ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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 ミドルモビルスーツにビームサーベルが使えるわけが無い、というご感想を立て続けにいただきまして。
 しかしドラケンEがビームサーベルを使えるというのは序章のあとがきにも載せたとおり書籍に記載されていることですから。
 サンライズが運営するガンダム情報の公式ポータルサイト「GUNDAM.INFO」でも同様ですし。

 とはいえ納得できない方も多いと思い、なぜドラケンEでビームサーベルが使えるのかという閑話、過去話を取り急ぎ書いてみました。
 序章の続きを、とご期待された方には申し訳ありません。
 次回以降の更新にご期待ください。


閑話1 ドラケンEがビームサーベルを使えるわけ

「甲壱型腕装備? いえ、これはビームサーベル?」

 

【挿絵表示】

 

 ミヤビがテム・レイ博士の大発明、ビックリドッキリメカ、後に『甲壱型腕ビームサーベル』と名付けられる装備を初めて見せられた時に漏らしたのはそういった言葉だった。

 

 もちろんこれがどういうものなのか分かったのは彼女の前世知識によるもの。

 そしてTS転生により女性の服や下着を着せられ女扱いされるたびに表情を殺し死んだ目をして過ごしてきた結果、固まってしまった人形じみた美貌に変化はなく……

 

 その静謐とも言える横顔を目にしたテム・レイ博士とその部下である技術者たちは、

 

(機密であるはずの最新技術を一目で見抜き、驚いた様子も無い。やはりこのご令嬢、天才か……)

 

 などと驚き納得しているのだが、ミヤビはそれを知らない。

 

 実際には彼女は天才というより努力の人だった。

 前世ではロボットアニメ好きが高じて中学卒業後は高等専門学校、いわゆる高専に進み5年間、朝から晩まで工業系、技術系の勉強とレポート作成の日々、その合間を縫ってひねり出した時間で高専ロボコンに出場。

 卒業後は自衛隊の護衛艦や戦闘機のジェットエンジンを作っている某重工に就職し経験と学習を積んでいた。

 転生後も前世の経験を活かした上で現代の技術を学びなおし、技術者として研鑽の日々を過ごしている。

 好きこそものの上手なれ、を地で行っているとも言う。

 

「ミヤビ君、それは……」

 

 テム・レイ博士は言葉尻を濁すと首を振り、ビームサーベルはまだ秘匿されるべき存在だと暗に示す。

 

「では秘匿名称『溶断破砕マニピュレーター』とでもするべきなのでしょうかね」

 

 と、ミヤビは同様に非人体系の手のひらからビームサーベルを展開して見せるターンXの右手武装を思い起こして答えた。

 後にその名称が本当に採用され驚くことになるのだが、それはともかく。

 

「これ、ドラケンE改で使えるんですか?」

 

 ミヤビの前世知識によるとドラケンEはビームサーベルが使えることになっている。

 そう書かれている出版物もあったし、サンライズが提供しているサイトでもその旨記載があったからオフィシャルなものと考えていいだろう。

 この設定は機動戦士ガンダムZZの第2話でヤザン・ゲーブルが乗るドラケンEと同じミドルモビルスーツにカテゴライズされる名称不明機(永野護デザイン)が拾ったZガンダムのビームサーベルを起動、使って見せたところに由来するものものと思われるが。

 

 しかしビーム兵器の使用には、ある程度の本体ジェネレーター出力が必要なはず。

 ジムで1,250kW。

 と言っても丸々必要なわけではなく、機体の駆動に必要な分を除いた余剰出力でドライブさせるわけだし、ビームスプレーガンとビームサーベルでは要求される電力も違うだろうし、ビームスプレーガンとビームサーベルの同時使用にも対応しているだろうから純粋にビームサーベルだけを使用するために必要な水準は分かっていないが。

 それよりも参考になるのはドラッツェだろうか。

 569kWとビームサーベルは本来出力不足で使えないが、シールドに小型ジェネレーターとエネルギーCAP、冷却ユニットを組み込んで使用可能にしていた。

 

 そしてテム・レイ博士の返答は、

 

「ああ、ドラケンE改の燃料電池を全力運転させればフルスペックの利用は無理だが、出力を絞り時間を限定してなら使えるだろう」

 

 ということ。

 つまりそれは、

 

「……ビームサーベル内に使用を補助するジェネレーター、もしくはバッテリーやエネルギーコンデンサーを持っている?」

「っ!?」

 

 ミヤビが漏らした呟きに、テム・レイ博士の顔が引きつり、周囲がざわめく。

 

「さ、さすがだな……」

 

 というのが間接的な答えにして肯定。

 ミヤビが口にした可能性の中でどれが該当しているかは分からなかったが、一民間協力者である彼女にはこれ以上詳しく知ることはできないだろう。

 

 ミヤビの前世の記憶の中にあるガンダムの内部構造図ではビームサーベルにはビーム発生用タキム社製NC-5型核融合ジェネレーターが内蔵されていることになっていた。

 後に『マスターグレード 1/100 RX-78-2 ガンダム』の説明書内でNC-5型核融合ジェネレーターは背部ランドセルに搭載されている、とされたが、だからといってサンライズがガンダムの内部構造図を引っ込めたり訂正したりはしていないし、イベントがあればその後も内部構造図は展示している。

 つまりサンライズはビームサーベルに内蔵していると言っているし、バンダイはランドセルに搭載していると言っている状態だった。

 Wikipediaなどではより新しく現実味が高いバンダイ説が支持されてはいたが。

 

 またガンダムのビームサーベルのリミッターを解除することで利用できるビーム・ジャベリンは、ビームサーベルのエネルギーコンデンサを作動させ、可変させた状態であるという。

 投擲することでムサイのエンジンブロック2つを貫通させたこともあるが、つまりモビルスーツの手を離れてもそれだけの威力を持つビーム刃を維持できる電力がビームサーベル内から供給されるようになっているということ。

 

 Zガンダムのビームサーベルも劇場版においてビームコンフューズなる技を見せた時に投擲して使用している。

 

 つまりガンダムのビームサーベル内にはNC-5型核融合ジェネレーターが搭載されているかもしれないし、そうでなくとも何らかのエネルギー源は内蔵されている。

 Zガンダムのビームサーベルにも、同じように何らかの電源があるから投げてもビーム刃が維持されるのだろう。

 

 そしてそのエネルギー源を利用すればドラッツェに追加されたビームサーベルドライブ向けの小型ジェネレーターと同じことができるのではないかという推論。

 ドラッツェと違うのはジェネレーター内蔵なら冷却ユニットが無い分だけ放熱に問題が発生し、バッテリーやエネルギーコンデンサーなら充電されたエネルギーを短時間で使い果たしてしまうことになる。

 使用に時間の制限があるということだった。

 

 そして、

 

「ドラケンE改本体の燃料電池の全力運転、とは言いますが、実際には過負荷運転が必要ですね」

 

 ミヤビはテム・レイ博士から渡された要求仕様を見てつぶやく。

 

 充電池、バッテリーとは違い、燃料を突っ込んで反応させる燃料電池には定格以上の出力で運転させることも可能だ。

 宇宙戦艦ヤマトの波動砲発射シーケンスにある「エネルギー充てん120パーセント」に突っ込む人も多いが、定格を超える過負荷運転は別段珍しいことではない。

 外乱など何らかの原因で定格を超えてしまう可能性は常にあり、100パーセントを超えたら即座に壊れてしまうようでは使い物にならない。

 それゆえ機械の定格出力は様々な要素を勘案して安全マージンを十分にとったうえで定められている。

 それを承知の上、安全性が損なわれない範囲での一時的な過負荷運転は十分許容できるものなのだ。

 

 旧21世紀の日本の例では、夏場、電気が足りないと騒がれるような年だと経済産業省が「本当に足りない時には火力発電所に過負荷運転させるから」というような文書をプレス発表していたし、各電力会社ではそれに対応して準備をしているという。

 ミヤビが前世で勤めていた某重工は火力発電ユニットの建造も手掛けていたからこの辺の事情は身近なものだった。

 さすがに120パーセントなどというべらぼうなものは無く、せいぜいが数パーセントの増出力に収まっているものではあったが。

 

「ボトルネックはやはり、大気中での放熱になりますか」

 

 燃料電池というと化学反応で電気を産み出すことから効率が高く熱ロスは少ないイメージがあるが、実際には出力が高いものは動作温度が高くなる。

 発生した熱は原型機であるドラケンEにおける背面放熱器の代わりに内蔵されている熱回収器を介して推進剤の加熱に使われている。

 それでも利用しきれない余剰熱は両肩、尻に搭載された放熱器から放出される。

 宇宙空間では輻射による熱放出しかできないが、放熱器をこのように分散配置しておけば必ずどれかが太陽光に対して影になり、効果的に排熱ができるという設計になっている。

 

 一方、大気中ではすべての放熱器に分散して熱を放出することでファンによる強制冷却無しで十分に放熱が可能。

 ファンレスであるための静粛性、および元々少ない排熱を放熱器を分散配置して処理するため熱探知に引っかからないということからステルス性が高くなっている。

 また宇宙空間ではデッドウェイトにしかならない空冷ファンを搭載しないことは機体の軽量化にもつながるし、部品点数の削減によるコスト削減、信頼性、整備性の向上にも寄与していた。

 

 しかし従来の設計では燃料電池の過負荷運転までは計算に入れてはいなかった。

 安易な馬力アップを施した車やバイクは熱ダレを起こすことが多いが、簡単に言えばそのようなものだ。

 

「冷却系の強化、ファンを付けて強制空冷式に改めてはどうですか?」

 

 技師の一人が提案するが、ミヤビは首を振った。

 

「このためにしか使わない機器を取り付けるのは……」

 

 使うのはわずか数分だけ。

 それ以外にはデッドウェイト、無駄となるし部品が増え構造が複雑化するために故障率がアップしコストも上がる。

 

「もっとシンプルで、原始的な方法……」

 

 その時ミヤビの頭にひらめいたのは、前世で扱っていたガスタービンの夏場における出力低下問題だった。

 ガスタービンはジェットエンジンと同じ構造をしている。

 大量の空気を『圧縮機』に吸い込み空気を圧縮。

 続く『燃焼器』で高圧となった空気に燃料を噴射し燃焼。

 最後に高温高圧となった気体が『タービン』を回転させるというもの。

 

 これが夏場になると気温が高くなる分、空気が膨張し薄くなるため圧縮機での吸い込み質量が実質的に少なくなる。

 それが出力を低下させるわけだ。

 改善するには吸気を冷やしてやる必要がある。

 形式は違うが吸気を圧縮するという点では同じターボエンジンに付けられているインタークーラーなどは、まさにこのための装置だ。

 

 しかし、そういった大規模な装置の設置にはコストがかかる。

 夏場だけ、限られた期間のみのことなのだから、もっと簡便に温度を下げる方法が好ましかった。

 そこで試されたのが、

 

「ミスト噴霧……」

 

 吸気に水を噴霧することで水の蒸発潜熱によって吸気温度を下げてやるのだ。

 これならマイクロポンプと水配管、スプレーノズルだけでできる。

 

「なるほど放熱器に水を噴霧することで一時的に温度を下げるわけですね」

 

 周囲の技師たちが感心の声を上げる。

 ミヤビがたどり着いた、ある意味ローテクで泥臭い解決法は最新技術を駆使した機動兵器開発に携わる彼らには無い発想なのだろう。

 旧式の勝利、とも言う。

 

「燃料電池から発生する水はタンクに貯められていますから、これを過熱時に放熱器に噴霧してやれば、温度が下げられます」

 

 この水は生活用水、飲料水として利用もできるものだった。

 ただし非常に不味いことで有名でもあるが。

 

 

 

 後日、稼働テストにおいてこのミスト噴霧による冷却効果が試され十分な成果が上げられたが、同時に発散される水蒸気が熱源センサーを欺瞞するという副次効果が得られることが分かった。

 これに驚愕した技師が、

 

「熱量を持った残像だというのか!?」

 

 と叫んだことに内心吹き出しそうになったミヤビだった。

 

【挿絵表示】

 

 


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