ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件 作:勇樹のぞみ
しかし、
「効かぬと言った!」
直撃でなければ、近接信管による対空弾など牽制にしかならない。
実際、コントロール中のビットからは損害は出ていない。
だが、
「こ、これは!」
驚愕する、シャリア・ブル。
「見える!!」
ガンキャノンLからの攻撃を受けたビットの動きを、回避し続けながら観察するアムロ。
セイラの放った砲弾は演習用のペイント弾でありケミカルライト、発光塗料をぶちまけるものだった。
西暦の時代でもサイリウムが軍用に用いられていたように、この辺は色々と使われているのだ。
その発光により、ビットの動きは手に取るように認識することができた。
「し、しかし……」
それでもまだ足りない。
敵の手数が多過ぎて、ガンキャノンの動きではそれを乗り越えることができないのだ。
そこへ、
『行くぜ、アムロ!』
「カイさん!?」
後方から高速で突っ込んでくる機体。
「あれはガンキャノンL?」
『でも速過ぎるよ、アレ』
とサラツー。
あっという間に距離を詰める機影。
サラツーの解析で映像を確認し、アムロは唸る。
「これは……」
『ガンキャノンLの下半身、Bパーツを外して代わりにコア・ブースターを取り付けてあるね』
ということ。
『機動戦士ガンダム』本編では対ザクレロ戦で使用されたガンダムをうつ伏せにしGパーツBを足に履かせた高速戦闘形態、ガンダムモビルアーマーモードがあった。
そして小説版『機動戦士ガンダム第08MS小隊』では、それに似たような感じでEz8の下半身をコア・ブースターに変更して飛行可能にした機体が登場していた。
コスト削減による構造の簡素化のためコア・ブロック・システムが省略されている陸戦型ガンダム、その現地改修機Ez8よりは、コア・ファイターのドッキング機構が生かせるガンキャノンLの方が実現は簡単か。
『カイ、機首をコンマ6上げて』
ニュータイプとしての素養を持つがゆえの読みでカイを導くセイラ。
『りょーかい、愛してるよセイラさん!』
そんな軽口をたたきながらもカイの操縦するブースター付きガンキャノンLは、その両脇に抱えた火器を構える。
『くらえ!』
発射された弾体が割れて広くネットが射出され、ビットをからめ取る!
「面だ!! 徹底的に面で攻撃しろ」
後方、引いた位置から指示するスレッガー。
『スレッガーさん!! ネットに絡み取られた敵無線制御攻撃ユニットの動きが鈍って、あ、アムロさんの攻撃を受けて撃墜されました』
戦場をモニターしていた、ドラケンE改可翔式にインストールされているサラからの報告。
ガンキャノンLが使用したのは『機動戦士ガンダム第08MS小隊』で陸戦型ガンダムがモビルアーマー、アプサラスIIの捕獲のために使用したネットガンだ。
小説『機動戦士ガンダムUC』では小型モビルスーツ、ロトがクシャトリヤに対してファンネルをネット弾で絡めとり、地表へ墜落させて無力化する「対サイコミュ兵器戦術」を使用していた。
これは重力下での作戦ゆえのことだったが、無重力の宇宙でも動きを阻害する程度の効果はある。
「文字どおり手も足も出んだろ」
とスレッガーが言うとおり、元々敵機を捕縛するための特殊兵器であり、しかも除去するためのマニピュレータを持たないビットではどうしようもない。
そこまで考えて用意されたものだ。
「能力のネタが分かってる分、注意してれば反撃できる……」
カイは自分に言い聞かせるように、いや怯えそうになる自分を鼓舞するかのようにつぶやくと、ガンキャノンLに撃ち終えたネットガンを捨てさせ、そして左腕に抱えていたもう一丁を構えて、
「さらにもう一発!」
ズン、という手ごたえと共に撃ち出されたネットがビットを絡め取ったら、止めを刺すのはアムロに任せ……
「まくるぞぉ!!」
と同乗しているセイラに対G姿勢を取るように注意。
コア・ブースターのロケットエンジンに、ガンキャノンLの背面、メインロケットの推力をプラスした全速力でケツをまくって逃げ出す。
「ぐぅぅぅぅっ!」
そうしてエルメスとビットの反撃を辛くも回避し、オールレンジ攻撃の虎口から辛うじて逃れることに成功する。
「あの逃げ足の速さが最後のサイコミュ対策ね」
戦場を見つつ、つぶやくミヤビ。
オールレンジ攻撃は圧倒的に見えて、実際には『端末の射出』→『敵機の目を誤魔化しての移動』→『射点への配置』という攻撃のための下準備、プロセスを踏まないと上手く機能しない。
またビットには小型攻撃端末故のプロペラント、燃料搭載量の限界(将来的に現れる、小型化されたファンネルならさらに)というものもある。
AMBAC作動肢も持たず(フィンファンネルなどは可動部が多少、AMBAC効果を持つらしいが)姿勢制御、方向転換はスラスター頼りなのでなおさら燃料の消費は早い。
つまり敵モビルスーツに圧倒的な機動力を持たれてしまうと食いちぎられてしまう、対応しきれないということで。
それゆえモビルスーツの能力が高まるにつれニュータイプ機も宇宙世紀0090年代『逆襲のシャア』のサザビーやニューガンダム、ヤクト・ドーガ等のようにオールレンジ攻撃とは別に本体の白兵戦能力が重視されるようになり、宇宙世紀0100年代以降はオールレンジ攻撃機能を持った兵器そのものが少なくなっていった、とも考察されていた。
カイたちの援護のおかげでビットの動きは目に見えるようになり、その数も減った。
「……敵は」
集中するアムロの脳裏に、あのククルス・ドアンの島での体験がよみがえる。
「明鏡止水……」
月光を水のように浴びながら幽玄とたたずむ女性。
「曇りの無い鏡のごとく、静かにたたえた水のごとき心。わだかまりや、やましさのない澄んだ心。それが明鏡止水」
ほっそりとした曲線を、ほの暗い夜の闇に浮かび上がらせるミヤビ。
「それが人に己を超えた力を持たせることができる……」
「明鏡止水、か……」
アムロはあの島の自然を思い起こす。
滝の打つ音、清水の流れ、そして、水の滴が落ちるイメージ。
(見えた! 水の一滴ッ!)
「敵の攻撃端末がいくつあってもコントロールしているのはただ一人! なら!!」
ガンキャノンを突っ込ませるアムロ。
「敵の攻撃全体を、川のような、滝のような一つの流れとして捉えれば、何体を相手にしていても問題ない!!」
「本気……?」
凡人のミヤビには、理屈は分かっても実行できるとは思えないのだが、視線の先の黒いガンキャノンはオールレンジ攻撃を紙一重で避け続けながら突貫する。
「デタラメね」
としか言いようのない能力。
「なんだ? 見つけたのか?」
急速接近してくるガンキャノン!
シャリア・ブルはビット、そしてエルメス本体のメガ粒子砲で攻撃を加えるが、ことごとくかわされ、そして、
「しまった!」
コクピットを、ビームライフルにより貫かれる!
「や、やったか」
大きく息をつくアムロ。
しかし、それを見守るサラツーの瞳は揺れていた。
もちろんアムロにもその理由は分かっている。
「し、しかし、ガンキャノンに無理をさせすぎた」
ということ。
「ガ、ガンキャノンの操縦系が僕のスピードについてこれないんだ。今さっきのような敵が来たらもうアウトだぞ」
「シャリア・ブルまで倒されたか」
つぶやくシャアにララァが、
「今すぐ出ればガンキャノンを倒せます」
と進言するが、シャアはそれを止める。
「あなどるな、ララァ。連邦がニュータイプを実戦に投入しているとなると、あの黒いガンキャノン以外にも」
「そうでしょうか?」
言い募るララァに、シャアは言う。
「戦いは危険を冒してはならぬ。少なくともソロモンに居る黒いガンキャノンは危険だ。それに、シャリア・ブルのことも考えてやるんだ。彼はギレン様とキシリア様の間で器用に立ち回れぬ自分を知っていた不幸な男だ。潔く死なせてやれただけでも彼にとって」
「大佐、大佐はそこまで……」
息を飲むララァ。
「ララァ、ニュータイプは万能ではない。戦争の生み出した人類の悲しい変種かもしれんのだ」
「そ、そんな、そんなこと……」
「思い起こすがいい、ララァ。シャリア・ブルとの会話を」
「大佐?」
「私は色々と彼を試すようなことを言ったが、彼は慎重に、誠実な、一つも誤りの無い回答をしたな」
「はい、あの人はニュータイプとしての力で……」
「それが彼の不幸だ」
シャアは言う。
「彼は自分に対し『過ちを犯すこと』を許すことができんのだ。常人にはそんな生き方はできんが、彼はニュータイプ能力を持つがゆえに通用してきたのだろう」
シャリア・ブルはギレンに対し、
「総帥はこの戦争を一ヶ月で終わらせてみせるとおっしゃってました」
と言ってのけた。
国民としてそれは正しい主張なのだろう。
そして彼は他人に正しいことを要求するなら自分も正しくなければならないと、ギレンとの問答も正しいことしか言わなかった。
その上で、ジオンの30倍の国力を持つ連邦に対する独立戦争を一カ月で終わらせられなかったことに対し批判するのであれば。
それより容易いはずのギレンとキシリアから課せられたこと、つまりニュータイプとしての力を発揮して見せること、そのために黒いガンキャノンを倒すことをやって見せねばならない。
そうでなければ自分はただ単に無責任な不平不満を指導者にぶつけたに過ぎなくなる。
ただの不満分子に堕ちてしまう。
「彼は…… シャリア・ブルは自分の決めた『正しいこと』という行動規範にがんじがらめになってしまうタイプなのだろう」
シャアは語る。
「そんな極端な生き方、普通なら途中で挫折してしまうが……」
「あの人はニュータイプとしての力で何とかしてしまい、ここまで来てしまった?」
自分の言いたいことを察してくれたララァにシャアはうなずく。
「そうした彼は自分のニュータイプ能力が通じない相手、自分以上のニュータイプという乗り越えられない壁に当たった時、自己撞着を起こしてしまった」
それはシャア自身にも無関係なことではない。
「普通に考えれば、卑怯でも惨めでも何でもいいから逃げれば良かったのだ。だが、多分彼は『逃げることはいけないこと』という己の行動規範に縛られ、それを選ぶことができなかった」
ミヤビの知る史実ではシャアもまた高い能力でのし上がった、負けることが無かったがゆえに、しかしアムロという乗り越えられない壁にぶち当たっても、戦い続けるという選択肢しか持てず、ついには破滅した。
この世界でのシャアは、イセリナ、ララァ、アルレット、そしてミヤビと出会い、それが故に開き直ることができた。
だからシャリア・ブルが自らはまった陥穽に気付き、理解することができるのであろう……
ブリッジを後にするシャア。
その彼の後姿を複雑な表情で見送るアルレット。
「やっぱり大佐は……」
「どうしたんだ?」
彼女のつぶやきを、相棒のダントンが拾って聞く。
しかし彼女は、
「……何でもないわ」
そう答える。
フラナガン機関の実験体だったアルレットはエルメスのサイコミュ装置の起動に失敗し、そして廃棄処分が決まった。
今生きているのは、そんな彼女をシャアが拾ってくれたおかげだ。
どうしてシャアはシャリア・ブル大尉にエルメスを渡したのか。
いくら彼が断わったと言っても、どうして援護を行わなかったのか。
もしかするとアルレットに暗い因縁を持つエルメスを、この機会に処分してくれたのではないか?
ミヤビの前世の記憶で言うなら小説『銀河英雄伝説』において皇帝ラインハルトがガイエスブルク要塞を失っても良いとばかりに作戦に投入し、そして喪失した、させたのも唯一の友、キルヒアイスを失った場所だったからだろうという描写があったが……
考えこむアルレットに、もう一人の恩人、ララァは微笑むとこう語りかける。
「大佐は純粋な人よ」
と。
「……分かる、ような気がします」
アルレットはそう答え、シャアの消えたドアを見つめるのだった。
一方、ホワイトベースでは深刻な事態に陥っていた。
心配されていたガンキャノンの操縦系のひずみが現実のものとなった。
つまり、アムロの発達し始めた反射神経にガンキャノンのシステムがついていけなくなったのである。
なお、
「原理的に、速過ぎる操作は無視されるはずでは?」
と首をひねるミヤビと、
『炎のコマって、本当に機械の反応を超えられたんですね!』
などと感心しているサポートAI、サラが居たりしたが……
次回予告
急場しのぎのシステムを使いガンキャノンはレビル艦隊を追う。
その艦隊の前に、ジオンの防衛線の中に、一機の鮮やかなモビルアーマーが乱舞する。
次回『ブラレロのララア』
君は生き延びることができるか?
テム・レイ博士プロデュース、スレッガー中尉指揮の対オールレンジ攻撃戦術の続き、そして決着でした。
一年戦争中にある技術と器材で、できる限りやったという感じですね。
> そして小説版『機動戦士ガンダム第08MS小隊』では、それに似たような感じでEz8の下半身をコア・ブースターに変更して飛行可能にした機体が登場していた。
こちらは感想にて情報提供してくださった方のご意見を参考に反映させたもの。
このように、頂いたご意見、ご感想は作品作りに生かさせていただいております。
展開の都合上、ご提案していただいてからずいぶんと間があったわけですが。
次の第40話ではガンキャノンのマグネットコーティング。
そしてサブタイトルどおり「大佐、私専用のザクレロが欲しいわ」「えっ」な機体が本格的な活躍を開始します。
みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
今後の展開の参考にさせていただきますので。