ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件 作:勇樹のぞみ
宇宙世紀0078年、地球はコロニー落としの炎に包まれた!
ミヤビです……
1年戦争の悲劇を回避するため奔走してたら、ギレン・ザビ氏に捕獲されました。
ミヤビです……
私という存在が生んだバタフライ・エフェクトなのか、ギレン氏はザビ家の独裁という分かりやすい悪役を用意することで、地球連邦の戦争目的をサイド3の独立阻止からザビ家独裁の打倒へとすり替える『ザビ家敗北ジオン独立END』を狙うことにしたそうです。
ミヤビです……
そんな大事を知らされた以上、私にはジオンに協力する以外、もう生きのびる道は無いみたいです。
ミヤビです…… ミヤビです……
ミヤビです……
というわけでミヤビは政財界に強いパイプを持つヤシマ財閥の令嬢としてヤシマ重工サイド3支社の総責任者(実務担当者である支社長ではなく、その上の経営陣、サイド3支社の業務を統括する取締役)に就き、ジオン政府、ならびに軍の相談役を勤めることに。
ジオンの役に立つことと引き換えに、何とか正史にあった悲劇、せめてコロニーへの毒ガス攻撃だけは止めてもらえるよう働きかける算段だったが、とある技術を開発したせいで、
宇宙世紀0078年、地球はコロニー落としの炎に包まれた!!
海は枯れ、地は裂け……
あらゆる生命体が絶滅したかにみえた……
だが… 人類は死滅していなかった!!
一年戦争が旧ザク、ザクIを主力として1年前倒しで始まることになってしまったのだ!
(違うんです! そんなつもりは無かったんです!!)
常に変わらぬ表情のまま、内心で絶叫するミヤビ。
今回の彼女の「やっちゃったZE☆」ポイントは3つ。
一つ目は、ギャンが採用していた流体パルスアクセラレーター機能を流体パルス・システムで駆動するアクチュエーターそのものに持たせてしまったこと。
ジオンのモビルスーツは流体パルス・システムで駆動しているが。
流体パルスアクセラレーターは流体パルス・システム版のマグネットコーティング技術とも言えるもので、駆動エネルギーの余剰を蓄積し必要に応じて該当する駆動部に送出する機能を持つ。
それによりアクチュエーターの反応速度と駆動力を爆発的に上げることが可能。
史実ではギャンに採用され、だからこそマ・クベの操縦でもアムロのガンダムに対抗できたとも言われていた。
(でもこれってアキュームレーター(蓄圧器)付きアクチュエーターがやっていたことよね)
とミヤビは考えた。
アキュムレーター付きアクチュエーターは、作動用の高圧の油や気体のエネルギーを一時的に蓄え、必要時に放出・利用する駆動装置だ。
油圧の脈動や振動を吸収する効果や、電力削減・省エネ、緊急時の圧力保持、そして何より瞬発的に強力な打撃力を発生させるためなどに利用される。
実際、ミヤビの前世、西暦の時代でも自動車のABSなどに普通に採用されていた。
ギャンでは股間にある円筒状のパーツ、それがギャンの流体パルスアクセラレーターであるとされていたが。
どうしてそんな場所についているのかと言うとエネルギーを貯め込む関係上、結構危険な機構だから。
円筒状の頑丈なケースにより厳重にシールドを施した上で、攻撃で破損するなどトラブルがあった場合にはイジェクトし機体を守るためだったが。
そこでミヤビは考える。
(これ、全身に行き渡されるエネルギーを一か所に集めるから危険なのであって。それこそ自動車のABSに採用されていたアキュムレーター付きアクチュエーターのように、アクチュエーターそのものに最初から機能を持たせておけばいいんじゃない?)
それならエネルギーを集中させる必要も無く危険度も下がる。
また、駆動用のアクチュエーターそのものに持たせていた方が、経路の抵抗も少なくなり、エネルギー効率も高まるし。
ということで、やってみたらあっさりとできるようになってしまったのだ。
(あれ? なんでこんな簡単なこと史実のジオン軍はやってなかったの?)
という話だが。
いや、実際には類似の機能自体は実装されていた。
しかしそれは供給されるエネルギーの脈動や振動を吸収させ、動作を安定させる目的で小型の機構が付けられていただけであって。
逆に言えばミヤビのやったことは、その容量を大きくし、史実の流体パルスアクセラレーターに類似した効果を引き出せるように「しただけだが?」であったが。
その「しただけ」で得られる効果が大変に大きかったのだ。
まぁ、軍事、そして軍事技術をスピンオフすることで得られた民間技術でも、メカニカルなリンクや油圧で隅々まで制御しましょう、などというシステムは過去のもの。
フライ・バイ・ワイヤから始まった機械的な制御を電子インターフェースに置き換える技術の発達で廃れてしまったものだったので。
ある意味先祖返り的に機械的な力の伝達で駆動制御する流体パルス・システムを開発するにあたり、それら古い技術に馴染みの無い宇宙世紀の技術者には、その発想が思いつかなかった、ということらしい。
逆に言えば、ミヤビが転生者、古い人間だから思いついたという点で、
「旧式の勝利という話なのかしらね?」
ということだったりする。
二つ目は『学習型OS』とそれをジオンの『設計開発生産支援システム』で一元管理する手法の提唱。
学習型OSはジム等、教育型コンピュータを搭載しない一般の地球連邦軍モビルスーツに利用されていたシステムだ。
機体に稼働ログ採集機能を搭載しネットに接続する度に管理サーバにそれをアップ。
管理サーバが集約されたデータを使って機体制御OSを更新、アップデートパッチを配るという、量産機に向いた方式。
一方、ジオンには『ジオン驚異のメカニズム』を支える、CAD/CAMシステムを高度に発展させた『設計開発生産支援システム』が存在する。
マンガ『機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還』にて紹介され「各エースパイロットの個別要望によるカスタマイズも数日で実物を完成させる」という高レベルの技術力、生産力により、ジオンは短期間のモビルスーツ開発、並びにあれだけ多様なモビルスーツバリエーションを展開できたのだとされた。
ミヤビの前世、旧21世紀でも多品種少量生産にシフトした部品メーカーがそれに近いことをしていた。
日中、作成する部品のデータを入力しておくと、夜中に無人工場の生産マシン類が動いて翌朝までに作ってくれるというもの。
それの延長線上にある技術なのだろう。
ミヤビはハードウェアだけでなく、機体制御OSというソフトウェアまで、こちらで統合管理させることを提唱したのだ。
まぁ、その方が管理上、無駄が無くて良いのだが……
学習型OSというものが画期的だっただけでなく、ハードウェアとソフトウェアが一元管理できるということから生じるシナジー効果は目覚ましく。
ジオンのモビルスーツ開発に寄与したことは言うまでも無かった。
三つめはサポートAIサラの利用。
ジオンのモビルスーツ開発に協力するにあたり、ミヤビは機体のサポートAIとして未来においてSガンダムに搭載されるルーツ博士開発の人工知能、AIである『
史実においてRXシリーズに搭載された教育型コンピュータはパイロットの言葉や所作から意思を推測して、その操作を補足する機能を持っていたという。
要するにパイロットの考えや、やりたいことを察してフォローしてくれるということだが。
この機能はパイロットの挙動をサンプリングすることでより精度を増し、技量の高くないパイロットにも熟練兵の操縦を可能とするもの。
そうやってパイロットを教え、導きながら、同時に自らも成長していくという意味で教育型と名付けられていた。
そしてまさに人格を持ち、人間を、人の心を理解し、パイロットのために尽くす存在がサポートAIサラなのであって、彼女の存在があるがゆえに、教育型コンピュータと同様、いやそれ以上にパイロットのやりたいことを先回りしたり補足したりして助け、機体を自由に制御することができるのだ。
史実ではザクIはヅダとのコンペに勝ち、ジオン軍最初の量産型モビルスーツの座を得たが。
機体各部の動力パイプをすべて装甲内に収納していることによる非効率性や、ジェネレーター出力が低いことなど、設計当初から多くの欠点が露見しており。
その後の改良により、性能全般が向上したMS-06ザクIIが完成した、と言われていた。
しかし、である。
ミヤビの発案で開発された流体パルスアクセラレーター機能を搭載したアクチュエーターの登場で歴史は変わってしまう。
西暦の時代に開発されたプリウスなどのハイブリッド車は排気量の少ない小さなエンジンしか積んでいなかった。
ガソリン車は発進や急加速時に大きなパワーが必要となり、そのため大排気量エンジンが求められるが、ハイブリッド車はバッテリーに貯められた電力でモーターを回し発進・加速を行うため、エンジンにかかる負荷が大幅に軽減される。
これにより、エンジン自体のパワーが小さくて済むという理屈だ。
つまりハイブリッド車のようにエネルギーを貯め込める機構さえあれば、ジェネレーター出力が低くても大丈夫だし。
ハイブリッド車で「エンジンにかかる負荷が大幅に軽減される」「エンジン自体のパワーが小さくて済む」ことをジオンのモビルスーツに置き換えれば、流体パルス・システムから伝達するエネルギーの瞬間最大量は少なくて済む、つまり力を伝達する「動力パイプも細くて済む」ということなので。
ゆえに、動力パイプを内装しても、問題は少なくなる、ということ。
そこに学習型OSやサポートAIサラによるソフトウェア面での底上げが成されれば……
ザクIでも性能は十分、これを量産することによって戦争開始時期を史実より1年繰り上げる、ということも十分可能になってしまったのだ!
違いはそれだけでなく。
赤く塗られたヅダを見て叫ぶミヤビ。
「これ『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』で見たやつだ!」
シャア専用ヅダの爆誕である。
(ララァ=サン! ナニヤッタンディスカー!!)
ミヤビが思い出すのは前世の記憶の中にある『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』
あれはシャアがガンダムの手にかかって死ぬことになった世界線のララァが、その運命を回避するために造り出したパラレルワールド、IFの世界。
その最終話『だから僕は…』作中のワンシーンにてイメージとして登場した機体がこの赤いヅダ、シャア専用ヅダだった。
ララァが繰り返す世界の中で示唆された可能性のひとつ。
ヅダは史実ではザクIとのコンペの最中、その加速力に対して機体の強度が不足していたことから、飛行試験中に空中分解を起こした機体だったが。
これもまたミヤビがもたらした技術によりその運命を変えていた。
人体の強度は、骨の強度と筋肉量・筋力の両方を高めることによって総合的に増すことができる。
ジオン軍のモビルスーツは装甲がフレームを兼ねるモノコック式。
つまり装甲強度が人体で言う骨の強さに当たるが。
ミヤビの発案で開発された流体パルスアクセラレーター機能を搭載したアクチュエーターは、人体で言う筋肉量・筋力を高める効果を発揮した。
ヤシマの系列企業、八洲軽金属(史実ではガンダムのフレーム作成に協力したメーカーの一つ)のチタン技術と素材を提供していたこともあるが、これにより総合的な機体強度が上昇。
さらに学習型OSの採用、それをジオン共通の『設計開発生産支援システム』で一元管理することにより完成度の上がった機体制御技術が機体に加わる応力を軽減。
それでも心配だったためサポートAIとして開発中だったサラのゼロナンバー、個体識別名『サラ=レイ』を載せてもらい、上手い具合にリミッターをかけてもらうことで事故を防いだわけであるが。
思い出してみると良い。
OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO』で登場したEMS-10ヅダは高性能ぶりを発揮、最終決戦となったア・バオア・クー攻防戦でも地球連邦軍のジムに十分対応ができていたが。
一方で、地球連邦軍のプロパガンダ放送でコンペ時に空中分解を起こしたEMS-04から設計が変わっていないことが明らかにされている。
逆に言えば、空中分解の問題が解決されているのなら、一年戦争末期でも通用する機体が宇宙世紀0075年に完成していたということであり。
ザクIの性能に満足できないエースパイロット向けには、このヅダを小数生産して充てればよいということになったのだ。
(あれ? でも……)
繰り返しになるが『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』はシャアがガンダムの手にかかって死ぬことになった世界線のララァが、その運命を回避するために造り出したパラレルワールド、IFの世界。
ならば、そもそもガンダムを開発される前に戦争を終わらせてしまえば……
という発想に至るのも有り得るのかな、とミヤビは考える。
もし、赤いヅダ、シャア専用ヅダが存在するこの世界がララァによって造り出されたものなら、何故、彼女は満足できず別の可能性を求めたのか……
後日、シャアの言葉がそれに答えてくれた。
機体のサポートのために載せられたAIサラに対し、彼は、
「サラは私の母になってくれる女性かも知れない……」
とつぶやきを漏らしていたのだ。
(それはララァもこの世界諦めて次に行くわ……)
という話だったりする――
1年前倒しの一年戦争、今度はジオン側だった場合のお話ですね。
シンプルな機体が好きな私にとって旧ザク、ザクIのデザインが本当に良いと思われるので書いてみました。
今回は基本的な設定と展開を語っただけなので、もっとザクIについて細かく語っていきたいところではありますね。
ご意見、ご感想等をお待ちしております。
今後の展開の参考にさせていただきますので。