸両用作業機のデファクトスタンダードになっているから。つまり部品の流用が効くのよ」

 

 と説明。

 要するにミヤビの前世、IBMが世に送り出したIBM PCと同様の位置づけの製品であると言える。

 当時、メーカー独自のプロセッサやソフトウェアにより構成することが当たり前だった大型コンピュータ業界の雄、IBM。

 しかしパーソナルコンピュータ市場に進出する際、同様な手順を踏んでいたらビジネスチャンスを逃してしまうと悟った開発陣は、自社製の半導体を主要部において一切使わず一般市販部品で構成するという方針を取り、さらにはソフトウェアもすべて外部調達でまかなった。

 こうしてわずかな開発期間でリリース。

 平凡だが拡張性に優れ、さらには技術仕様を公開するオープン・アーキテクチャにしたことでサードパーティによる優れた拡張カード、周辺機器、ソフトウェア等が供給され、結果として本機の有用性を高めることとなった。

 

「ジオンでも同じように規格を整理しようという流れがあるって話だけれど」

 

 統合整備計画というやつである。

『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』ではバーニィとアルが街中で破壊されたジム・コマンドの部品などを使い破損していたFZ型ザクを修理していたが、これができたのもそのおかげ、と考察されていた。

 

(同じようにシャアが乗り捨てていると思われるFZ型ザクから部品取りするって手もあるけど……)

 

 史実と同様にシャアがモビルスーツを乗り捨てているとも限らないし、見知らぬ機体をばらして部品取りしている暇も無い。

 それゆえ時間を優先して自分が乗って来たドラケンE改をパーツ供給元としているわけである。

 だが、

 

「ん? ホワイトベースのバギーだ」

 

 というアムロの声に顔を上げる。

 なるほど、ここは史実どおりでホワイトベースが迎えに来てくれたか。

 

「おーい、ここだーっ!」

 

 手を振るアムロ。

 ミヤビは腰のアーマーマグナムを抜くとフレアーを装填。

 信号弾を撃ち上げることで所在を示すのだった。

 

 

 

 マーカーからの報告、

 

「ブライトさん、セイラさんがアムロとミヤビさんを発見したそうです。自力では動けないのでガンペリーで」

 

 それを受けブライトは、

 

「よし、すぐに発進させろ」

 

 と指示する。

 しかし、フラウの代わりに通信手として入ったバンマスが、

 

「ああ?」

 

 と声を上げた。

 

「どうした?」

「コロニー外に監視に残したドラケンE改からです。テキサスの反対側の港からザンジバルタイプの戦艦が出港すると」

 

 万が一に備え、監視の目としてP缶、プロペラントタンク二本差しのドラケンE改を待機させておいたのだ。

 

「なんだと? ガンペリーの発進は中止だ。ホワイトベース直進してガンキャノンとオムルたちを収容する」

 

 そう、決断するブライト。

 

 

 

「大佐、テキサスで何があったのです」

「ララァ、私にも悲しいことがあるのだよ。聞かないでくれるか」

 

 シャアはそう答えるが、彼の言う「悲しいこと」が妹アルテイシアとの別離なのか、いい年をした大人である彼が公式ロリ…… アルレットに、

 

「だから言ったじゃないですか、テストはまだ完全じゃないって!!」

 

 とマジに叱られ、頭を下げて謝り倒し、ようやくのことで許してもらったことなのか判断することは難しい。

 アルレットは本心で、心の底から純粋にシャアのことを心配して言っているので、シャアも誤魔化したり拒絶したりはできないのだ。

 ララァは優しいので何も聞かずに、

 

「わかります」

 

 と言ってはくれるが。

 

「ララァのおかげで私のザクも回収できた。すまんな」

 

 と彼女に感謝するシャア。

 もし回収できなかったら、さらにアルレットから叱られていたことだろう。

 

 

 

「よしミライ、発進だ。ザンジバルの使った港から出て追撃戦に移る」

 

 アムロたちを回収。

 反対側のベイエリアから出港しようとするホワイトベースだったが、

 

「第3シャッター付近に発信物体をキャッチしました」

 

 とマーカーから報告。

 

「爆発物か?」

 

 ブライトは確認するが、機雷だったら信号を出したりはしないだろう。

 

「……わかりません。ただ、非常に小さな物です」

「ええい、この緊急の時に。オムルに調べさせろ」

 

 

 

 モビルスーツデッキのハッチを開放して発信物を回収することに。

 デッキのガンキャノンLのモニターで確認したカイは、

 

「ブライト、爆発物じゃないらしいぜ。ただのゴミだ、ゴミ」

 

 と報告。

 

「おっとっとっとっとっと」

 

 とオムルがそれをキャッチする。

 

 

 

 ブライトは人払いをし、セイラと対面する。

 

「トランクに貼り付けてあった手紙がセイラ宛てだということしか私は知らん。オムルもだ。心当たりはあるのかね?」

「あります」

「私には検閲する権利もあるが、教えてもらえんか? トランクの中身と差出人のことを」

 

 そう、たずねるブライトに、セイラは感情を押し殺した声で、

 

「トランクの中身はきっと金塊だと思います」

 

 と答える。

 

「間違いないのだな?」

「おそらく」

 

 ブライトは核心に触れる。

 

「差出人は?」

 

 セイラが答えるまで、わずかな間があった。

 

「シャア・アズナブル、赤い彗星です」

 

 ブライトは瞳を見開き、

 

「……そんな馬鹿な」

 

 そうつぶやくほかなかった。

 

 

 

 先の約束を果たされんことを切に願う。

 あのやさしき、アルテイシア・ソム・ダイクンへ。

 キャスバル・レム・ダイクンより愛をこめて。

 

 手紙にはそう書かれていた。

 

「兄さん……」

 

 キャスバル兄さん、キャスバル兄さん。

 セイラは、いや、アルテイシアは物心ついた頃からいつもいつも兄の背中に向かってこう叫んでいたような気がする。

 兄の姿のあった時も、なかった時も。

 もう呼べないのか? キャスバル兄さん、と。

 

 

 

 セイラが、受け取った金塊を使えばモビルドールサラを買い取れると気づくまで、あと30秒……

 

 

 

次回予告

 人々の知らぬあいだに戦いは新しい段階に入っていった。

 たった一機のモビルアーマーの幻覚にも似た戦いがアムロを混乱させ、ガンキャノンの機能は落ちていく。

 次回『エルメスのシャリア・ブル』

 君は生き延びることができるか?




 ぶっちゃけたシャアの続きでした。
 この世界のシャアはこんな風に基本、無責任で自由に生きていく予定です。
 まぁ、イセリナには負けるんですけどね。

 そしてセイラはとうとう金の力で手に入れてしまうのでしょうか、モビルドールサラを……

 次の第39話はシャリア・ブルの登場ですが、彼の乗機が変化。
 史実でもこの辺はキシリアが圧力をかけていましたしね……

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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