ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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機動戦士Jr.MS 第2話「有線有人オールレンジ攻撃ユニット」

「こういうのでいいのよ、こういうので」

 

 ザクとの戦闘を終えたミヤビは搭乗していたジュニア・モビルスーツの60ミリ速射砲を本来のマニピュレータに換装。

 アムロのガンタンクと共に撤収作業を行っていた。

 そう、地球連邦軍も当初はこういう作業目的に採用したはずの機体なのだ。

 それが60ミリ速射砲なんぞを載せて、

 

(キングゲイナーのガチコみたいに使われるなんて……)

 

 脳裏に浮かぶのは富野監督のアニメ作品『OVERMANキングゲイナー』に登場したシルエットマシン『ガチコ』。

 あれもオープントップの小型機で、搭載した速射砲による狙撃に特化した機体。

 二足走行による軽快なフットワークで駆け回ることで、素早いポジショニングからの狙撃で活躍していた。

 

 そして実際、地球上ではベン・バーバリー中尉、『機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線』登場の対MS特技兵指揮官。

 史実では対モビルスーツ用にスケールアップされた有線ミサイル、対MS重誘導弾M-101A3 リジーナでザクと戦っていた彼だったが、この世界では60ミリ速射砲を搭載したジュニア・モビルスーツに乗っているという。

 ザクの正面装甲も条件次第では抜ける60ミリ速射砲は現代の対戦車ライフル(『ルパン三世 カリオストロの城』で次元大介が終盤使っていたやつ(シモノフPTRS1941))とも言えようか。

 よりマシな兵器を与えられているためか、今現在も生き延びヨーロッパ南方戦線でザクハンターとして活躍中らしい。

 のだが、

 

「……ままならないね」

 

 そういうことだった。

 

 

 

 一方、帰還したスレンダーの報告を受けたシャアは、ドズルに撃破されたザクの補給を要請すると共に、

 

「少尉、突撃隊員を三名招集したまえ」

「は? 補給艦の到着を待つのではないので?」

「戦いとはいつも二手三手先を考えて行うものだ。できれば敵モビルスーツを手に入れ物的証拠としたい。スレンダーは脱出した。ということは逆もまた可能ではないのかな?」

 

 生身、ノーマルスーツでのサイド7への侵入を試みる。

 

「いいな、スレンダー」

「は、はっ!」

 

 ミヤビの知る史実と異なるのは、案内人にスレンダーを伴うことだった。

 そして……

 

 

 

 1時間後、サイド7に造成された山道に在る5連ヘアピンカーブ。

 

「どうしても分かりません…… インベタのジュニア・モビルスーツがデニム曹長のザクよりも速いスピードで曲がれるなんて……」

 

 あの奇跡が起きた現場を前にスレンダーは言う。

 

「思い出してもゾッとします。あいつは本モノの幽霊かもしれませんよ、少佐……」

 

 しかしシャアは、

 

「スレンダー、わかったぞナゾが。デニムがなぜ負けたか教えてやろうか」

 

 シャアはコーナーに立つ街路樹を指差し、

 

「これを使ったんだ。ジュニア・モビルスーツのパイロットは」

「?」

「分からんか? 街路樹の幹だよ、幹……」

 

 つまり、

 

「街路樹の幹にイン側のマニピュレータをわざと引っ掛けて遠心力に対抗するのだ…… これならば確かにソールのグリップ以上のコーナリングフォースを得ることも理論的には可能なことだ……」

 

 その言葉に、あっけにとられるスレンダー。

 

「あまりにも単純明快でバカバカしい思いつきだが…… いきなりでやろうとしても絶対に成功しないだろうなキケンすぎて……」

 

 とシャア。

 

「おそらく相手は普段からこんなことも練習してるんだろう。よほど、このサイド7を走りこんでいる奴だ……」

 

 仮面の下の瞳が細められ、

 

「こんなことが起こるから、戦場は面白いな、つくづく……」

 

 スレンダーではない、彼を通して彼が見たジュニア・モビルスーツの姿を見通すように言う。

 

「久々に私が本気で熱くなれる標的(ターゲット)に出合えた気がするな」

 

 と。

 

「そのジュニア・モビルスーツは私がやる!!」

 

 

 

 なお……

 ミヤビがこの話を聞いていたら買い被りが過ぎると常に変わらぬ表情の下、内心で絶叫していたことだろう。

 

 木の幹につかまってターン。

 これはミヤビが前世で見ていたアニメ『超時空世紀オーガス』で主人公、桂木桂がエマーンの戦闘マシン『モラーバー』に乗った時に見せた戦法。

 慣性制御を可能とした腕の生えたマシンで木の幹をつかんでターン、反撃して見せたやつだ。

 

 それと似たことをやってみただけだし、それができるのはサポートAIサラのアシストと、機械義肢の権威、ディック・ルムンバ氏の開発した機体制御プログラムがあってのこと。

 ディック・ルムンバ氏の本来の技術が生かせる全高2メートル程度、人間に近い大きさの機体を持つジュニア・モビルスーツだったからこそできる、きめ細かい制御があったからであって、常日頃からこんな危険行為などしていない。

 

 そもそも、最後発のコロニーで、地球連邦が宇宙移民をストップさせたがために人の少ない、緑化できる余地の大きいサイド7で、これまでに技術を蓄積してきた造成、植林技術を生かし、しっかりと根の張った街路樹の整備が行われた道であるからこそできたことである。

 加減した一瞬の引っ掛けであっても、弾力があり、しなる木の幹だからこそできるのであって、街灯のポールなどといった人工物で同じことをすれば引っ掛けたものが折れるか、ジュニア・モビルスーツのマニピュレータの方がいかれるか、それとも事故るかのいずれでしかない。

 そして当然、このコロニーに初めて来たミヤビに練習する機会など無かったのだから。

 

 そんなミヤビはというと、

 

「あれは…… セイラ?」

 

 撤収作業を終えたところで、セイラの乗るエレカーを視界の隅に捉える。

 史実どおりなら、艦長命令によりコロニーに生存者を探しに来たのだろう。

 

「なら手伝った方がいいのかしら」

 

 ジュニア・モビルスーツなら瓦礫の撤去も簡単だ。

 生存者が居るのなら救助の役に立つだろう。

 そうしてセイラのエレカーを追うミヤビだったが彼女は忘れていた。

 この後、起こる……

 

 

 

「やっば!」

 

 シャアとセイラ、兄妹の再開現場に立ち会ってしまったミヤビ。

 シャアに拳銃を向けられるが、

 

「サラちゃん・アクション!!」

 

 ミヤビのとっさの指示により、サポートAIのサラはジュニア・モビルスーツに両腕を顔の前で揃えるボクシングの『ピーカブースタイル』に似た構えを取らせ、両腕装甲でコクピットをガード。

 視界が悪くなるのがこの体勢の欠点だがしかし、

 

「この機体のカメラって機体正面、胸元にあるのよね」

 

 そこは覆われないため、コンソール上のCRTに映し出した映像で操縦は可能。

 それこそアニメ『THEビッグオー』に登場するメガデウス(巨大ロボット)、主人公機であるビッグオーのようにガードした両腕で攻撃を弾きながら突進する。

 シャアは、連続して拳銃を放ち続けるが、

 

『くどいッ! 武器なんて無くても攻撃はできるんですよッ!』

 

 とサラの言うとおり、足元の瓦礫を蹴り上げれば、粉々に砕かれた破片の散弾がシャアを襲う!

 しかし、

 

「ちっ」

 

 さすがというか、やはりというか、シャアは舌打ちするだけでそれをあっさりと回避。

 背中のランドムーバーを吹かして飛び上がり、逃走してしまう。

 

「兄さん……」

 

 そうつぶやくセイラをミヤビは見ないふり聞かないふり。

 この兄妹に隔意はないが、不用意に関わるのは危険すぎた。

 特に周囲の者が死にまくることになるシャア。

 

 

 

 そしてホワイトベースがコロニーのドッキングベイから出港するのだが、

 

「ガンタンクの左肩の砲を外してジュニア・モビルスーツを合体させて砲座にするって……」

 

 と困惑するミヤビが居た。

 右腕を60ミリ速射砲に換装したジュニア・モビルスーツを搭載するにあたり、一応、装甲カバーは付いていた。

 その内面にはプロジェクターにより、ガンタンクの各所に備えられたカメラ画像を合成して投影される全天周囲モニターに近い映像が映し出されている。

 それは良いのだが、

 

「いや、ワイヤー付けて射出する!?」

 

 装甲カバーが開き、ミヤビの乗ったジュニア・モビルスーツは宇宙空間に撃ち出される!

 それって、まさか……

 

 

 

「くそぅ! うぉ! こっちが当たらずに、なんで相手のほうが!?」

 

 アムロのガンタンクの砲撃を、辛うじてシールドで受けるスレンダー。

 本体を守れた代わりに、シールドが粉々になった。

 そして、

 

「敵は1機じゃないのか!?」

 

 思わぬ方向からの攻撃を受ける。

 ガンタンクから射出されたミヤビのジュニア・モビルスーツからの狙撃だ。

 

「スレンダー!」

 

 そこにシャアが割って入るが、

 

「速い!」

 

 普通では考えられない速度で狙いを外し、

 

「何という運動性!!」

 

 あまつさえ姿勢を制御し反撃してくる。

 

 

 

 ミヤビのジュニア・モビルスーツは、極めて強度の高いワイヤーで、アムロのガンタンクとつながっている。

 ジュニア・モビルスーツの何十倍もの質量を持つガンタンクが絶えず動く基点となり、ワイヤーをリールに巻いたり送ったりすることで高機動を実現する。

 また、ジュニア・モビルスーツ自身にもスラスターは装備されており、手足をぶん回すことによって姿勢制御を行うAMBAC(Active Mass Balance Auto Control:能動的質量移動による自動姿勢制御)と共に、それが姿勢、進行方向を調整した。

 

「サイコミュによらない有線有人オールレンジ攻撃ユニット!?」

 

 それが、このミヤビが転生した宇宙世紀でガンタンクに追加された装備だった。

 

(いや、絶対おかしいでしょ。人のこと何だと思ってるの!)

 

 撃ち出され、使われるミヤビにしてみれば、

 

「冗談じゃない!!」

 

 という話である。

 耐G機能のあるノーマルスーツを着てはいるのだが、それでもきつすぎるっ!

 

 まぁ、この戦術は実はそんなこともできるという思いつきから考えられたもので、装備自体は元々、タンクの偵察に利用するためのもの。

 ミヤビの前世の記憶の中では、アイザックの左マニピュレータの代わりに付けられる装備として設定された山越えカメラ(後にEWACネロ等にも搭載されている)みたいに、機銃操作員を偵察兵として使おうという、ごくまっとうな構想で搭載されたものだった。

 

 西暦の時代のロシアのウクライナ侵攻では、従来兵器に代わりドローン兵器が幅を利かすようになっていて。

 それを受けて主力戦車も偵察ドローンを搭載する方向に進化の兆しを見せていた。

 また、ドローンも妨害電波の影響を受けやすい無線式ではなく有線(光ファイバーのリールを搭載して飛んでいく)に切り替わってきていた。

 そう、ガンダムにおける山越えカメラに類似した装備が登場しだしていたのだ。

 

 そしてタンクなのだから主戦場は地上。

 

「ドローンを飛ばすと見つかるじゃん?」

「それより、二足歩行、人間とほぼ変わらない全高2メートルの小型機、ジュニア・モビルスーツで地上を、地形を利用し隠れながら偵察に行った方が発見されないだろ」

 

 というわけである。

 

 その他にも、旧21世紀の時代の例では、もっとも戦車戦を知っている軍隊、イスラエル軍においてはあえて自動装填装置を搭載せず、装填手を乗せていた。

 これは「戦車が戦場で生き残るには最低4人の乗員が必要」という思想を反映したものだ。

 装填手と聞くと砲弾を込めるだけの役割に聞こえるが、実際にはそれ以外にも様々な役目を果たし他の乗員をフォローするマルチプレーヤーでもあるのだ。

 しかし、である。

 ガンタンクまで行くと、そもそもでかすぎて乗員が人力で補給整備するのは不可能。

 履帯一つ、転輪一つとっても重機なしには修理できないという。

 それを可能にするのが、ジュニア・モビルスーツの搭載であり、実際、このガンタンク左肩に載せられたユニットでは60ミリ速射砲と通常の右腕マニピュレータがオートで付け替えることができ、ジュニア・モビルスーツを作業にも使えるようになっていた。

 

 

 

「うぉ! うぉぉ! こんなはずは、こんな!」

 

 ジュニア・モビルスーツの攻撃で動きを封じられたところにガンタンク右肩の120ミリ低反動キャノン砲が放つ粘着榴弾(HESH)を受け、行動不能に陥るスレンダーのザク。

 それを目の当たりにしたシャアは、

 

「か、火力が、機動力が、ち、違いすぎる」

 

 そうつぶやくと退却して行った。




 生身をさらすオープントップ機に乗せられ、有線有人オールレンジ攻撃ユニットとして戦場に射出されるミヤビでした。
 酷い話ですね。

 それではまた。
 ご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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