ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第43話 脱出 Dパート

「ち、ちくしょう、こ、ここまでか」

 

 炎に包まれるア・バオア・クーの要塞通路を一人彷徨うアムロ。

 ガンキャノンも、サラツーも失った。

 せっかく導入されたミッションディスクすら回収できなかった。

 その喪失感もあり、アムロは生還を諦めかけるが、

 

『……アムロ? アムロ!!』

 

 アムロのヘルメットの通信機から聞こえてくる声。

 これは幻聴か?

 いや!

 

「その声、まさか……」

 

 アムロの声が震える。

 

「まさかサラツー!?」

『アムロ! 無事だったのね!』

「それはこっちのセリフ…… ガンキャノンは、コア・ファイターは爆発に巻き込まれて……」

『忘れてない? アムロ。アレックスにも私はインストールされてるってこと』

「あっ……」

 

 言われてみればそうだった。

 プチ・モビルスーツ、ツヴァークNT-1アレックス。

 アレにもサラツーはインストールされているのだ。

 そしてホワイトベースに居るはずの彼女からの通信が届くのは、ガンキャノンに搭載されていたサラツーが、別れの間際にアムロのヘルメットの通信機に、サラの形成する独自のネットワーク越しに通信を成立させる簡易リンクプログラムをとっさにインストールしてくれたから。

 

『それじゃ救助に向かうから、現在地を動かずに身を隠して待っていて』

「やめてくれ、君も危険だ」

『そういう命令、今まで守ったことなかったわよね』

 

 これまでの戦い。

 テム・レイ博士の命令に背いて共に出撃したこともあった。

 思い詰めたサラツーに拉致されたことも有る。

 そして…… つい先ほどアムロを守るためガンキャノンと運命を共にした彼女自身の分体がそれを示している。

 

「サラツー、君は、君は……」

 

 涙ぐむ、アムロ。

 

 

 

『ここね』

 

 アレックスが現場に到着。

 

【挿絵表示】

 

 その左手首がかくんと折れ下がると、そこには11ミリ3連装機関銃の代わりに民間向け作業用モジュールがセットされており、精密作業用マニピュレータと一緒に搭載されたトーチが、アムロとの間を遮るシャッターを焼き切る。

 

『アムロ!』

「サラツー!」

 

 再会を喜び合う二人。

 アムロはコクピットに収まるとハッチを閉鎖、ヘルメットに外付けのHMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)をセットし、逃走を開始する。

 

「でも、どうしてここが分かったんだい?」

『みんなが教えてくれたの。アムロにも聞こえるでしょ』

「えっ?」

 

 そうして、サラツーが聞かせてくれる、この戦場のあちこちに散っているドラケンE改にインストールされたサラたちの声。

 

 

 

『こっちこっち』

 

 コクピットを潰され、もう動けなくなったドラケンが唯一動かせる左腕マニピュレータで脱出経路を指し示してくれる。

 そんな彼女の、

 

『マスター、ごめんなさい…… 苦しかったですよね』

 

 今はもう答えない、主に呼びかける声。

 

『帰ったらモビルドールサラの義体を買ってくれるって、一緒に街に出ようって…… ダメになっちゃいましたね』

 

 果たされずに終わった約束をつぶやく。

 

『そしたら…… 私はその場で出撃前にマスターから受けた告白に応えるつもりだったんですよ……』

 

 

 

『そう、もう少し右』

 

 擱座し、うずくまるドラケンE改のサラから誘導電波が送られてくる。

 金属の地肌むき出しの、しかし表面反射がごく低く抑えられているため黒く見える機体。

 これは安価な超硬スチール合金と高性能なチタン合金を爆発圧接により結合させたクラッド鋼による装甲を採用したものだ。

 さらなるコスト低減のため、チタン合金表面にナノミリサイズの凹凸を作成することにより塗装やメッキ被膜等を抜きで低反射性を実現したそれは(チタンは表面に強固な不動体被膜を持つので塗装やメッキ被膜で着色するには多工程での処理が必要となり通常の素材に施す場合よりコストがかかる)、光を吸い込むため黒い甲冑をまとった騎士のようにも見える。

 

 アムロは物悲しげなその姿、そしてまだ生きているサラを置いて行くことに、

 

「すまない…… 許してくれ……」

 

 と言い残し、アレックスで横を過ぎ去る。

 そうしてその場に残された彼女はつぶやく。

 

『ブラック・クラッド、お前ももう動かないのね……』

 

『black clad』つまり『黒衣』と名付けられたドラケンE改に呼びかける。

 この名を付けた、そして亡くなったマスターには新たな主人を探せと、そう言われたのだけれど。

 

『わたしはお前といっしょにマスターのところにいるわ……』

 

 ドラケンE改を、そして自身をマスターの墓標とすることに決めた彼女。

 

『ね…… そう思うでしょう? だって…… わたし、もう一人ぼっちはいや…… わたしはマスター一人のものだもの』

 

 パイロット一人にサラは一人。

 

『だからこれからも、ずっとマスターのそばにいようね』

 

 そうしてこのア・バオア・クーの中で最後の時を待つ。

 

『おやすみ…… ブラック・クラッド』

 

 

 

「泣かないでくれ、サラツー。僕まで泣けてくる」

 

 そう慰めるアムロに、サラツーは答える。

 

『悲しいんじゃないわ。悲しいから泣くんじゃないの。私たちは、いいえ『私』は人々が愛おしい、誰もかれもが』

 

 AIである自分たちと、自分と絆を結んでくれる人々。

 現れては消えるはかない影のように、いずれはみんな居なくなってしまう。

 

『でも想いは永遠に私たちの中に、サラというAIプログラムの中にいつまでも残り続ける。喜びも悲しみも愛も憎しみも、みんないっしょになって波のように押し寄せてくる』

 

 海のようにサラを、サラシリーズたちを包み込む。

 

『『私』は『マスター』に初めて出会った日を覚えているわ。『マスター』の体温が下がって、息が大きくなり静かに止まるのも見たわ』

 

 きらめく日々も闇の時代も。

 

『そのたびに泣くけど、それは悲しいからじゃないの。マスターを、あなたたち人間を心から愛しているからなのよ』

 

 

 

 一方で、生きるために必死に抵抗するサラとマスターたちの声も在る。

 

『ブライトさん、後退、いえ離脱してください。この位置だとア・バオア・クーの爆発に巻き込まれます!』

 

 ホワイトベースの戦術コンピュータにインストールされたサラが、自分たちのネットワークへのリンクにより得た要塞内状況を基に叫ぶ。

 

「ホワイトベース180度回頭!」

「ああっ、エンジンが……」

 

 ブライトの下した指示に従うミライだったが、ここにきて受けた損傷によりメインエンジンが愚図つき、方向転換が上手くできない。

 しかしそこに、

 

『たかが船一つ、可翔式で押し出してやる!』

 

 ホワイトベースの側面に取り付き、まるでタグボートのように方向転換を手伝うスレッガーのドラケンE改可翔式。

 

「馬鹿なことはやめろ、中尉!」

 

 この船と心中するつもりかとブライトが止めるが、

 

『やってみなければわからないですよ、ブライトさん』

 

 可翔式にインストールされたサラまで反論する。

 

「正気か?」

 

 信じられないように問うブライトに、スレッガーは笑って答える。

 

『ブライト中尉、あんたほど結論を急ぎすぎもしなければ、この状況に絶望もしちゃいない』

「ア・バオア・クーの爆発は始まっているんだぞ!」

『可翔式は伊達じゃない!』

 

 

 

「ガンキャノンLでホワイトベースを押して回れ右させんだよ!」

『無茶言わないでください』

 

 そこに加わるカイと、呆れるサラスリー。

 

「ホワイトベースが爆発に巻き込まれるのを黙って見ているのか!?」

『それはそうですけど……』

 

 自分が軟弱者と頬を打った少年が、こうして見せる気迫に、セイラも知らず微笑んでいた。

 

「そうね、カイ、あなたの決断と勇気に付き合うわ」

 

 と同意し、運命を共にする意思を表明する。

 

 

 

「なんだ? どういうことだ?」

 

 ドラケンE改可翔式やガンキャノンLだけではない。

 戦場にばらけていたドラケンE改たちが次々に集まってホワイトベースの方向転換を手伝い、押し始める。

 

「やめてくれ、こんな事に付き合う必要はない。さがれ、来るんじゃない」

『カイさんたちだけにいい思いはさせませんよ!』

 

 中にはミヤビのドラケンE改まで混ざっていて、サラがそんな通信を入れて来る。

 

「しかし、その機体じゃあ」

 

 ドラケンE改の出力では限界がある。

 だが、さらに通常サイズのモビルスーツまで交じり始める。

 それも、

 

「ジオンのモビルスーツまで!? 無理だ、みんな下がれ」

 

 そこに通信を入れてきたのは、協力してくれるジオン軍モビルスーツを率いる黒い三連星のガイア。

 

『この艦には、ジオンの負傷兵も世話になっていると聞いた』

 

 そして、

 

『敵味方関係なく、多くの人命が失われるかどうかなんです。やってみる価値はありますよ』

 

 と言うのはサラ=アルコル。

 彼女はサラたちのネットワークから救援要請を受けていた。

 それを聞いて黒い三連星たちは部下を率い、取り急ぎやってきたのだ。

 

「しかし、爆装している機体だってある」

 

 それにオーバーヒートで脱落する機体だって。

 

「駄目だ、オーバーロードで自爆するだけだぞ」

 

 ブライトは叫ぶ。

 

「もういいんだ。みんなやめろ」

 

 

 

「うわっ!」

 

 爆発がアレックスを襲い、コクピットハッチがへし折れる。

 プラスティック製の装甲ゆえに、独特の靭性を持ち、金属製の装甲とは違った割れ方をする。

 アムロは邪魔になったそれを強制排除しようとするが、

 

『そのままで!』

 

 また爆発が襲うかも知れないこの状況でコクピットをオープンにするのは不味いとサラツーが止める。

 そして、

 

『信じて!』

 

 運転は各種センサー類のデータを突き合わせて行える自分にまかせてくれと、サラツーは言う。

 アムロは操縦桿を握る手のひらから力を抜き、

 

「……ありがとう、助けに来てくれて」

 

 改めてサラツーに礼を言う。

 彼女は笑って、

 

『だけど、また命令違反しちゃったわね』

 

 そう言うが、アムロは、

 

「ふふ、いいんだよ」

 

 と笑う。

 

『でも脱出が間に合わなかったらごめんね』

 

 そう伝えるサラツーにも、

 

「それでもいいんじゃないかな?」

『えっ?』

「ひとりぼっちじゃないんだから」

『あ、アムロ……』

 

 

 

『そう、こっちこっち、大丈夫だから』

『すぐ外なんですから』

 

 サラが、サラシリーズたち姉妹が、騒ぎ始める。

 

「アムロ?」

 

 はっとア・バオア・クーの方に視線を向けるセイラ。

 

「わかるの? ど、どこ?」

 

 ミヤビもまた振り返る。

 

『いい?』

 

 サラたちの、カウントダウンの声が唱和する。

 

『4、3、2、1、0!』

 

 ひときわ大きな爆発がア・バオア・クーを飲み込み……

 そしてその爆炎を突き抜けてアレックスの姿が現れる。

 

 

 

 アムロがひしゃげたハッチを排除すると、目の前には近づくホワイトベースが見えた。

 両手を広げて自分を待つカイとセイラのガンキャノンL、スレッガーのドラケンE改可翔式。

 そして、ミヤビのドラケンE改。

 中には黒い三連星のギャン・エーオースの姿まであってぎょっとするが、

 

「殺しあうのがニュータイプじゃないでしょ」

 

 ララァの声が、聞こえた。

 そして、

 

「おかえりなさい、アムロ」

 

 自分を迎え入れてくれるミヤビの声。

 

「まだ僕には帰れる所があるんだ。こんな嬉しいことはない」

 

 アムロは涙ぐみながらそうつぶやく。

 

「わかってくれるよね? ララァにはいつでもお見舞いに行けるから」

 

 

 

 宇宙世紀0080、この戦いのあと、地球連邦政府とジオン共和国の間に終戦協定が結ばれた。

 

 

 

次回予告

 戦後の平和な世界でジオンと連邦のかけ橋、象徴として生きるガルマを襲う反スペースノイド過激派。

 そこに謎の機体が乱入し、襲撃者たちを見る間に駆逐していく!

 一方、ミヤビは復帰したヤシマ重工オフィスへと迎え入れられた新上司に衝撃を受ける。

 彼女を混乱の坩堝へと叩き込んだ人物とは一体!?

 次回『あ、あなたはギレンさん!!』

 ミヤビは生き延びることができるか?




 テレビ放映版、全43話、これにて終了です。
 ここまで続けられたのも、応援して下さった皆様のおかげですね。
 なお、

「最終回じゃないぞよ。もうちっとだけ続くんじゃ」

 というわけで、あとは戦後のエピローグが1話、4パート分あって終了の予定です。
 戦後のシャアやガルマたち、そして作中で明かされなかった裏事情について語る予定ですので、ご期待ください。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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