ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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「次は射撃武器でしょうか?」と言ったな。
 あれは嘘だ。
 というわけで今回はMSの足裏問題についてのお話になります。


機動戦士ザクI シャアの八艘跳び(HASSO-BEAT)

「はい? シャア・アズナブル中尉…… 少佐がザクIで8隻の戦艦を落とした!?」

 

 一年前倒しのルウム戦役は、ほぼミヤビの記憶の中にある史実どおりに推移したが、異なる面も、もちろんあった。

 

 史実でのシャアは、本作戦で5隻の戦艦を撃沈し二階級特進を果たし少佐に。

 その驚異的な戦果は、敵の戦艦を踏み台にし推進力を最大限に生かした機動性にあったとされる。

 この出来事は源義経の『八艘跳び』伝説に因んで『シャアの五艘跳び』と言われたという。

 しかし、

 

「ザクIに乗っていて、何で戦果が拡大してるの? 本当に八艘跳びになってるじゃないの!!」

 

 それはもちろん、この世界に転生したミヤビのせいであった。

 

 

 

 モビルスーツの足裏問題というものがある。

『機動戦士ガンダム』作中では、モビルスーツの足裏は一体型となっていたが。

 続編『機動戦士Ζガンダム』以降は、つま先とかかとが別パーツになっていた。

 そうでないとスムーズに走れないからで、基本的にはジムと同じデザインだったジムIIの足裏も地味に分割されていて。

 以降、一年戦争当時のモビルスーツであってもリファインされたデザイン、そして発売されたプラモデルでは皆そうなっていた。

 

 ザクIとて同様。

『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』等、いずれの作品であってもつま先とかかとが別パーツになるよう分割された設定画が書き起こされていたし、プラモデルもまたそれに倣ったものが販売されていた。

 

 一方、この世界のジオン軍モビルスーツ開発に協力したミヤビはこう考えた。

 

「厚底スポーツシューズの原理を用いれば、無理にアクチュエーターを使って可動させなくても良いのでは?」

 

 と。

 ミヤビの前世、西暦の時代では2016年以降、厚底のスポーツシューズが世界を席巻していた。

 厚い靴底に仕込まれたカーボンまたは複合プレートがバネの役割を果たし、着地の衝撃を前への推進力に変えるというもの。

 そしてほぼ曲がらない厚底靴がソール(靴底)の硬さに関わらず走ることができるのは、靴底の形状に工夫が施されているため。

 ソール全体が緩やかなカーブを描いているため、足指で地面を蹴り出さなくても、コロンと転がるようにスムーズに体重移動ができ、走行時の負担を軽減するわけである。

 特につま先部分が上向きに大きく反り上がっている設計は、接地から蹴り出しまでの重心移動をサポートし、硬いソールでもつまずきにくく、スムーズな足運びを実現することになる。

 

 そうした観点で見れば、そもそも一年戦争当時のモビルスーツは大抵が、足裏のつま先が上向きに反っているデザインだった。

 

「この形状にちょっと手を加えたうえで、厚底スポーツシューズに仕込まれていたカーボンプレートのような高反発材をソールに仕込めば……」

 

 という具合にジオニックに提案して。

『ジオン驚異のメカニズム』を支える、CAD/CAMシステムを高度に発展させた『設計開発生産支援システム』を使いシミュレート、検討が行われた結果、それがアクチュエーターを入れて足裏を分割可動させる場合より、優位に働くという結果が得られたのだ。

 

「まぁ、当然と言えば当然か」

 

 その効果はミヤビの前世、旧21世紀のスポーツの世界で実証済み。

 そして人体とは異なるメリットとして、アクチュエーターを入れて足裏を分割可動させるより機構が簡単になり、強度が増し、軽量化も図られ、部品点数が少なくなったことから信頼性も向上、補給整備も含めたコストも軽減していた。

 

「でも、どうしてこれをジオニックの技術者たちは思いつかなかったのかしら?」

 

 そう考え、ミヤビはすぐに思い至る。

 

「厚底スポーツシューズに規制が入って廃れたためか……」

 

 ミヤビの前世、旧21世紀でも既にその動きは始まっていた。

 高性能な厚底スポーツシューズが開発されていった結果、世界陸連(WA)等が競技で使用できる靴底の厚さを制限しだしていたのだ。

 そしてそれに対しスポーツシューズメーカーはその制限内での性能向上を図り、さらに規制が強化される、という鼬ごっこを繰り返した結果、厚底スポーツシューズは過去の遺物と成り下がり。

 この宇宙世紀の技術者たちには、その発想が思いつかなかったということだった。

 逆に言えばミヤビが転生者、古い人間だから思いついたという点で、

 

「旧式の勝利という話なのかしらね?」

 

 ということだったりする。

 

 

 

 しかし、この変更は想定とは別の効果を発揮した。

 

「ザクとは違うのだよ、ザクとは」

 

 模擬戦による格闘訓練。

 ランバ・ラルの駆る青いブグが訓練生のザクIを圧倒する。

 MS-04ブグはミヤビの前世の記憶の中では『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で登場した機体。

 生産性を度外視した設計であったため制式量産機の座はMS-05ザクIに譲ったが、その性能自体はザクI以上で。

 故に、少数生産された機体がランバ・ラルたちに使用されていたのだ。

 しかし、

 

「むっ!」

 

 ラルのブグに蹴り飛ばされた訓練生のザクIが、反撃とばかりにキックを放つ。

 しかし、それを見切ったと思った瞬間、

 

「おおっ!」

 

 吸い付けられるように、ザクIの足裏がブグの装甲を捉える。

 

「高速自動追尾した!?」

 

 訓練生の腕は並み以下だった。

 それがウソだったかのようにクリーンヒットに変わる。

 そしてその衝撃は、性能で上回るはずのブグ以上!

 

「なるほど、ザクIに採用された新型高反発ソールはそういう効果も引き出すかっ!」

 

 ──ザクIのキックは何故、ブグ以上のダメージを出せるのか──

 

 それは「()()」であるからだ──

 新型高反発ソールによって蹴りつけられた打撃は「()()」に有効打(クリーンヒット)となる!!

 

 有効打を確実に入れるという事は闘いにおいて一番困難なことだ──

 

 例えば格闘技。

 パンチを当てたとしても、相手が腹筋を引き締めることでガードしたら?

 ヒジやヒザ、人体の硬い箇所でブロックして来たら?

 いや、たとえそうでなくても頭蓋骨等に当たって弾かれることもある。

 下手をすれば、それにより手首をくじいたり、指の骨を折ったり、反作用による反動で自分の手を痛めたりすることも。

 また身体が泳ぎ、今度は相手に隙を見せることにもなる。

 

 単にパンチを当てることと、それを弾かれることなく効果のある、ダメージのある有効打とすることには遠い隔たりがあるのだ。

 故に、

 

 敵を倒す為──

 ()()()()()()()()()()

 たったそれだけの事を成功させる為に、幾つもの技が先人によって産み出されてきたのだ!!

 

 だが──新型高反発ソールによって蹴りつけられた打撃は全ての理論(セオリー)を超えて有効打を与える。

 何故か?

 

 それは相手を守る装甲に弾かれることが無いからだ。

 普通に考えれば弾力性のある新型高反発ソールを付けたらキックの衝撃は弱まるのでは、と思うかもしれない。

 しかし、である。

 ボクシングにおいては、素手よりグローブを付けた方が相手に伝わるダメージが大きくなるという話がある。

 グローブを付けたパンチの方が弾かれず、力が逃げずにすべて伝わってしまうためだ。

 軍事においても先端に軟鋼の被帽を付け、着弾時の跳弾を防ぐことで貫通力を高める帽付徹甲弾(APC)が存在しており。

 それと同じ効果を引き出していることになる。

 

 だが、それだけではあの、高速自動追尾したかのような動きは説明が付かない。

 ならば、そのからくりとは!

 

『分かりました、ラルさん!』

 

 ブグにインストールされたサポートAIサラが即座に報告。

 

『インパクトの瞬間に磁気反応を計測しています! つまり……』

 

 続くザクIのキックにラルは、

 

「こういうことだな」

『はいっ!』

 

 脚を上げ、蹴りを合わせることで対応。

 そして訓練生のザクIのキックは先ほどの不自然な動きを上回るおかしさでブグの足先に吸い寄せられる!

 

「足裏のマグネットをインパクトの瞬間に最大出力で作動。相手の装甲に足先を引き寄せていたか」

『そのとおりです!』

 

 宇宙用モビルスーツの足裏には無重力でも艦やコロニー外壁等を歩けるように吸着マグネットが装備されている。

 モビルスーツの重量を引き付け、安定させるためのそれは、出力もかなりのものがあって。

 訓練生はそれを利用してキックを操った。

(厳密に言えば、マグネットの最適なオンオフ操作は彼が乗っていたザクIにインストールされていたサポートAIサラが行っている)

 

 そしてそれを、ランバ・ラルのブグにインストールされているサラがブグの足裏のマグネットを使って吸い寄せたのだ。

 

 

 

 ミヤビが見ていたら、

 

「『るろうに剣心』の乙和瓢湖が使った毘沙門剣じゃん」

 

 と言っていただろう。

 毘沙門剣は毘沙門粉と合わせて二つで一組となる暗器。

 素人の太刀筋を達人のそれに変えてしまうとの触れ込みで使用した。

 

 正体は、磁石の鞘に収めておくことで刀身に磁力を帯びるようになった鉄の刀と砂鉄であり、毘沙門粉(砂鉄)を浴びた者を高速自動追尾するというもの。

 作中では毘沙門剣を磁石の鞘に吸い寄せることで封じていたが。

 ラルとサラは同様の手で訓練生のキックを封じたのだった。

 

 

 

「そしてこの足裏のマグネットを使用したキックは追尾、当てることだけが目的ではない」

 

 ラルは見切る。

 

「新型高反発ソールが生み出す装甲に弾かれることが無くなる効果、それを強化する働きがある」

 

 それは……

 

「──その効果だけで使い手は加減することなく全力で打ち込むことができる──」

 

 つまり使い手の技量に関係なく、

 

「絶対に弾かれることのない全力攻撃が完成する」

 

 そういうことであった。

 

 

 

 この、一人の訓練生(と彼が乗っていたザクIにインストールされていたサポートAIサラ)が生み出した足裏のマグネットを使用したキックは有効と認められ、全パイロットに広められたが、

 

「マグネット・パワー(プラス)!」

「マグネット・パワー(マイナス)!」

 

「「クロース・キィィィィック!!」」

 

 とかやりだす者も居て、ミヤビは頭を抱えることになる……

 

 

 

 そして、何故シャアがルウム戦役で史実を上回る戦果を挙げられたのかというと、これらが原因なのだ。

 シャアは敵の戦艦を踏み台にし推進力を得ることで機動性を発揮していたが。

 

 厚底のスポーツシューズは靴底に仕込まれたカーボンまたは複合プレートがバネの役割を果たし、着地の衝撃を前への推進力に変えるというもの。

 それを真似て高反発材をザクIのソールに仕込んだのだから、同様の効果は得られる。

 そしてこの新型高反発ソールと足裏マグネットの瞬間的運用が生み出す、装甲に弾かれることが無くなる効果、

 

『絶対に弾かれることのない全力キック』

 

 がさらにシャアの『戦艦を踏み台にし推進力を得る』という行為の効果を引き上げた。

 それがシャアの史実を上回る戦果、戦艦8隻の撃沈、

 

『シャアの八艘跳び(HASSO-BEAT)』

 

 に繋がってしまったのだった……




 モビルスーツの足裏問題についてでした。
 デザインの変遷が面白いのですが、一方で厚底スポーツシューズのような技術革新がその後に現れたりと。
 何と言いますか、技術のパラダイムシフトが面白いですよね。
 スポーツ用品って、その辺、最先端でしのぎを削りあっているので特に。
 その辺をまとめてみたお話でした。

 それではまた。
 ご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。
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