ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第43話 脱出 Bパート

「おい、しっかりしろ、死ぬんじゃないぞ」

 

 連邦の艦には大破、ア・バオア・クーに着底するものも現れ始める。

 

「あとはモビルスーツ隊に任せろ」

 

 とは言うものの、生身の兵もまた銃を取らねば生き残れない状況だ。

 しかし、

 

『だーいじょうぶ! まーかせて!』

 

 ローラーダッシュでスライドするかのように現れるドラケンE改のサラは、彼ら乗員たちを守るべく左腕、二重下腕肢先端の精密作業用マニピュレータの指を立てて意気軒昂!!

 まぁ、狭い要塞内ではドラケンE改のように小回りが利き、しかし歩兵の火器では容易に撃破できない小型機体は、かなり有効な兵器ではあるのだが。

 

 

 

「シャアだってわかっているはずだ。本当の倒すべき相手がザビ家だということを。それを邪魔するなど」

 

 何とかシャアを退け、ア・バオア・クーへ向かおうとするアムロ。

 

「……今の僕になら本当の敵を倒せるかもしれないはずだ。ザビ家の頭領がわかるんだ」

 

 

 

(ほう、分かるのか)

 

 仮面の下の表情を歪ませるシャア。

 

「その力、ララァが与えてくれたかもしれんのだ、ありがたく思うのだな」

 

 アムロを挑発しながらその機体の後を追う。

 

「貴様がララァを戦いに引き込んだ!」

「それが許せんというのなら間違いだな、アムロ君」

「な、なに?」

「戦争がなければ、ララァのニュータイプへの目覚めはなかった」

「それは理屈だ」

「しかし、正しいものの見方だ」

 

 

 

「Sフィールド、ドロワ撃沈!」

「シャア大佐のブラレロを回せないか!?」

「無理だ。大佐には木馬のガンキャノンを抑えてもらっている!」

「代わりに第18中隊を当てて……」

「無茶を言うな! 死にに行くようなもんだぞ。あの黒い化け物がシャア大佐以外に抑えられるか!」

「シャア大佐と戦いながら鎧袖一触ですれ違いざまに周囲のモビルスーツを墜としてくる相手だぞ。むしろ近づかせるな、大佐の邪魔だ!」

 

 Sフィールドで頑張っていた超大型空母、ドロワも沈み、その穴を埋めるために四苦八苦しているア・バオア・クー司令部。

 その喧騒を聞きながら、木馬のガンキャノン一機に懸かり切りになっているシャアにキシリアは、

 

「赤い彗星も地に墜ちたものだな」

 

 などと言い捨てる。

 

「しかし、ガンキャノンのパイロットがニュータイプとして異常発達したものならば、やむを得ぬというところか。そうだな?」

「は、閣下」

 

 そしてキシリアはトワニングに耳打ちする。

 

「私の脱出15分後にここを降伏させるがよい」

 

 驚きに目を見開きながらも、それ以上、表情に出すことは抑えるトワニング。

 

「し、しかし」

 

 小声で抗弁しようとするトワニングに、しかしキシリアは、

 

「グラナダの戦力と本国の戦力が残っているうちにな」

 

 と意図を明かす。

 

「し、しかし、今となっては脱出こそ至難の業かと」

「私が生き延びねばジオンが失われる」

 

 今は自分がジオンだと強弁するキシリア。

 トワニングはこらえるように短く沈黙した後、

 

「降伏後、私の身柄は?」

 

 と聞く。

 

「捕虜交換の折に引き上げよう」

「は」

 

 そうしてトワニングを納得させ、キシリアは声を張り上げる。

 

「グワジンの用意を!」

「ただちに」

 

 今なんて言った!? と驚愕する周囲に、

 

「お前たちには任せてはおけぬ。私自らが出る!!」

 

 と言い放つ!

 自ら出撃して士気を上げる、というポーズで装甲の厚いグワジンを前線から引き抜き脱出に使おうという腹積もりである。

 そして司令部の要員たちからは、

 

(この状況で無茶苦茶言うな!)

 

 という話で。

 彼らはこのひっ迫した状況から戦場を維持しつつグワジンを後方に下げるという地獄の調整を強いられるのだった……

 

 

 

「まるでアリじゃねえか、あっちこっちと」

 

 ア・バオア・クー内へ突入したカイは、100ミリマシンガンで敵を牽制しながら前に進む。

 敵が遮蔽物に立てこもれば、

 

「榴弾を」

『はい、セイラさん!』

 

 セイラが肩の120ミリ低反動キャノン砲にサラスリーが装填してくれた榴弾を撃ち込む。

 閉鎖空間では、爆発が与えるダメージは跳ね上がることになる。

 それを利用した攻撃だった。

 

「カイ!」

 

 セイラからの警告。

 

「のわあああっ!」

 

 物陰から不意に飛び出てくるザク。

 カイは左腕に装備した曲面シールドの尖った先端で打突、首をもいでやる。

 このシールド先端は地面に突き刺して立てて防御する他に、こうして首や関節に叩き込んでもぎ取る格闘武器として使用できるものだ。

 まぁ、ミヤビの認識だとアニメ『重戦機エルガイム』の主人公機、エルガイムのバインダーと称されるシールドの先端が同形状、同機能を持っていたし。

 現実でも機動隊ではジュラルミンの盾のフチで相手の足を潰したり角で殴りつけたりなどしていた、盾のフチは武器でもあるという話だった。

 

 カイはさらにそこに100ミリマシンガンを撃ち込んで止めを刺す。

 ブルパップ方式の90ミリマシンガンに比べ、信頼性と大口径ゆえのストッピングパワーに優れ、現場の兵たちから絶大な支持を受けているものだから、すぐにザクも沈黙する。

 しかし慌てたせいでカイはトリガーを引きっぱなしにして弾を使い切ってしまい、弾倉が空に。

 

「弾をくれ!! 弾だ!! 弾をよこせ!!」

 

 モビルスーツの銃器への弾倉の再装填は通常オート。

 

『カイさん、これで予備弾倉はお終いです』

 

 サラスリーはそう伝えながらシールド裏面に懸架していた予備弾倉、その最後の一つを100ミリマシンガンへと装着。

 

「ちっ、100ミリはこいつでカンバンか」

『そろそろ戻りますか? 腰後ろのラッチにはまだいつものスプレーガンが残されていますけど』

 

 カイはバックアップには使い慣れたビームスプレーガンを携帯していた。

 狭い要塞内での戦闘は、人に例えるならCQB(クロース・クォーターズ・バトル、近接戦闘)、拳銃や短機関銃による射撃や白兵戦が効果的とされるものである。

 100ミリマシンガンもそうだが、コンパクトで取り回しの良い武器は使いやすい。

 

 アムロなら近接戦闘のためヒートホークを装備しているところだが、素人に、刃筋を立てないと上手く扱えない刃物はお勧めできない。

 それゆえカイは先ほどのザクのように白兵戦を仕掛けて来る敵にはシールドを打突武器とすることでしのぎ、100ミリマシンガンがダメでもバックアップである拳銃状のビームスプレーガンを抜き撃ちにして対応すればよいと考えたのだ。

 

『通信を拾った限りですと、連邦軍は優勢です。ジオン側もここはもう撤退だって言ってます』

 

 カイはうなずいて、

 

「勝つとなりゃ、ここを引き上げてもよかろう」

 

 と決断する。

 

『じゃあ、スレッガー中尉にも伝えますね』

 

 

 

「な、なんだこいつは?」

 

【挿絵表示】

 

 カイたちと共に撤退を開始したスレッガーが出くわしたのは、要塞内回廊に並ぶ真空用医療パックと負傷兵。

 そしてこの絶望的な状況でも忙しく立ち回るジオンの医療従事者たちの姿だった。

 治療を受ける兵の中には連邦兵の姿も見える。

 スレッガーはただちにドラケンE改可翔式の武装を向けることを止め。

 

「こんなところで何やってる!」

 

 と問う。

 どうやら負傷兵の救護のため前線に駆り出されて、そのまま敵味方関係なく治療を続けていた模様。

 しかし通常なら応急手当てをした後に後送しなければならないはずの、患者を収納した医療パックがその場に並んでいる。

 すでにア・バオア・クー内も損害が激しく、この医療中隊は孤立状態にあったのだ。

 

『どうします、スレッガーさん』

「どうするったってお前……」

 

 スレッガーは、サラから向けられる、すがるような視線にやれやれと肩をすくめる。

 そして、

 

「やるしかないだろう」

 

 そう答えるのだった。

 

 現場の責任者を説得する。

 この場は危険であり、退避する必要があるということ。

 近くで言えば、ホワイトベースが一番耐久力のある船であり、医療設備も整っているということ。

 ダメなら連邦の兵だけでも引き取らせてくれと。

 

『どうかお願いです、あなたたちを助けさせてください!』

 

 この時、ドラケンE改可翔式にインストールされたサラの説得が兵たちの心を動かすのに大きな役割を果たした。

 スペースノイドには、ドラケンE改とサラに触れた経験を持つ者も多い。

 AIである彼女が、敵も味方も関係ないとばかりに懇願し、そしてそのマスターである連邦の中尉も彼女の意思を尊重する。

 その姿に戦前の自分と、ジオン本国に残してきた自分のサラの姿がダブるのだ。

 思わず、涙をにじませる者も居た……

 

「それじゃあ、行くぜ」

 

 医療パックをワイヤーで数珠繋ぎにして、ドラケンE改可翔式でけん引する。

 医療従事者たちはそれに捕まらせて一緒に運ぶのだ。

 負傷兵の後送だと周囲に知らせれば、敵味方関係なく進路を開け、戦闘を控えてくれた。

 

『ああ、ありがとうございます。ありがとうございます、みなさん!』

 

 宙域に、共通回線で涙ぐむサラからの感謝の言葉が響き渡る。

 だが、

 

『スレッガーさん!?』

 

 急に、牽引する負傷兵たちが耐えられるギリギリの速度で加速を始めるスレッガー。

 遅れてサラも気づく。

 

『爆発が!』

 

 ア・バオア・クー表面でひときわ大きな爆発が。

 弾薬庫が誘爆したのだ。

 そしてその爆発の後には大小さまざまな破片がこちらに飛んでくる。

 医療パックは特殊樹脂でできていて拳銃弾程度では穴は開かないが、爆散して高速で飛来するデブリ群の直撃など論外だ。

 

『ああっ』

 

 サラが絶望の声を上げたその時……

 

 

 

「にゃろう、やらせるかよ!」

 

 ガンキャノンLが、間に入って守る!

 

『ここは任せてください!』

 

 シールドの影から構えたビームスプレーガンの射撃モードを飛散してくる破片の大きさに合わせてサラスリーが適宜、通常の『シングルショット』、ビームを拡散させ広範囲にダメージを与える『レンジショット』、面制圧用の『バーストショット』に切り替え、カイに撃墜の優先順位を提案し、撃ち落としてもらう。

 防ぎきれないものはシールド、そしてガンキャノンLのルナ・チタニウム製の装甲で受け止める!

 

「先に行って!」

 

 とセイラがスレッガー機に通信を入れる。

 

 

 

 そうやって彼らは無事ホワイトベースへと収容されたのだが……

 

「ジオンの医療中隊と敵味方の大量の負傷者を収容!? いや、人道的対応は分かるが……」

 

 最前線で戦っているホワイトベースでは現状、さらに後方にある病院船へ後送するだけの余裕は無いし、やろうとしても危険すぎる。

 もう少し戦況が落ち着いてくれないとどうしようもない状況で、それまでどうするかだが……

 ブライトは頭を抱え、

 

「サンマロたちに任せましょう」

 

 ミライの提案により対応を任せられたホワイトベースの看護兵、サンマロとマサキは馬車馬のように働き続ける羽目になるのだった。




 戦場のドラマが様々に展開していきますね。

> カイたちと共に撤退を開始したスレッガーが出くわしたのは、要塞内回廊に並ぶ真空用医療パックと負傷兵。
> そしてこの絶望的な状況でも忙しく立ち回るジオンの医療従事者たちの姿だった。

 マンガ『機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー』で語られていた、着底したホワイトベースの至近で負傷兵たちの救護に当たっていた医療中隊ですね。
 このお話ではホワイトベースは健在のため、引き取ってしまいました。
 少なくとも応急手当以上の処置に必要な与圧されたスペースが十分備えられているのがホワイトベースですし。

 次回はアムロとシャアの戦いが終結する予定です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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