ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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機動戦士ドラッツェ(ミヤビ、ジオン側IFルート)

 ミヤビです……

 1年戦争の悲劇を回避するため奔走してたら、ギレン・ザビ氏に捕獲されました。

 ミヤビです……

 私という存在が生んだバタフライ・エフェクトなのか、ギレン氏はザビ家の独裁という分かりやすい悪役を用意することで、地球連邦の戦争目的をサイド3の独立阻止からザビ家独裁の打倒へとすり替える『ザビ家敗北ジオン独立END』を狙うことにしたそうです。

 ミヤビです……

 そんな大事を知らされた以上、私にはジオンに協力する以外、もう生きのびる道は無いみたいです。

 ミヤビです…… ミヤビです……

 ミヤビです……

 

 

 

 というわけでミヤビは政財界に強いパイプを持つヤシマ財閥の令嬢としてヤシマ重工サイド3支社の総責任者(実務担当者である支社長ではなく、その上の経営陣、サイド3支社の業務を統括する取締役)に就き、ジオン政府、ならびに軍の相談役を勤めることに。

 ジオンの役に立つことと引き換えに、何とか正史にあった悲劇、せめてコロニーへの毒ガス攻撃だけは止めてもらえるよう働きかける算段だ。

 とりあえず『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』や『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』の悲劇は嫌だったのでシーマたちマハルの住人やバーニィ、バーナード・ワイズマンについてはヤシマ重工にスカウトしておいた。

 何をするにしても人手は必要なことでもあるし。

 

(今、私はジオンの女……!)

 

 覚悟を決めて、いざプレゼン。

 

 

 

「簡易モビルスーツ、ドラッツェ?」

 

 ギレンの手元には、あらかじめ送付されていたプレゼンテーション資料があった。

 宇宙世紀においても利便性から紙というメディアは死滅していない。

 そこには簡易モビルスーツ、ドラッツェとその機体名称が書かれている。

 手元のそれに目を落とすギレンに、ミヤビは頷いた。

 

「はい、ジオニック社の方から相談を受けたのですが……」

 

 ドラッツェはミヤビの前世の記憶の中にある『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場した機体だ。

 台所事情の厳しいジオン公国残党軍デラーズ・フリートが独自開発したもので、破損したザクII F2型の上半身にガトル戦闘爆撃機のプロペラントタンク兼スラスターを脚の代わりに組み合わせたもの。

 このため歩行機能は有しておらず、重力下では使用不能、宇宙戦専用機体となっている。

 武装は右腕のマニピュレーターを排除し装備された40ミリガトリング砲と、戦艦の装甲を流用した左腕部シールドに固定されたビームサーベルのみで、戦闘能力は低いとされた。

 ビームサーベルは本来出力不足で使えないのだが、シールドに小型ジェネレーターとエネルギーCAP、冷却ユニットを組み込んで使用可能にしているもの。

 足の代わりに付けられたプロペラントタンクはAMBAC作動肢としてはほとんど機能せず、運動性は非常に低い。

 代替措置として両肩に球状のスラスターポッドを設置しているが、それでも通常のモビルスーツには遠く及ばなかった。

 ただし直線加速性能は非常に高く、リック・ドムに匹敵するといわれている。

 

 なぜ、そんなものをミヤビが持ち出してきたのかというと、

 

「ザクIIのC型…… 例の核武装タイプの機体ですが」

 

 ここはギレンのオフィス。

 徹底した洗浄、防諜が成された部屋であるから、ミヤビは直截な言い方をする。

 ぼかした言い回しをするのは迂遠であるし、何よりお互い通じたつもりになっている行き違いが怖いから。

 まぁ、ロジック思考の男性脳な技術畑のミヤビにはこっちの方が楽で馴染むからということでもあるが……

 

「核攻撃を前提としてコクピット周辺の装甲裏側に放射線遮蔽液が注入された結果、全備重量は90トンを越え、このままでは軍の要求する一撃離脱方式の核の運用は難しくなってしまいました」

 

 この辺はミヤビの前世の記憶の中にある史実どおりである。

 

「そのため、放射線遮蔽された胴体部と核バズーカを撃つ為の片手マニピュレーター、それのみを残し、足の代わりにガトル戦闘爆撃機のプロペラントタンク兼スラスターを付け、高速離脱戦仕様の機体に改装」

 

 という具合にミヤビは核武装型ザクIIの機動性低下を解決するために、一年戦争前、現時点の技術でもビームサーベル以外は再現可能な機体としてドラッツェをチョイスした訳である。

 

「なお、これは機動兵器の主力が今後、モビルスーツにシフトしていくにあたり、余剰が発生するガトルの有効利用」

 

 ガトルの製造メーカー、および軍担当責任者から相談を受けてのこと。

 さらには、

 

「高速での一撃離脱戦法を想定した機体特性は、同様の戦術を持つガトル戦闘爆撃機パイロットの機種転換に有効であるとの評価を頂いております」

 

 ミヤビの前世の記憶の中にもある機動性特化機体、ジム・ライトアーマーは宇宙戦闘機乗りのパイロットからの機種転換が容易だと語られていたが、それと同様のメリットがあるということ。

 そういう具合にパイロット、ソフトウェア側への配慮も成されている。

 

 なおバックパックのスラスターにも流用されているガトル戦闘爆撃機だが、これは模型雑誌『モデルグラフィックス』の誌上企画『ガンダム・センチネル』に登場したカトキ氏によりリファインされたデザインのモデルだったので、このミヤビが転生した世界ではどうかと思ったのだが。

 実際には元デザイン版とセンチネル版、両方が存在したというオチだった。

 空気抵抗を考えなくても良い宇宙機では気圏戦闘機と違って気軽に外装(ガワ)を変えることができるということらしく、見た目は大きく変わっているのだが同型機扱いの模様。

 ミヤビの前世で例えるなら、同じモデルの乗用車でもモデルチェンジでがらっと形状が変わったり、さらには奇抜なデザインの車も、良く調べるとシャーシーはベーシックな大衆車と共用だったりしたのと同じことなのだろう。

 

「最低限の自衛武器として軽量で貫通力の高い40ミリガトリング砲と、盾の裏側にヒートサーベルを搭載する予定です」

 

 ビームサーベルの代わりには史実でドムが装備していた棒状のヒートサーベルを利用する。

 現時点では完成していないが、ヒート兵器は元々、コロニー建設に用いられる作業用宇宙艇搭載の高周波誘導切断器にルーツを持つ器材であり、コロニー建設も請け負うヤシマ重工が協力すれば開発の促進は可能だろう。

 史実でもドム以前にMS-07C-5グフ試作実験機(『グフの試作』ではなく、ツィマット社がジオニック社からライセンス生産を請け負っているグフをもとに次期主力生産機のテストベッドとして改修したもの、つまりグフ→ドムの間をつなぐ機体)に搭載されており、つまりほんの少し登場時期を早めるだけのことなのだし。

 

 ミヤビはこれをシールド裏にマウントし、使用時にはシールド先までスライドさせるように計画している。

 これなら史実で搭載されていたビームサーベルとほぼ同様の運用ができるはずである。

 

 なぜわざわざヒートサーベルを開発するのかと言うと、それは取り回しの問題だ。

 現実でもガントレットと一体化したパタと呼ばれる長剣があったが、これは扱いが非常に難しいとされていた。

 その点、刃筋を立てなくとも、どこに触れても溶断できるビームサーベル、そしてドムが装備していたタイプのヒートサーベルなら少しは取り回しが楽になるのだ。

 なお、シールドについては、

 

「何しろ急なことなので、ありあわせの材料で作り上げました。シールドなんて廃艦になった戦艦の装甲を流用したぐらいですし」

 

 と、こちらは史実どおりになっている。

 しかし、

 

「でもだからこそ、短期間、低コストで量産ができる機体となっています」

 

 武装が貧弱とはいえ、ヒートサーベルを扱え、加速性能については並ぶものの無い機体をありもので製造できるのだから。

 

「ふむ…… 右手のマニピュレーターを排し40ミリガトリング砲を搭載する、か。これはモビルスーツの汎用性を殺すものではないのかね。また、何故この武装を採用したのかだが」

 

 とギレンはもっともな指摘をする。

 ミヤビはというと、

 

「この機体は直衛の戦闘機、連邦軍のセイバーフィッシュなどを抜いて敵艦に肉迫、核バズーカを投射するという使われ方をします。この場合、従来のザクマシンガンで武装すると、バズーカへの武器の持ち替えというものが発生します。この武装の切り替え時間が高速戦ではバカにならないのです」

 

 一瞬の隙をついてチャンスをものに、敵艦を核で撃沈しなければならないのに、もたもたと武器の持ち替えをしていたのでは話にならない。

 ミヤビの前世にあったネットワーク対戦ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション2』でも武装の切り替え時間が使い勝手、強さに直結していた。

 バズーカなどの攻撃でよろけやダウンを奪って動きを封じたところで追撃をする、というのがセオリーなのだが、切り替え時間が長い武装だと、その間に敵が立ち直ったり、別の敵からカットが入ったりと攻撃機会を逃がしてしまうのだ。

 

「40ミリガトリング砲は小口径、多弾倉化を狙ったものですね。ザクマシンガンの120ミリに比べて砲弾の口径は小さいのですが、砲身の長さを砲弾の直径、口径の値で割った口径長については非常に長くなっていて、つまりザクマシンガンに比べてはるかに高速の砲弾を放つことができます」

 

 ザクマシンガンが宇宙での使用を考えて低反動にしたためか低速砲であるため、その差は歴然。

 ミヤビの前世でも「何で40ミリ? 連邦の頭部バルカンより小口径じゃん」という意見があったが、砲の威力、貫通力は弾の口径だけで決まるわけでは無い。

 一年戦争当時の地球連邦軍モビルスーツの頭部60ミリバルカン砲はTOTOカニンガム社製のASG56-B3Sだが、これは既存のASG-56B3の砲身を短縮化したもので、つまり初速はその分落ちている。

 それに対しドラッツェの右腕40ミリガトリング砲は遥かに長い砲身を備えており、その分弾速は高く貫通力が高く射程は長く、そしてもちろん命中までのタイムラグが少ない分、当てやすい。

 

 その上で、

 

「仮想敵である連邦軍のセイバーフィッシュには十分効果がありますし、戦争が長期化して連邦がモビルスーツを開発したとしても、この砲にはAPFSDS(armor-piercing fin-stabilized discarding sabot:装弾筒付翼安定徹甲弾)が用意されています。そちらに切り替えれば対応が可能かと」

 

 ミヤビの前世、旧21世紀でもAPFSDSが使える砲の最低口径は、ボフォース 70口径40mm機関砲向けに用意された40ミリからだった。

 同様に、この40ミリガトリング砲向けの弾種にもAPFSDSがラインナップされているのだった。

 もっとも、

 

(史実でデラーズ・フリートが右手マニピュレーターを排したのは、別に理由がありそうだけれども……)

 

 ミヤビの前世の記憶の中にある書籍の中でも触れられていたことだったが、モビルスーツ、ザクの開発当初、右腕の負荷が高く劣化が進行してしまうという問題が発生していた。

 人間は右利きの率が高いので、人間が操作するなら自然と右腕を酷使することになる。

 ジオン軍のモビルスーツの兵装はスコープ(照準センサー)の配置がそうなっているように基本、右手で操作するようになっているし、なおさら。

 

 避けようのない問題であり、右腕側のパーツ交換周期を早めると同時に、両腕のパーツを可能な限り互換性のあるもので構成することにして補給にかかる負担を軽減して対応したが、問題は一番消耗する部分、手首から先のハンドパーツ、マニピュレーターについては左右の互換が取れないということ。

 まぁ、これは右手パーツだけ多く生産、供給すれば良いのだが、ジオン公国軍残党のデラーズ・フリートでそういった消耗部品を多く確保できるかというと、なかなかに厳しい。

 

 そしてデラーズ・フリートの運用しているモビルスーツは、リック・ドムIIのような統合整備計画に基づいた機体か、F2ザクのように統合整備計画適用機体と互換性のあるハンドパーツ、マニピュレーターを持つ機体が大半。

 つまり消耗率が高い右手のマニピュレーターはドラッツェに使用するより、リック・ドムIIなどちゃんとした機体に優先的に回した方が良いということになる。

 それゆえの機体、武装構成だったのだろう。

 

「頭部は新設計で額に小型レドーム」

 

 イルカやオルカ、シャチの頭にあるメロン、生体ソナーアレイのように配置。

 

「それを取り巻くように360度移動可能なモノアイレールを配置します」

「レール?」

 

 さすがギレン、目の付け所が違うと思いつつ、ミヤビは答える。

 

「はい、高速での一撃離脱戦法で、すれ違って側面や背面に流れて行った敵機を捉え続けるには、広い視野と、素早い視線移動が必要です」

 

 モノアイスリットを全周に切ってある機体としては、将来的に開発されるザクキャノンなどがあるが、この機体は単にザクのモノアイシステムを360度どの方向にも向けられるようにした、というだけ。

 一方で、このドラッツェの頭部は、

 

「そのためにモノアイセンサーを小型、軽量化し、レール上を素早く動けるようにしたわけです」

 

 ザクに比べ、モノアイの直径が小さいのはそのため。

 

「この小型化、カノム社に頼もうと思いましたが」

 

 理想を言うならジオンのモノアイシステムの開発に貢献したという光学器機メーカー『カノム社』に依頼したかった…… ミヤビの前世の記憶でもジオンがモビルスーツ等に採用していた光学機器類は一年戦争当時、連邦軍からも羨望の的とされていたし。

 しかし、

 

「ザクのモノアイシステムの生産で手一杯というお話でしたので、ここは手前どもで用意させて頂きました」

 

 無理だったので結局なじみの深い日本系企業、ミヤビも前世でお世話になった某C社などの流れをくむ日本人独特の職人芸的な技術を持つ企業との協業でジオンの物に負けずとも劣らないセンサー類を開発していた。

 小型・軽量化は昔から日本系企業の得意分野であるのだし。

 

「とはいえ、AMBAC作動肢たる脚を排していますので、運動性ではザクに劣り、それを補うために両肩に大型のスラスターポットを搭載したのですが……」

 

 史実のドラッツェはそうしてもなお、劣悪な運動性しか持てなかった直線番長だったのだが。

 

「MIP社で研究が進められている非人型機動兵器、モビルアーマーが備える人型ではないAMBAC作動肢を参考に、背部バックパック両側面に備え付けた放熱板をAMBAC作動肢に」

 

 実際にはミヤビの前世の記憶の中にある百式のバックパック左右に備えられたフレキシブル・バインダー、可動肢として作動することでAMBAC効果を持つとされていたそれを参考にしたわけであるが。

 ジオンにはその百式を開発したM・ナガノ博士が存在するわけで。

 

「また、足の代わりに付けられたプロペラントタンク兼スラスターを『可動するベクタードノズルとして働く高出力バーニア』と『AMBAC作動肢として働くスタビライザー』の機能を併せ持つ『ロングテール・バーニア・スタビライザー』として機能させた結果、運動性が格段に向上しまして……」

 

 ロングテール・バーニア・スタビライザーといえば、Zガンダムの背中に付いていたアレだが、その概念を現在の、若き日のM・ナガノ氏に伝え、MIP社にも「モビルアーマーの開発に役立つ技術ですし、せっかくですから参画しません?」と促したところ、こちらが退く勢いで乗って来て。

 そのためか、

 

「最終的にはノーマルなザクII、つまり放射線遮蔽を除き軽量化を果たしたF型と同等の運動性を持つことになりそうです」

 

 ということになっていたりする。

 

 発明・発見とは『基礎技術』と『気づき・発想』である。

 気づくことができればそれは一瞬だが、気づかなければ何十年経っても気づけないのだが……

 

 逆に言えば時代を飛び越えて未来の発想を持ち込んだミヤビは、それがもたらすモノを目の当たりにし、慄くこととなる。

 

 史実のドラッツェはU.C.0083年に、非常に限られたリソースしか持たないデラーズ・フリートが造った簡易生産型のモビルスーツだったが。

 そこに4年後のグリプス戦役、U.C.0087年に成立した『フレキシブル・バインダー』と『ロングテール・バーニア・スタビライザー』の概念を持ち込み、ヤシマとM・ナガノ氏、MIP社等、豊富な開発リソースをつぎ込んだらどうなるか?

 しかもドラッツェは元のザクIIのジェネレーターの出力976kWを596kWまでデチューンして利用していた。

 そう、そのままでも『フレキシブル・バインダー』と『ロングテール・バーニア・スタビライザー』を機能追加して動かすだけの余裕があるのだ。

 

「あとはC型から放射線遮蔽液を抜いたF型ベースのものも試作する予定ですが」

 

 後に、これを作った結果……

 

 

 

「通常のザクの三倍のスピードが出ますね」

 

 本当にノーマルのF型ザクIIの3倍のスピードを出すモビルスーツが爆誕。

 

「……とりあえず、赤く塗って置きましょうか」

「赤ですか?」

「赤は緑の三倍なのです」

 

 このミヤビの言葉を受けて、この非核武装型ドラッツェは俗に『三倍ザク』と呼ばれることになるのだった。




 Gガンダムのレインがネオドイツ側に立った時のように、ミヤビに変なマスクを被らせて、
「今、私はジオンの女……」
 とかさせようかとも思いましたが自粛しました、ミヤビ、ジオン側IFルートでした。
 一年戦争開戦時の技術でもビームサーベル以外は再現可能そうなドラッツェなら行けるだろうという発想ですね。

 この後は以前に書いた『機動戦士ボール』のような、毒ガスを使ったりはしない割と穏当な展開になるのでは、と思います。
 そうでないとミヤビの精神が耐えられませんしね。

 ご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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