ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第39話 エルメスのシャリア・ブル Aパート

 シャアとセイラの出会いはそれぞれの思いの食い違いをはっきりさせただけであった。

 ザンジバルはシャアのFZ型ザクを回収してテキサスを脱出。

 ホワイトベースもまたソロモンに帰還をした。

 そして、

 

「取り寄せたモビルドールサラをセイラに金の力で強奪された件について」

『あはは……』

 

 嘆くミヤビに苦笑するのはメンテナンスのためにやってきた、細いリボンを眼帯代わりに右目に巻いたモビルドールサラ。

 つまりハヤトを庇って損傷し予備機入りになったものを使用している、現在サラナイン専用機となっている一体だった。

 

「そういうわけで、ごめんなさい。あなたに回せる義体はそのままになってしまうのだけれど」

 

 とミヤビは済まなそうにサラナインに謝る。

 そう、元々は負傷したハヤトの世話をする彼女のために追加の取り寄せを行ったのだが。

 しかしサラナインはバツが悪そうに視線を逸らすと、

 

『えっと、その、ほら、この傷はハヤトさんのために負った名誉の負傷で、私の誇りですし』

 

 それに、

 

『こんな風に傷が付いていれば、手放しにくくなるかなぁって……』

 

 傷が付くほどよく使い込んだ道具は高くは売れないし愛着も出る。

 また自分の名前を書いたゲームカセットは売りづらくなってしまうとか、自分で改造したフィギュアは売れなくなってしまうとかそういう話かとミヤビは思う。

 それはサラと同一のAIプログラムを持つ存在である彼女に芽生えた、アイデンティティというものなのかもしれない。

 そして、そんな健気でいじらしいことを言うサラナインに、ミヤビの涙腺は決壊しそうになった。

 

「ごめんね、私が金の力に屈したばかりに不安にさせて」

 

 でも怖かったのだ。

 クレイジーサイコなんちゃらじみた表情で迫るセイラは。

 

「あのままだと金塊を靴下に詰め込み始めかねなかったし」

『はい?』

「即席のブラックジャック…… 殺してでもうばいとる……」

『金の力の意味が違います!?』

 

 要するに金塊と靴下でも簡易的に作ることができる鈍器、サップとかブラックジャックとか言われるやつだ。

 金は比重が重いので強力なものができそうだ。

 

 まぁ、セイラにとって兄よりモビルドールサラの方が重要なのかという話だったが、実際には違う。

 厳しい状況下では人は癒しを求めるもの。

 特に戦場では笑えなくなった者から順に、二度と笑うことができなくなる(=死んでしまう)ものだから。

 それゆえユーモアを込めた減らず口、ひとかけらのチョコレート、一杯のコーヒーや紅茶、そういった頬を緩ませるもの、心を癒すものが必要。

 セイラにとっては、モビルドールサラがそうなのだろう。

 心を持った少女の姿をしたAIというのはこのためにも、いや、このためにこそ必要なのかも知れなかった。

 

『ふぁぁっ!? せ、セイラさん落ち着いて!!』

「ウフフフフフーッ」

 

 遠くから聞こえてくるのは、

 

『サラスリー姉さんとセイラさん?』

 

 とサラナインが言うとおり、セイラに強奪されたモビルドールサラの中の人はサラシリーズ随一の苦労人、サラスリーである。

 

(サラスリーは犠牲になったのだ……)

 

 ガタガタプルプルと恐怖に震えながら、罪悪感に身を焼かれるしかないミヤビ。

 心の中とはいえネタ発言しかできないのは、それだけ精神的に追い込まれている証だった。

 

 

 

 昨日まではジオン公国の宇宙戦略の一翼を担っていたソロモンではあったが、今や地球連邦軍の拠点として活動を始めていた。

 これによって、連邦はジオン侵攻の強力な足掛かりを得たのである。

 援軍で戦力が補強され、連邦軍の乾坤一擲の作戦が開始されるのもすでに時間の問題と思われた時、ソロモンに奇妙な事件が起こった。

 

 何の前触れもなく、攻撃を受け撃沈されるマゼラン級宇宙戦艦。

 哨戒のためソロモンの地表で待機していた量産型ガンキャノンが、周囲の作業員を巻き込み爆発し。

 大破し操艦不能となったコロンブス級輸送艦が、護衛のサラミスと衝突し、互いに爆発を巻き起こす。

 

 

 

「ま、また聞こえるぞ、ララだ」

 

 接収作業中のソロモンの司令室。

 レビル将軍を迎え入れたその場所でも事態は察知していたが、

 

「コースはEの6だが」

「現場なら敵が見えるだろ。え? こっちは電気系統の整備がまだ終わっちゃいないんだ、見える訳がないだろ」

 

 まだ機能を掌握、損害の復旧を完了していないこの場所では現場の判断に任せるしかない。

 

「おい、どうした? 38エリア、38エリア」

 

 その現場からも通信が途絶し、担当の士官は青ざめた顔で振り返る。

 

「将軍……」

 

 しかしレビルにできることは、うろたえずにどっしりと構えることのみであった。

 損害は周辺宙域に展開する艦船や機動兵器から、ソロモン本体にまで広がりつつあった……

 

 

 

 ソロモンを視認することもできない遠方から、爆発の閃光のみを確認し仮面の下の目を見開くシャア。

 

「すごいものだな。あの輝きがララァの仕掛けたものとは、この私にも信じられん。ニュータイプのララァとモビルアーマー・エルメス、これほどのものとは」

 

 シャアのFZ型ザク、その隣には緑色の大型モビルアーマー、エルメスの姿があった。

 そう、今ソロモンを襲っているのはエルメスのサイコミュが操作する無線攻撃端末、ビットによる遠隔攻撃なのだ。

 

 

 

 ホワイトベースでも爆発する味方艦を確認。

 

「なんだ? 爆発だぞ。マーカー、敵はどこにいるんだ?」

 

 即座にブライトはオペレーター席のマーカーに問うが、

 

「見当たりません。どのみち、ミノフスキー粒子がえらく濃いようで」

 

 ビーム攪乱膜などを張った後の宙域である。

 こうなるのは当然。

 一方、ニュータイプ能力なのかそうでないのか、カンの鋭いところのあるミライは、

 

「なにかしら? 何かが呼んでいるような気がするわ」

 

 とつぶやく。

 ともあれブライトは、

 

「対空監視を全員にやらせろ」

 

 できることを指示。

 そうしてから、

 

「ミライ、どうした?」

 

 とミライの様子を気に掛ける。

 

「え?」

「体の具合でも?」

 

 ブライトの気遣うような視線にミライは、

 

「あ、いいえ、そうじゃないの。とにかく変なのよ、このソロモンの周り、すごく」

 

 と言葉を濁す。

 カンというものは言語化できない暗黙知。

 だからこそ通じない人間には分からないし、言葉にするとこんな曖昧な言い方になってしまう。

 そしてブライトは常識的な能力と思考の持ち主であるから、

 

「変? そりゃ、殺気みたいなものは感じるが」

 

 という無難な理解に落ち着くことになる。

 

「ブライトさん」

 

 そこに通信手を務めるフラウから報告。

 

「なにか?」

「ホワイトベースは第一戦闘配置を取って入港を待て、とのことです」

「了解」

 

 そうしてブライトは指示。

 

「第1デッキ、第2デッキ、各機、発進! 第一戦闘配置を取らせろ」

 

 

 

「人使いが荒いんだから、まったく」

 

 ぼやきながらガンキャノンLのコクピットにつくカイ。

 そんな彼に、サラスリーが声を潜めて告げる。

 

『気を付けて、カイさん。敵は幽霊のように姿を見せずに攻撃してるって話です』

 

 ホワイトベースの戦術コンピュータにインストールされたサラが周囲の通信を拾って集約し、共有化させてくれた情報だ。

 

「そんなん、どうやって気を付けんだよ」

『……消極的ですが、120ミリ低反動キャノン砲で対空弾を使いましょう。ようやくレーザー近接信管が供給され始めましたし』

 

 敵機の接近を検知して爆発、破片の散弾を浴びせる対空弾はミノフスキー粒子の影響で近接信管が使用できなくなり、これまでは事前にセットした一定距離、一定高度で爆発する時限信管頼りになっていた。

 しかし西暦の時代でも対ステルス機用になど、一部で実用化されていたレーザー近接信管なら影響を受けないわけで、ミノフスキー粒子対策の施されたそれが、ようやく供給され始めたのだ。

 

 ただしモビルスーツは西暦の時代の航空機と違って戦車並みかそれ以上の装甲を持っている。

 ゆえに砲弾もミサイルも徹甲弾やHEAT弾頭(成形炸薬弾頭)の直撃でなくては効果が薄く、対空弾によって破片を浴びせかけても、

 

「散弾ではなぁ!」

 

 で終わってしまうのだ。

 

 つまりこの時代のモビルスーツへの対空防御というのはミサイル等の誘導兵器無し、レーダーの支援無しで目視による直射のみ、対空弾の近接信管も時限信管も無しで直撃させるほか無いという第二次世界大戦初期の艦船以下のレベルの効果しか持たないということでもある。

 まぁ、そんな微妙な扱いの近接信管、対空弾だったが、

 

『大体の位置に向かって放てば、撃墜できずとも何らかの効果はあるはずです』

 

 ということだった。

 

 

 

 一方、アムロはというと、修理中のガンキャノンを見上げ、

 

「くっ、間に合わなかったか」

 

 と歯噛みする。

 そこに、

 

『ならアレックスを試してみる?』

 

 そう声をかけたのはニュータイプ、アムロ向けに強化されたツヴァーク、NT-1アレックスにもインストールされたサラツーだった。

 当初はサラ・NICNと仮称される、しかし素のままのサラがインストールされていたが、RXシリーズの系譜にある試作機なのでどうせ機密扱いの機体だし、元々AIプログラムそのものは共通だしということでテム・レイ博士の許可の元、サラツーをサラ・NICNと融合(フュージョン)させることでコピー移植されていた。

 

「そうだね、敵の位置も分からない状態だし、ホワイトベース周辺で警戒するならツヴァークでもいいか」

 

 とアムロはアレックスで出撃することにする。

 

 

 

「ああ、サラナイン。僕も行くよ」

 

 病室のベッドから身を起こすハヤト。

 

『サンマロさんに怒られますよ』

 

 とサラナインが制御するモビルドールサラが苦言を呈すものの、

 

「大丈夫、もう大丈夫だよ」

 

 ハヤトはそう言って聞かない。

 その上で、

 

「サラナインは僕と出撃するのは嫌かい?」

 

 とずるい、卑怯すぎる聞き方をする。

 

『わ、私はサポートAIですから、マスターのお役に立てることに嫌はありませんけど……』

 

 そうしてもじもじとうつむきながら、

 

『それに、出撃すればコクピットでハヤトさんと二人っきりになれますし』

 

 か細い声でつぶやくようにサラナインは言う。

 

「あ…… うん……」

 

 釣られたように顔を赤らめるハヤト。

 その空気に耐えられなくなったように、サラナインは手のひらサイズの歩行型ミニドローン、モビルドールサラの小さな手でハヤトをポカポカと叩く。

 

『も、もうっ、何ですかーっ! 自分で言わせておいて照れないでくださいっ!!』

「あ、いや、思いがけず積極的な言葉だったから」

『――っ!?!?!?』

 

 もうバカバカバカーっ、と一層照れるサラナイン。

 立派なバカップルにしか見えない二人だった……

 

 

 

 なおハヤトたちの会話は、様子を確認するようブライトから指示を受けた通信手席のフラウがつなげた通信装置でブリッジに届いており……

 

「フラウ、君を信じているが、戦いに私情は持ち込むなよ」

 

 フラウの後ろに立ってモニターを見ていたブライトは恐る恐るといった様子で声をかける。

 フラウは餡子でも食ったのかという黒い笑みを浮かべ、

 

「ブライトさん、私の今までの行動は嘘じゃないですよ」

 

 と突っぱねる。

 ブライトは腫れ物に触るかのように、

 

「指揮官として確認したまでだ。信じているよ」

 

 と気を使った言い回しでそれに答えた。

 

「ありがとうございます」

 

 暗黒の微笑を浮かべ、それに答えるフラウ。

 ブライトは顔を引きつらせながらその場を離れ、癒しを求めてオッパ…… ミライの方に歩み寄る。

 

「なにかあったの? ブライト」

 

 離れた位置で舵を預かるミライには、ハヤトとサラナインの会話は聞き取れなかったのだろう。

 アレ抜きでフラウとの会話を聞いたら、確かに疑問に思うだろうとブライトはため息をつき、

 

「ん、なにかフラウが一人で悩み事を抱えているようでね」

 

 と当たり障りのない答えを返す。

 ミライは通信手席で悶々とブラックホールクラスターを形成するフラウを見て、

 

「そうね」

 

 とうなずくのだった。

 抱えているのは悩みではなく闇じゃないかと感じながら。

 

 

 

「行きます!!」

 

【挿絵表示】

 

 ツヴァークNT-1アレックスに乗り込み、カタパルトで射出されるアムロ。

 

「ガンキャノンL、行くぜ」

 

 次いでカイとセイラのガンキャノンL、ロングレンジタイプが出撃。

 後はスレッガーのドラケンE改可翔式、ミヤビのドラケンE改。

 リュウのコア・ブースターが続く。

 

 

 

「あっ?」

 

 アムロの視界の中、閃光が走りサラミスが墜ちる。

 

「またか」

 

 周囲に、見えない敵に気を配るアムロ。

 

「……呼んでいる」

『アムロ?』

 

 自分に聞こえないものが聞こえている様子のアムロにサラツーは首を傾げるが、

 

「なにか、呼んでいるような気がする。なんだ? なにかが見えるようだ。なんだ?」

 

 とアムロはさらに集中。

 サラツーはそれを妨げないよう、周囲からの通信は自分が受けるようにしてアムロを雑音から遮断する。

 その甲斐があってか、もしくはニュータイプ向けに反応速度をチューニングした機体ゆえのことか、

 

「そこっ!」

 

 尻に装備された可動ノズルによる推力偏向制御ロケットエンジンと手足をぶん回すAMBAC(active mass balance auto control。能動的質量移動による自動姿勢制御)、そしてローラーダッシュ機構を利用したリアクションホイール、三者を組み合わせることで達成した、より高度な姿勢制御。

 機体を反転、とっさにHRAT-23ハンドロケットランチャーを向けた先。

 そこに3連式多目的カメラモジュールが姿なき襲撃者『ソロモンの亡霊』と呼ばれるものの正体を辛うじて捉える。

 

「これは!?」

 

 しかし次の瞬間、それは猛烈な勢いで去って行った。

 

 

 

 ビットがいったん、エルメスへと帰還する。

 エルメスには後部に二か所のハッチがあり、そこからビットを収納できるのだ。

 そうして、大きく息をつくララァ。

 

『ララァ、疲れたか?』

 

 と問うシャアに、

 

「はい、大佐。でも大丈夫です、まだやれます」

 

 そう答える。

 しかし、

 

「いや、今日はやめておこう。戦果は十分に上がっている。一度休んだ方がいい」

 

 とシャア。

 

「はい、大佐」

 

 ララァはうなずくとエルメスの機首をめぐらせる。

 スラスターではなくフライホイールを用いたコントロール・モーメント・ジャイロスコープを使っての制御だ。

 

 そうして帰還するエルメスの機体を掴んで曳行されるシャアのFZ型ザク。

 この機体はF型ザクの70パーセント増しの推力を持ちながらも推進剤の量は変わらない機体であるため、最大推進戦闘時の限界時間は半分になってる。

 それゆえに長距離移動時は、こうして推進剤を節約するのだ。

 

 一方、その周囲を固めるのはモビルアーマーに追従するため、リック・ドムの脚部を排除してスカート内に直接ロケットエンジンをマウントすることで推力比を上げたリック・ドムK型である。

 

【挿絵表示】

 

 K型は高速なモビルアーマーのエスコートという特殊用途向けであり、取り扱いも特殊なのだが。

 ミヤビの前世の記憶の中にあるユニコーンガンダムに対するジェスタみたいなもので、こういう露払いする機体が無いと、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』におけるサザビーのように雑魚敵にビームを使いまくった結果、肝心のアムロ戦で息切れしてパワーダウンして勝てないということみたいになりかねないのだ。

 

 

 

「き、聞こえなくなった。何が聞こえていたんだ?」

 

 アムロは急に静かになった宇宙(そら)に、目を瞬かせる。

 

「確かに何かが呼んでいたのに」

 

 なお、早期に敵が引き上げたため、イチャイチャしていたハヤトとサラナインは出撃が間に合わなかった模様……




 金のちからってすげー!

 ま、まぁ、セイラの行動は傷心ゆえの一時的なものでしょうけど。
 一方、フラウは…… サラナインのターンが本気で終わらないんですけど……
 どうしてこうなった。

 そしてエルメスの登場。
 史実では今回のエルメスによる攻撃はまったく察知されず『ソロモンの亡霊』と呼ばれていましたが、ニュータイプ、アムロ向けに強化されたツヴァークNT-1アレックスのおかげでビットの撮影には成功した模様。
 これを基に対策を立てるわけですけど、『機動戦士ガンダムUC』でスタークジェガンがクシャトリヤ相手に見せた戦法など、割と色々ありますよね対オールレンジ攻撃戦術。
 このお話ではどのように転ぶのかは今後のお楽しみで。

 次回はジオン側、そしてシャリア・ブル側のお話となる予定です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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